41匹の愉快な異形種達   作:ちくわ部

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番外編です。

これがエタルる感覚・・・・・・失踪か。なるほどなるほど!しかし失踪中でも思考は冷静であり、行動に支障は・・・

あります。あったので書きました。
リハビリ用ですが予想以上に長く(蛇足に)なり後編があります。ある予定です。


番外編
世界の理を超越し者達


 

 

 ときはユグドラシル全盛期。

 世界規模で見ても大きく広まりつつあるこのゲームは、リリースしてから安定した人気を誇っていた。

 しかしその人気があるせいか、人気オンラインゲームの宿命とも言えるとある問題が増え、早くもユグドラシル崩壊の危機が訪れようとしていた。

 

 

 

 ナザリック地下第墳墓、第九階層のギルドメンバーの手によって作られたカジノ風の娯楽施設。そこにはその名の通り、さまざまな娯楽のためのアイテムやゲームのためのテーブルや機械が設置されている。

 

「ほいさっ!」

 

 可愛らしい掛け声の後に緑のマットが敷かれたビリヤードのテーブルの上で、カツンとボール同士がぶつかる音がする。

 そして白いボールによって弾き飛ばされた、“3”と書かれたボールはゲーム内の物理演算エンジンにしたがって動き出し、白いボールの転がっていく方向の延長線上をゆっくりと進む。

 

「おー、いい線いってるじゃないですか」

 

「入れ入れ入れ入れ入れ!」

 

「そんなに力んでも変わんないよタマ美さん」

 

 

 カコンーー

 

 

 何度かレーンにぶつかりながらも、テーブルの端に六つ設置された穴の内の一つに入る。

 

「うーむ。良き良き」

 

 ギルドアインズ・ウール・ゴウンのメンバーの一人、頭の上に狐のような黄土色の毛の生えた尖った耳を生やし、着物を着た幼い少女のアバターのカノウ=タマ美は、手にしている突くための棒の先端を磨くように擦りながら満足げに頷く。

 彼はいわゆるネカマ。

 ユグドラシルは現実世界(リアル)の姿に囚われることなく自身の見た目、性別、種族を変えることが可能であるため、彼やギルドメンバーのクロリ・ディウム・ロイ子ように性別を変える者も少なくない。

 

「おっといけない!これはまずいですね。これではタマ美さんのクエストを先に手伝うことに・・・・」

 

 純白に輝く鎧を身につけた聖騎士、たっち・みーが顎に手を当てながら困ったように言う。

しかし、彼の言葉からはどこか余裕が透けて見えていた。タマ美が7点。たっち・みーが5点、と2点差がつけられている中テーブルの上にあるボールの数は3つ。このままお互い球を一つずつ入れるとなるとたっち・みーが負けることになる。

 

「ふふーん。降参してもいいのだよ?たっちくん」

 

 タマ美は羽のように大きな袖をはためかせ、たっち・みーに指をさして煽るように言う。

 

「いやー、何かハンデでもいただけませんかねー」

 

 たっち・みーがそう呟き、テーブルに向かって棒を構えて軌道を計算するためにボールを弾く真似をする。

 

「勝負をしようと言ったのはキミじゃないか〜もう。まぁ、ハンデじゃないけど君が勝ったら追加で10個くらいクエスト手伝ってあげないこともないけどねー」

 

「あ、タマ美さんやめた方がー・・・・・・」

 

 モモンガがタマ美へ忠告する暇もなく、たっち・みーが棒を勢いよく突き出すと、手元の白いボールから一つ目のボールへ。そして他のボールへと連鎖するようにぶつかる。

 そして最終的にはー・・・・・。

 

 

 カコン、カコン、カコンーー

 

 

 白いボールを残し、全てのボールがあっという間に穴に吸い込まれていく。

 

「で?10個クエストがなんですか?」

 

「え?・・・・・ふ、不正だー!!チートだ、チート!卑怯者ー!!」

 

 タマ美は地面に倒れ、駄々をこねる子供のように手足をばたつかせながら抗議する。

 

 戦闘は始まる前に終わっている。

 たっち・みーがビリヤードに誘ったのも、この打開の難しい状況になりタマ美を調子に乗らせるのも全て彼が仕組んだもの・・・かもしれない。

 

「はいはい。負けた人は皆んなそう言いますよ」

 

「い、いやじゃー!無心でただひたすらイベントクエストを消化するなんていやじゃー!やりとうない!」

 

「あのですねぇ・・・。一定の期間しか受けることのできないイベントクエストに対して、タマ美さんの“蓬莱の玉の枝”の入手クエストはいつでもできるんですよ?以前のイベントクエストをほったらかしにして、クエスト期間終了後にギャーギャー言ってたの誰でしたっけ?」

 

「・・・・・・あー!あー!聞こえないー!!」

 

 タマ美が頭の上に生えている耳ではなく人間の耳の方を押さえながら言った。

 

 

 騒いでいる2人を横目にモモンガが苦笑していると、メタリックな白を基調としてつなぎ目から暗い赤色の光を発するSF風の重厚感のあるスーツを全身に纏ったギルドメンバー。ガーネットがこちらを見て手招きをしているのが見える。

 どうやら自分を呼んでいるようだ。

 

「ちょいちょい。モモンガさんこれ見てよ」

 

「はいはい。どうしました?」

 

 ガーネットが目の前にあるコンソールを弄ると、モモンガの視界にガーネットと同じコンソールが現れる。

 見てみるとそこには現在行われている“イースター”のイベントのランキング表が掲載されていた。

 本イベントは兎型のモンスターの出現率及びレアアイテムのドロップ率の増加や、ステータスの強化が行われている。イベント期間内に兎型モンスターを倒し、ドロップする卵を集めると、卵の量に応じてポイントが増えていき、そのポイントを多く集めてギルド・個人の2つの部門でランキング上位に行けば豪華報酬がもらえるのだ。

 モモンガがコンソールへと目を移す。

 

 

======================================

 

 

No.1 Yggdrasil.com.M3571   61635P

No.2 obsolete.ch        56869P

No.3 蜷セ霈ゥ縺ッ逾槭〒縺ゅk.   54747P

No.4 TdhGxejCgCitl       51865P

No.5 Yggdrasil.com.Z0784   46427P

No.6 みずっちたんへ°口へ°口   31642P

No.7 ydsTV.@seetreaming   28437P

No.8 † 破壊神†しゔぁいぬ    23047P

 

======================================

 

「なんですかこれ!?」

 

 そこには合計入手ポイント5桁のゲーム廃人の名前が載っていた。

 

「イベント始まってまだ3日しか経ってませんよね?よくもまぁこんなにイースターエッグを集められましたね・・・」

 

 モモンガは腕を組みながら呟く。

 このゲームをそこそこやり込んでいるモモンガでさえ、獲得ポイント数ギリギリ4桁超えるほどポイントを保有しているが、それを凌駕するプレイヤー達にモモンガは驚きを隠せない。

 焦りながらランキングを下へとスクロールしていくと、次から次へと多くのポイントを持ったプレイヤー達が現れる。

 非常にまずい。やはり上位のギルド達が狩場のほとんどを独占したのか?まだイベントが開始してすぐだったのもあって気を抜きすぎたのかも知れない。このままでは上位入賞者限定アイテムが貰えなくなる可能性がー・・・。

 

「と、思うじゃん?これほとんどチーターなんだよね」

 

「へ?」

 

 ガーネットの回答に思考が一時停止する。

 

「チーター・・・ですか?」

 

「そう“Cheater”。動物の方じゃなくて、ゲームのプログラムとかを違法改造してるやつ。ちなみに動物の方のチーターって移動速度に極振りしたせいでスタミナと攻撃力が全くないらしいですよ。どこかの忍者さんみたいですね〜」

 

 ガーネットは流暢な発音でモモンガの疑問に答える。

 

「え!?それ本当ですか!?」

 

「本当じゃないですか?サバンナの動物は足の速い動物が多かったらしいですし、なんならチーターより少し遅いけどスタミナのある草食動物がたくさん生息していて、チーターもそこまで餌が獲れなかったとか」

 

「いえ、そっちではなくて・・・」

 

「わかってますって〜!で、違法改造者の話はマジ」

 

 今までおちゃらけたように喋っていたのが突然、嘘のように真剣な口調になる。

 このゲーム、ユグドラシルにおいてチーターを判別するのは、ユグドラシルの圧倒的な自由度の高さ故に非常に難しい。仮に宙を舞い、相手に全ての攻撃を自動で当て、姿を完全に消すチートが存在したとしても、ユグドラシルではそれ以上の戦闘が繰り広げられているため、魔法やスキルとチートの判別がつきにくいのだ。

 しかし裏を返せば、バレない程度のチートであれば一般プレイヤーとの差はほぼない。そのためユグドラシルで現れるチーターの数は今まで微々たるものであったがー・・・。

 

「見たんですよ。即死級の魔法の矢(マジック・アロー)を連続で四方八方にぶっ放してイースターエッグ集めたり、明らかにおかしい量の召喚モンスターを引き連れてプレイヤー狩りしてるのを」

 

「へ!?運営は一体何をしてるんですか!?」

 

「それがBANしても新しいアカウントを使って無限に湧いてくるらしくて、BANが追いつかないらしいです。それにチートで手に入れたアイテムをリアルマネーで売っている業者もいるって。誤BANしてしまうかもしれないので慎重になるのはわかりますが・・・・・どうにかして欲しいところです」

 

「リアルマネーで取引・・・・。わざわざ現金で違法に手に入れたアイテムを買う人もいるんですね。もしかしたら組織的にチートを使う業者が多いから全体的にチーターが増えたって可能性も?」

 

「おお、考えたことなかった。ランキングにも似た名前が多いですからね、十分あり得ますよ」

 

 実際にランキングには取引をするサイトへと誘導する名前や業者名の名前が多く掲載されている。つまり、ランキング上位のほとんどが商業目的のチーターなのだ。

 

「まぁ、流石にこんな大ごとになれば運営も大きく出るでしょ。そこまで心配する必要もないよモモンガさん。それより心配なのはこのチーターだらけのランキングに食らい付いている通常プレイヤー(変態ども)なんですけどね。うわ、この人前回も上位に食い込んでたよ。頭おかしいだろ・・・・・」

 

 ドン引きしながらガーネットはコンソールを操作する。

 すると、たっち・みーがうつ伏せになっていじけているタマ美を引きずり、こちらに話しかける。

 

「モモンガさん、ガーネットさん。こちらも話が一区切りしたんですがどうでしょう。そろそろイベントクエストに行きませんか?」

 

「いいですよー」

 

「全然オッケー!」

 

 モモンガの隣で準備万端のガーネットが、長い銃身に時折稲妻のエフェクトが走る白いスナイパーライフルを担ぎ上げて返事をする。

 

「さて、現地でタブラさんと教授ー・・・・・死獣天朱雀さんが待っているそうなので早く行きましょうか。ほらっ、いつまでもいじけてないで立ってください」

 

 たっち・みーがタマ美の着ている着物の襟を掴み、首根っこ掴まれた猫のようにぷらんぷらんとぶら下げて立とうとさせる。その子供を扱うような仕草はどこか手慣れた雰囲気を感じた。

 

「やーん!パパやめて〜娘になんてことするの〜」

 

「うちは娘にお父さんと呼ぶようにさせていますので。はぁ、娘が初めて喋った言葉、昨日のことのように覚えてますよ。そう、あれは仕事帰りのー・・・・・」

 

「「「あっ・・・」」」

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「キョージュ、Mr(ミスター).タブラ?日本人は時間にシヴィアであるテ聞きましたガ・・・・・」

 

 草の形をした緑色のクリスタルが一面に敷かれた文字通り宝石の草原で、悪魔の石像のようなアバターの男、ウィッシュⅢが訛りのある日本語で二人の異形種に話かける。

 彼の一部苔むしたコウモリのような翼や、頭に生える片方欠けた2本の角など精巧な作りから、非常に手の込んだアバターということがわかる。もし仮に動かず遺跡にいたとしてもプレイヤーに気づかれることはないと思えるほどだ。

 

「むしろ逆ですよ。例えば仕事は毎日3時間前出勤は常識、残業はほぼ無限・・・・・。労働時間12時間越えを果たしてシビアと言えるのか・・・。ふぅ、考えるだけで胃が痛くなってきました」

 

 頭にタコをくっつけたような化け物、タブラ・スマラグディナはお腹をさすりながら呟く。いつもクールな彼とは裏腹に暗い感情の篭った声だ。

 

「ふふっ。助手だった頃が懐かしいですねぇ。今はもう歳ですし、立場も立場なのでなので無理はできないですけど」

 

 教授、もとい死獣天朱雀が苦笑しながら言う。

 

「oh・・・・なんて言うなれば良いのでしょうカ・・・・・・」

 

「お疲れ様とでも言っていただければそれで良いですよ」

 

 ウィッシュⅢの申し訳なさそうな言い方に、死獣天朱雀は笑いながら明るく返す。

 タブラはチラリと現在の時刻を見る。かれこれモモンガたちを待ってから30分ほどが経過していた。

 

「そういえば、最近著作権切れの良いテーブルゲームを見つけたんですよ。図書館置いてみたので、このまま来なければどうでしょう」

 

「良いですネ!ワタシ、アナログなゲームも大好きです」

 

「ふむ、面白そうじゃないか。だけど人数は足りているのかな?」

 

「おっと、うっかりしていた。確か計6人だったかなー・・・・・」

 

 

 3人から離れた場所に突如として楕円の黒い空間が現れる。《転移門(ゲート)》だ。

 現在タブラたちのいるこの宝石の草原は、そこそこプレイヤーに知られているモンスターの狩場である。現在の兎型モンスターを倒すことがメインとなっているイベントが行われている中、狩場に敵プレイヤーが現れて戦闘になることなど珍しくもない。

 《転移門(ゲート)》の出現に反応するように各々バフや支援魔法を使用して待ち伏せているとー・・・。

 

「敵性反応ナシ、生体反応3つあります。・・・・・ん?3つ?」

 

 黒い空間から現れたのは見慣れたのっぺりとした卵のようなヘルメットであった。ギルドメンバーのガーネットだ。

 それに続き和服の狐耳幼女、純白の騎士、最後に黒いローブに身を包んだ骸骨が《転移門(ゲート)》から姿を表す。

 

「あらま、ウィッシュさんもいたんだ」

 

「コンニチワー、今日仕事イケなくなたから暇で来ましタ!」

 

「おお、びっくりした。《伝言(メッセージ)》くらいよこして欲しいね。驚いて心臓が止まりそうだったよ」

 

「・・・・・教授。その冗談は流石になんというか・・・」

 

「くくくっ。私の大爆笑ジョークもまだまだ衰えていないようだね・・・・・。さて、今回の遅刻は誰のせいかな?」

 

 たっち・みーがおずおずと手を挙げ、泣き顔のアイコンを表示させながら前に出る。

 

「えー、遅れて申し訳ございません・・・。私の不徳の致す所でございます」

 

「おっとこれは意外、てっきりタマ美君のせいかと。気にすることは・・・まぁあるけどいいだろう」

 

「なーんで自分のせい!いや、甘いね!土下座だ土下座ぁ!」

 

「そうデス!let’s Japanese Dogenzaka(レッツ ジャパニーズ 土下座)!」 

 

 まるで仕返しをするかのようなカノウ=タマ美の悪ノリ発言に、ウィッシュⅢが便乗する。

 

「ふー、皆さんこれくらいにましょう。」

 

 頭を抱えながらモモンガが疲れたように言う。事実、ナザリックでのたっち・みーの娘の自慢(?)話と長時間の労働で疲労は感じているが。

 このようなやりとりはモモンガは何度も体験してきたが、やはり人をまとめるのは慣れないものである。

 

「本題に入りましょう。ここで出現するモンスターは水晶兎(クリスタルラビット)でしたっけ?」

 

「そうですね。それと稀に千槍棘兎(スピアニードル)も出現します。・・・・・ちなみに餡ころもっちもちさんから千槍棘兎(スピアニードル)捕獲せよとのお達しが。ドロップした卵のポイント高いんですけどねぇ」

 

 タブラは苦笑しながら言う。

 恐らく餡ころもっちもちは自然豊かなナザリックの第六階層にでも置いておこうと考えているのであろう。

 

「うーん、ではそれは出現したときにどうするか考えましょう。とりあえず今日はひたすら兎狩りで」

 

「あっ・・・なんだか自分、間違えて倒しちゃう気がしてきた」

 

「・・・・・Me too(同じく)

 

 わざとらしいタマ実の発言に再びウィッシュⅢが便乗する。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 きらきらと光るガラス細工のような木の葉が、風鈴のように心地よい音色を響かせながら揺れる。システム技術の都合上、ゲーム内で空気の流れとしての風を吹かせることはできないため、一定の周期毎に勝手に音を立てて揺れるその木々の影は太陽の光を透過させ、ステンドグラスのようなカラフルな影を作り出していた。

 

「あれ、今何ポイントだっけ」

 

 葉がクリスタルでできたさまざまな色の宝石樹のうち、空色の葉の樹からガーネットの声が聞こえる。しかし、そこには彼のトレードマークである無機質な白いスーツは見当たらない。

 

『え?なんか言った?』

 

「いやなんでも」

 

 このフィールドに出現する水晶兎(クリスタルラビット)は警戒心が強いという設定のもと敵感知距離が広く、見つけることもままならない。そのため、ガーネットはスキルやアイテムの力で気配や姿を消し、遠距離型の魔導銃を担いで長距離から索敵、狙撃を行っているのだ。

 

「そういえばタマ実さん今何ポイント?」

 

『えーっと、さんじゅう・・・いや、27ポイント!』

 

「・・・・・自分の分の卵、盗ってないですよね?」

 

『な゛、何をおっしゃっているのかわからないのう・・・・・』

 

 図星だったのか、焦るようにタマ実は返答する。

 タマ実はドロップ品の回収というガーネットの補佐をしている。兎型モンスターを倒すのが目的ではなくドロップしたイースターエッグが目的だからだ。

 

 魔導銃のスコープから覗いたガーネットの視界に一瞬白銀の毛玉が映る。すぐさま照準を毛玉へと移すとそこには艶やかな白い毛並みに、耳の代わりに生える2本の紫のクリスタルをもつ兎がいた。

 

「1匹発見」

 

『了解〜。どこ?』

 

「えーっと、そのまま20度右に向いてそのまま真っ直ぐ行って下さい。あ、あんまり近づくと気付かれるのでゆっくりきて下さいね」

 

『20度・・・、うい』

 

 視界右端のミニマップを見ながらタマ美に的確な指示を出し、タマ実が動き始めるのを確認する。ミニマップにはギルメンのプレイヤーアイコンと、周囲に他のプレイヤーを感知すると自動で攻撃する複数の《囮人形(デコイ)》のアイコンが複数。

 

 水晶兎(クリスタルラビット)とガーネットとの距離は80mと言った所だろうか。じっくりと時間をかけてある程度弾道を予測し、標準をやや上方に向けて獲物へ狙いを定める。

 パスッという空気の抜けたような音と共にガーネットの体に銃からの重い反動が体に通り抜ける・・・・・と、それにより樹の幹からずり落ちそうになるが辛うじてその場に留まる。

 

「おおぅ!ヤベェまた落ちそうになった」

 

『はぁ、なんで足場の悪い樹の上で狙撃しようとするのか・・・。あ、水晶兎(クリスタルラビット)は?」

 

 水晶兎(クリスタルラビット)のいた場所を再びスコープを除くと、楕円形の宝石の塊がキラキラとしたエフェクトを発しながら転がっているのを確認する。

 

「ちゃんと倒しました。回収よろでーす」

 

『あーもう面倒臭いよー!全く誰だよこんなイベント用意した奴まじでー・・・』

 

 ぶつくさ言いながらもタマ美は回収に向かう。

 ミニマップでタマ実の様子を観察していると、ガーネットはふと違和感を感じる。

 

(《囮人形(デコイ)》の数が減っている・・・・・?)

 

 《囮人形(デコイ)》はNPCには攻撃はせず基本プレイヤーに対して攻撃をするが、攻撃性能がとても低い。そのため、その名の通り逃げる際の囮や、今のようにプレイヤーと誤認させて《囮人形(デコイ)》を破壊させ、相手の居場所を探知するのに使用したりする。

 《囮人形(デコイ)》がNPCに対して攻撃しないようにNPCも《囮人形(デコイ)》を攻撃しない。つまりプレイヤー以外の要因で消えるようなことはないのだ。そして《囮人形(デコイ)》が少なくなっているということは即ちー・・・・・・。

 

「こちらアルファ部隊、こちらアルファ部隊。周囲にプレイヤーの可能性あり。繰り返す、周囲にプレイヤーの可能性あり」

 

『えー、こちらベータ・・・。ん?ベータじゃないんですか?だってアルファの次って・・・。本当ですか?ブラボーなんですね。こちらブラボー部隊、周囲にプレイヤーの可能性了解。念のため集合しましょう』

 

「こちらアルファ部隊、集合了解」

 

『こちらから直接たっちさん達ー・・・・・チャーリー部隊にも言っておきます。ご武運を』

 

(やはりモモンガさんは理解(わか)っていらっしゃる)

 

 ガーネットがやり切ったように《伝言(メッセージ)》を切る。ちなみにギルドの女性陣にこれをやったところ、なんとも言えない空気が流れた。後で女性陣の一人の餡ころもっちもちさんにとても気を使われ、もっと気分が落ち込んだのは言うまでもない。

 

「さて、タマ美さんを呼ぶかー」

 

 先程のノリの余韻に浸りながらも、再び《伝言(メッセージ)》を使用する。

 電子的なコール音が聞こえる。しかしタマ実は一向に応答することはない。

 おかしいと首を傾げながらふとミニマップを見ると、そこには少し前まであったはずのタマ美のプレイヤーアイコンがそこにはなかった。

 

 




ちなみに本編も長くなり、蛇足かどうか迷った挙句ほぼ一年・・・。
転移しないでエタったオバロ二次ってあるのか・・・?
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