41匹の愉快な異形種達   作:ちくわ部

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番外編です。
今更!?と思いながらお読みください。


死なる夜

 

 

 

 

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 《参加者募集中》苦離栖魔栖(クリスマス)パーティー

 

・参加条件:リア充以外。種族、レベル、ギルド問いません

・開催地:リア充の蔓延る場所全て

・開催日:12月24〜25日

・リア充共にプレゼント()を届けましょう♡

・参加者は《嫉妬する者たちのマスク》をぜひ御着用下さい

 

 情報共有はここで→ https://Yggdrathread.jp.

 

              2129/12/05

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「居たぞ!リア充だっ!」

 

 薄暗い森の中に男の声が響き渡る。その声は興奮しているのか上擦っていた。それを聞きつけた複数の人影が声の元に集まり、スキルと魔法がその場に撃ち込まれる。

 

「行かせるか!《大溶岩流(ストリーム・オブ・ラヴァ)》!!」

 

「《現断(リアリティ・スラッシュ)》・・・!」

 

「リア充爆発!《魔法最強化(マキシマイズマジック)連続爆裂(コンセクティブ・エクスプロージョン)》!」

 

「《劫火滅却》オラァ!!」

 

「死ねぇ!!《魔法最強化(マキシマイズマジック)(デス)》!クソが、外れた!!」

 

 攻撃の対象は明らかであった。二人で手を繋いでいる人間種のプレイヤーが、追っ手の攻撃から必死に逃げている。

 二人組の通った後は、地面にはクレーターや燃痕、周囲の木は薙ぎ倒され薄暗い森を照らすように燃えていた。

 

「《朱の(ヴァーミリオン)・・・・・。クソっ、転移で逃げられた!だが転移阻害が貼ってあるからそう遠くにはいない筈だ!探せぇ、探せえええ!!」

 

 今度は怒号に近い叫びが森の中に響き渡る。もはやそこは森とは呼べず、地獄という名が相応しい場所になってしまっていたが・・・。

 

 

 

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「ねぇ、あの森燃えてない?」

 

「ん?・・・本当だ。やけに明るいな」

 

 ユグドラシルの中でも絶景の一つと数えられる、ノーアトゥーンにある《セイレーンの水浴び場》と呼ばれる海岸。海に浮かぶロマンチックな雰囲気漂う洋風レストラン船の上で、一組のカップルから声が上がる。クリスマスの夜にぴったりな満天の星が輝く夜空に劣らないほどの明かりが、砂浜の奥に見える鬱蒼とした森に広がってゆく。

 

「・・・どんどん燃え移ってるね」

 

「何かの職業(クラス)でも取ろうとしてるんじゃないか?」

 

 何千をも超える職業(クラス)やスキルが存在するユグドラシルというゲームにおいて、一部の職業(クラス)、スキルの入手条件にオブジェクトの破壊がある。爆弾系のアイテムを使用して一定のオブジェクトを破壊すると、アイテムの爆破の威力が上がる爆弾魔(ボマー)職業(クラス)、街などのNPCの住居を大量に破壊すると破壊者(デストロイヤー)と様々だ。

 次に森の木々は何かに切られたようにゆっくりと倒されていく。それはまるで道を通るために踏み倒される道草のようであった。

 

「雰囲気台無しじゃねーか」

 

「・・・・・・ねぇ、こっちの方に近づいてない?」

 

「マジで?うーん、気のせいじゃね?」

 

「だってほら、段々こっちに曲がってるじゃん」

 

 男は目を凝らして見てみると、木々が倒されると共に明るくなる炎を見て納得する。その会話を聞いていた周りの客は口々に心配の声を漏らす。

 

「・・・ッ!来る!」

 

 黒い布で顔を隠した修道服一人の男が突然大声を出し、光輝く魔法陣を展開する。それはレストランの客の見ている浜辺の燃える森とは真逆の場所に向けられていた。

 そして次の瞬間レストランは、落下音と共に爆発の轟音と衝撃に包まれる。船の側面からの衝撃によりレストラン船は大きく傾いて揺れ、食器が乗客の悲鳴と共に音を立てて床に落ちてゆく。

 

「今のは何!?」

 

「大砲だ!また来るぞ!」

 

 再び弾が船体に着弾すると、今度は眩い閃光と煙に視界が奪われる。

 

「何だこれ!煙で何も見えねぇ!」

 

 着弾地から溢れ出るように煙が立ち上がる。その煙はとどまることを知らず、ついには甲板上を白煙で覆い尽くした。

 

「・・・・・《暴風(ワインドストーム)》」

 

 混乱が巻き起こるレストラン船の中、慌てふためく人々とは対照的に落ち着いた声で呪文が唱えられると、突風が吹き上がる。煙は激しく吹く風により船の外へと運び出され、視界は霧が晴れるように鮮明になる。それに続き乗客は反射的に突風の巻き起こった場所に目を向ける。そこには二つの人影が佇んでいた。

 

「ご機嫌良う」

 

 ニヒルな笑みを浮かべた模様の入った赤いマスク、通称“嫉妬マスク”を被った二人組のうち悪魔のアバターのウルベルト・アレイン・オードルが、役者のように右手を胸に添え左手を後ろにして深々とお辞儀をする。

 

「誰だテメェ!人が折角気持ちよく飯食ってたってのによぉ」

 

「マジそれ。冷めるんだけど」

 

「ふむ、挨拶ができないとは。所詮、性欲に駆られた愚かな人間どもか・・・。まぁ良い、我々は質問をしに来ただけだ。質問に答えてくれたらその命、助けてやろう」

 

 その発言を聞いた周囲の人間は困惑によって静かになる。突然の襲来に続き突然の発言。静寂に包まれるのも無理はなかろう。

 襲撃者2人に対して乗客は50人ほど。戦力差は圧倒的で一体何をするつもりなのか、いくら考えても疑問が増えるばかりである。

 

「《 白銀騎士槍 (シルバーランス)》!!」

 

 白い閃光がウルベルトに向かい射出される。先程大砲の攻撃を防いだ修道服のプレイヤーからだった。

 

「悪魔に銀属性攻撃を放つのは正解だ」

 

 しかし、その攻撃はウルベルトの体に当たる前に発散するように消えてゆく。

 

「だが覚えとくといい。弱点属性を無効化するのは当たり前だと言う事を」

 

 ウルベルトは攻撃したプレイヤーへ指を向けると次の瞬間、魔法陣から現れた複数の腕に修道服のプレイヤーは忽ち拘束される。その腕は痩せこけて青く、生気を感じさせなかった。

 

「おっと、逃げようなんて思わないほうがええで」

 

 仮面を被った二人組のもう一人、さーもんキングは転移用アイテムを片手に固まった男のパートナーに、青い稲妻の走る銀色の三叉の槍を首に突きつける。しかし、その様子を見ても逃げる機会を探ろうとしている者たちがいた。

 

「これでも理解できないとは・・・・・。愚か、全くもって愚かだ。仕方ない、あまり見せたくなかったのだがな」

 

 やれやれと首を振りながらウルベルトは、手を大きく掲げるとパチンと指を鳴らす。次の瞬間辺りは影に覆われる。

 魔法によって消えていたのか、船のすぐ側には見上げるほどの巨大な船。船体は黒く塗装し、 死の支配者(オーバーロード)のものと思われる頭骸骨が描かれた帆を掲げていた。一部、魔導式自動砲台が向いていることから、最初の攻撃はこれによるものであることが分かる。

 

「ククク、すでにここにいる全員の生殺与奪の権利は我々の手の中だ・・・・・。無駄な抵抗はやめたほうがいいぞ?」

 

 

 

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「ご苦労です」

 

 ウルベルト、さーもんキングが帰還したのを確認し、二人と同じように仮面をつけたモモンガが声を掛ける。

 

奴ら(リア充共)は主にはアルフヘイムの聖妖精の大樹付近、ミズガルズの虹の橋がかかった川の河口にいるとのこと」

 

「うーん、少し遅かったですね。アルフヘイムの大樹はもう既に切り倒されて巨大キャンプファイヤーと化してるそうです。確かミズガルズの場所についての情報は回っていなかったような・・・・・。これは同志(非リア)にも共有すべきですね」

 

 モモンガはコンソールを弄る素振りを見せた後、満足げに大きく頷く。

 

「準備完了です。それでアレは・・・・」

 

 モモンガ目線の先には先程襲撃したレストラン船。未だに船の損傷部分から煙が上がっている。

 

「“何もしなければ命は助ける”とか言っとらんだ?どーすんねん」

 

「はて・・・・・そんなこと言いましたっけ?」

 

「こいつマジか、恨まれて突然ぶっ殺されても知らんで。自分ただでさえ有名やのに」

 

 水掻きのついた手を頭に置いて呆れるさーもんキングに対し、モモンガはウキウキで言う。

 

「リア充にかける慈悲はない。そうですよね?ウルベルトさん」

 

「ククク・・・・・・そういうことです。では、超出力最大、全弾発射よーい!」

 

 音声認識により自動で大砲の向きが標的にへと変わると、即座に発射準備に移行する。

 大砲の先端には、大砲の見た目に合わないエネルギー体が浮かび上がり、少しずつ大きくなってゆく。

 

「これは私たちからのプレゼントです!!」

「「メリークルシミマス!!」」

 

「発射ッ!!」

 

 ウルベルトの声を最後に突如視界はホワイトアウトした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一体何が起こったん?」

 

 最初に聞こえたのはさーもんキングの声であった。

 

「・・・・・多分処理落ちですね」

 

「え?このゲームに処理落ちとかあるんか?」

 

「いやー、こんな長い時間の処理落ちは初めてですね」

 

 体の感覚を殆どゲーム上に移行するDMMO-RPGにおいて、処理落ちは滅多に起きないことである。処理落ちが起きるということは、一時的に脳内への情報が途切れることを表しているため、健康への被害が懸念されることから、処理落ちへの対策が講じられている。

 常に水という物体に物理演算が働くことで、常にサーバーへの負担の大きい海のワールドでやったのが悪かったのかとモモンガは考えていると、標的の船だけでなく海岸すら消し飛んでいることに気がつく。

 

「・・・・ウルベルトさん。あまり乗り物系アイテムに詳しくないんですがこの大砲の玉、一発どんぐらいします?」

 

「素材で作るタイプなので詳しくは分かりませんが・・・・・・1000万金貨辺りですかね」

 

 それが十何発ほど。それ相当の威力ではあったがーー

 

「流石にふざけすぎです」

 

「いや、モモンガさんも同罪やぞ」

 

 

 

 パーティー(殺戮)はまだ始まったばかりである。

 その日はいつにも増してユグドラシル内のフィールドが明るく、賑やかになっていたそうな。





処理落ちをオチにしようと思いましたがやめました。
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