41匹の愉快な異形種達   作:ちくわ部

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はっぴばーすでーとぅーみー
時が経つのは早いですね。そしていつもより投稿も早い。良き。

それといつも誤字報告ありがとうございます。



愉快なハプニング

 

 特にこれといった特徴のない、簡素な柵で囲われた村の前に五人の異形の姿があった。家の造りはどれも同じ見た目で煉瓦でできていて、装飾が一切なく窓と扉しかない簡素な家が立ち並んでいる。

 

「罠、敵性反応ないっす」

 

「おっけ〜。で、どうしようか」

 

 呑気で危機感のない発言はやまいこのものだった。“とりあえずやってみよう”の精神を持つ彼女らしい発言だ。

 

「やっぱり何も考えてないじゃないですか・・・・・。といっても特に気をつけることもなさそうですけど」

 

 モモンガは村を見渡すと、柵の途切れた場所を見つける。看板が付いていることから入口であると考えられる。

 

「あれ、なんて書いてあるんでしょうね」

 

「ようこそコマンスマン村へ、だね」

 

「おお!流石教授!」

「やっぱ天才っすね!」

 

「嘘、分かんない」

 

「・・・・・・一瞬信じた俺が馬鹿だった。つーか、言葉が通じない可能性もあるのか。結構やばいんじゃね?」

 

 村の入り口目前にして、このアインズ・ウール・ゴウンの力を持ってしても攻略できそうにない障害が立ちはだかった。そう、言語の壁である。一応、外国人であるギルドメンバーのウィッシュⅢならば可能性はあるが、今ここにいるメンバーで他言語に強い者はいない。

 

「見たことない文字、ボクも分かんないや。まあ、言葉が伝わらなくてもジェスチャーとかでどうにかなるか」

 

「おお・・・・・流石やまいこさん」

「やっぱ天才(脳筋)っすね・・・」

 

「うーん、案外何とかなりそうなのが凄いところ・・・」

 

 未だ村の入り口で屯っていると、家の影から1人の娘が現れた。質素な服を着て脇に薪を抱えている。

 

「お、第一村人発見っすね。声かけましょうか」

 

「ん?待って下さい何かーー・・・」

 

 モモンガが何かに気づき言いかけるが、それを覆い被せるように悲鳴が響き渡る。

 

「・・・・・耳が遠くなったのかな。今きゃーばけものー、って言ったかい?」

 

「・・・・・どうやら言語は同じみたい。ジェスチャーの必要は無さそうだね」

 

 モモンガ達は現在人間ではないということを失念していた。

 骸骨、蟲、目だらけの怪物。誰がどう見ても化け物である。

 こうして最悪な形で村人との接触を果たすついでに、言葉が通じることが分かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーー成る程、魔法詠唱者(マジック・キャスター)の方々でしたか」

 

「この姿も魔法で変化させたものでして・・・お騒がせして申し訳ありません」

 

 電化製品のような文明を感じさせることがない、室外から見た時に得られる情報と同じ貧しさを感じる部屋に、モモンガと村長は向かい合って座っていた。モモンガ以外のメンバーは図体が比較的大きく、家に入ると狭くなるということで今は一緒にいない。

 

 結果から言えばモモンガ達が化け物であるという誤解(?)を解くことができた。筋描きとしては、モモンガ達は魔法研究者であり最近外に出てきたばかりで、外の環境を探るために探索しに来た、というものだ。

 モモンガ達の見た目に関しては、モンスター避けに魔法で化け物の姿に変えたと説明しており、その見た目と理知的な発言のギャップが相まって村人達は素直に納得してくれた。

 今はモモンガはマスクとガントレットを装着し、アンデットの身体的特徴である骨を隠している。

 

「村長殿は私以外の魔法詠唱者(マジック・キャスター)をご存知で?」

 

「ええ、あそこの森に薬草を採取しに来る少年がいましてねぇ。その子が魔法詠唱者(マジック・キャスター)なんですよ」

 

「ほう、何処からいらっしゃるので?」

 

「エ・ランテルからですね。祖母と薬師を営んでいるそうでね、詳しくは先程お会いした娘、エンリが詳しいかと」

 

(どうやらこの世界でも魔法詠唱者(マジック・キャスター)は身近な存在みたいだ。もし村人が魔法詠唱者(マジック・キャスター)を知らなかったら、こううまくいきはしなかっただろうな)

 

 モモンガは心の中で村に通う魔法詠唱者(マジック・キャスター)の少年に感謝しながら、会話の中に出た一つの単語に疑問を抱く。

 

「エ・ランテル・・・・・?」

 

 モモンガの独り言に等しいほどの小さな声を村長は聞き取り、それを理解したのか柔らかい笑みを浮かべる。

 

「そうでしたな。周辺地理も詳しくないということでよろしいでしょうか?」

 

「ええ、お恥ずかしながら。教えていただけますか?」

 

「勿論ですとも。この程度のことであれば」

 

 その言葉を聞いてモモンガは仮面の下でほくそ笑む。

 村長の“この程度のこと”というのは恐らく事実である。情報が欲しいというモモンガたちからしたら非常に重要な情報を、対価なしに無償で提供してくれたのは非常に有難い。

 

「まずはリ・エスティーゼ王国ですね。領内にはこの村と、先ほど言ったエ・ランテルという都市がーー・・・」

 

『モモンガさん、騎士の集団が近くに来ています』

 

 ぬーぼーからの《伝言(メッセージ)》である。何と悪いタイミングだ。

 この《伝言(メッセージ)》の魔法で届けられる声は送られた本人にしか聞こえないため、今ここで返事をすると村長には不自然に見えてしまう。

 

「あー、村長殿。書く物は無いでしょうか?」

 

「はい?書く物・・・ですか?」

 

 ここでモモンガは村長との会話をしつつ、《伝言(メッセージ)》への返信をする事にした。

 

「今、周辺地理の情報を教えていただいていますが、図にして描いていただければ言葉よりも詳細に分かると思いまして」

 

「生憎、羊皮紙のようなものはこの村にはありませんね。なにせ高価なものでして」

 

 どうやらこの村には羊皮紙がないようだ。そうなれば、技術的にもまだない可能性はあるが、間接的に紙も存在しないという事にもなる。

 

「そうですか。確か仲間が持っていたような・・・・・まあ、無いのであれば大丈夫です。遮って申し訳ない。続けて」

 

『・・・了解です。今行きます』

 

 モモンガは一息つく。どうやらぬーぼーにはこちらの意図は伝わったようだ。

 しかし、接近する騎士団がいるのでまだ気は抜けない。

 モモンガは必死に地理を頭に叩き込みつつ、騎士団の対処に頭を悩ませながら、ぬーぼーが来るのを待った。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 村の中央に位置する広場で、やまいこと死獣天朱雀、ぬーぼーは自らの存在を誇示するかのように佇んでいた。

 そこは広場というのに相応しく、非常に開けた場所であった。その為かよく家の窓や影から此方を伺う視線が飛んでくる。

 

「モモンガさんに任せちゃって大丈夫だったのかな」

 

 やまいこは静かに言う。

 

「モモンガさんなら大丈夫だと思うんですけど・・・そんなに心配っすか?」

 

「そういう意味じゃなくってさ。何だか任せっきりな感じがして居心地が悪いなー、って」

 

「そこに関しても私も思ったよ。ただ今回の場合は適材適所、彼が交渉に向いてるだろうね。なにせこのアインズ・ウール・ゴウンという魑魅魍魎の集まりを求められる力があるからね」

 

「誰が魑魅魍魎だ」

 

「あだっ!やまいこくん、もう少し老人を労ってだねぇ・・・」

 

「もはやその体は老人のものであるか分かんないっすけどね」

 

 死獣天朱雀の背中にやまいこの巨拳が叩き込まれる。強いパンチであったが彼の身体にはダメージはなさそうであった。

 

「さて、我々は我々で出来ることをしよう」

 

「出来ることって?」

 

 そう言うと死獣天朱雀がある一点を見つめる。やまいこもそれに続いて目をやると、そこには家の角から頭を出して此方を覗き込む子供たちがいた。

 

「やあ君たち少し良いかね?」

 

「あっ、こっちに気づいたよ!」

「ボクらに話しかけてる。ど、どうしよう・・・」

「お父に怪しい人に近づいたらダメだって言われたよ?」

「ネム・・・・・?ネム!?」

 

 死獣天朱雀が子供の集団に呼びかけると“ネム”と呼ばれる少女が近づいてきた。

 

「こんにちは。お名前は?」

 

「こんにちは!わたしはネム。ネム・エモットです!」

 

 年齢は10歳ほど。活発そうな少女が元気よく挨拶を返す。

 

「エモット?エモット・・・。ああ、もしかして姉がいたりしないかい?」

 

 死獣天朱雀は第一村人である村娘の名前を思い出した。

 

「そう!お姉ちゃんが良い人だよー、って言ってた!」

 

 どうやら彼女の姉が我々のことを広めてくれたらしい。有難い限りである。

 

「それはそれは、後でお礼を言ってくれるかい?」

 

「うん!ねえねえ、おじさん。私もモンスターになれるの?」

 

 この少女、中々の勇気の持ち主である。若しくは幼さ故に危機感が足りないか、であるが。

しかし、事前に姉から我々の事を知らされてたとはいえ、化け物に声を掛けるなどできたものではない。

 

「魔法が使えれば、だけどね」

 

 死獣天朱雀が指をパチンと鳴らすと、指の先から碧色の火の玉が浮かび上がる。

 

「わぁー、すごい!わたしに魔法教えて!」

「ずるい!オレにも!」

「ボクも!」

 

 ネムに続き、次々に子供たちが集まってくる。

 流石子供というべきか、順応性がとても高い。

 

「うーん、魔法を教えるのは難しいかな。代わりと言っては何だけど・・・」

 

 そう言い、死獣天朱雀は指先の火をそっと子供の掌に置く。それは風が吹いても揺られず、常に空に向かって伸び上がっていた。

 子供はびっくりした反応を示すが、次に驚いた声を上げる。

 

「熱くない!」

「ふしぎー」

 

 子供たちと戯れる死獣天朱雀を見ながらやまいこを疑問を浮かべる。彼の言った“出来ること”とはいったい何なのか。見たところ、子供と遊んでいるようにしか見えないがーー・・・。

 

「おじさん!その変身してるモンスターの姿って『森の賢王』?」

 

「『森の賢王』・・・?」

 

 『森の賢王』と聞いて死獣天朱雀の頭の中に1匹の猿が思い浮かぶ。

 そして、少年の疑問の声に対して次々に賛同の声が上がる。

 

「ほんとだ。尻尾が蛇だ」

「魔法も使ってるし、それに賢そう!」

「でも銀色の毛じゃないよー?」

 

 話を詳しく聞いてみると、どうやら村の近くの森、トブの大森林には『森の賢王』と呼ばれるモンスターがいるようだ。森の奥で生活をしているため目撃例はほぼ無いが、村の周辺を縄張りとしている為モンスターが村を襲わない事が存在することの証明になっている。

 

「成る程、それで森の近くにも拘らず、モンスターへの対策が仕込まれていないんだな。面白い。・・・そうだ、おじさんにさっきの森の賢王のような話を教えてくれないかい?そうすれば他にも幾つか魔法を見せてあげよう」

 

「ほんとー?昔話でも良いの?」

「やった、魔法だ!」

 

 気づけば死獣天朱雀は大勢の子供達に囲まれていた。それに便乗するように大人達も興味を持ったのか、隠れたりせず姿を見せ始める。

 

「嗚呼、そうだとも。私達はずーっと研究をしていたからね。魔法以外の事にはあまり詳しくないんだ。あのお姉さん達にも教えてくれないかい?もしかしたら私が使えない魔法を見せてくれるかもしれないよ」

 

 突然二人に話題が振られる。

 ここまできてようやくやまいこは、死獣天朱雀の言っていた“出来ること”を理解した。

 

(・・・・・そういうことね。子供たちを介して村の信頼を得ながら、情報収集する。それが出来ることね。ならばここはボクの得意分野!子供の御守りならお任せあれ!)

 

 やまいこが学校教職員としての見せ場を作ろうと気合を入れると、次の瞬間ぬーぼーに耳打ちをされる。

 

「・・・騎士の集団が近づいてきます。モモンガさんは村長とお話し中みたいなんで、相談するために村長の家に行きます」

 

「・・・了解」

 

 この子供の数に対して情報収集役が1人欠けたのは少し痛い。だがそれ以上に騎士の集団をどうにかするのは大切だ。

 それにしても村に着いた時のモンスターが来たと間違われる(?)事態で、騎士たちの集団のことをすっかり忘れていた。だが、村ではどうにかなったのだ。騎士たちがどうにかならない道理がない。多分大丈夫である。

 

 騎士たちをどうするか考えていると、やまいこの袖が引っ張られるのを感じる。

 

「おねーさん、ドラゴンになれる?」

 

 下を向くと小さな可愛らしい女の子がいた。横には兄と思われる、年上の男の子も一緒にいた。

 ドラゴンになる、というワードでやまいこの中にとあるギルドメンバーのことが頭に思い浮かぶ。

 

「ボ・・・私は出来ないけど知り合いになれる人がいるよ。真っ赤なドラゴンでね、火も吹けるんだ」

 

 膝を曲げて、目線を同じ高さにし女の子に語りかける。

 やまいこもモモンガと同じように仮面をつけているため、半魔巨人(ネフィリム)の醜悪な顔を見られることは無い。

 その言葉を聞いた女の子は目を輝かせる。

 

「やっぱり!居るってお兄ちゃん!」

 

「ええ〜・・・。でもドラゴンになれるお姫様は流石に居ねーって」

 

「ドラゴンが好きなのかな?」

 

 この世界では女の子もドラゴンのようなカッコいいものが好きなのだろうか。やまいこそう思い、疑問を口にする。

 

「いや・・・。どこかの国にドラゴンのお姫様が居るってこいつが聞いたって。確か竜王国とかいう・・・」

 

「へぇーそれは気になるなぁ。お話聞かせてくれる?」

 

「うん、良いよ!」

 





次回、殺戮の始まり(内容は決めていない)
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