41匹の愉快な異形種達   作:ちくわ部

9 / 15
誤字報告いつもありがとうございます。
忙しくなるので急いで投稿。
いつもの半分くらい少ないです。人によってはこれくらいがベストだったり?

それと前回の次回予告が今回の次回予告です(?)


ちょっとした愉快な小話

 

 気づけばヘロヘロはコンピュータ言語の羅列の並んだモニターの前に座っていた。

 意識がぼんやりとして視界が僅かに霞がかっている

 あたりを見回せばそこは薄暗いオフィス。何十回、何百回と見たこの景色は自分の会社であることをすぐさま思い出させる。オフィスの中はただただキーボードの音と、エラーを示す警告音などの電子音だけが聞こえた。

 周りにはヘロヘロと全く同じデスクが置かれて椅子に人が座っており、ヘロヘロと同じようにキーボードに手を置いてモニターを凝視している。隣に座る同僚の目を見ると、モニターの光を反射するメガネのガラスの奥には生気のない死んだ目をしているのがすぐ分かった。

 まともな人間であれば異常な空間であると認識するが、なぜかヘロヘロには居心地の良さを感じることができた。

 

 ーー仕事をしなければーー

 

 ヘロヘロの頭の中に真っ先に浮かんだ考えがこれだった。

 現在の状況に疑問や違和感を持つことなくヘロヘロは、途中で終わっているプログラムを構築するべくキーボードに手をかける。

 

 

 

 景色が変わった。

 そこは自分の部屋だった。

 両手には掛け布団の端が握られており、今から自分は寝るのだと認識する。

 薄っぺらな布団の中に足を入れると、直前まで何故か誰かが入っていたかのような温もりが感じられ、全身を布団で包むと今度は、その薄っぺらさから想像できないほどの温かさと厚みが感じられた。

 ヘロヘロはゆっくりと目を閉じる

 

 

 

 目を開けても景色は変わらなかった。

 唯一変わった点があるとすれば、枕元にある装飾のないシンプルなデジタル時計の数字だ。

 大気が汚染されているこの世界(リアル)では、昼夜問わず常に闇に包まれている。そのため窓から日の光が入ってくる事はなく、時計無しで朝であるか夜であるかを判別するのは非常に難しい。

 ヘロヘロは頭を動かして時計に目をやると一瞬思考が停止する。

 本来であれば今頃会社にいる時間であったからだ。

 

「まっず・・・・・・!」

 

 眠気を振り払って起き上がるとそこは光の世界だった。

 ヘロヘロは質素で人一人が住むのがやっとな小さな自分の部屋ではなく、贅沢にもカーテン付きのベッドだけが置かれた広々とした部屋にいた。

 スライムであるヘロヘロに、ないはずの心臓がバクバクと音を立てているのを感じる。

 

「ヘロヘロ様、いかがなさいましたか?」

 

 ようやくここでヘロヘロは今まで夢を見ていたことを理解する。

 

「なんでもない。大丈夫だ」

 

 金髪縦ロールメイド美少女が覗き込むようにしてヘロヘロの様子を窺う。少し前の自分であればこの状況こそが夢だと思っていただろうが、今はもうこの状況に慣れつつあった。

 彼女の名はソリュシャン・イプシロン。ヘロヘロの作り出したNPCでヘロヘロと同じ種族のスライムである。

 

「ふぅ、またこの夢か・・・。ソリュシャン今何時だい?」

 

「只今夜の1時でございます。またお休みになられますか?」

 

「目が覚めたからいいかな。気分転換に散歩しようと思う」

 

 ヘロヘロは寝るのために一部魔法効果のついた装備を外していたのを思い出すと、装備の置かれたテーブルに向かう。

 それを察したのかソリュシャンが凄まじい速さで動くと、いつのまにか満面の笑みでヘロヘロの横に移動していた。手元にはフカフカの小さなクッションと、その上に大切そうにヘロヘロの装備が載せられていた。

 

「こちらに」

 

「あ、ありがとう」

 

 この世界に来て約4日。

 ヘロヘロは未だにこの世界での生活になれる事はなかった。

 今度は部屋を出るためにドアノブに手を掛けようとするが、それをさせぬかのようにソリュシャンがヘロヘロとドアの間にするりと割り込みドアを開ける。

 

「・・・・・ありがとう」

 

「礼にも及びません。至高の御方がこのようなことをする必要は御座いませんので、どんなことでもお申し付け下さい!」

 

 ソリュシャンがとびっきりの笑顔で答える。

 この世界の暮らしにヘロヘロが慣れない唯一にして最大の理由がこれである。

 ヘロヘロの記憶の中では彼女はもっと冷徹で残虐的な設定にしていたはずであったが、今ではこの有様である。NPCは設定通りの性格や人格を持っている事は、タブラによって転移初日で判明したが、もはや崇拝の域にまで達しているその忠誠心が設定をも凌駕してしまったらしい。

 正直自分如きにこんなことをしなくとも、と思うヘロヘロであったが、それを口にするほどヘロヘロは愚かではなかった。

 

 自室から出ると他のギルドメンバーの部屋に繋がる広い廊下に出る。それと同時に話し声と複数の人影が廊下に現れ、2人に近づいてくる。

 

「私も暇だったのでね。誘ってくれてありがたい」

 

「いやいや、地上に一人で行くというのも寂しいと思っただけです」

 

 モモンガとデットレバーである。

 

「こんばんは。二人眠れなかった感じですか?」

 

「こんばんは。久しぶりにこの時間に会いましたね。私たちは眠れなかったというか・・・」

 

「寝ることができない、が正解ですね。ヘロヘロさんもどうです?二人で夜風にでもあたらうかと思って話していたのですが」

 

「それはいいですね。一緒にいかせていただきましょう!それじゃあ、ソリュシャンも来るかい?」

 

 ヘロヘロの後ろに控えているソリュシャンにデットレバーは話しかける。

 デットレバーの提案で一瞬ハイライトのない彼女の目が輝く。

 

「お気遣いありがとうございます。・・・・・・ですが私には他にも仕事がございますので」

 

「他にも仕事があるのか?そうかそれは残念だ・・・。では行くとしよう」

 

「皆様行ってらっしゃいませ」

 

 ソリュシャンが頭を深々と下げると転移の魔法により、3人の姿が次々に消えていく。

 

 

 

 

 

「・・・・・・!いけないいけない、最近顔が緩んできているわ。お仕事はまだあるのに」

 

 ソリュシャンはその非常に整った顔の頬をぴしゃりと叩き、言われても気づかない程度に上がった口角を元に戻す。そして仕事ーー正確には仕事ではないが主人のことを考えると、立派な仕事になりうることーーをソリュシャンはするためにある場所に向かう。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 第九階層、保健室。

 その部屋はまさに学校の保健室で教員の事務作業用の机は勿論、カーテンのついたベッドが三つに、外装の変わった回復のポーションや回復アイテムの収納された棚が置いてあった。

 無駄に実用性があったにもかかわらず遊びにしか使われなかったその部屋は、現在では元の世界(リアル)での職業が医者であるクロリ・ディウム・ロイ子の仕事場になっていた。

 クロリ・ディウム・ロイ子としては、異世界に来てまで仕事をするのはいかがなものかと不服そうであったが、ふざけたメンバーがコスプレのような際どい白衣を彼女()に着せてみると途端に仕事にやる気を見せだした。

 仕事といっても実際は相談所みたいなもので、今のところは重傷者などはいない。

 かと言って仕事が無いわけではない。

 

 例えばゴミが目に入ったと言う患者が居たりー・・・。

 

 

『ロイ子さん!目にゴミが入ったんっすけど、どうにかして下さい!』

 

『・・・・・・・・ぬーぼーさん。あんたどれだけ目があるの?』

 

『自分、百々目鬼(とどめき)なんで100個位はあるんじゃないっすか?あ、でも百足(ムカデ)は100本も足は無いらしいんでひょっとしたら少なかったり?どう思います?』

 

『知らんわ。それでどの目に入ったの』

 

『それが分からないから来たんすよ!』

 

 

 大切なものを無くした患者が居たり。

 

 

『やべーよロイ子さん!』

 

『どうしたどうした、こんなに揃いも揃って。緊急事態!?』

 

『緊急事態に決まってんだろ!』

 

『なくなっちまったんだよ!俺らの息子が!』

 

『・・・・・・ああ。まぁ、ハーフゴーレムとアンデッドなんでね。そら無いですよ」

 

『なんでロイ子さんはそんなに冷静でいられるんだよッ!今まで一緒に過ごしてきたあいつが居なくなったんだぞ!?』

 

『キミ達みたいに完全に無くなったってより“変わった”からね。それにどうやらサキュバスって獲物の理想の姿を変えれるらしいんですよね。・・・・・・つまりそういうこと』

 

『エッッッッッ』

 

『ええ・・・・・・』

 

 

 そして普通に相談をしにきたり。

 

 

「失礼いたします」

 

「ん?あら、珍しい」

 

 学校らしい引き戸から顔を覗かせるのはソリュシャンだ。

 NPCが保健室に来ることは今回が初めてであったため、クロリ・ディウム・ロイ子は驚きで素が出てしまいそうになる。

 

「何かあった?」

 

「はい、その・・・・・ヘロヘロ様のことで」

 

「ヘロヘロさんね。立ったままっていうのもなんだから、とりあえずここにお座りなさい」

 

 回る黒い円盤がパイプの上に付いたような椅子を机の下から出すと、ソリュシャンは律儀に礼をしながらそこへ座る。

 クロリ・ディウム・ロイ子は命中率向上やその他諸々の効果のついた伊達メガネを中指でクイと上げ、ペンを片手にソリュシャンに問いかける。

 

「容態は?どこか調子が悪かったり?」

 

「調子は悪そうに見えませんでした。ですが、毎日決まった時刻に起床なさるのです。それも起きるというにはまだ早い時間に魘されながら」

 

「魘されながらね・・・。ヘロヘロさんは何か言ってた?」

 

「今日は“またこの夢か”と仰っていました。前は“遅れる”とも」

 

「夢ね・・・・・・成る程」

 

 ヘロヘロさんにしてはカッコいいセリフを言うではないかと考えながらクロリ・ディウム・ロイ子は呟く。夢となるとクロリ・ディウム・ロイ子は自分の専門外である精神科ののことを思い起こす。

 

「十中八九リアルのことかなー・・・」

 

「りある・・・ですか?」

 

「ん?あー!あー!詳しいことはやっぱり本人に聞くべきだし半端な情報で治療をしてしまうとかえって容態が悪くなるなんてこともあるからねうんうんここは今度ヘロヘロさんに会ったときにそれとなく聞いてみるとするよどうもありがとうヘロヘロさんの代わりに来てくれてあの人だったら絶対に他の人に相談しようと思わない筈だから」

 

 先程の失言を隠すかのようにクロリ・ディウム・ロイ子は捲し立てる。

 

「へ?い、いえ従者の勤めですから。では夜分遅くに失礼致しました」

 

「あははっ私も疲れちゃったおやすみなさい〜」

 

「お休みなさいませ。クロリ・ディウム・ロイ子様」

 

 引き戸がガラガラと音を立てて閉まるのを確認し、気配がなくなるのを確認するとクロリ・ディウム・ロイ子は一息つく。

 

「よし、我ながら良い誤魔化し方。ヘロヘロさんは・・・・・まぁ大丈夫かな」

 

 クロリ・ディウム・ロイ子の頭の中に、いつも通りなんてこと無いような調子で笑うスライムが浮かび上がる。

 

「でも4日連続で同じ夢見るのは流石にヤバそうだな。お、夢で思い出した。自分のサキュバスの能力で夢を操作したりできないかな?そんなスキルがあったような・・・・・・」

 

 

 

 数日後、他人の夢が何者かによって操作されるという事件が起こるのだが、それはまた別のお話。

 





最近クロスオーバーに興味が出てきたんですが、Aの作品のキャラがBの作品に行った話を書く場合、原作はどっちなんですかね?
それとネタ帳見ていたら異世界かるてっと+至高の四十人とか書いてありました。頭がおかしくならない限り絶対に書けないでしょ、と思いながら妄想を膨らませる作者はもうダメなようです。



最後に運営からこんなメールが来ていました。
【対応報告】検索妨害行為
どうやら“オリ主”のタグが必要とのことです。
あくまでモモンガさんが主人公だから、と思ってオリ主ではなくオリキャラだけつけておきましたが、だめだったらしいです。
今後もこのようなことがないように、付けた方が良いタグが有れば教えていただければ嬉しいです。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。