サクラノヒーロー   作:氷潤

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ヒーローノート

あの火事から一夜明けた。桜のヒーロー ヒイロギこと日色木 縁次(ひいろぎ えんじ)は、【桜のヒーロー!火事の中から女の子を救出!】の見出しと共に朝刊の1面を飾り、朝のニュース番組でも取り上げられた

 

縁次自体、メディア露出はしないつもりだったが、女の子の家族が是非!と縁次が折れる形で事が進んでいった

 

「日色木ー!朝刊読んだよー!!」

 

朝のホームルーム前、緋色が教室に入った後すぐに、朱華が昨日の事について話しかけてきた

 

「あ"ぁ〜あれか」

 

「昨日の火事の1面だけを切り取って、自分の部屋に飾ってある」なんて言えない緋色は、話題を変えることにした

 

「朱華、今日の昼は屋上でいい?」

 

「屋上ね!いいよー!」

 

緋色達が通っている学校は、数年前に購買が廃止されて以降、弁当の持参が規則となっている

 

食べる場所は特に決められていなかったが、校長室で堂々と弁当を食べ始めた生徒が出た為、それから明記されるようになった

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

二人にとっての屋上とは、周りに人がいると話しづらい話をしながらご飯を食べる場所で、片方が屋上を指定するともう片方も察して、それに合わせるのが暗黙のルールとなっている

 

「朱華、聞いて欲しい事があるんだけど」

「ほいほい」

 

朱華がお弁当のたまご焼きを飲み込んだタイミングで、緋色はーーー夢を語り出した

 

「夢が出来たというか、元々あったというか」

 

「いつの間にか忘れてた、お父さんみたいなヒーローになるーーーって夢」

 

「昨日、女の子を助けたお父さんを見て、小さい頃の夢を思い出したんだ」

 

「…昨日の今日で都合が良すぎるかもしれない。それは自分でも分かってるつもり」

 

「けど、もう決めたんだ。私、ヒーローになりたいーーーいや何が何でもなる」

 

緋色はかつての小さい自分の夢を、今の自分の夢を、今一度親友に向けて発した

 

それを聞いた朱華は、数秒瞬きし、目を見開いた

 

かと、思いきや目を輝かせたのもつかの間、緋色の視線に気付いた朱華は、コホンと咳払いした

 

「コホン、そ、その事は家族には言ったのかな?」

 

「あ、うん、言ってある。ただ、昨日色々あってバタバタしててさ。夜遅くに話せた」

 

昨晩、女の子を火事から救出した縁次は軽いやけどを負っており、救出した女の子と、その家族と一緒に病院に搬送された。その後、出入り口で待機していた記者陣との問答もあり、帰るのが遅くなっていた

 

「あー…うん。お疲れ様です」

 

何となく察した朱華は日色木家に労いの言葉をかけ、

 

(…私にとってはとっくにヒーローなんだけどなー)

 

緋色を見て、あの時の事を思い出しながら、そう心の中でぼやきつつ話を切り出した

 

「私からも話があるんだけど良いー?」

 

「何?」

 

「日色木。私とチームを組んで欲しい」

 

金を稼ぐのが主な理由として挙げられるヒーロー界隈において、取り分が少なくなるチームでの活動は極少数だった

 

「チーム!?私と!?」

 

緋色自身、昨日聞かれた『ヒーローは?』って質問に、『一番ない』と返してしまったのもあって、何言われても受け入れる覚悟はしていた。していたが、今の言葉で困惑していた

 

「うん。日色木がヒーローとして活動して、私がマネージャーとしてサポートをする」

 

朱華の言う通り、一人でヒーローとして活動するよりもサポートをしてくれる仲間がいた方が、実働以外の範囲も出来る上に活動範囲も広がるメリットはある

 

「形としては分かったけど…何で私と?」

 

朱華の言うチームが大まかには想像がついた緋色は、何故まだヒーローですらない自分なのか、をすぐ朱華に聞いた

 

「日色木が私を変えてくれたから」

 

朱華は笑顔でそう答えた。ただ、目の前の親友に自分を変えてもらったのは緋色も同じでーーー

 

「お互いに、ね。貸し借りは無しだからね?

 

「それと、良いよ。さっきの話」

 

「本当!!?」

 

朱華は、食べようとしていた白米を箸ごと落とす程の勢いで緋色に迫った

 

「マジ。朱華となら大丈ーーぶっ!!!」

 

「あ、ごめん。つい感情が昂って」

 

朱華となら大丈夫な気がする。それを言い終える前に、朱華がハグをしようとしてきた為、緋色は反射的に鼻と鼻がくっつく数cm手前で、朱華の両腕を掴んで間一髪防いだ

 

「ふぅ…」

 

掴んでいなかったら、確実にお釈迦になっていたであろう菜乃葉(母親)が作ったお弁当の無事確認して、緋色は一息ついた

 

「ね、ね!おひぃさん、ひぃさん!」

 

「あ"ぁー………なんだい?はーさんや」 

 

緋色は老婆になった朱華を想像しながら、ニックネーム呼びにニックネームで返した。名前だから仕方ないとしても、何故私が老爺なのか。気に入らない様子だった

 

「チーム名も考えてあります」

 

「ん、何?」

 

…チーム名って必要か?それコンビ名の間違いじゃない?って聞こうとした緋色だったが、今聞くべきなのはチーム名の方なので、流石に躊躇した

 

「チーム桜!!」

 

「ーーー桜。桜か。」

 

「…変だった?」

 

「ううん。私達らしくてすっごく良いと思う」

 

考える素振りをした緋色が心配になって朱華が覗き込んできた。緋色は笑顔で、顔を見合わせたまま返事をした

 

桜の名が付いた名前なんて誰か1人以上は思い付きやすそうな名前。けれども、緋色にとってそれは特別な存在だからこそ、心が喜んだ

 

「ありがと!ヒーローーーー」

 

「緋色のヒーロー、ヒイロギ ヒイロ」

 

「ん!ありがと!ヒイロ!」

 

「こちらこそ。そしてこれからもよろしく!朱華(相棒)!」

 

この日、桜のチームが誕生した(桜が咲いた)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「で、今日の帰りにお父さんとヒーロー証明書取りに行くんだけど、一緒にどう?」

 

「あ、遠慮しときまー。幾らチームを組んだとはいえ、父娘水入らずのところに入る勇気は流石に持ってないなー」

 

「まぁ…確かに」

 

「それより、お父さん大丈夫?」

 

「?、大丈夫だって言ってたよ?」

 

「あー、そうじゃなくて、心体の疲れとか」

 

ヒーローだって疲れるし、昨日の一件の疲れがまだ残っているかもしれない

 

軽い火傷も治療しただけであって、まだ完治したわけじゃない

 

「あ"ー、でも大丈夫じゃないなら大丈夫じゃないって言うだろうし…。てか、今日で良いって言ったのは向こうだから」

 

昨日、緋色がヒーローになりたいと告げた後、ヒーロー証明書を市役所に取りに行こう、という話に変わった。ヒーロー証明書を取得するには、未成年であれば保護者の同行かつサインが必要で、縁次か菜乃葉のどちらかが一緒に行く必要があった

 

そこで縁次が自ら立候補し、今日の帰りに行く事になった

 

「ま、大丈夫っしょ」

 

「なるほどー。じゃあどうだったか明日教えてねー!」

 

「ん」

 

 

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