1 神田 セカンド (左)
2 西 ショート (左)
3 栃谷 レフト (右)
4 東 サード (右)
5 柳 センター (左)
6 玉森 ライト (右)
7 道川 ファースト (右)
8 岸谷 キャッチャー (右)
9 武藤 ピッチャー (右、右オーバースロー)
後攻 市大三高
1 神宮寺 セカンド (右)
2 石川 センター (左)
3 大前 サード (右)
4 北川 ショート (右)
5 根岸 キャッチャー (右)
6 星田 ファースト (左)
7 堀田 レフト (右)
8 上田 ライト (右)
9 天久 ピッチャー (右、右オーバースロー)
1回表終了時
5-0
市大三高ベンチで、天久が3人でピンチを切り抜けたのを見て、半ば放心状態だった真中は、どこか霧やモヤがかかったような頭で思考する。
(あれ?なんで俺はベンチで座っているんだろう)
すがるように北川さんを見るが
「落ち着いて座って、現実を見ろ。お前が何をやったのか、どう受け止めるのか」
そう言うと、大前の隣に行って話し始める。ボーッとしていると、1回裏の攻撃が三者凡退に終わったので、立ち上がって前に踏み出すが
「真中ボーイ、どこへいくんだい?」
「マウンドに行かないと」
「真中ボーイ‥‥君の出番は終わったんだよ‥‥」
少し嬉しそうな目をしながら、田原監督は俺の左肩に手を置いて、語りかけてくる。
「私は真中ボーイをうちのエースだと思っている。だが、先頭打者本塁打を打たれた後のピッチング。あれはエースとは呼べない。本当なら今、天久ボーイではなく、真中ボーイがあのマウンドに立っていないといけなかった」
カキィン!
グラウンドを見ると、天久は苦笑いしながら、北川さんに背中を叩かれている。青道の2番、西がダイヤモンドを1人、悠々と回るのが見えた。
「打たれても、落ち着いて周りを見渡し、そこから最善を掴むのがエースだ。打たれて心が折れたと思ったが、体はマウンドに勝手に向かっていた。グッドだ。君はまだまだ強くなれる。今回はいきなりの本塁打に我を失ってしまったが、こういうことはある。それが今日出ただけだ」
「フォアボール!」
田原監督はグラウンドをチラッと見て、冷や汗をかく。
「この経験を糧にして、更に強くなろう」
「はいっ!」
「さぁ、まずは応援だ」
ベンチにいた先輩達に、不甲斐ないピッチングをしたのを謝るが
「俺らの代に頼れるピッチャーがいないのが悪いんだ。あいつらが本当なら背負うべきもんを背負わせてすまねぇな」
「これも経験さ、今から打ちまくってやっから気にすんなよ」
そう声をかけられ、不意に悔しさが込み上げてきて、涙が止まらなかった。
▽
(真中さんかっちょわりー!って思ったけど、この打線やべー!北川さんみたいなバッターが並んでるのおかしいだろ)
天久は天久で試練を迎えていた。2回表、先頭打者の神田は抑えたものの、2番 西にソロホームランを打たれ、3番 栃谷に四球を与えていた。
そして、迎えるは青道の4番 東 清国。
(2番の西さんもやばかったけど、この人もオーラみたいなのがおかしい。どのボール投げようと思っても全部ホームランにされるイメージしか湧いてこねぇ)
「おい!天久!ぐだぐだ考えずにぶつかっていけや!」
北川さんに言われ、もうどうにでもなれや!と腕をしっかり振りきることだけ考えて、投げ込んでいく。
初球のアウトコースのストレートを見逃し、続くアウトコースに逃げるスライダーを微動だにせず見逃され、1-1の平行カウントになる。
(あのスライダー、振りにこなかったのは見えていたのか、それとも)
アウトコースギリギリいっぱいに決まったスライダーを、東は空振りする。
(見えていなかった!じゃあクルクル三振しちゃいなって)
インコースのボール球を挟んで、アウトコースにスライダーを投げる。
ギィン!
球足の速いゴロを、北川さんが好捕すると2塁へ送球し
「アウト!」
送球を受けた神宮寺さんがすぐに1塁へ投げる
「アウト!スリーアウト!チェンジ!」
なんとか1失点で切り抜けた。ダブルプレーをくらった東がこちらを睨んでくる。
「おー、こわ!ゴリラ先輩に睨まれっ!いてぇ!」
「ごちゃごちゃ言わずにベンチに走れ!」
「うすっ!」
北川さんに頭を軽く叩かれ、ベンチへ向かうと、タオルに顔を押し付けて泣いている真中さんがいた。
「真中さん!仇とってきましたよー!俺がガンガン抑えるんで!次はエースらしいところを見せてくださいよ」
真中さんは真っ赤な目をこちらに向けてくるが、涙を抑えられず、またタオルに顔を隠す。
(打たれて泣くってよくわかんねーな。いつもはある程度抑えてるし、たまたま相性悪かっただけなのに、何をこんなに熱くなってんのやら)
カキィン!
「おぉぉぉぉ!さすが4番や!」
「しゃぁぁぁぁ!反撃だぁぁぁ!」
バッ!とグラウンドを見ると、北川さんがこちらを指差しながらダイヤモンドを一周していた。
「ヒュー!かっくいいー!4番って存在はやっぱすげぇな」
「そうだな」
消え入りそうな声で、真中さんは返事をしてくる。北川さんはベンチに戻ってくると
「後輩をやられて、後輩にピンチを救われて、ここで終わる俺たちじゃねぇだろ!声を出せ!相手を潰せ!踏み潰せ!相手が王者なんざ知るか!1人の男として死力を尽くせ!」
「おぉぉ!」
ギィン!
「抜けろや!おらぁぁぁ!」
5番の根岸さんが打ったゴロは、ショート 西のグローブの先を抜けて、レフト前ヒットとなる。
「6番 ファースト 星田くん」
「おっしゃぁぁ!同級生の天久が頑張ってるんだ!いけぇぇぇ!」
スタンドからの声援が大きくなる。
(これが‥‥北川さんが作り出した雰囲気‥‥)
普段からサボり癖があり、気分の乗った時だけ真面目に練習をしていた天久にとって、1人の選手が作り出した、市大三高の追い風となるようなこの高揚感溢れる雰囲気は、何か感じるものがあった。
アンケートの結果、御幸世代卒業まで書こうと思います。主人公が弟となる後編まで、まだまだ話数がかかるとは思いますが、よろしくお願いします。