41匹の愉快な異形種達   作:ちくわ部

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段々短くなってる・・・。


愉快な探査

 

「これは・・・・・・素晴らしいという言葉で片付けられない。まるで宝石みたいだ」

 

 冷たい風がモモンガの骨の体の中を吹き抜ける。中々に不思議な感覚である。

 現在モモンガがいるのはナザリック地下大墳墓のはるか上空。地上から数百メートル上で、彼らは月と無数に輝く星々と、それらによって照らされる自然豊かな大地とを眺めていた。

 

「本当です。私の貧相な語彙力ではこれを表現できる気がしませんよ」

 

「うーん。宝石、宝石・・・宝石の眠る巨大鉱脈なんてどうですかね!」

 

 モモンガの魔法によって一緒に宙に浮いているヘロヘロとデットレバーは言う。

 

「空にある星を地下にある宝石に例えるのは中々いいですが、個人的には宝石箱の方がシンプルでいいです」

 

「デットレバーさんセンスない。モモンガさんの宝箱に一票」

 

「ええ〜」

 

「・・・・・お、見て下さいあれ。マーレとブルー・プラネットさんがナザリック隠すために地面動かしてますよ」

 

 地上へ目を向けると、地面が波のように草木を巻き込みながらうねりだし、2つの波がナザリックに向けて動き出すのが見えた。その場面だけ見れば、ナザリックが地中に引きずり込まれている様にも見えた。

 

「こういうの見ると魔法詠唱者(マジックキャスター)にすれば良かったって思うんですよね。面白そー」

 

 ゾンビの種族特性である膨大な体力を削り、攻撃力を増幅させる超近接特化型のガチ寄りロマンビルド構築をしたデットレバーが羨ましそうに呟く。

 それに続きヘロヘロは感嘆のため息を漏らしながら、この夜の景色の感想を口にする。

 

「それにしてもアンデッドではない私でも見えるほど地上が明るいなんて・・・・・本当に凄いですね」

 

「後でブルー・プラネットさんに、この景色の感想でも聞いてみましょうか?」

 

「勘弁してくださいよ。蘊蓄をただひたすら聞かされそうですが・・・・・でもこの夜空を見ながらだとしたら楽しそうですね」

 

 3人の話し声は冷たい風と共に星の広がる夜空へと消えていく。元の世界では見られない、この芸術的とまで思わせるような満天の星に、3人はまるで子供のように燥ぐ。

 

「月光が闇をかき消すように大地を照らす・・・・・狩りを始めるには良い夜だと思わないかい?」

 

 3人はの背後から声が聞こえる。その声の主は一瞬にして分かった。

 

「ああ、そうだな・・・ウルベルトさん」

 

 モモンガ達の後ろにはいつのまにか、夜空に溶け込むような黒いマントとシルクハットを身に付けた山羊の頭の悪魔ウルベルト・アレイン・オードルと、その後ろに控えるように赤いスーツを着た蛙のような顔の悪魔デミウルゴスがいた。デミウルゴスがカエルのような形態となっているのは、空を飛ぶための翼を生やすためであろう。

 モモンガは先程の会話がデミウルゴスに聞かれていないかと、内心緊張しながらもウルベルトの謎の掛け声に返答する。

 

「狩り、か・・・・・。獲物は?」

 

 先程とは打って変わってモモンガは落ち着いた口調で喋る。その声は重く、ナザリックの支配者としての威厳を感じさせる。

 

「・・・・・・ククク、モモンガさん、我々はアインズ・ウール・ゴウン。今まで欲しいものは全て手に入れてきました。41人揃った今の私たちには不可能はありません。つまりこの世の全ては狩られるもの・・・そう、全てが獲物と言っても過言ではないでしょう!!」

 

「な、成る程!流石は至高の御方々・・・!」

 

「う、うむ。そうだな・・・・・」

(流石に過言だろ!くそ、聞き返さなければよかった!デミウルゴスも目をキラキラさせちゃってるし!ヘロヘロさんとデットレバーさんも頷かないで否定してよ!!)

 

 モモンガはウルベルトがその場のノリで適当に言っている事を瞬時に見抜く。モモンガへの返答に空いた少し間がウルベルトは何も考えていない事を物語っていた。

 そこで、モモンガはふと懐かしい記憶が蘇る。

 

「世界征服・・・か」

 

 その言葉を聞いたデミウルゴスは、ハッとモモンガに顔を向ける。しかし、ギルドメンバーの後ろに添え寄るようにいたデミウルゴスの反応に四人は気づくことはなかった。

 

「懐かしい思い出ですね。確か私とベルリバーさんと・・・」

 

「るし★ふぁーさんじゃなかったっけ?結局ユグドラシルの征服なんてできるどころかいまだに未知が残ったままでしたけどね」

 

 ヘロヘロの言葉に四人は声を高らかにして笑う。その笑い声は明るく輝く星が広がる夜の空へと消え去る。

 

「この四十一人が揃った今。不可能に思えなくもないんじゃないですか?」

 

「ははっ、やるならもちろん私も着いていきますよ、ギルドマスター」

 

「ふ、ふふふ・・・まあ、そこまで焦る必要はない。いずれまた、な」

 

 まだこの世界にどのような存在がいるか確認されていない中この発言は危険である。もはや今ここに、この場のの空気に流されていない人は自分しかいないと理解したモモンガは咄嗟に話題を変える。

 

「あー、ウルベルトさんも外を見に来たんですか?」

 

「正確にはナザリックが隠れているかどうか確認するためですね。みなさんから見てどうでしょう?」

 

 ナザリックの周りにもダミーとなる盛り上がりがあることから、モモンガとしては中々良い具合ではないかと感じた。

 そしてナザリック付近に目をやると一際白く目立つ服装を纏ったブルー・プラネットがマーレと共に、こちらに向かって一生懸命大きく手を振っていた。

 

「・・・・・まだ作業の途中だが良い仕事ぶりだな。ところで周囲の警戒はどうなっている?」

 

「それにつきましては心配はございません。ぷにっと萌え様の指揮の下、現在ぬーぼー様の遠隔での監視と、現地でシモベが周囲の警戒を行なっております」

 

 索敵に特化したギルドメンバーのぬーぼーと共に、指揮に特化したぷにっと萌えが警戒を行なっているのであれば安心である。

 地上にいる二人の陣中見舞いにでも行こうかと考えながら、モモンガは地上で働いているシモベやメンバーに感化されたのか、心の中に普段抱かないような働きたいという気持ちが芽生えていることに気付く。

 

「・・・さて、私も一仕事するとしよう」

 

「モモンガ様、仕事の時間はもう終わったのでは?」

 

 現在ギルドメンバーは朝、昼、夜の8時間交替制で仕事を行なっている。これはヘロヘロもビックリな超ホワイト企業の仕事時間である。

 モモンガはその三つの内、午後4時から0時までの夜の部であるため、午前1時である今働くというのは、元の世界(リアル)で数え切れないほどやり慣れた残業に入る。ただ、1年前のユグドラシルの様に一人きりの状態よりも余裕が大きいため、そこまで大変ではない。もしこれを一人でこなしていたと考えると、とてもではないが忙しすぎてナザリックの管理は手が回らなかっただろう。

 反射的にモモンガはよく上司が言っていた台詞を口にする。

 

「仕事は定時を過ぎてからが本番だからな。それに配下が働いているのに上司が休んでいるなど言語道断だ」

 

 モモンガは気づかなかったが、ヘロヘロはその言葉を聞き、ゼリーの様にぶるりと震わせた。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 モモンガは複数のギルドメンバーと共に仕事をしていた。

  遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)という、鏡の中にとある地点の景色を映し出すアイテムをを使用した遠隔での地上探査である。本来は周囲の警戒と共にぬーぼーが行う仕事であったが、一人では手が足りないということで、手の空いているモモンガとその数名のメンバーが手伝いに来たのだ。

 外の景色が観れるということで実際には手伝おうと声を上げた人数は多かったのだが、流石に多すぎるということで、一番最初に手伝おうとしたモモンガ、教育者として知識が豊富なやまいこと死獣天朱雀、そして魔法を使うタンク型の職業構築で遠隔での魔法攻撃に対応できるばりあぶる・たりすまんが抜擢された。

 椅子に座りながら鏡を注視しながら手を忙しなく動かす様は、側から見れば非常に滑稽である。後ろに控えるメイドはよく笑わないものだとモモンガが感心していると、やまいこが操作している横で 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)を見る死獣天朱雀が声を上げる。

 

「おっ、これは・・・・・どうかな?」

 

「出来た!位置を固定したまま視点を動かすの!」

 

 鏡を破壊する一歩手前まで苛立っていたやまいこが歓喜の声を上げると、後ろのメイド達から拍手が飛んでくる。

 上下前後左右の移動と視点の操作が可能となった今、

遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)の機能を熟知したと言っても過言ではない。

 

「これでようやく探査が進む・・・・・。いやー長かった」

 

 死獣天朱雀が安堵の声を漏らす。長かったと言っても、モモンガ一人でこれを行うのよりも時間が短いのは言うまでもない。

 ようやく地上探査に本腰を入れることができる様になると、今度は人工物や人間を探すことに着手する。

 

「人間発見!!」

 

 しばらくして、ばりあぶる・たりすまんが興奮しながら言う。

 皆して一つの鏡を覗き込むと、中には鎧を装着して乗馬した集団が野を駆け回っていたのを見ることができた。

 

「中世の騎士・・・といったところかな」

 

 盾を背中に腰に剣を下げ、顔を兜で覆うその姿はどこからどう見ても大昔の西洋の騎士である。

 

「戦争に向かうのかな?」

 

「それにしては少なすぎる。だが完全武装している事を考えると戦いに行く理由以外ない。もしや偵察・・・ナザリックがバレたか?この騎士団はナザリックからどの位置にいる?」

 

「ナザリックから11キロ、南西方向。・・・・・ん?村じゃないかこれ」

 

 モモンガの 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)で確認すると、確かに騎士団の向いている方向には森に隣接する形で村が見えた。

 

「あそこにあるのは麦畑かな?道具を見る限り文明は中世レベルとしか思えないね」

 

 死獣天朱雀はやまいこの 遠隔視の鏡(ミラー・オブ・リモートビューイング)を指差す。

 

「ナザリックが見つかった訳ではなさそう。向かう方向からしてこの村に行こうとしてるんじゃないかな」

 

「レベルの確認して良いっすかね」

 

 ぬーぼーの何百もの目がモモンガに向けられる。ユグドラシルでは表情が動かないため目玉も動くことはなく、特に思うところはなかったが、今よく見てみると中々グロテスクである。

 

「たりすまんさん、やまいこさん」

 

「あいよ」

「了解」

 

 モモンガは二人にに声をかけると、意図を汲み取ったのかぬーぼーのの後ろに立ち、複数の魔法を発動させる。

 

「ではお嬢様方、ここからは少々危ないことが起きるかもしれない。ご退出願おう」

 

 それに続き死獣天朱雀は戦闘能力が皆無である、一般メイド達を部屋から出る様に催促する。情報系魔法を使用した際、自動的に相手から発動されるカウンターを警戒してのことだ。

 メイド達は何か言いたげであったが、死獣天朱雀は有無を言わさず即座に転移の魔法を使用する。

 

「・・・・・もうこの場には我々以外誰も居ないな?」

 

「そうっすね。自分たち以外に周囲に誰も居ないっす」

 

 ぬーぼーに確認を取ったモモンガはふう、と一息つく。

 

「ただの村人相手にここまでする必要はないと思うんだけど」

 

「まぁ念のためですよ」

 

 ギルドメンバーのみとなった部屋で、モモンガはくたびれた様子で言う。どうやらアンデッドは肉体の疲労はないが、精神的な疲労はある様だ。

 

「無効化、カウンターなし。成功!それで肝心のレベルは・・・・・レベル1?」

 

「職業は?」

 

「ファーマー・・・農家っすね。うーん、最高でもレベル3。低いっすね。ユグドラシルプレイヤーではないことは確実だと思います」

 

「うーん、見て分かるような情報しかないね。それ以外には?」

 

「マジで何もない。ただの農村みたいっすね」

 

「で、どうしようかな」

 

 やまいこの一言を最後に、皆顔を見合わせながら各々のリアクションを窺う。しかし、その窺い方は遠慮しつつも誰かの発言を待っている様だった。雰囲気からして言わずとも一同同じ事を考えていることが分かる。

 

「・・・・では、村人達と接触してみるっていうのは?」

 

 モモンガの発言を皮切りに、メンバーが待っていましたと嬉々として口々に話し出す。

 

「ギルドマスターが言うなら仕方ない!」

「これは行くしかないっすね!」

「じゃあ行こう!《転移門(ゲート)》」

「レッツゴー!」

 

 部屋の中がしんと静まり返る。

 そこにはモモンガと宙に浮かぶ黒い空間《転移門(ゲート)》だけで、先程騒がしくしていた愉快なメンバーの姿は居なかった。

 

「・・・・・え?ええ!?こういうことが起きないようにした筈だったんだけど・・・人選を間違えたか・・・?」

 

 比較的まともな集団だからこそ、はっちゃけてしまったのかも知れない。モモンガは反省して《転移門(ゲート)》の奥にへと続く空間に足を運ぶ。

 

「・・・・・転移は成功。あれが村か」

 

 孤独にユグドラシルをプレイしていた半年前に渇望した、仲間との心躍る冒険がすぐ目の前に待ち受けているという確信を胸に抱きながら。

 

 

 





キャラクター設定

ヘロヘロ 種族:古き漆黒の粘体 異世界に転移によって、社会の歯車から解脱することができた元ブラック会社勤務の社畜。彼曰くナザリックでの仕事が少ないせいでとても落ち着かないらしい。働かないで過ごすという夢をほぼ叶えられた今、人生の殆どが仕事しかなかった彼は虚無感に苛まれている。

ブルー・プラネット 種族:スィドーラ 樹の見た目をした異形種。異世界転移後、ナザリック周辺を見渡した彼は歓喜した。そこには見渡す限り緑、緑、緑。理想郷がそこにあったからだ。
「自然最高!自然最高!」

ばりあぶる・たりすまん 種族:百足群 アフリカ付近のサバンナ民族がかぶってそうな仮面被ったキャラクターにしていたが、突然の15巻の公式情報の投下により変更された。元々タンク兼魔法詠唱者という尖ったビルドという設定だったが、百足群は盗賊系の職業という設定の追加でもっと尖ってしまった。ただ結果的に公式設定の“能力的に2流以下”と変わることはなかったのが不幸中の幸い。

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やっとキャラクター設定が書けた・・・。
番外編を除いたら10話目。長引いてしまいましたが、次こそカルネ村。
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