1 神田 セカンド (左)
2 西 ショート (左)
3 栃谷 ファースト (右)
4 東 サード (右)
5 柳 センター (左)
6 玉森 ライト (右)
7 城之内 レフト (左)
8 藤谷 キャッチャー (右)
9 井手 ピッチャー (左、左スリークォーター)
先攻 稲城実業
1 神谷 レフト (右)
2 白河 ショート (左)
3 南野 ピッチャー (右、右サイドスロー)
4 烏丸 センター (右)
5 加藤 ライト (左)
6 原田 キャッチャー (右)
7 吉沢 サード (右)
8 山岡 ファースト (右)
9 平井 セカンド (左)
記者の峰は、青道の記事を書くために、西東京都大会の決勝が行われる神宮球場へ来ていた。
「さすが名門同士の対決、応援席はほぼ全てが埋まり、ピリッとした独特な雰囲気がある」
そう呟いて席に座る。
「現3年生の有望選手がほとんど入学した青道、現1,2年生の有望選手が多く入学した稲城実業、どちらが勝つか。2年前、田辺くんの元に選手が集まった市大三高が覇権をとり、次に西くん、東くんの元に選手が集まった青道が覇権をとっている。そして、今年は成宮くんの元に有望選手が集まった最初の年であり、西、東世代の最終年でもある」
ふぅーっと息を吐く。
「1年生の西、東世代は3年生の田辺世代に負けた。1年生の成宮世代は3年生の西、東世代に勝てるのか、かなり見物ではある」
1口お茶を飲む。
「青道はほぼ3年生の成熟したチーム。それに対して、稲城実業は1,2年生多めの比較的若いチーム。個人的には青道有利と言いたいが、知らないが故の勢いというものもある。強豪と当たっていなかったとはいえ、稲城実業が強いことには変わりはない。特にエース南野がいる限りは大崩れはないだろうしな」
「右のサイドスローで最速146キロの直球。3段スライダー、2段カーブ、シンカー、高速シンカーを操る正真正銘の全国区エース。南野がどれだけ青道打線を抑えることができるか。それにかかっているだろうな」
周りを見渡して、そろそろ試合が始まりそうな雰囲気を感じとる。
「先攻は稲城実業で、予想通りエース南野先発。青道は左腕の井手が先発か。武藤がいれば青道が圧倒して終わり、そういう意見が多かったが、井手だと五分五分だろうか。まぁ井手も大学からプロに行くだろうと言われるくらい安定感のあるピッチャーだ。簡単に崩されることはないだろうな」
青道と稲城実業の選手が整列し、挨拶をしたところで、真剣に試合を見る体勢に入った。
▽
俺達の世代のエースは誰だ?そう聞かれれば兵藤と答える人が多いだろう。実際に対戦してみて打ちづらいと思ったのは誰だ?そう聞かれれば。
「ストライク!バッターアウト!」
神田が三球三振、それも見逃しによるものであることに南野も成長していると実感する。ネクストサークルから出て
「お願いします!」
左打席に入る。高校野球で西が南野と対戦したのは、実のところ1年生の夏、西東京都大会 5回戦での1打席のみ。しかもそれは敬遠という、西にとっても、南野にとっても納得のいかないものであった。
あの3年生の夏を終わらせた相手との再戦に、そしてリトル、シニアで共にエースと4番、途中でバッテリーでもあった相棒との戦いに、西は自然とやる気が沸き上がり、経験の浅い稲城実業守備陣を威圧する。
それにキャッチャーの原田は冷や汗を流し、内野陣は固まり、外野にいるカルロスも居心地の悪さを感じる。
「1アウトー。簡単にはいかないぞー。適度にからだ動かしておけよー」
気の抜けたような声を南野が野手陣にかけ、ふにゃっとした笑顔を見せる。
「飛んでいくからー、よーろしくなー」
(相手の気を削ぐようなマイペースさは相変わらずか。だが眼が違う。間違いなく稲城実業を背負った、チームを背負ったエースの眼。お前も見ないうちに色々あったんだろうな)
バットを握り直して構える。
(それはこちらとて同じこと。簡単にはいかせないさ)
城南シニアの元エースと元4番の真剣勝負が始まった。
初球、バックドアとなるスライダーを見逃す。
「ボール!」
右肩を軽く回して、再びバットを構える。南野は深く深呼吸して原田のサインを覗き込み頷く。
キィン!
強烈なライナーがライト方向へ飛んでいく。
「っ!ファール!ファール!」
これで1ストライク1ボール。1度間をとって、軽く理想の軌道をなぞり南野を見ると、南野が顔をひきつらせる。
(あれなら確実に捉えることができる)
打席内に戻り、右肩を回してバットを構える。4度南野は首をふり、ようやくサインが決まる。
カキィン!
アウトコースの高速シンカーをレフト方向に流し打つ。バットを置いて1塁へと走っていると
「ファール!」
「おおぉぉぉ」
観客席からのどよめきが聞こえてくる。
(少し振り遅れたか)
南野は汗をふき、再び深呼吸をする。そこから2球ボール球が続き、2ストライク3ボールとなる。
(ん?あれは)
キィン!
インコース低めのスライダーを、右中間方向へ弾き返す。
「おぉぉぉ!」
後ろ目で守っていたはずが、少し前に出てきていたセカンドの平井。ジャンプして捕球しようとするが、グローブが届かない。
「クソッ!」
ライト線に寄っていた加藤の前を、球足の速いボールがバウンドしていく。センターの烏丸が捕球し、中継に投げようとした頃には、西は2塁を回っていた。
烏丸は焦らず平井に送球し、内野にボールを返す。
スリーベースヒット。初回からいきなり、稲城実業にピンチの場面が訪れた。
打席には全国的にも有名な勝負師 栃谷が入り、稲城実業の1,2年生たちは浮き足立つ。
(ここで終わらせろ)
そう心のなかで西は呟いた。