至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

107 / 148
先攻 青道

1 神田 セカンド (左)
2 西 ショート (左) ○
3 栃谷 レフト (右)
4 東 サード (右)
5 柳 センター (左)
6 玉森 ライト (右)
7 道川 ファースト (右)
8 岸谷 キャッチャー (右)
9 武藤 ピッチャー (右、右オーバースロー)



後攻 市大三高

1 神宮寺 セカンド (右)
2 石川 センター (左)
3 大前 サード (右)
4 北川 ショート (右)
5 根岸 キャッチャー (右) ○
6 星田 ファースト (左)
7 堀田 レフト (右)
8 上田 ライト (右)
9 天久 ピッチャー (右、右オーバースロー)

7回裏1アウト1塁

8-1


夏の西東京都大会 4回戦 part4

伊佐敷は肩を温めながら、武藤さんの治療が終わるのを待っていた。

 

「純!監督が呼んでるぞ!」

「おぅ!哲!ありがとよ!」

 

駆け足でベンチに戻ると、足を頭よりも高い位置で冷やしている武藤さんと、その横に立っている片岡監督がいた。

 

「倒れはしたが、打撲だ。折れてはいない。精密検査をする必要はあるが、そこまでではないだろう」

「そうですか!よかった!」

 

思ったよりも武藤さんが元気そうで安心し、ふぅーっと息を吐く。

 

「伊佐敷、あと2人のところすまないが、抑えてくれ。俺のお師匠みたいにせめてアウトを!って思ったけどボールが上手く握れなかったわ」

 

武藤さんは悔しいだろうに、笑顔で話しかけてくる。

 

「大事をとって、今日はこのまま下がるけど、まだこのチームには井手、伊佐敷、真木がいる。」

 

こっちの目をしっかりと見ながら

 

「次期エース、頼んだぜ!青道の未来を見せてくれよ」

「うっす!頑張ります!」

「岸谷!こいつのこと頼むぜ!」

 

武藤さんはそう言うがそこに待ったがかかる。

 

「俺じゃねぇぞ、伊佐敷とよく組んでる藤谷だぜ」

「伊佐敷、2人で終わるぞ」

「うっす!」

 

武藤さんと岸谷さんの正バッテリーに見送られ、マウンドへ上がり、投球前練習をする。

 

(次のエースは丹波?真木?いやちげぇよ。第2先発は譲ったが、次のエースは俺なんだよ!)

 

 

パァン!

 

 

「ストライク!」

 

鬼気迫る表情とは裏腹に、初球チェンジアップを投げ、相手の5番 根岸さんの体勢を完全に崩す。2球目にインコースのストレートを投げると、詰まらせて、ボールは3塁方向へ転がっていく。

 

「おっしゃぁい!」

 

サードの東さんが右手で直接掴んで、2塁へ投げる。

 

「アウト!」

 

神田さんはそのまま1塁に投げる。

 

「セ!セーフ!セーフ!」

 

ギリギリセーフとなる。

 

「あぁぁ!もうちょっとだったのに!」

「東ぁぁ!ファインプレーやー!」

 

スタンドからの応援に力をもらう。ベンチを見ると、笑顔で武藤さんがガッツポーズをしている。

 

(俺達は西さんの怪我を乗り越えて、強くなってきたチームなんだ。この程度の苦難!屁でもねぇよ!)

 

1年生ながら6番を務める星田を簡単に追い込むと

 

 

ギィン!

 

 

「オーライ!オーライ!」

 

ファーストの道川さんのグローブにおさまった。

 

「アウト!ゲーム!」

 

整列をして

 

「8-1で青道の勝利!お互い!礼!」

 

 

 

「ありがとうございました!」

 

 

 

西さんと北川さんが握手しながら話をしているが、2人のオーラがすごくて近くに行けそうにない。大人しく撤収を始めているベンチに戻ると

 

「伊佐敷!よくやってくれた!本当頼りになるピッチャーになったなぁ」

 

と武藤さんが目に涙を浮かべていた。

 

「あざっす!」

 

自分ももらい泣きしそうになるのをグッと我慢して

 

「エースとしての振る舞い、ピンチではどうするか、チームのためにできることは。常に武藤さんに考えさせられ、背中を見て教えられてきました。ただのノーコンが治って、使えるようになったかくらいの俺を成長させてくれたのは武藤さんです。ありがとうございます」

 

そう言って頭を下げようとすると、止められて頭を軽く叩かれる。

 

「まだ早い!1年後にエースとして甲子園優勝してから、そういうことは言えや」

 

そう言ってベンチから、岸谷さんに介助されながら外に出ていった。

 

 

 

 

 

 

「武藤、足は?」

「軽い打撲だろうな。今改めて立っても問題ないな」

 

西と武藤はチラッと視線を合わせ、それに神田、柳、東も反応する。

 

「「「稲実戦まで怪我をしたことにしよう」」」

 

満場一致で仮病が決まる。

 

「具体的には帰ってからだが、とりあえず精密検査を受けてみないことにはな。病院行ってくるわ」

「はいよ!まぁ、怪我してても甲子園には連れてくから!そのつもりで」

「おぅ!」

 

そう言って武藤は、高島副部長に連れられ病院へ向かう。

 

 

 

……

 

 

 

「とりあえず軽い打撲だったわ。咄嗟に右足を引いたのと、当たったのがスパイクだったから、そこまでだった。ひびも骨折もなし!」

 

改めて武藤から病状を聞いて、全員が安堵する。

 

「端から見たら右足がぶっ飛ぶ感じだったもんな。観客から見たらえぐかったろうな。遠藤さんの時は、地味そうに見えたけど、そういうときの方がダメージが大きいのかな?」

「なんか、当たってからボールに動きがないほうがダメージでかいって聞くけど、今回のは右足に当たってから、ボールが元気にバウンドしてたもんな‥‥あれしっかり握れてたらアウトにできたんじゃ‥‥」

「痛いもんは痛かったんだよ!ちくしょう!ボール握れねぇし、足は滑らすしついてねぇ。打球の打撲よりも転倒で怪我しそうだったわ!」

 

3年生でわいわい話していると、片岡監督と落合コーチがやってくる。

 

「武藤、病状はどうだ?」

「はい、特に異常はありませんでした。ひびも骨折もなく、打撲としてはボールが当たったから痛かったね。そういう程度だったみたいです」

 

片岡監督と落合コーチは心底安心したように息をついた。

 

「それで‥‥この打撲での退場を利用してなんですが‥‥」

 

3年生の悪だくみに片岡監督と落合コーチはニヤリとした。

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