地中を穴だらけにしていた廃坑は、戦闘の余波によって其の姿を保てなくなった。地盤は割れ、天井に罅が入り、通路は崩落して狭まっている。傍観者である鳥どもや犬っころどもは安全な場所に退去したのだろう。大量の足跡が地下へと続いていた。どうやら生き埋めが御所望のようだ。
出入り口が塞がったらしく空気が薄まっていく。しかし気流は留まることなく風を発生させた。騎士の掲げる剣が、其の滲み出る闘志が、空気を揺れ動かしているのだ。
アーツでも妙な術理でも無い、単なる気迫で引き起こしている現象だ。其の肌を突き刺すような闘志は、先の闘いで手を抜いていたのが明らかな程強かった。かなりの距離があるというのに冷や汗が出てくる。
騎士は紛れもなく本気を出している。あらゆるしがらみを打ち捨てて、ただ私と闘おうとしているのだ。其の事実に私は嬉しくもあるし、仕留めきれなかったことを失策と悔やむ思いもある。
今の私の力は十分であるが万全では無いし、手の内は出すのが難しいもの以外全て知られている。奴の働きは確実に私を不利に追い込んでいるだろう。全く、奴も良くやったものだ。
騎士の持つ青く澄みきった真っ直ぐな剣は、持つ者の信念を現すそうな。騎士は一体どんな信念を抱えているのか、其れだけが気掛りだった。どんな攻撃をされるか全く予想が付かない。
睨み合って硬直する中、最初に仕掛けたのは騎士であった。掲げていた信念の剣を振り下ろし、輝きを斬撃として私に飛ばしたのだ。私は光に一瞬目が眩んでしまい、行動が一歩遅れてしまった。避けるのは間に合わないと直感し、嫌な予感はしても錫杖で受け止めるしか他無かった。
其の斬撃は此れまでのどんな剣よりも重く、鋭く、何よりも強かった。其の斬撃は錫杖に阻まれて尚剣の形を留め、衝撃が私の体を依然として押し出していく。競り負けると感じた私は敢えて体勢を崩し、体を地に付けることで斬撃を躱した。
だがこんな分かりやすい隙を晒せば、騎士ならば容易く急所を一撃で貫いてくるだろう。其ればかりは避けられない。私は割り切って其の一撃を耐えることを決めた。耐えきれば致命の一撃を叩き込める。私なら其れが出来るし、其れ以外に方法が無い。
錫杖をギリリと握り締め、土埃の中から騎士が現れるのを待つ。が、待てども騎士の姿は現れず、遂には土埃が晴れてしまった。立ち上がって見るに、騎士は悠然と剣を構えているだけだった。更には自身の盾を拾い上げて、悠長に腕に装備しているではないか。
───何の積もりだ。
「故国の競技では騙し討ちも卑劣な戦法も認可されている。しかしな、私は其れがどうも好かん。公平な闘いでなくては、私の気が済まないのだ。
私は貴殿の手の内を殆ど見抜いている。故に一手だけ、貴殿に情報を与えた。此れで私の攻撃に予測が付くだろう?」
───決闘者としては見上げた心掛けだが、臣下の頑張りを無下にするのは上に立つ者としてどうかと思うぞ。
「ハッハッハッ、要らぬ方へ頑張り過ぎたのだ彼奴らは。当代の役目など当に果たしておるというのに、やれ私を生かすだの、やれ故国に帰還するだの騒ぎおる。
生きて何になるというのだ、帰って何になるというのだ。敗走した者の未来は死有るのみ。引き延ばしたところで其れは変えられん。我らが辿る運命は既に決まっておったのだ。引導を渡すのが貴殿であっただけの話よ」
詰まるところ、騎士はもう死んでも構わないらしい。ただ騎士として闘いの中で果てたいという願望が、皮肉にも騎士を生かす要因となっていた。騎士を打ち負かすような豪の者など、そう居ないだろうから尚更だ。
「そうだ、貴殿という厄災が来たのだ。我らと何の関わりもなく、何の意味もなく滅ぼす厄災が。納得の死を得たい我らにとって此れぞ僥倖よ。騎士の意義を強者に示し果てることが出来るのならば、騎士として本望である」
───人間という生き物は、斯うも面倒な存在であったのか。後世に名を残したいだとか、人生に意味を持たせたいだとか、死せば全て水泡の様に消え去るというのに無駄な事をする。
錫杖を撫で付ける。一目見ただけでは判別が出来ないが、先程斬撃を受けた箇所が少し削れていた。ツルリとした触感の中、一部だけ明確にわかる程ざらついている。
かつて一度も折れたり曲がったり、更には汚れたりしなかった錫杖。敵を貫けなかった事が一度たりとも無い絶対の武器。防げなかった攻撃は存在しない絶対の防具。其れが今、密かに破られていた。
「人は皆、記憶に磔にされているようなものだ。どうか忘れないで欲しい、どうか覚えておいて欲しい。そう願わずにはいられないのだ。
だからこそ騎士は名乗りを上げるのだよ。自身を踏み倒し前進する者に、自身の名を覚えてもらう為に。自身の存在を語ってもらう為に。闘いの最中で自身の強さを思い出させる為に。そう、名乗るのだよ。
我らはアンドロス騎士団。カジミエーシュが誇る絶大なる矛にして盾。此の名を抱き持ち去るのが冥府か、我らを踏み倒し進む未来か、お前次第だ。……とな」
───名乗っても無駄だ。当方は人の名を覚えん。例え貴殿がどれ程忘れ難き存在であろうと、貴殿が死せば貴殿の姿は当方の脳裏より消滅する。今も昔も、死者を覚える意味は無かろうて。
「いいや、貴殿は何時までも我らを記憶するだろう。貴殿、録な相手が居なかったと抜かしていたな。ならば尚、貴殿は我らを記録するのだ。
かつて貴殿をここまで追い詰めた者が居たか? いいや居ない!
以後貴殿をここまで追い詰める者が現れるか? いいや現れない!
何故なら、我らは強者であったから! 誇り高き騎士であったから! 正々堂々と貴殿と合間見え、無敵ともとれる術理を破って手傷を負わせた! 此の芸当が我ら以外に出来る者が人に居るだろうか? いいや、居ない! 居るはずが無い!」
騎士は昂り語気を荒らげて此れまでの功績を賛美する。騎士と団員の強さを誇らしそうに、強者特有の獰猛な笑みを浮かべ、剣先を私に向けた。そして言葉を切り、一つ大きく息を吸って、吐いた。
「我ら以上の強者は人には居らん。貴殿は此れからの闘いの最中、敵と我らの強さを比較せずにはいられないだろう。そう、絶対にだ。其の比較対象の中、最も強き存在として、私の強さを見せつけようではないか!」
騎士は信念の剣の柄を盾に打ち付けて、金属音を響かせた。狭い地中では其の音は良く響き、余裕で私の場所に届いた。衝撃が私を貫くが、一度見た攻撃など楽に対処できる。
騎士は私の目前に現れ信念の剣を振りかぶった。其の動きを察知していた私は先んじて横に跳び、そして騎士が剣を振り切る前に次の足を出したのだ。カウンターを決める、其の為に。
だがしかし、騎士は私の先を取った。振りかぶった信念の剣を直角に方向転換させ、私を追撃したのだ。避けようにも、回避行動を取る其の足は、既に騎士に向かって出している。錫杖で受け止めるしかなかった。
幸いな事に歪な腕の振り方で、信念の剣に力が上手く入っていなかった。故に、小手先のズルが十全に効果を発揮できた。
「むッ!?」
ズルリ、と信念の剣の刀身が滑った。先程錫杖を撫で回した時に塗りたくった着火用のオイルと、生じるエネルギーを錫杖の外に押し出すことで、騎士の攻撃を受け流す事が出来た。私に何のダメージも無く危機を脱却できたのだ。そして好機も同様にして天来した。
騎士は今、信念の剣を突き出した状態で前屈みになっている。私は信念の剣の柄を蹴りあげて、騎士の手から剣を弾き飛ばした。幾ら力んで掴もうとも、摩擦が無ければ掴んでいないのと同じだ。
騎士の視線が信念の剣を追って上に向いた。其の隙に錫杖を叩き込もうと構える。察知した騎士が私の攻撃を盾で防ごうとも、私の錫杖ならば盾ごと突き貫ける。其のはずだった。
───気に食わんものだな。真似されるというのは。行動に理解が付く分余計にな。
「ああ、素晴らしいアーツだ。しかし、何と複雑怪奇な仕組み。完全な制御下に置くには、しばらくの時間が必要か──」
騎士の盾には私の防御機構が張り巡らされていた。完全では無いにしろ、衝撃を分散して外に散らすだけでも十分な効力が有る。防御の堅い者に、厄介なものを覚えられたものだ。
「──だが、十分よ!」
騎士が錫杖を蹴りあげた。私がしたように手の平の摩擦を無くして。私は其のまま弾かれて仰け反り、錫杖は後方へ落ちた。騎士の頭上には回転しつつ落ちてきた信念の剣が有る。其れを掴み取って、再度私に振りかざした。
「……やるしかないな」
此の状況では打つ手が殆ど無いが、有るには有るのだ。酷く嫌だがやるしか道は残されていない。直撃するよりかはマシだろうしな。多分。
振り降ろされる信念の剣を、其の刀身を両の手で挟んで受け止めた。彼の冒険家に教わった真剣白羽取りという技術。其の全てを活かして私は生き延びた。
地盤が崩れて体が沈む。刀身を挟む手に焼き爛れるような激痛が迸った。
「ぬ、ぬぅ……。熱い」
肉体に損傷は無い。当たり前だ。エネルギーを操る私に熱攻撃は効かない。なら何が激痛をもたらしているのか。そうだ、魂が悲鳴をあげているのだ。触れた箇所が燃え尽きるように、徐々に、徐々に、力が抜けていく。信念の集合体が、私を倒す為に霊的な攻撃をしてきやがった。最早怨念ではないか。
此れで焦るのは私だ。両の手で挟み、摩擦力を十全に発揮させているというのに、刀身が今にもずり抜けそうになっている。最早、形振り構っていられなくなった。
ありったけの力で、周囲に転がる武器になるものを引き寄せた。壊れた武器や防具、其の破片に瓦礫、果てには砂など、騎士の力が緩まれば何だって良かった。
「むっ、数が多いな」
騎士は私の腹に蹴りを入れて距離を取った。流石の騎士も、対処するには私の相手をしていられなかったようだ。騎士は荒れ狂う竜巻の様に、飛来する物を剣で斬り飛ばし、時に盾で弾き、蹴撃を交えながら、私の取って置きの一つを難なくやり過ごしたのだった。
蹴り飛ばされた私は壁に激突し、ずり落ちる。其の最中、騎士に弾かれた折れた剣が幾本か突き刺さった。其れに痛みは勿論ある。だが、腹を突き破る程度の痛みでは、手の平の激痛を誤魔化す事すら出来ない。
「驚いたものだ。先程まで一本か二本動かすのが限界であったはずなのだが……まさか出し惜しみしていた訳ではあるまい。コツを掴んだ、といったところか。例えそうだとしても、慣れるのが速すぎると思うが」
「貴殿こそ手慣れた様子だ。何度か此の攻撃を受けた経験が有るようだな。抜かり無く反撃までしおる」
手の激痛を堪え、腹に突き刺さった剣の内一本を引き抜く。引き抜く際、折れた部分を源石で補強して片刃の剣に仕立て上げた。
私の手の内は殆ど知られているが、錫杖の特性は見せていない。其れで決める為に、今は少しでも騎士に手傷を負わせ、体力を消耗させなければならなかった。騎士の土俵に上がり込むという苦肉の策になったが、致し方有るまい。
「おおっ、剣か。貴殿は術師と思っておったが剣士でもあったか。うむうむ、やはり闘いは剣で無くてはな。貴殿がどの様な剣技を見せてくれるか楽しみだ」
「生憎だが、剣を知りはするが実際に振った事は無い。其の知識も貴殿に通用するとは、思えんがな。……だが、やるしかないのも事実か」
私は右足を一歩前に出し、腰だめに剣を構えた。
───風よ
居合いの形。鞘は私の左手。此れが、今最も適切な剣の振り方だ。
───斬り裂け
一瞬の間のみ、私の右腕は光を越えた。風の斬撃は自身の左手を切断し、空気を割った。遠く離れた騎士に風の斬撃は襲い掛かり、首を掠って後方の岩肌に一文字を刻んだ。
「駄目だな。当たらん」
左手を引き寄せてくっつける。とんだ無駄骨だ。
「術自体は以前見たが、速度が段違いだな。全く見えなかった。もしかしたら今ので私の首は飛んでいたかもな。ククッ」
騎士は切れた首元を擦り、何が楽しいのか笑声をあげた。死にかけたというのに呑気なものだ。
「さあ、まだ有るだろう? 貴殿の知り得る技はそんなものでは無いはずた。もっと見せてくれ」
「言われずとも見せてやろう。出し惜しみはしない」
戻した左手で、腹の剣をもう一本引き抜く。右手の剣と違うのは、強いて言うならば長さだろうか。
「ぬおッ!?」
おおよそ10m前後。引き抜いた剣の刀身は、騎士に届く長さがある。一度振れれば十分故、耐久性を度外視した極薄の刃。私の最大速度で振り抜いた剣を、騎士は跳んで避けた。
勘が良いものだ。触れたら爆発するようエネルギーを送ったのだが、不発に終わってしまった。まあ良いだろう。其のエネルギーは次の攻撃に取っておこう。
着地する騎士へ、私は左手の剣を縮めながら走った。彼の冒険家は二刀流の剣技を修めていた。本来なら一本は錫杖なのだが、今は使わない。
「成る程、二刀流か! 面白くなってきた!」
ウキウキしだした騎士に両刀を振るう。かつての冒険家の姿をなぞるように、私は体を動かした。
右が盾に防がれる。其の隙に信念の剣を振られるが、左で逸らして其処から胴に突きを放つ。当たったが威力が足らず、鎧を貫けない。だが、骨は折った。今の騎士では衝撃は殺しきれないと踏んでの事だった。
衝撃に飛ばされた騎士は、発生した金属音に乗って私の目前に現れ、盾で私を突き飛ばしてから信念の剣を振るう。盾との間に両刀を挟んで威力を殺した後、私も金属音に乗って騎士の頭上に移動した。
随分と低くなった天井を蹴って加速し、騎士の首を狙って両刀を振るう。天井を蹴った音に反応したのか、騎士が振り向き一歩後退した。剣は空振ったが、私の腹にはあと一本剣が刺さっている。追撃として其れを射出した。
騎士は剣を盾で防いだが、其れにはエネルギーを送ってある。不発に終わった爆発を、今度こそ食らわせてやったのだ。更には生じる衝撃を、全て一方向に流れるように細工した。此れで騎士の片手は使い物にならなくなるだろう。
「……ここまで来ると曲芸だな、此のアーツは。奥が深すぎる。何と使い難い」
騎士の手に盾の持ち手を残して、盾はひしゃげて有らぬ方向へ飛んでいった。と言うより私にぶつかった。どうやら手に行く衝撃を盾に押し付けたようだ。騎士もまた、此の闘いで成長しているのだろう。厄介な事に。
だが、盾を壊せた。此れで攻撃も通りやすくなっただろう。確実に一手を打てているのだ。長い闘いになりそうだが。
「盾はもう使えんな。良いだろう。私も久し振りに二刀流といこうか」
騎士は最初に使っていた剣を引き寄せた。盾の持ち手を放り、左手で掴み取る。そして半身となって左の剣を前に突き出し、信念の剣を背後へ引き摺るように持っていった。因みにどちらも両手剣サイズだ。馬鹿力め。
「フフッ、こう構えていると見習いの頃を思い出すな。盾を持てと良く叱られていた。騎士に昇格した時、泣く泣くスタイルを改めて苦労していた。
そう思うと、随分と遠くに来たものだな。さあ来い。闘いを続けよう」
騎士は待ちの態勢に入った。騎士の背後にある信念の剣は、まともに入れば一発アウトな代物だ。其の一撃さえ与えれば良い騎士にとって、私の隙をつけ狙うのは実に合理的だ。
迂闊に攻撃するには剰りにも危険が過ぎる。手だけでも相当辛いのに、此れ以上増やされると気が狂ってしまう。一旦距離を取ろうとジリジリと後退する。怖じ気付いた訳ではない。断じて。
すると騎士はズンッ! と逃がさないとばかりに一歩踏み出した。どう足掻いても一定の距離を保たれるだろう。気が滅入ってしまう。だが攻めなければ体力を回復される。最初から答えは出ているのだ。やりたくないだけでな。
ここから少し深い地中に巨大な源石鉱脈が有るようだ。其処からエネルギーが漏れ、確かなる存在感を発している。此の源石鉱脈がここを廃坑にした理由かもしれないが、私には知った事ではない。
私は其れを丸ごと引き寄せた。地盤が割れ、粉塵が立ち込める。視界が悪いことを良いことに、其の源石を吸い上げる。マラソンランナーが栄養補給するようにな。
「目眩ましか……むっ、影が……二人?」
残りかすを、私と同じ大きさの人形に組み上げて、次いでに幻術もブレンドしつつ、左右に別れて同時に突進させる。視界が悪いので本体の判別は不可能。守りに入るしかあるまいて。
しかし騎士は大胆な事に、同時に斬った。胴から頭までがら空きになることを恐れずに、目前の脅威を打ち払ったのだ。
しかし、斬られたのは私ではない。どちらも源石で出来た人形だ。本体の私は粉塵の中、身を潜めて機会をうかがっていたのだ。そうして機会が来た。
私は騎士の胴目掛けて、有りっ丈の力で剣を投げ込んだ。一拍置いてもう一本も投げる。
「どちらも偽者、だろう? 此の状況で貴殿が飛び込んで来るはずがないからな。見るがいい、信念の剣が描く軌跡を」
人形を信念の剣で斬る際、私の居た所へ輝く斬撃を放っていたようだ。投げ込んだ一本目の剣は呆気なく消し飛び、斬撃が私の元に迫り来る。
だが、私は此の状況になるだろうなと確信していた。既に錫杖を引き寄せて間に差し込んでいる。持っていない故、簡単に押し負けてしまう。だが、軌道をずらせたのなら十分だ。そうなると分かっていたからこそ、私はもう一本の剣を続けて投げたのだ。
「クッ」
顔面直撃コースの剣は、騎士の目前で静止した。奴がしたように障壁を貼ったようだ。五枚出現した障壁は、三枚砕けて四枚目に罅が入っている。あと一息だ。
騎士は見逃したようだが、人形が持つ剣は源石で出来た本物の剣だ。今、其れを持つ人形たちは、騎士に胴を真っ二つにされて地面に落ちていっている。其の上半身を爆発させ、持たせた源石剣を騎士目掛けて射出した。
生じる爆風や熱は、全て運動エネルギーに変換して持源石剣に与えた。ある一方向目掛けて真っ直ぐにぶっ飛ぶように。そして四本の源石剣は外れること無く、狙い通りに騎士の背に直進した。
其れに気付かせないように、騎士の目前で未だ静止する源石剣を爆発させる。敢えて中途半端に爆発させることで、爆風だけでなく破片で目を潰した。
爆発によって四枚目の障壁が砕け散り、五枚目の障壁の頭部を覆う部分が厚くなった。反射的に動かしてしまったようだ。
アーツは術者の意識に強く影響される。守りに偏りが出るのは仕方がないことだろう。最も、死ねばそんな事言えなくなるが。
薄くなった背中の障壁を、二本の源石剣が突き破った。進行は鎧の前で止まるが、問題は無い。其の二本を爆破して障壁を破壊し、鎧に大きな穴を作らせた。
「漸く一手、決まったな。さて、次は如何様にするか、悩みどころだ」
後続の二本が其の穴を通り、騎士の背に深々と突き刺さった。