41匹の愉快な異形種達   作:ちくわ部

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誤字報告ありがとうございます。



愉快な動作確認

 

 静まりかえっていたその場は想定外の事態により、少しずつ騒がしくなる。

 

「サーバーダウンの延期ですかね?」

 

「0時1分18秒・・・とっくに時間は過ぎてます。全く、運営は何をやってるのか・・・」

 

「もう一度聞きますけどドッキリではないんですね?」

 

 モモンガが訝しげな声で隣のヘロヘロに聞くが、笑いながら腕に該当する触手を左右に振りながら否定する。

 

「うーん。私も自分が遊んだゲームがサービス終了する事が初めてなので良くわからないですけど、こういう事って案外難しいことだったりするんですかね?」

 

「さぁ・・・・・私はプログラミングをする仕事をしているだけで、ゲームの運営をしたことはないのでなんとも言えないですね。とりあえず公式からの情報を・・・・・ってあれ?」

 

「どうしました?ヘロヘロさん」

 

 突然ヘロヘロが触手を空中に伸ばしたまま、凍りついたかのように動きを止める。

 

「・・・・・ない」

 

「ないって何が?」

 

「ヘロヘロさんもない?俺もシステムコマンドが出てこないんだよね。とゆーかシステム一覧どっかいったんだけど」

 

 背もたれの横から一目で忍者とわかるような覆面が覗き出てくる。

 言われてみればモモンガの視界から今まであったはずのミニマップ、自身の体力や魔力量などのステータス情報が一切なくなっていたのだった。メンバー全員がそれに気づき、なくなったシステムコマンドを探そうと宙を手でかき回している。

 

「HUDの表示消失バグ・・・・では無さそうですね。非表示になっているのではなく、完全に消えてしまったようです」

 

「え、これヤバくない?GMにも繋がらないってことでしょ?」

 

「でもまぁ流石に大丈夫じゃない?もうちょっと待ってましょうよ。誰かリバーシしなーい?」

 

「弟よ、少し黙ってろ」

 

 戸惑いの声で溢れていた室内。そこへ、突如として女性の綺麗な声が響き渡る。

 

「あのっ!皆様どうかなさいましたか?」

 

 アインズ・ウール・ゴウンには女性は3人、例外を2人合わせて5人が女性の声をしているが、その人らに誰も該当しない知らない声が聞こえたのだ。それに気づき、不審に思ったメンバーが声の出所を探り、誰が発した言葉であるか理解すると驚愕で沈黙する。

 そう、本来喋るはずのないマネキン同様のNPCであるアルベドが喋ったのだ。

 

 しばし静寂が訪れたその場でいち早く状況を整理できたのか、ぷにっと萌えがアルベドの問いに応えようとする。

 

「あー、すまない。今は皆、混乱状態でね・・・」

 

 今度はなんとも言えない雰囲気に包まれる。

 その場の空気感で自分が場違いであったのを悟ったのか、アルベドは慌てて頭を下げる。

 

「気づくことが出来ずに申し訳ございません!今すぐ退出させて頂きます!」

 

「待ちたまえ、アルベド」

 

 アルベドの制作者であるタブラ・スマラグディナがアルベドに近づきながら、声をかけて呼び止める。

 

「少々質問をよろしいかな?」

 

「はい、私が知る程度の知識でございましたら」

 

 アルベドは恐れ多そうに首を垂れれる。

 これまでの言動からどうやらNPCとプレイヤーには大きな主従関係があることが分かった。

 

「いやいや、そんなに難しい事ではないさ」

 

 青白く、折れてしまいそうなほど細い手を振りながらタブラはゆったりした口調で言う。

 

「さて最初の質問だ。今我々が置かれている異常状況について何か知っていることはないかな?」

 

「異常事態・・・・・!?申し訳ございません!至高の御方々がお気づきになられているにもかかわらず・・・・・!」

 

「い、いやまだ質問はあるんだ。落ち着きたまえ」

 

 タブラ・スマラグディナは動揺を隠せなかった。それはとてつもない剣幕で謝罪をしてきたことに対してではなく、動くはずのない顔が動いていることへの驚きであった。

 本来NPCの外装は固定されており、表情の変化や口の動作などはないはずだ。タブラの中で驚愕と未知に対する恐怖が溢れ出る。

 

「質問・・・と言うよりかは確認に近いね。さて一つ目だ。私は誰かな?」

 

「至高の41人のうちの1人、錬金術の使い手で私の創造主であられるタブラ・スマラグディナ様でございます」

 

「なるほど創造主・・・・・すまない、少しと言ったが訂正しよう。もうしばらく話を聞かせて頂こう」

 

 

 

 

 そこからは長かった。

 恐らくアルベドの設定について本人に質問していたのだろう。時には虚偽の情報を混ぜて引っ掛けようとし、時にはこんなことまで設定していたのかと思えるような細かい質問をしていた。これは彼が作ったNPCだったからこそできる芸当である。

 

「協力感謝するよ。付き合わせて悪かったね」

 

「勿体なきお言葉。・・・ですが何故突然このようなことを?」

 

「今はまだこちらの都合と言わせていただこう。さて、他に質問がある者は?・・・・・いなさそうだね。全てが分からない状況では仕方がない。ではギルドマスター、一体どうしようか」

 

 やはりきてしまった。

 モモンガは話が振られてくるだろうと薄々感じ取っており、心構えはあったがいざくると動揺してしまう。

 

「う、うむ。やはり必要なのは・・・・・情報だな」

 

 逆にこれ以上に必要とするものもないであろう。

 

「メンバー全員で手分けしてナザリック内を探索するのは?」

 

「不確定情報が多い今、それをするのは少々危険かもしれません」

 

「まずはNPCを何人か偵察に回らせてみるのはどうだ?」

 

「ベルリバーさんの案が一番手っ取り早いかつ安全かもしれませんね・・・・・。どうですかモモンガさん」

 

 ガーネットの言葉に続き、次々と提案が出てくる。

 タブラのおかげでNPCを自由に動かせると分かった今、ベルリバーの案が最適であろうとモモンガは考える。

 

「良いだろう。ではアルベド、セバスに大墳墓周辺の探査を行うよう指示しろ。この部屋を出た先にいるはずだ。それとプレアデスの中から1人護衛をつけるように言え」

 

「もし、誰かいても戦いはできるだけ避けてほしいな。もちろん相手が友好的な場合だけね」

 

 モモンガの発言にやまいこが素早く補足を入れる。

 

「了解いたしました。では友好的な存在が見られた場合はどのように?」

 

「話し合えるように連れてくるべき、じゃないかな・・・?」

 

「それが一番だな、では友好的に接して交渉して連れてくるように。そして他の者には持ち場に戻り、異常がないか確認するように伝えよ。では我々は・・・・・これより会議を行う。要件が有れば円卓へ来るが良い。アルベドは通達が終わり次第この場で待機だ」

 

「畏まりました。モモンガ様」

 

 アルベドが跪いて頭を垂れるとそそくさと大きな扉を開けてゆっくりと閉める。

 バタンと扉が閉じてしばらくしギルドメンバーが口を開こうとしたが、それを見越してかモモンガが遮るように大きく言う。

 

「皆さんの言いたいことは分かります!ですので、今はまず円卓に移動しましょう。話はその後で」

 

 するとメンバーがモモンガの言葉の指示通り移動を始める。次々に姿が消えるところを見るに、どうやら転移の指輪は起動するようだ。

 

「中々良い判断だったよ、モモンガくん」

 

 死獣天朱雀がモモンガを呼び止める。

 

「教授・・・・・いえ、他の人に頼りっぱなしでしたよ」

 

「謙遜することないさ。こんな状況だったら上出来、いやそれ以上だ。私なんてボケた爺さんみたいに口を開けて惚けることしか出来なかったからね」

 

 くくくと口元を袖で隠しながら笑った後、死獣天朱雀はお先に、と呟き指輪の力を使用する。

 王座の周りにはもう誰一人として居ない。どうやら全員移動したようだ。

 モモンガはコンソールを使うことなく転移の指輪を使用し、円卓へと向かった。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「これまでの話し合いをを要約すると、ゲームから抜けることが出来なくなった、 NPCが自我を持った、それに匂いがある・・・・・ということですね?」

 

 円卓で話し合いを始めて暫く。ようやく冷静になった皆の様子を見てたっち・みーが話し出す。

 

「きっかけはメコン川さんがヘロヘロさんから変な臭いがする、って言葉から。ユグドラシルでは電脳法でゲームと現実の区別をつけるために一部の感覚が制限されてたけど、どうやら制限が無くなったみたいっすね」

 

 ぬーぼーがたっち・みーの言葉の補足をする。

 

「え?それって思いっきり法律破ってるんじゃ・・・・・?」

 

「そうだよ、ペロロンチーノくん。流石にユグドラシル運営もこんなタチの悪いことはしないはずだ。タブラさんも言ってた表情の変化以外にも呼吸、心臓の鼓動から体温までも感じられるようになっている。ここまで来るともはや・・・・・これはゲームではない」

 

 死獣天朱雀は淡々と言葉を続ける。

 

「モモンガくんの言っていた通り今必要なのは情報。NPCたちの報告を聞いてから後は何をするべきか考えた方がいいね」

 

「とりあえず、今出来ることは無いってことだな?」

 

「そういうことになりますね」

 

 ぶくぶく茶釜が突然席を立ち、弟のペロロンチーノを呼び出す。

 

「試したいことあるんだけどちょっといい?カモン弟」

 

「え?何、何すればいいの」

 

「ぜーんぜん難しいことじゃ無い。私を抱け」

 

「え?」

 

「「「え?」」」

 

 ぶくぶく茶釜の発言にその場の空気が凍る。

 

「・・・・ん?あ、そう言う意味じゃ無いっ!断じてそう言う意味では無い!ハグだハグ。・・・おい、早くしろ!みんなの目が痛い!」

 

 たむたむとピンクの粘液が跳ねながらペロロンチーノに催促するのをモモンガは困惑しながら見ていると、ぶくぶく茶釜の意図を理解する。

 

「よいしょっと。重・・・くはないです〜」

 

「よし、降ろせ。今すぐにな。これで分かったことがもう一つ。BAN出来なくなってる・・・・・というかBANされなくなってる?」

 

 ユグドラシルではセクハラなどを含めて18禁行為を禁止している。本来であれば戦闘行為以外で他者にむやみやたらと触ったり、今のように密着するようなことがあれば警告が出たり、触られた側に通報用のコンソールが現れたりするはずだ。

 

「おい姉貴!八つ当たりで俺の人生初めての課金アカウント消すつもりかよ!」

 

 憤慨しているペロロンチーノを他所に獣王メコン川が話し出す。

 

「俺もいいか?試したいっつーか、ヘロヘロさんが臭い件なんだけど。同士討ち(フレンドリー・ファイア)が解禁されてるかもしれないんだわ。」

 

「なんか前にも話した気がするんですけど語弊あるのでやめて下さい・・・。私のスキルの《異臭》は低レベルのモンスターを寄せ付けず、敵の嗅覚の探知を妨害できるというものです。勿論味方は喰らわないはずですが、メコン川さんに効果があったんですよ。メコン川さんだけというのは種族的にかもしれませんが、同士討ち(フレンドリー・ファイア)が可能となっている根拠になります」

 

「なるほど。うっかりやばいスキルを放たないようにしなければいけませんね・・・。ヘロヘロさん、スキルは今発動しているんですか?」

 

「今はしてません。これも不思議な話なんですけど、今まで手動で切り替える必要がありましたが、今では意識するだけで切り替えられるんですよ。こんな風に」

 

 ヘロヘロがそう言うと、少し離れた席に座るメコン川がライオンの顔をくしゃりと歪ませながら小さな悲鳴をあげる。

 

「ヘロヘロさん、もうそれくらいに。では報告はこれで一旦やめましょう。このままでは分からないことが増えていくだけです。・・・・・・ですが、最後にこれだけ。私は仮想現実が現実になったと踏んでいます」

 

 たっち・みーの突然の発言に殆どのメンバーは何を言っているんだ、という顔をするが誰も否定をしない。たっち・みーにいつも突っかかるウルベルトさえもだ。だが現時点ではそうだと考える他ない。

 

「同意見だな。NPCにしろスキルにしろ何もかも設定通りになってるだけで、あまりゲームと大差ない感じするけど油断は禁物だな」

 

 武人建御雷がアイテムボックスから取り出したアイテムを手元で転がしながら言う。

 

「そうですね、やはり・・・・・・む、セバスか?どうだ周辺の様子は?・・・・・・草原だと?・・・・・・空に何かが浮いていたりメッセージが流れていたりというのは?・・・・・・夜空だと?そうかご苦労、では再びナザリックに戻り第十階層の持ち場につけ。・・・・・・えっと、何を話そうとしたんでしたっけ」

 

 モモンガはセバスとの通話を終わらせると、重々しい話し方からすぐさま普段の口調に戻す。

 

「ぐふん、んん!そういえばなんでモモンガさんNPCとの会話の時は口調を変えるの?」

 

 エンシェント・ワンが笑いを誤魔化すように咳払いをして聞く。

 

「なんとなくというか・・・NPCってロールプレイしてる人の雰囲気があるんですよ。それに釣られた・・・って感じですね。それとNPCたちは我々を主人として見ているわけです。それなりの威厳と態度がなければいけないなー、と思いまして」

 

「設定通りに動いていると考えてみれば確かに似た感じではあるよね。成る程、ボクもキャラ付けした方がいいかな・・・・・・。あ、そういえばセバスなんて言ってた?」

 

「ナイスやまいこさん、忘れるところでした。調査の結果ですがどうやらナザリック周辺は草原となっているようです。それに夜空が広がっていて空中都市などの人工建造物はないそうです」

 

 モモンガの発言に響めきが広がる。

 

「草原・・・・ミズガルズですかね?」

 

「何にもないってのがちと引っかかるな。で、どうするよモモンガさん」

 

 モモンガが少し悩む素振りをする。

 セバスの持ち帰った情報は大きかったが、また分からないことが増えてしまった。このままこの部屋にいても得られるものは少ないであろう。

 

「よし、各階層の調査をしてそれぞれNPCと接触しましょう。これ以上ここで出来ることはなさそうです」

 

 各階層の調査と聞いてメンバーの殆どがウキウキになるが、その後のNPCと接触という言葉で一転して微妙な空気になった。

 それもそのはず。作られたNPC達は言うなればプライバシーの塊だ。本来あまり見られる機会のない設定は、殆どが人に見られることを想定せず思うがままに作られている。それが動き、自分が定めたように振る舞うということは製作者の趣味が大っぴらになることであり、あまり好ましいことではない。

 

「マジ?俺シャルティアと会わないとダメなの?」

 

「あれ、私あの子にどんな設定にしたっけ・・・・・・」

 

 ペロロンチーノが絶望したような声で呟き、対照的に餡ころもっちもちが冷静に思い出そうとする。

 

「・・・・・・皆さんのお気持ちは分かります。ですが遅かれ早かれ出会うことになるんですよ。では階層守護者の製作者をリーダーとして約4人組の班を作りましょう。まずはペロロンチーノさん、デットレバーさんとれいじぃーさん。源次郎さんのNPCいましたっけ?後それとー・・・」

 

「う、うわーお腹が痛くなってきたー。ちょっとログアウト・・・・・・」

 

「いや出来ねぇよ」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 第六階層 円形闘技場(コロッセウム)

 楕円形に広がり無数の観客席と青白い光に囲まれたその広場には、一対の鎧を背負いてらてら光るピンク色の粘体(スライム)のぶくぶく茶釜に、ツノの生えた草食動物の骨を被り鎖で巻きつけられた錆色の鎧を装着した首無し騎士(デュラハン)のフルスロットル。見るからにドラゴンと分かるような太く赤い尻尾がはみ出た赤いラインの入った黒いデザインの鎧を纏った、真紅の髪と瞳の際立つ顔付きの好青年エンシェント・ワン。神官のような白い艶やかな布着を着た、白樺の木のような木樹の異形種、スィドーラのブルー・プラネットが集まっていた。

 

「どうやらモンスターが襲ったりすることはないようだな、フルスロットルさん。しかしモブモンスターにも知性があるとは思わなかったぜ。ガチ装備は必要なかったな」

 

 エンシェント・ワンは片手に持つ黄金の龍が巻きついた装飾の施された矛を手放すと、地に落ちる前に淡い光の粒となって消える。

 すでに第六階層の調査は終わっており、罠などのギミックやモンスターの安全性が確認されている。

 

「いえ、まだすることは残ってますよ。・・・・・ぶくぶく茶釜さん、覚悟を決めてください」

 

「嫌だ。恥ずい」

 

 第六階層全体の安全確認はスムーズに進んだ。だが最後に階層守護者とのコンタクトを取るという目標が未だに果たせずにいた。理由は単純にして明快ーーただただ恥ずかしいのだ。

 

「こんな言い方したくないですけどペロロンチーノさんですらNPCのシャルティアに接触は済んでいるんですよ?早くしないと遅れますって」

 

「チッ、あいつのくせにやるじゃん」

 

「何認めてやったみたいな感じ出してるんすか・・・・・・ほらなんか言ってやってよブルー・プラネットさん。・・・・ブルー・プラネットさん?いつまで空を見上げてるんですか」

 

「ん?ああ、申し訳ない。モモンガくんの地上の話を聞いてからどうしてもね・・・・・」

 

 第六階層の探索中はまだマシだったが、ブルー・プラネットはモモンガから聞いたセバスの報告の内容を聞いてから完全に上の空である。自然を愛する者としては外の環境が非常に気になるようであった。

 

「ああもう、なんで毎回頼りない人と一緒のグループになるんだ!」

 

 フルスロットルの仲間運のなさについては、彼がギルド内でも少数派である常識人で、相対的に周りの人間にまともでない人が多いだけの話である。だが良くも悪くもその環境に慣れてしまったため、その事実に未だ気付かないままだ。

 

「お、なんかちっこいのが来てるぞ」

 

 エンシェント・ワンが矛を持ち直してその言葉を言い放った瞬間、ビンクの物体が置物同然となっているブルー・プラネットの背後に素早く隠れる。

 

「どこです?」

 

「あっちのジャングル側・・・・・ってはえーな」

 

 気づけば円形闘技場(コロッセウム)の入り口から中心部分にまで来ていた。土煙を上げながら走るダークエルフの少年ーー否、少女がこちら向かっているのが見える。

 

「《敵感知(センス・エネミー)》・・・・・敵対反応は無いようですね」

 

「おい、なんでこの人盾使いなのに守るべき後衛職の後ろにいるんだよ!」

 

 エンシェント・ワンはぶくぶく茶釜に矛を向けて突く。矛の能力により突いた時、たまに火花のようなものが散る。

 

「痛い痛い。敵対しない感じならいいじゃん・・・・・・うわ来た!」

 

「うわ来たって・・・言い方」

 

「・・・・・・が・・ま・・・!」

 

「ん、なんか言ってんぞ?」

 

 耳を澄ますと子供特有の甲高い声が聞こえてくる。そこの声は必死に何かを呼びかけているようだった。

 

「ぶく・・ち・・・さ・・・」

 

「茶釜さん・・・・・・」

 

「シッ!話しかけないで!」

 

 どうやら彼女はこのまま隠れてやり過ごそうとしているらしい。ブルー・プラネットの背後で全身が隠れるベストポジションを探すためにクネクネと体を動かしている。

 

「なんて言うか・・・・・・もう遅いよ」

 

「いらっしゃいませ!ぶくぶく茶釜様、エンシェント・ワン様、フルスロットル様、ブルー・プラネット様!」

 

 気づけばぶくぶく茶釜の真横に、まるで太陽のような眩しい笑顔を浮かべる少女、アウラ・ベラ・フィオーラが立っていた。

 

「お、お出迎えありがとうね。お邪魔するよ、アウラ」

 

「何を言うんですか!この場一帯は至高の御方々の手によって創造された場所。創造主たるぶくぶく茶釜様達がお訪ねになって迷惑となる者などございません!いつでもいらっしゃって下さい!」

 

 ぶくぶく茶釜はアウラ笑顔の周りに花が咲き乱れ、キラキラと輝く幸せオーラが出てくるのを幻視する。

 敵意がないのは分かっていたが、思っていた以上に好意的であった。

 

「そういえばマーレは?」

 

 一向に来ないアウラの弟を探すため、アウラの来たジャングルのある方向を見る。

 

「マーレはー・・・・・持ち場の確認が終わっていないと言っていましたが、多分恥ずかしくて来てないだけですねー。全くお子ちゃまなんだから」

 

 やれやれと肩をすくめながらアウラは言う。

 その言葉を聞いて二つの視線がぶくぶく茶釜を刺す。その視線はエンシェント・ワンの矛で突かれるよりも痛く感じた。

 異様な空気を感じ取ったのかアウラは3人の顔を交互に見る。

 

「どうかしましたか?」

 

「し、仕方ないなー。まぁ今度、今度時間ある時に会いに行こうとしようかなー」

 

 本当に職業が声優かと疑うほどの棒読みのセリフである。

 

「へへっ、ありがとうございます。その時には是非私ににも教えてくださいね!」

 

 アウラの笑顔がより一層輝く。

 眩しい、眩しすぎるとエンシェント・ワンが目を手で覆い、顔を顰めながら本題に移ろうと提案する。

 

「アウラ、何か変わったこととか無かったか?」

 

「変わったことですか?特に何もありませんでしたけど・・・・・・」

 

 アウラが不安げに言う。

 何か失敗してしまったのかと怯える様子を見て、自然とフルスロットルがアウラの頭に手を乗せて撫でる。

 

「何もないならOK!さて、仕事は終わったので報告に戻りましょう」

 

 フルスロットルの手が頭から離れると、アウラの顔が一瞬曇り名残惜しそうな顔になる。

 

「ええ、もう行ってしまわれるんですか?」

 

「緊急事態だからね。時間があれば私も来ようかな」

 

「本当ですか、約束ですよ!」

 

 アウラの顔に再び笑顔の明かりが灯る。

 4人がアウラに見送られながら下の階層へ続く通路へ向かう中、フルスロットルが呟く。

 

「やはり子供はいいものですね」

 

「・・・・・ああ、てっきり愚弟みたいなこと言い始めたのかと思った。まぁ子持ちならそう思うよね」

 

「嫌だなぁ、ペロロンチーノさんみたいなこと言うわけないじゃないですか」

 

 ロリコンと蔑称される弟を持つぶくぶく茶釜の発言に対して、妻帯者のフルスロットルが苦笑しながら言う。

 

「おおーそうか、フルスロットルさんリア充だったな。で、アウラはどうだった?茶釜さん」

 

「どうって・・・・・・ちゃんと設定通りだった。実際のところマーレが来てほしかったんだけどねー。まぁ、結果的に設定通りかもしれないことが分かったけど」

 

「と言うと?」

 

「ハッキリとは覚えてないんだけどマーレの方にいろいろ設定を盛り込んだんだよねー。その確認をしたかったんだけど・・・・・・うわー、うわー!思い出すだけで体痒くなる!恥ずかしい!!」

 

「なるほどねー・・・・・」

 

 ぶくぶく茶釜はまるで屋台の光るヨーヨーのように触手をうねらせながら跳ね回り、悶絶する。なかなかに気色悪い光景だ。

 

「まぁ、もうやってしまったことだから仕方がない。逆に設定を変えれる力があったとしても私にあの子達を変えることはできないかな」

 

「急に冷静になるなよ!・・・・・・でもその考えには同意」

 

 ギルドマスターのモモンガへ報告をするために下の階層へ続く階段に差し掛かるとフルスロットルは足を止める。

 

「もしもし。はいはい聞こえていますよー・・・・・は?馬鹿じゃない!?・・・・・ええ了解です。それでは」

 

「ん?誰かなんかやらかしたか」

 

 《伝言(メッセージ)》で通話が終わったのを見計らってエンシェント・ワンが話を聞く。フルスロットルの話し方から良い話ではないのはよくわかる。

 

「ええ、それもとびっきり。というか現在進行形でやらかしてます。第五階層で大乱闘が起こっているらしいです。それの鎮圧をして欲しいと・・・・・」

 

 そう言いながらフルスロットルはぶくぶく茶釜に目を向ける。骸骨ヘルムの下にあるその目には申し訳なさがあるのがぶくぶく茶釜には分かった。

 

「なるほど。私の出番ってわけね」

 

「話が早くて助かります・・・・・。ざっくり説明をすると建御雷さんがやらかしてるらしいです」

 

「お、建やんか。意外だな」

 

 比較的にまとも枠に入る武人建御雷の行動にエンシェント・ワンが意外そうに話す。

 

「どうやら現実となったこの世界で、スキルがどんな風に発動したりするのか試してるうちになんだかんだでガチバトルをやりあうようになったらしく、手がつけられないそうです」

 

「お、建やんなら納得だな。ほんじゃぁ交ざりに・・・ゲフンゲフン。止めに行くかー!いつまでぼーっとしてるんだよブルー・プラネットさん、さっさと行こうぜ!」

 

「・・・もうツッコミを入れる気力もないです」

 

 悲痛な声を出すフルスロットルと対照的なウキウキのエンシェント・ワンとその他一行は、上の階層の氷雪の大地へと向かうのであった。

 





次、始まりの村です。(もしくは番外編その2)

そういえば既存キャラの紹介するとか言ってしてなかったですね・・・・・。
登場キャラが多すぎてまとめ切れていないのが現実。
いつかやります(フラグ)

どうでも良いかもしれないですが、性転換タグ必要ですかね・・・?
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