核を失ったマザーシップが崩れてゆく。
その異次元の城が再び廃棄物へと還っていく様を、丈介たちは峠道に立って眺めていた。
「終わったわね」
「ああ、終わったな」
丈介はその背に博之を背負ったまま、サエコに答えた。
「おじさん……」
「お兄さんだ……なんだ、博之君?」
「うん…あのね……」
博之が何かを口にしかけた時、エンジン音を響かせて、一台の車が峠道を登り走りよってきた。
車から転がるように飛び出してきた人物の姿に、博之の顔がパッと輝いた。
「お父さん!」
「博之!」
丈介の背中から飛び降り、博之は父の腕の中へと飛び込んでいった。
しっかりと抱き合う父と子。
「あの父ちゃん、捻挫した足で運転してきたのか……無茶しやがる」
「親ってのは強いのよ……そうでしょ?」
「そうだな。敵わねえよ」
そう答えた丈介の表情は、少し寂しげだった。
サエコの懐で携帯電話が鳴った。
「はい、もしもし………そう、判ったわ。ありがとう」
短いやり取りの後、サエコは携帯をしまった。
「何だって?」
「病院からよ……優子さんが意識を取り戻したわ」
丈介が、あの父親が、博之が表情を輝かせた。
「お父さん、お母さんのところに行こう!」
「ああ!」
父親は息子を抱き上げ、車へと戻ろうとした。が、その顔が歪む。足首が痛むのだ。
「先生、あの父ちゃんに代わって運転してやってくれよ。こんなところで事故を起こして、優子から家族を奪わないでやってくれ。………バイクは俺が病院まで運ぶよ」
「ええ、判ったわ。でもバイクは返さなくても良いわよ。あなたにあげる」
「良いのか?」
「仮面ライダーでしょ。バイクがないと格好がつかないわ」
「そうだな……いろいろありがとうな、先生」
「礼を言わなくちゃならないのは私達の方よ……さぁ、帰りましょ」
サエコは父子の傍により、事情を話して父親から鍵を受け取った。
三人が車に乗り込んだのを見届け、丈介もモンスターバイクへと跨った。
サエコは車を発進させた。銀澤市街へと向けて、峠道を下り始める。
そのバックミラーの中、丈介の姿が映っていた。
その走り去る後姿が。
「丈介……」
サエコは車を止めようとしなかった。
ただ、その後ろ姿を心に焼き付けようと思った。
「あ、お父さん!」
後部座席で、博之が声を上げた。
「どうしたんだ?」
「僕、仮面ライダーにお礼を言おうと思っていたんだ」
「あぁ、そうだ。ちゃんとお礼を言わなきゃ……病院に着いたら、すぐに言わないとな」
「うん」
バックミラーの中、丈介の姿はもう何処にも無かった。
「きっと、また逢えるわよね……ライダー」
了
次回予告
あれから三年。
仮面ライダー月紅:雄介。
仮面ライダーJo:丈介。
そして、木越。
自分たちの道を探し続ける男たちの運命が、いま、交錯する。
第3部・仮面ライダー~月紅&Jo&鬼~