転生チートオリ主が超技術でVtuberを現実に降誕させる組織のボスになるお話   作:水風浪漫

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プロットや設定っていうのはね。より良いものが思いついたら、いくらでも変更していいんと思うんですよ……そのキャラクターが登場するまでは。
ということで、この作品の一翼を担う予定のキャラの初登場回です。


第8話

 あれから月日が流れ、季節が巡った。

 地元の友だち友達ゼロ人という灰色の日々を超えて私は次のステージ、小学校へ入学した。

 

 アーシア島の学校は小学校と中学校の二つしかない。高校はないので、進学したい人はカントー本土かオレンジ諸島最大のマンダリン島に渡る必要がある。そうは言っても、田舎ではあるが過疎地ではないアーシア島にはそれなりの数の子供が居る。都会と比べれたら少ないかもしれないが、その全員が一か所の学校に集中するのだ。

 その数なんと一学年で60人以上。……前世と比べると少ないな! 30人クラス二つ分しかいない! しかし侮るなかれ、これは公園に集まっていた仲良しグループとは比にならない人数なのだ。

 

 新たに始まった学校生活において、私は前世から持ち越した知識をフル活用して楽々成績トップの座をほしいままにし、その学力と秘めた力を感じ取った子供たちに囲われるカリスマとして君臨していた……なんてことがあるわけがなく。

 

 たしかに小テストでは常に満点を取り続けているが、入学して三ヶ月が過ぎても私に友達はいなかった。休み時間に「ドッジボールしよーぜ!」と外に駆けていくクラスメイトを見送って図書室で借りた本を読み、時々帰り道で海岸に寄り道して綺麗な石を探したりする。

 そもそも私が一人で過ごしている原因は、前世から引き継いだ精神にある。最初はどうにかならないかと試みたこともあるが、どうしても幼い子供達の集団に馴染めない。いじめられたり嫌がらせを受けているという事はないが、同級生の中に混じるには少々私は異物すぎるのだ。

 クラスメイトも話しかければ返事をしてくれはするが、どこか遠巻きに距離を取られてしまう。入学前は彼らももっと単純で、公園に行けば仲良くない私でも何も考えずに一緒に遊んでくれたりしたのだが、一年生とはいえ僅かな社会性に触れるようになると私の異質さに気が付く子が増えてしまった。唯一の友人との交流はナツメちゃん&ハナコちゃんとの文通だけである。

 

 そんな訳で今も私はボッチだった。

 学校では固定メンバーが決まってしまい、ここから挽回するのは正直言ってあまりに難しい。以前は自分から子供が集まる場所に行かなければ他の子どもに会う機会が少なかったので、一人でいても寂しさを意識することはなかったが、毎日学校に通う中で一人で過ごすのは何というか、その……ちょっと辛いものがある。周りのみんなが楽しそうにしているから、余計一人のつまらなさと寂しさが際立つと言うか……。

 入学後の友達作りを諦めずにもっと粘って粘って、粘りまくるべきだったと今は後悔している。しかし今となってはもう……色々と厳しい。

 

───再チャレンジするにも次のクラス替えを待つしかないのかな。

 

 ……と、一年を耐え忍んで二年生での人間関係の変動に乗じるしかないと覚悟を固めていたとき、ある噂が耳に飛び込んできた。

 

「なあ知ってる? なんか、転校生が来るらしいよ!」

「“てんこうせい”ってなに……?」

「他の学校から知らない子がこの学校に来るってこと!」

「え! すげー!!」

「だよなー!!」 

(転校生……だと……!?)

 

 私は即座に動いた。勇気を出して交流ゼロだった同級生たちに転校生について聞いて回り、常日頃からいつも以上に聞き耳をそばだて、絵画教室のおばちゃん、おじちゃん達からも可能な限りの情報を集めた。得られた情報は真偽不明だったり曖昧なもの多かったが、娘・息子が村役場で働いているご老人を情報源とする確度が高いもの得られた。その情報によれば……

 ・一家はカロス地方から引っ越してくる。

 ・娘が小学生になるタイミングなので単身赴任ではなく、家族全員で一緒に来る。(カロス地方では夏休み明けの九月に入学するらしい。)*1

 ・村はずれの丘の上にある誰も住んでない洋館に引っ越してくるらしい。……あそこ廃墟っぽかったけど住めるの?

 ・カロスの地元では有名人。……これはぶっちゃけ勝手な想像なのではと思っている。眉唾。

 ・凄いお金持ちらしい。廃墟だったとは言えど、あのめっちゃ立派なお館を買うんだから、これは本当かもしれない。*2

 

 ……とのこと。

 私は見聞きした内容を書き記したノートを繰り返し読みながら、これからアーシア島に引っ越してくる彼女(推定)と友達になるための良い感じの作戦を考えていた。

 先ずタイミングに関してだが、来週から夏休みに突入するので今週中に学校に投稿してくることは考えにくい。なら休み明けに仕掛けるか、と言うとそれはありえない。まだ転校生の存在を知っている人数は少ないが、きっと夏休み中に殆どの生徒が噂を知ることになるだろう。となれば、休み明けに転校生ちゃんの下に人が集中する可能性は非常に高い。そこに私のつけ入る隙はないだろう……故に、友達になるなら夏休み中、それもまだ誰も彼女と接触していない引っ越し直後が望ましい。

 そして重要な ~友情 YU-JYO~ へのロードマップは……その場の状況に合わせて高度な柔軟性を維持しつつ臨機応変に対応していくものとする。どんな子かも分からないし、今まで計画立ててその通りにいった試しがないからね。私に陰謀や策謀の才能は無い。(確信)

 

 なので、夏休み初日にさっそく丘上のお屋敷にまで足を運ぶ必要があったんですね。(メガトン構文)

 

「いつの間に工事が入ったんだろう」

 

 前世でもテレビ越しにしか見たことがないような立派な門扉、噴水、整えられた中庭を備えた立派すぎるお屋敷。前に興味本位で見に来たときはホラーハウスの様相を呈していたのだが、塗装が剥げ下地が剥き出しになっていた外壁は真白に塗り直され、割れていた窓も新品のガラスに交換されている。錆びついて、風に揺れる度にギイギイと異音を鳴らしていた門扉も新品に取り換えられており、門扉支柱頂部にはヤヤコマのとっても可愛いオブジェが飾られている。私も将来家を建てることがあったら何かオブジェを置きたいな。

 門の向こうには数台のトラックが停まっていて、屈強な引っ越し屋さんとゴーリキーが荷台からダンボール箱をお屋敷に運び込んでいるのが見えた。

 

 まさか、今日が引っ越し当日だったのか? だとしたら何という幸運だ……!

 

 ゴーリキーはまるで重さを感じさせない動きでひょいひょいと手際よく荷物を担ぎ上げている。格闘タイプすご……。

 

 中々見られない光景に「ほえ~」と引っ越しの様子を眺めていたが、はっと我に返り本来の目的を思い出す。いかんいかん、よそ事に気を取られていないで転校生ちゃんを探さないと!

 と言っても勝手に門をくぐるわけにもいかないので、どこかの窓の向こうにそれらしい姿が見えないかと目を凝らすくらいしかできないのだが……。謎の子供がずっと門に張り付いているのを訝しむ引っ越し屋さんから奇異の視線を向けられながら、観察を続けること十数分。二階角部屋の窓から一人の女の子が顔を出した。

 

 豊かな黒い髪の色白な少女。アーシア島の住人は多かれ少なかれ日焼けしているので、彼女のように遠目にも分かる白い肌は目を惹くだろう。彼女は窓を全開にして眼下で作業に励む引っ越し屋さんたちを眺めているようだったが、ふと私の存在に気が付いてこちらを見た。二人の視線が交差する。

 数秒ほど互いに互いを見つめ合う。手を振ってみたら一瞬びっくりした表情を浮かべた後、さらに暫く時間を置いてから()()()()ながら小さく振り返してくれた。う゛っ……! 何だよ、結構可愛いじゃねぇか……。

 勝手にハートを射抜かれて身もだえていると、彼女は親御さんに名前を呼ばれて家の奥に引っ込んで行ってしまった。うっすら聞こえた声が正しければ、名前は「ミュール」というらしい。ミュールちゃん、ミュールちゃんね……しっかり覚えておこう。

 

 それから数分、もう一度彼女が姿を見せないかと期待して待ってみたが、結局出てくる気配もなかったので大人しく今日の所は諦めて帰宅した。直接話すことはできなかったけど、けっこう良い初対面になったんじゃないかな? と何となく手ごたえを感じながら、私は三時のおやつのアイスクリームを頬張るのであった。

 

 

 翌日、さあ今日もお屋敷に突撃だ! と私は意気揚々と屋敷へ続く坂道を上っていた。今日はいつもの散歩と勘違いしてついて来たラプラスも一緒である。なおラプラスは坂の入口で散歩じゃないと気が付いて勝手に帰宅しようとしたので、ヒレを引っ張って無理やり歩かせていた。

 

「おら! 何帰ろうとしてんだ!」

「らぁん……」

「一人だとつまんないんだよ! どうせ歩くのは同じなんだから一緒に来い……!」

 

 こいつ……坂の上に水場が無いことを察してるな! そうじゃなければ単純に坂道歩くのが面倒なだけだ!

 だが、こっちも目的があるとはいえ長い坂道を子供の足で、しかも一人無言で歩き続けるのは暇すぎるのだ。会話は出来ないが話しかける相手がいるだけ、こんなラプラスでもいた方がマシである。それに、あわよくば途中から背中に乗って楽することも出来るかもしれないし!

 すると私の邪念を感じ取ったのか、今まで進むのはノロノロしていたが素直にヒレを引かれていたラプラスの抵抗が急に激しくなった。私に胡乱な目を向け、顔をしかめながら来た道を引き返そうとしている。

 

「くっ、力ばっかり強くなりやがって……往生際が悪いぞ!」

「あっ、あのぅ……」

「ひぇっ!?」

 

 そんな一歩も引かずに抵抗し続けるラプラスと私が不毛な綱引きを続けていると、不意に背後から肩を叩かれた。びっくりして振り返ると、いつの間に現れたのか今から会いに行こうと思っていたお屋敷で見た女の子、ミュールちゃんがすぐ後ろに立っていた。

 

「あの……き、昨日うちに来てた子だよね?」

「みゅ、ミュールちゃ……さん!? 何故ここに!?」

「へっ、なんで私の名前……」

「あ、えっと、昨日呼ばれてたのが聞こえて……」

「あ……そ、そうなんだ」

「はっ、はい……」

「……」

「……」

 

 ミュールちゃんは小刻みに頷きながらじっ……とこちらを見つめている。底の無い暗闇の様な色のくりくりした瞳が私を捉えて離さない。くっ、やっぱり可愛いなおい……。

 視線を合わせたまま、謎の無言の時間が生まれた。

 ……あれ? やばい、ハナコちゃん達との時は問題なく話せたから普通にいけると思っていたけど、家族以外の人、しかも初対面の相手と話すのが久しぶりすぎて言葉が出ない……!

 

「……えっと……あっ私、デュランって言います。下の村に住んでます」

「そ、そうなんだ……あの……そ、そういえば! 昨日はどうしてうちの近くにいたの?」

「そっ、それは……が、学校で転校生が来るって噂聞いて、ボッチ脱却のチャンスだって思っ……って! い、今のは忘れて下さい!」

 

 い、いかん、口が滑った。なかなか言葉が出てこない癖にいざ話し始めたらこれとかアホかな? やばい自分でも分かるくらい焦ってる。仲良くなった後にネタにするならともかく、初対面でいきなりボッチ自虐とかドン引きものでは!?

 

「ぼ、ボッチ……?」

 

 しかし幸いなことに、ミュールちゃんはボッチの意味するところが分かっていない……? 助かった、奇跡的に私のイメージにまだ傷はついていない。だ、大丈夫だ、まだ慌てるような時間じゃない。

 自分の中の混乱が収まりきっていないのを自覚しながらも、私はどうにかこうにか言葉を続けようとする……が、こ、言葉が見つからねぇ~! ……ええい! 本来ならもっと自然な感じで仲良くなりたいと思っていたけど、こうなったら当たって砕けろだ! 砕けたくはないけど!!

 

「えっと、えっと、えーっと。つ、つまりですね」

「う、うん」

「と……友達になりたくて……」

「ともだち……?」

「学校が始まる前なら、最初に友達になれると思いまして……」

「!」

 

 ミュールちゃんが「ピシッ」っと擬音が聞こえてくるかのように突然固まった。うぅ……やっぱり性急すぎただろうか。微動だにしないミュールちゃんは私の言葉を反芻しながら、目をぱちくりさせている。

 あああぁぁぁ……まだ名前しか知らない程度の仲なのに、突然「友達になって」とか早すぎたんだぁぁ。いや、でもさ、仕方ないじゃん。ハナコちゃん達は向こうから話しかけてきてくれ、返事を返しているうちに話が弾んで、気が付いたら仲良くなれていたんだもん!

 こちとら最後に自分から友達作りに動いたのなんて何十年も昔の話なんだよ! 前世の小学校時代のクラス替えで仲良かった友達全員と別クラスになった時以来のチャレンジなんだよお!!

 

 ……ごくり。

 

 唾を呑み、未だに「ともだち、トモダチ……ともだち?」と壊れたラジオの様に繰り返し続けているミュールちゃんの次の言葉を待つ。勘違いだと思うが、なんだかミュールちゃんの目の暗闇が少しずつ深くなってきているような……。

 私は内心びくびくしながら返事を待つ。もし断られたらどうしよう。その時はこれまでと何も変わらず、夏休みが明けてもずっと、ずーっと学校で一人で過ごすことになるのだろうか。

 眠くもないのに机に突っ伏して寝ているふりをして時間をつぶしたり、休み時間にやることがないからと毎日毎日図書室に通い続けるのか。ふと、脳裏に灰色の教室で一人寂しく席に座っている自分のイメージが浮かんで来た。

 ……か、考えるな! まだ返事はこれからなんだ。悲観的な想像ばかりしてどうなるって言うんだ。こんなときは、逆に明るいことを考える。それが無理ならせめて何も考えずにただ時が過ぎるのを待つべきだ。

 私はじっとりと嫌な汗が滲んできた手を握り締めた。するとようやく、硬直してしまっていたミュールちゃんがプルプルと体を震わせ始めた。

 

「ともだち、ともだち、トモダチ……友達!!」

「ぐほっ!?」

 

 突如、凄まじい勢いで突進をかましてきたミュールちゃんを受け止めきれず、私は彼女もろとも後方にいたラプラスに叩きつけられたのだった。

 

*1
現実の海外等の学校と同じ

*2
館のイメージはストレンジャーハウス




デュラン:転生後は旅行中の二日間を除いてほぼ家族としか会話していなかった為、会話をリードしてくれたハナコ達とは違って、初対面でお互いに口下手なミュールとは会話するだけで精神を消耗している。前世はサブカルオタクであり、今生でも「萌え(死語)」や「尊み」のあるものを見ると気分が高揚する。また、成長途中とはいえポケモン(しかもラプラス)と力比べが出来る謎筋力の持ち主。

ミュール:アーシア島の丘の上にあった洋館に家族ともども引っ越してきた内気でシャイな女の子。「友達」という単語が彼女の琴線に触れた様子。“ロケットずつき”を使える。

ラプラス:成長途上、現在身長175cm。

地の文の改行は多い方と少ない方、どちらが読みやすいですか?

  • 多い方(一段落が短い)が良い
  • どちらかと言うと多い方が良い
  • 少ない方(一段落が長い)が良い
  • どちらかと言うと少ない方が良い
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