41匹の愉快な異形種達   作:ちくわ部

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前回に比べて誤字脱字の確認が疎かになっています。
おかしな表現や、不自然な文の繋がり等がありましたら報告してくださると嬉しいです。


集まる運命の歯車

 ナザリック地下大墳墓の第九階層、ロイヤルスイート。

 広々とした通路の真紅の絨毯の上に、ふたつの異形の姿があった。

 

「本当に申し訳なくなってきますね・・・」

 

「いや、とんでもない!こっちも好きでやっていたので」

 

 久しぶりにユグドラシルにログインしたディス・タイニーは、一度部屋を整えるためにモモンガと共に自室へと向かっていた。そこでタイニーは自分の部屋のアイテムがどうなっているか聞いたのだ。

 

「別に装備少しぐらい売っても全然怒りませんよ?」

 

「念のためですよ。今のような」

 

 嬉しそうな声でモモンガは答える。

 いつのまにかタイニーの自室に着き、扉を開ける。内装は真っ黒な材木で覆われており、通路の純白の大理石とは真逆の雰囲気となっている。壁に大小はさまざまな時計がかかっていて、チクタクとそれぞれが違う音色を響かせながら同じリズムを刻んでいた。

 モモンガは床にはパズルのように組み合わせることが出来そうな形に丁寧に並べられているアイテムを見て聞く。

 

「作りかけですか?」

 

「そうですね。ログイン出来なくてほったらかしですよ。ごめんねー」

 

 そう言いながらアイテムを撫でる。よく見たらところどころ超レアアイテムが使われており、完成したらなかなかの性能になりそうだ。

 ふと思い出したようにタイニーは言う。

 

「そういえば、建御雷さんも武器製作を途中で終わったらしいですね」

 

「そうですね。それはまぁ、ライバルというか目標がいなくなったんですから仕方ないですよ」

 

「あぁー、それもそうですね・・・。」

 

 ギルメン最強を誇るたっち・みーを倒そうと、躍起になって武器製作をしていた武人建御雷。たっち・みーが引退宣言をした時の建御雷は、今でもモモンガは忘れられない。

 彼の未完成の一振りはまだ宝物殿にあり、いつ帰ってきてもいいようにさまざまな武器強化素材と共に眠っている。

 タイニーはほったらかしになっているアイテムを漁りつつ、モモンガと共に少しずつ片付けていく。

 

 

 

 片付けている時に懐かしい本を読んでしまうのはもはやお約束だ。

 休憩と称し図書館から借りパクした本を読んでいるタイニーは顔を本からのぞかせながらモモンガに聞く。

 

「そういえばメールって全員宛になっていました?」

 

「あの後確認しましたけど一部の人だけでしたよ。こっそり消させていただきましたけど」

 

「モモンガさん!」

 

 のんびりしていたところで、突然タイニーが本を持ったまま大きな声で呼ぶ。そしてなにかを決心したように拳を握りしめ、モモンガにぐいと近づく。

 

「改めてもう一度、今度は全員にメールを送りましょう!」

 

「えっ。でも・・・」

 

「ひょっとしてみんなに迷惑かもしれない、ですか?」

 

 謎の決めポーズでモモンガを指差す。相変わらず感が鋭い。

 しばらく間が空き再びタイニーがモモンガに話しかける。

 

「ギルメンは私たち含めて41人。その中で迷惑だと思う人はいるかもしれないですが、逆に誘われて嬉しいと思う人もいるはずです!証拠として私がいるではありませんか!」

 

 今度は背中のあたりから神秘的な光のエフェクトが出る。

 似たような光の出るエフェクトをたくさん買っていた、たっち・みーのことを思い出す。

 

「引いてダメなら押してみろ!それでもダメならぶっ壊せ!やまいこさんが言っていましたよ!」

 

 脳筋先生のこと、やまいこの迷言だ。同じように「越えられない壁もぶっ壊す」と言ってた記憶がある。

 

「ん?なんか違うし、それ関係な・・・」

 

「とにかくっ!やらない後悔よりやる後悔!やりましょう!」

 

 こんな意味のわからないやりとりは何年ぶりだろうか。この短時間で様々な記憶が掘り起こされ、思い出すだけで胸が熱くなってくる。

 

「それもそうですね・・・。よし、もう一度ちゃんとしたものを書きましょう!」

 

 何かに感化されたように立ち上がり、モモンガは言う。

 

「確かあそこって紙とかありましたよね?では図書館で下書きでも書きましょう。あとついでに借りておいたままの本を返しに」

 

 それからモモンガの背中を押して急かしながらも、テキパキとアイテムの整理をし、急いで図書館へ向かおうとする。

 

「おっと、本を持ってくの忘れてた」

 

 そう呟き、片付け中に読んだ『誰でも楽々PK術 話術・誘導編』を持っていく。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 モモンガが再びメールを送ってからしばらく。リアルは国を牛耳る大企業の一部がなくなったおかげか、国では少し給料は高くなり、物価が安くなるという現象が起きていた。

 

 

 

 生活に余裕が出てきた。仕事が終わって今までより早く家に帰ることができた。

 

(こんなに余裕があるのはいつぶりだろう・・・。)

 

 パソコンを起動しメールを確認する。今までなら残業の分の仕事が送られてきたが、最近はめっきり減った。

 

「うわー、2件入ってるな」

 

 残業かと見てみるが、よく見ると1件目は削除されていた。残業が減ったと心の中でガッツポーズをとり、恐らく本命の2件目を開く。しかし中身は予想を裏切るものであった。

 

「ん?残業じゃない。モモンガ・・・?ユグドラシル・・・なるほど」

 

 簡単にいえばゲームのお誘いだ。転職してから全く、趣味と言えるものに手をつけていないことを思い出す。お誘いがきたのは、みんなも生活に余裕ができたからかもしれない。

 重い腰を上げてしばらく使っていないゲームセットを、埃のかぶった棚から出す。久しぶりに遊ぶかと、埃を拭き取り起動しようとするがつかない。バッテリーがないのであろう。

 

「はぁ・・・・・また明日でいいか」

 

 少し残念な気持ちになり諦める。多分明日には充電とアップデートがされているだろう。明日を楽しみにしながら寝床につく。

 

 

 

 深夜にモモンガはユグドラシルにログインする。タイニーとの約束で有給を取るために、今日は遅くまで仕事をしていた。

 ログを見てみるが今、自分以外にログインしているものはいなかった。まだメールを送った次の日なので仕方なく思うが、希望はまだある。

 期待しながらマスターソースを開き、ログイン履歴を見ると3件入っていた。昨日のようなことがあるため、緊張しながら詳細を見ると、ディス・タイニー、ベルリバー、ウルベルト・アレイン・オードルの3名の名が書かれていた。

 それを見たモモンガは小さいながらも嬉しそうな声を上げる。なかなか不思議な面子だが、3人同じ時間帯にログインしたのを見ると、3人でログインする約束でもしたのであろう。

 よく見るとモモンガがログインする1時間前まで一緒にいたことがわかる。

 

(もっと早く仕事を終わらせればよかったなー!)

 

 後悔するが、それ以上にまた2人ギルメンが来てくれたことに喜びを覚える。

 

 

 

 そしてその日、ユグドラシルでは不安定な《飛行(フライ)》で移動する死の支配者(オーバーロード)が、プレイヤーに目撃されることとなる。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「充電よし。アップデートもよし・・・。これでいいかな」

 

 指差し確認を終えて、ゲーム起動の準備をする。久しぶりにゆったりできて、気分も身体の調子もいい。そのおかげか冷静に考えることができる余裕があり、久しぶりにユグドラシルにログインし知人に会うことに恥ずかしさを感じる。

 緊張もあるが、少しずつ顔が熱くなっていく。

 

「どうしよう。なんて話しかけようかな」

 

 10分ほど考えるが、言うことがなかなか決まらない。チラリと時計を見る。せっかくの快適な日なのに、考えている時間がもったいない。それにもしかしたら、今ログインしている人はいないかもしれない。

 腹を括り、思い切ってゲームをスタートする。

 

 

 

 

 懐かしい景色が目に入ってくる。

 

「おぉ。すごいまだ残ってる・・・」

 

 歩いた音が響きそうなほど広く天井の高い部屋を見渡す。正直、メールが送られるまでナザリックがあるとは思ってもいなかった。

 部屋の中央には巨大な円卓があり、それを囲むように41の席が揃っている。よく見ると、その41の席の内、2つが埋まっていることに気づく。

 

「モモンガさん、どうやら私の勝ちのようですね・・・。さぁ鉱山龍のクエストに行きましょう」

 

「いやいや!こんなの絶対おかしいですって!こんなピンポイントに当てれるはずないですよ!もしかして個人的にメールで呼び出したりしてませんよね?」

 

 懐かしい声がする。何やら賭けでもやっているようだ。

 

「私のことを疑うなんてとんでもない!実際のところ確率はほぼ39分の1ですよ?時間は仕事終わりやらなんやら想定して言ったわけです。ガチャで流れ星の指輪(シューティングスター)を当てるより簡単だと思いませんか?」

 

「ええ、それは・・・そうかもしれませんけど」

 

 モモンガの返しに笑いを堪えることが出来なかった。来た時間と人物をピンポイントで当てるとしたら、もっと確率は低くなる筈だ。2つの影は笑い声に気付いたようにこちらを向く。

 

「おっと、ほったらかしにしてすいません。お久しぶりですヘロヘロさん!」

 

「おひさーです。モモンガさん、タイニーさん。一体なんの話をしていたんですか?」

 

「来た人、時間を予想する賭けです。勝った方の行きたいクエストに、負けた人が手伝わなければいけません」

 

「えぇ〜鉱山龍のクエストは面倒ですよ。ただでさえ防具破壊魔法がそんなにないのに・・・」

 

 その名の通り鉱山龍のクエストは、鉱山にいる複数のドラゴンを倒すクエストだ。鉱石の種類ごとに様々な魔法・物理攻撃に耐性を持っているため、鉱石を纏う鱗を破壊して耐性を無効化して倒さなければいけない。

 

「私がいるなら大丈夫じゃないですか?」

 

 モモンガが驚いたようにヘロヘロを見て、次にディス・タイニーに顔を向ける。

 ヘロヘロは武器防具を劣化させる能力に長けている。PK専用の構成になっているがこのクエストに非常に打って付けの人物だ。モモンガはため息を吐き、呆れたように言う。

 

「もう、なんか・・・いいやもう行きましょう。準備はできてるので」

 

「あれ?準備いいですねー。未来予知ですか?」

 

「負けることぐらい予想はしてましたよ・・・。ヘロヘロさんの防具とかは、宝物殿にあるので一緒に取りに行きますか」

 

 2年ぶりだと言うのを忘れてしまうほど、あっという間に話が進む。なんて声を掛ければいいか考えていたのがバカみたいだ。

 ヘロヘロは苦笑しながら呟く。

 

「そうですね。久しぶりで色々忘れてそう・・・」

 

「私はそうでしたけど、コンボとかは案外体がおぼえてたりしますよ」

 

 呑気にタイニーは答える。しかしヘロヘロは不安をなくせない。

 今度はモモンガが、ヘロヘロとは別の理由で不安そうに聞く。

 

「でもヘロヘロさんがいるとはいえ、前衛は必要じゃないですか?」

 

 一応モンクだが種族的に攻撃力が低い前衛のヘロヘロ、魔法詠唱者(マジック・キャスター)で後衛のモモンガとディス・タイニーのパーティーだと、物理攻撃の前衛が心許ない。

 

「全然大丈夫ですよ〜」

 

 なかなか信用し難い言い方だが、何か策でもあるのだろう。それに続けて思い出したかのように、タイニーは言う。

 

「私も装備整えましょうか。というかモモンガさん。話がどんどん進んでますけど、私もヘロヘロさんも久しぶりなんですよ?もう少しゆっくりしてもいいんじゃないですか?」

 

「あっ、すいません!確かにそうですね、なんか久しぶりって感じが全然しなかったので・・・」

 

「いえいえ!私もおんなじこと考えていましたよ!でもそうですね、久しぶりのナザリックなので散歩でもしたいです」

 

「それはいいですね。ではこうしましょう、私は用事があるのでここで解散して、お二人はナザリックツアーにでも行ってください。1時間・・・いや30分後くらいかな?ヘロヘロさん、リング・オブ・アインズ・ウール・ゴウン持ってます?」

 

 答えるかのように触手が伸び、その上にアイテムのエフェクトを光らせる。

 

「持ってますね。では30分後に宝物殿でまた会おう!」

 

 謎のキメポーズと共に颯爽と背を向き、転移して退室する。

 少し沈黙が続いた後、モモンガが話を続ける。

 

「第九階層の設備を見に行きますか?私も最近行った記憶がないので・・・」

 

「そうですね。私の作ったメイド達もみたいので!では行きましょう!」

 

 若干興奮したように言い、スライムに足はないが急足で部屋から出る。こんな元気なヘロヘロはいつぶりだろうか、そんなことを考えながらモモンガは後ろをついていく。

 

 

 戦闘メイド(プレアデス)は第十階層にいるので、今日は一般メイドを見て回る。ヘロヘロがプログラムした、通路の歩くルートに沿って歩くと複数のメイドに出会う。主人の存在を感知したのか、近くに寄ると深くお辞儀をする。

 ヘロヘロは触手を顎のあたりに伸ばしながら言う。

 

「主人のいない間も忠実に働き続ける・・・。健気で可愛らしいと思いませんか?」

 

「そうですねー。どことなく主人に会えて嬉しそうですよ」

 

「そう言われるとそうかも・・・」

 

 そうして顔を見合わせてお互いに笑う。そんなことはあるはずもない、そう思うが感じられずにはいられなかった。

 ヘロヘロはデフォルトの微笑んだ顔とメイド服を堪能し、再び2人は歩き出す。そしてメイド達は主人を見送ったのを確認したかのように、顔を上げて持ち場にと再び歩き出す。

 

 

 

 次は食堂へと向かう。たくさんの一般メイド達が交替で食事をとっている。

 

「そういえば私ここ全然来たことないんですよねー」

 

「種族的に食べれないですからね。でも代わりに私が食べます!」

 

 突然地面を這うように走り(?)出し、料理長に注文する。そして受け取ると同時に見せつけるかのようにメイドの多い机に向かい、メイドに囲まれながら食事をする。

 モモンガはヘロヘロが食べ終わるまで無言で見つめる。

 

「あの、なんか恥ずかしくなってくるんですけど・・・」

 

 ようやく食事が終わり、無言の圧に耐えきれなくなったようだ。

 

「次に行きましょう」

 

「あっ、はい・・・」

 

 移動速度上昇の食事をとったのか、早く移動することとなった。

 次はスパリゾートに赴く。装備をアイテムボックスに入れ、2人とも腰にタオルを装備する。ちなみにタオルには水属性耐性が施されていたりする。

 形式だけだが、シャワーを浴びる。

 

「ここもいつぶりですかね。ここのところは資金をひたすら集めるだけにログインしてたので・・・」

 

 モモンガの発言に驚いたようにヘロヘロは言う。

 

「もしかして1人でですか?・・・それだと感謝してもしきれないですよ」

 

 モモンガはヘロヘロの感謝に対し嬉しい気持ちになりながら、全く暑さも感じない風呂に入る。電脳法によってリアルと混同しないために、一部の感覚が削除されているからだ。さっきもヘロヘロが食事をしていたが、なんの味もしないはずだ。

 ヘロヘロの問に答えるように恥ずかしげにモモンガは言う。

 

「そうですね。でも私からしたらナザリックに来たことが感謝ですよ・・・」

 

「いや〜お疲れ様です・・・」

 

 中々シュールだが風呂で互いに感謝のお辞儀をし、しばし風呂のギミックや豆知識についての雑談をして風呂を出る。

 偶然にもマナーを守ることができ、2人も知らないギミックが動き出すこともなく、雰囲気だけだが楽しむことが出来たようで、2人で再び歩き回る。

 

 

 モモンガは約束の時間に近づいてることに気がつく。こんなに時間があったにもかかわらず、まだ半分も回ることが出来なかった。

 

「ヘロヘロさん、そろそろ・・・」

 

「おっと、そうですね。本当に久しぶりにゆったりできました。本当に呼んでいただいて感謝です・・・!」

 

「いえいえこちらこそ」

 

「いえいえ・・・」

 

「いえいえ・・・」

 

 日本人のサガと言うべきか、終わりの見えない謙遜をした後、また時間に気づいたモモンガによって慌てて宝物殿に転移する。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 転移すると視界は黄金の輝きに包まれる。そこには金貨や、パッと見ただけでもわかるほどの芸術品、防具などが無造作に散らばっていた。

 

「おお〜、やっぱりここはいつ見てもすごいですね〜」

 

 ここの財宝の山は綿密に計算されており、貯めておくより見栄えを重視するようにギルメンの源次郎が片付けている。中にはふざけて作った、金貨でコインゲームにあるタワーのようなものまであるが、それでさえも神秘的に感じてしまう。

 

「ほんとに目がチカチカしてきますよ」

 

「でもモモンガさん目ん玉ないじゃないですか!」

 

「それヘロヘロさんが言いますか?・・・・・でも確かにそれもそうですね・・・なんででしょう」

 

「えぇ・・・真面目に考えないでくださいよ、冗談なんだから」

 

 冗談を言い合いながら奥に進む。すると財宝の山から人影が見える。ディス・タイニーだ。小走りになりながら駆け寄る。

 

「遅れてすいません!」

 

「右に同じくっ!」

 

 話しかけるが返事はなく、ただ立っているだけだ。もう一度話しかけたり、つついたりしたが反応がない。寝落ちの可能性を考えるが、強制ログアウトされていないので多分違う筈だ。

 次から次へと嫌なことを想像してしまい2人は次第に焦っていく。

 

「どうしましょう、GMコールを使いましょうか?」

 

「もう少し待ちましょう。でも流石にシステムの不調やバグだとは考えにくいですが・・・」

 

 すると後ろから金貨の崩れ落ちる音が聞こえる。一斉に振り向くとそこにはパーティー用のクラッカー型のアイテムを持ったタイニーがいた。しばしの沈黙の後に、タイニーが沈黙を破る。

 

「・・・ばぁ」

 

「・・・失敗しましたね」

 

 呆れたようにヘロヘロは言う。どうやらドッキリが失敗したらしい。

 ではこの一切動かないタイニーはなんなのか。モモンガは問いかけるとタイニーが偽タイニーの横に並ぶ。

 

「あれ?わかりませんでしたか。では答え合わせ!『変身解除』!」

 

 するとヘロヘロの横から「げっ」という声が聞こえる。

 タイニーの横には、軍服を着たツルツルとした顔に、口と目らしき黒い丸のついた人型の異形種がいた。

 

「なんですか実の息子に対して「げっ」とは!?」

 

 タイニーは怒ったように言う一方で、モモンガは額に手を当てて項垂れている。モモンガの様子にヘロヘロは疑問を抱く。

 

「確かモモンガさんの子供(NPC)のパンドラズ・アクターですよね?なんですかその反応は」

 

「・・・簡単に言えば、今私は黒歴史を見せつけられています。それに子供じゃないです!」

 

 ヘロヘロはパンドラズ・アクター(黒歴史)をまじまじと見ながら不思議そうにしている。

 

「特にこれといって変な感じはしないですけどね・・・」

 

「そういってくださるだけで救われますよ・・・」

 

 実際は見た目などより説明文がヤバく、昔モモンガの全盛期(厨二病)の時にギルメンで悪ノリした設定が組み込まれている。触れると掘り返されそうなので、あえてそれ以上のことは言わない。ちなみに悪ノリしたギルメンにタイニーは入っている。

 タイニーはパンドラズ・アクターを撫でながら思い出すように言う。

 

「お前はかっこいいよパンドラズ・アクター。そういえば聞いてくださいよヘロヘロさん!あと少しでこの子『宝箱ガードマン』になるところだったんですよ!」

 

「ん?名前がですか?・・・・・ええ!?流石にモモンガさんそれはないよ・・・」

 

(うわーもっと長くなりそうだ・・・)

 

 心の中でモモンガはため息をつく。

 しばらく約束を忘れて、黒歴史を掘り下げられそうになるも頑張って話をそらすモモンガであった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 会話の終了を促すかのように、突然目覚ましのアラームの音が鳴り響く。

 

「おっとっと、完全に忘れていましたね。・・・あれ、どれだっけ」

 

 慌てながらタイニーの腰についている、数々の懐中時計を手当たり次第触りながらアラームを止めた。ヘロヘロが恐る恐る聞く。

 

「そんなにたくさん意味あるんですか?」

 

「意味ないものがひとつくらい入ってるんじゃないかって言いたいんですか?失敬な!いいですかこのメカニックなやつが・・・」

 

 このままでは一向に話が進まない。話に聞き入りそうになるモモンガだったが、好奇心を抑えタイニーの話を遮る。

 

「タイニーさんストップ!」

 

「おお、モモンガさんありがとうございます。そうですね、とりあえず作戦を説明しましょうか」 

 

 作戦の内容は、ヘロヘロ前衛で鉱石の鱗を破壊。そして必要に応じて物理、魔法攻撃を切り替えながら戦うというものだ。

 しばらく思考が停止した後に、作戦と呼べないほどの内容にモモンガとヘロヘロは不満を言う。

 

「なんですかこれ!私もタイニーさんも物理攻撃そんなに持ってませんよね?私に《完璧なる戦士(パーフェクト・ウォリアー)》使って突っ込めとか言うつもりですか!?しかも久々のヘロヘロさんにこんな重労働任せられないですよ!」

 

「そうですよブラック反対!それに回復役もいないのに前線を張れる自信ないですよ!」

 

 しかし、タイニーはまるで2人の不満を気にしないかのように振る舞う。

 

「いえいえ、全然大丈夫ですよ。・・・では賭けをしましょう」

 

 もし表情が動くのなら、今タイニーはニヤリとしているだろう。時計をチラリと見てタイニーは言う。

 

「もし一切問題もなくクリアできたら、クリア報酬の何割か2人からいただきます。もしクリアできなかったら、私は2人の行きたいクエストにそれぞれ5回優先していきましょう」

 

 モモンガは考える。

 10年以上の経験をフルに活用する。鉱山龍のクエストは上位に入るほど難易度の高いクエストで、このクエストに打って付けのヘロヘロがいたとしても、この3人でクリアできる確率はとてつもなく低い。この賭けに勝機はありそうだ。

 

「モモンガさんどうしましょう?」

 

「任せてください!その賭け・・・乗らせていただきますっ!」

 

「本当にいいんですね?では・・・」

 

 しばらく間が空き、機械的なピコンという音と共にログが流れてくる。

 

 

   たっち・みー  がログイン しました。

 クロリ・ディウム・ロイ子  がログイン しました。

 

 

 しんと静まり返り、モモンガとヘロヘロは顔を向け合う。そしてモモンガはゆっくりとタイニーに顔を向け、1時間ほど前のモモンガと同じ言葉を、ヘロヘロと共に大声で捲し立てるのであった。




オリジナルキャラクター

クロリ・ディウム・ロイ子 種族:サキュバス 女性のアバターを使っている。信仰系魔法を多く習得しており、回復サポートに特化している。
リアルは医者をやっている富裕層の人間。たっち・みーの近所に住んでいる。

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ここまで読んでいただきありがとうございます。なかなかの好評に驚きつつも楽しくやらさせていただきます。
今私は「早く転移させろよー」「もう少し伏線とか入れた方がいいのではないか?」といった2つの考えに挟まれています。正直3話で異世界に行かせることも可能な反面、地盤を塗り固めてオリジナルキャラクターの設定とかを定着させることも重要なので、非常に悩ましいところです。ということで、3話の投稿が遅れる可能性があるのでご了承ください。
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