至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

105 / 148
先攻 青道

1 神田 セカンド (左)
2 西 ショート (左)
3 栃谷 レフト (右)
4 東 サード (右)
5 柳 センター (左)
6 玉森 ライト (右)
7 道川 ファースト (右)
8 岸谷 キャッチャー (右)
9 武藤 ピッチャー (右、右オーバースロー)



後攻 市大三高

1 神宮寺 セカンド (右)
2 石川 センター (左)
3 大前 サード (右)
4 北川 ショート (右)
5 根岸 キャッチャー (右)
6 星田 ファースト (左)
7 堀田 レフト (右)
8 上田 ライト (右)
9 天久 ピッチャー (右、右オーバースロー)

1回表終了時
5-0


夏の西東京都大会 4回戦 part2

市大三高ベンチで、天久が3人でピンチを切り抜けたのを見て、半ば放心状態だった真中は、どこか霧やモヤがかかったような頭で思考する。

 

(あれ?なんで俺はベンチで座っているんだろう)

 

すがるように北川さんを見るが

 

「落ち着いて座って、現実を見ろ。お前が何をやったのか、どう受け止めるのか」

 

そう言うと、大前の隣に行って話し始める。ボーッとしていると、1回裏の攻撃が三者凡退に終わったので、立ち上がって前に踏み出すが

 

「真中ボーイ、どこへいくんだい?」

「マウンドに行かないと」

「真中ボーイ‥‥君の出番は終わったんだよ‥‥」

 

少し嬉しそうな目をしながら、田原監督は俺の左肩に手を置いて、語りかけてくる。

 

「私は真中ボーイをうちのエースだと思っている。だが、先頭打者本塁打を打たれた後のピッチング。あれはエースとは呼べない。本当なら今、天久ボーイではなく、真中ボーイがあのマウンドに立っていないといけなかった」

 

 

 

カキィン!

 

 

 

グラウンドを見ると、天久は苦笑いしながら、北川さんに背中を叩かれている。青道の2番、西がダイヤモンドを1人、悠々と回るのが見えた。

 

「打たれても、落ち着いて周りを見渡し、そこから最善を掴むのがエースだ。打たれて心が折れたと思ったが、体はマウンドに勝手に向かっていた。グッドだ。君はまだまだ強くなれる。今回はいきなりの本塁打に我を失ってしまったが、こういうことはある。それが今日出ただけだ」

 

「フォアボール!」

 

田原監督はグラウンドをチラッと見て、冷や汗をかく。

 

「この経験を糧にして、更に強くなろう」

「はいっ!」

「さぁ、まずは応援だ」

 

ベンチにいた先輩達に、不甲斐ないピッチングをしたのを謝るが

 

「俺らの代に頼れるピッチャーがいないのが悪いんだ。あいつらが本当なら背負うべきもんを背負わせてすまねぇな」

「これも経験さ、今から打ちまくってやっから気にすんなよ」

 

そう声をかけられ、不意に悔しさが込み上げてきて、涙が止まらなかった。

 

 

 

 

 

 

(真中さんかっちょわりー!って思ったけど、この打線やべー!北川さんみたいなバッターが並んでるのおかしいだろ)

 

天久は天久で試練を迎えていた。2回表、先頭打者の神田は抑えたものの、2番 西にソロホームランを打たれ、3番 栃谷に四球を与えていた。

 

そして、迎えるは青道の4番 東 清国。

 

(2番の西さんもやばかったけど、この人もオーラみたいなのがおかしい。どのボール投げようと思っても全部ホームランにされるイメージしか湧いてこねぇ)

 

「おい!天久!ぐだぐだ考えずにぶつかっていけや!」

 

北川さんに言われ、もうどうにでもなれや!と腕をしっかり振りきることだけ考えて、投げ込んでいく。

 

初球のアウトコースのストレートを見逃し、続くアウトコースに逃げるスライダーを微動だにせず見逃され、1-1の平行カウントになる。

 

(あのスライダー、振りにこなかったのは見えていたのか、それとも)

 

アウトコースギリギリいっぱいに決まったスライダーを、東は空振りする。

 

(見えていなかった!じゃあクルクル三振しちゃいなって)

 

インコースのボール球を挟んで、アウトコースにスライダーを投げる。

 

 

ギィン!

 

 

球足の速いゴロを、北川さんが好捕すると2塁へ送球し

 

「アウト!」

 

送球を受けた神宮寺さんがすぐに1塁へ投げる

 

「アウト!スリーアウト!チェンジ!」

 

なんとか1失点で切り抜けた。ダブルプレーをくらった東がこちらを睨んでくる。

 

「おー、こわ!ゴリラ先輩に睨まれっ!いてぇ!」

「ごちゃごちゃ言わずにベンチに走れ!」

「うすっ!」

 

北川さんに頭を軽く叩かれ、ベンチへ向かうと、タオルに顔を押し付けて泣いている真中さんがいた。

 

「真中さん!仇とってきましたよー!俺がガンガン抑えるんで!次はエースらしいところを見せてくださいよ」

 

真中さんは真っ赤な目をこちらに向けてくるが、涙を抑えられず、またタオルに顔を隠す。

 

(打たれて泣くってよくわかんねーな。いつもはある程度抑えてるし、たまたま相性悪かっただけなのに、何をこんなに熱くなってんのやら)

 

 

 

カキィン!

 

 

 

「おぉぉぉぉ!さすが4番や!」

「しゃぁぁぁぁ!反撃だぁぁぁ!」

 

バッ!とグラウンドを見ると、北川さんがこちらを指差しながらダイヤモンドを一周していた。

 

「ヒュー!かっくいいー!4番って存在はやっぱすげぇな」

「そうだな」

 

消え入りそうな声で、真中さんは返事をしてくる。北川さんはベンチに戻ってくると

 

「後輩をやられて、後輩にピンチを救われて、ここで終わる俺たちじゃねぇだろ!声を出せ!相手を潰せ!踏み潰せ!相手が王者なんざ知るか!1人の男として死力を尽くせ!」

 

「おぉぉ!」

 

 

 

 

ギィン!

 

 

「抜けろや!おらぁぁぁ!」

 

5番の根岸さんが打ったゴロは、ショート 西のグローブの先を抜けて、レフト前ヒットとなる。

 

「6番 ファースト 星田くん」

「おっしゃぁぁ!同級生の天久が頑張ってるんだ!いけぇぇぇ!」

 

スタンドからの声援が大きくなる。

 

(これが‥‥北川さんが作り出した雰囲気‥‥)

 

普段からサボり癖があり、気分の乗った時だけ真面目に練習をしていた天久にとって、1人の選手が作り出した、市大三高の追い風となるようなこの高揚感溢れる雰囲気は、何か感じるものがあった。







アンケートの結果、御幸世代卒業まで書こうと思います。主人公が弟となる後編まで、まだまだ話数がかかるとは思いますが、よろしくお願いします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。