この辺にぃ、今日出す予定のアーケートを寝惚けて昨日に出した作者、居るそうですよ。
キャラが勝手に動くって、良く聞きますよね。私は(なったことが)無いです。そこまで至れていないと言うか何と言うか、精進が足らないようですね。
跳鳥、と言うらしい。今私が騎乗している鳥野郎の種族の名だ。爪を突き立て縦横無尽に駆ける様はまさに跳ねる鳥だろう。安直な名前だが嫌いではない。
元祖は平坦な地に生息する個体の筈だ。遠くを見る為の長い首に速く成るために退化した翼、肥大した体を支える太く長い脚など其の特徴が出ている。何故かは知らないが山岳に生息しているがな。しかも妙に適応して一部だけ別の生物みたいに進化しているし。
まあ種を残せるのならどうでも良いことか。其れが生き物としての本能ではあるし。間違いなど無い。
跳鳥の平時は山を駆けて移動している。登り降りが常で有るし、もしかしたら一生を山で暮らしていたかもしれない。だからこそ砂地を上手く駆けれず、心身共に疲弊して死んでしまったのだろう。盗まれた三体が老いた個体であったのも要因だろう。
鳥野郎は死ぬギリギリで踏ん張ったものの、此れから一生人を乗せる事が出来ない程に体がボロボロになっていた。まあ何時の間にか乗せて走れる位に回復していたのだがな。突入前にしゃがみ込みんで“乗るだろ?”みたいな顔を向けてきた。
無理くね? と思いながら遠慮無く乗れば、鳥野郎はスクッと立ち上がって駆け出した。其の時は驚いたものだ。何せ安定感が凄い。揺れが殆ど無く、錫杖を問題なく鳴らせるし手綱を持つ必要も無かった。此れはいいものだ。
突入した先には筋骨隆々の奴らが狭い通路にひしめき合って立ち塞がってきた。体が隠れる程の大きい盾を構えてやがる。受け止める積もりなのだろう。随分と勇ましい事で。
兜が耳を覆っているせいか波の通りが悪く、遠くからでは遠近感を壊してよろけさせる程度のことしか出来ずにいた。
注意を散漫にさせようと壁の出っ張っている石を掴んで投げた。当たった石は爆散して黄色い液体を撒き散らす。おや、アシッドムシだったようだ。南無。
音波で弱らした前列の重装兵を跳鳥どもが蹴散らしていく。一番前を崩せれば後は勢いと地力が高い方が勝つ。古い書物にも書いてたと冒険家が言ってた。
「不味い! アーツだ!! 皆耳を塞げ!! やられるぞ!!」
「アーツに耳だぁ!? 其れらしき音なんざ聞こえねえぞ!!」
「良いから塞げってンだよ此のド阿保! 石でも土くれでも良い!! 何か詰めてさっさと塞げ!!」
勘の良い奴が居たようで私のアーツを対策されてしまった。音の波が脳に達する事が無い以上、此のアーツは笛の音を乱す事ぐらいしか出来ない。
通路の横幅は実に狭いものだ。跳鳥が二体、奴らが三人詰めれば並べる程度、と言えば分かりやすいだろうか。第一陣と第二陣の壁はへなちょこだったので簡単に突破できたが、第三陣からは跳鳥の突進を受け止める奴が出てきた。
奴、と言っても五人組だがな。奴らは狭い通路から跳鳥の突進は一体のみであると判断したのだろう。二人が前で盾を構えて、其の二人を三人が後ろで支えている。奴らの絶妙なコンビネーションは一つの個と見なしてしまうほどに上手なものであった。
受け止め役の二人が潰れないよう衝撃を流しながら後退し、其れでいて確実に止めれるよう押さえている。かなり訓練を積んでいるようだ。咄嗟に出来る事ではない。
だが、完全に受け止められても体勢は少し崩れてしまう。其れに突進した一体に意識が集中し過ぎてしまっている。其処を壁を走って来た二体目の跳鳥によってぶっ飛ばされ、一体目を跳び越えて来た三体目と四体目に頭を踏み潰されてしまった。
容易く突破できたが確実に時間を稼がれている。増援が来るのも時間の問題か。奥からの音もかなり騒がしくなっているし速いところ此の通路を抜けたいものだ。
第四陣は五体目と六体目が同時に突進した為、盾役の二人が早々に潰れてしまった。二体は体の大きさや毛色が似ているので同時期に孵った個体なのかもしれない。慣れ親しんだ二体によるコンビネーションは抜群だ。
其処に第三陣に突進した一体目が加わり、第四陣は差程時間をかけずに突破した。見る限り残すは第五陣のみだ。
「遅れてすまない! 笛持ちを呼んできた!! 後少しで増援も来てくれる!! もう少しの辛抱だ!!」
伝令係りと笛持ちが先にやって来た。突入から一分も経たずに増援が来るようだ。随分と速いな。此のレベルの団体が何でこんな処に居るんだ?
そして笛持ちは此の状況を見て直ぐに笛を鳴らした。しかし響く其の音は耳鳴りのような高周波のものでは無く、間の抜けた低くのっぺりとした低周波のものであった。
私が得意とするアーツは振動を扱うものが多い。こんな音が響きやすい処ならば、振動を増幅させることも減少させることも思いのままだ。相手が悪かったと言う他無い。
「な!? 効いてない、だと!? *ウルサススラング*! 奴のアーツか!! お前ら気を緩めるんじゃねえ!! 次が来るぞ!!」
此の狭い場所では跳鳥どもの能力を全て活かす事が出来ない。したがって此処で食い止められると勝ち目が薄くなってしまう。増援部隊が来る前に、多少強引でも突き破らねばなるまい。
───貴殿らよ暫し待たれい。当方が彼処に綻びを作ろう。貴殿らは其れを押し拡げ、突き進め。良いかな? では行こう。
突っ込もうとした六体の跳鳥に少し待つよう指示した後、鳥野郎から降りた私は単身躍り出て奴らに錫杖を叩き付けた。盾と錫杖の間に発生した衝撃を増幅し、指向性を持たせて放出した。扇状に拡散した衝撃は叩き付けた奴だけでなく、周りの奴らも浮かせて飛ばしていった。
苦悶の声をあげて必死に起き上がろうと踠く奴らの上を、跳鳥どもは踏み越えて駆けていく。笛持ちと伝令係りを轢き殺しながら奥へと進んでいった。
息の有る奴に止めを刺した後、待っていた鳥野郎に乗り込んですぐに跳鳥どもの後を追った。
弔うように錫杖をかき鳴らしながら。
***
Tips.自己嫌悪に陥る旅人くん
・ぶち切れて攻め込んだは良いものの、其処まで悪い奴らでは無いことに気づいた。奴らもまた、精一杯生きているのだと。其れを壊す自分は何て罪深い人間かと自己嫌悪に陥った。彼を動かすのは此の戦争を引き起こした罪悪感と、最後まで付き合うべきという責任感だ。彼の欲求など何処にも無い。
此の世の事物は何かを代償にして成り立っている。人で有れ、何で有れ、生きる上で必ず負の面を持ち合わせている。縄張り争いといった極自然な事柄など常日頃起こっているのだ。其れを『起こした』と思うのは、おこがましい事この上無いだろう。
***
錫杖を響かせながら幾ばかりか進むと開けた処に出た。根城の中心部のようだ。何十体もの跳鳥が暴れまわり、死体が散乱する阿鼻叫喚とした状態だがな。
一目見て跳鳥どもが増えていたものだから自分のアーツを食らったのかと思ってしまった。防音性の高い場所に囚われていたのを解放したようだ。あんな場所が在ったとは気が付かなかったな。
今思えば何の音を捉えられない処など違和感でしかなかった。
奴らは何人かで固まって事に当たっているが、跳鳥どもの機動性が高過ぎて守りきれていない。不意を突かれては次々と倒されていっている。
突入組の跳鳥がまた一人止めを刺そうと爪を振り下ろし、そして一回り大きい盾によって塞がれてしまった。突然の妨害に其の跳鳥は跳び退いて警戒に当たった。
「ゴホッ、ゴホッ。当主様……申し訳ございません。遅れを取りました」
「良い。お前の奮闘は確と此の目に焼き付けた。今は安心して休め。後は任せるが良い」
190余りの身長に其れを覆い隠せるほどの巨大な五角形の盾。身に纏う鎧は鈍い光を仄かに放ち、随所に金の刺繍が施されている。右手には両手剣を持ち、軽々と振り回す。兜から垣間見得る其の相貌は悲哀に染まり、悲壮感が漂う雄叫びによってより一層歪んで見えた。
此処の頭領のようだ。他とは一線を画す強さを感じる。
頭領は警戒している跳鳥目掛けて突進した。地面が爆ぜる程の脚力によるシールドバッシュを受けた跳鳥は、突き飛ばされ地に転がった。仇を取らんとする頭領は跳鳥に剣を振り下ろした。
凶刃が跳鳥を捉えようとした時、走りよった私は錫杖でもって其の刃を弾いた。相当な力を込めた筈だが其の剣は折れず、曲がらず、皹も無く健在であった。
───下がれ。貴殿よ、下がれ。貴殿では此の者に勝てん。当方が相手をする。
其の跳鳥は後退り盾を構えている頭領を憎らしげに睨み付け、そして悔しげな顔に変えて引き下がった。勝てない事など承知の上での事だったのだろう。
「……貴様、体が小さいな。しかし力は強く、其の奇妙な武具。ドゥリン族の者か?」
───否。当方はドゥリン族の出ではない。当方は未だ幼き身故、肢体が小さいだけの事よ。産まれ育った地にまともな糧が無く、成長が著しく低下しているのも要因であろう。
「ふむ。して貴様、齢は幾つだ」
───当方は誕生より十周は廻った。おそらく十二か其処らだ。
「なんと! 其の齢にして其の強さを得たと申すか! 才能とは実に恐ろしいものよ」
───否。断じて否だ。此の力は所詮借り物に過ぎん。当方の物に在らず、また誰の物でもない。
「其れこそ否よ。借り物で在ろうが、所持するのは貴様、行使するも貴様である。当然責任と誇りを持って事を起こすべきであろう。力有るものは其れを行う義務と権利が有ると思うのだが、違うかね?」
───実に輝かしい信条よ。然れど当方は既に汚泥にまみれ、其の輝きは剰りにも綺麗で在りすぎる。身に過ぎた物を持って燃えたくは無い。
「左様か。為れば遠慮は要らぬな。さあ、此処からは戦い有るのみよ! カジミエーシュの騎士が一族、アンドロス家当主として貴様に物申す。貴様は跳鳥どもに逆境を破る力を与え、扇動し、我が一族を壊滅に追いやった。其の手腕、見事なり! 故に貴様をアンドロス家に降りかかる脅威と見なし打ち倒そうではないか。
我が名はフォルティナ! 勇敢なる騎士、フォルティナ・アンドロスだ!! 災いを遮断する盾として、敵を屠る剣として、貴様と相見えよう。さあ、貴様も名乗りを上げよ」
───……当方の名は。名は、ロデーレ。前進する者、ロデーレだ。当方に立ちはだかるあらゆる艱難あらゆる障害、其の全てを打ち砕きて、当方、前進しよう。
「ロデーレ、ロデーレと申すか。其の名、確と覚えたぞ。では始めようか」
私も、騎士も口を閉ざした。場が整ったのだ。私は戦い抜く事を決意し、騎士はほんの僅かな疲れを癒した。
そして戦いが始まった。跳鳥も倒れ伏す奴らも此の戦いを固唾を飲んで眺めていた。
此の戦いは、此度の旅路において最も強靭で偉大なる男との戦いだ。私の此れからの人生においても、此の戦いほど苛烈を極めることは無いであろう。
そう、此の戦いが私の旅路の転換点であった。