至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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騒ぎと託すもの

東京のスポーツ新聞には

 

打の青道復活の文字が輝いていた。

 

昨年の春に榊監督が退任した直後に、後任の片岡監督が甲子園にチームを率いて進出し、秋の大会の結果から、青道の打撃の指導が上手くいっていないのでは、という意見が多くなってきていた。

ピッチャー出身の片岡監督では打者の育成は難しい、エースにこだわりがありすぎて、なかなかピッチャーが育ちにくい環境にある、など言いたい放題であった。

 

それを先日の春季東京大会の初戦で、そこそこ強い修北を27-0で下したのは、打の青道に期待する人々、OBに眩しく映った。

 

特に1年生ながら本塁打を放った東、西、柳に注目が集まり、場外へと打球を飛ばした東には、U-15で4番であったこともあり、直接インタビューの申し込みがあったほどだ。

 

 

 

side 東

 

ええい!わずらわしい!と叫ぶと、西が、お前の声の方がうるさいという雰囲気を出してきたので、食べ終わったバナナの皮を投げてやった。華麗に避けおって‥

んで柳!リアルゴリラや!うち怖いわ~♪やないわ!このオカマ野郎め!柳にからかわれるのが多くてかなわん。

 

まぁ、なんか気が紛れたけど、やっぱり取材多くないか?

練習の時間取られるのきついなーと言うと、黙っていた武藤がこれ以上ゴリラになるつもりなのか?と真顔で言ってくる。

 

ムキー!となっているとエースの遠藤さんがやってきた。

 

 

 

side 遠藤

 

こいつら4人、仲がいいなーと少し和む。

この中の3人が、修北のピッチャーの心を壊す怪物打者、そんなのが信じられないくらい和やかな空間だった。

 

武藤に声をかけ、自主練習に使っている広場へ向かう。

本当なら次は川口なはずだった。

でもあいつは腕を庇ってピッチングがうまくできない状況。

それなのに詰め込んでは混乱するだろうと1年飛ばすことにした。時期としては早いが仕方がない。

 

 

 

side 武藤

 

最近、同部屋ではあるのだが、遠藤さんと自主練習をする機会に恵まれている。仲良くなるうちに、江戸川シニアではエースだったけど、みんなの気持ちを裏切ってしまったのを後悔している。自分のなかで咀嚼して、言ってもいいかと思ったことだけは伝えた。

 

挫折は誰にでもある、いつも期待に応えなくてもいい、そう言われると少し楽になった。

 

「俺に足踏みは許されないけどな」

 

え?‥と自分の時が止まった。

なんで遠藤さんには許されないのか分からなかった。

なんど聞いても

 

「俺が青道のエースだからだよ」と、いつもよりも大人びて、遠い人であるかのような雰囲気で答えてくれた。

 

知らない。そんなもの。江戸川シニアでエースだった時はそんな思いはなく、求められてもいなかった。

ただ一番のいいピッチャーがエースだと思っていた。

 

遠藤さんは確かにチームを裏切らない。

必ずゲームを作ってくれるピッチャー。

春季東京大会で勝ち上がるにつれ、ほかのピッチャーと比べるとそれが顕著だ。

 

ピンチでも何事もないと味方に声をかけ、味方から声をかけられ、マウンドから全体を支配しているかのような感覚。

それをショートの江藤さんが内野に伝え、外野は藤堂さんが、そして遠藤さんの想いをキャッチャーの中山さんが受けとる。

 

それがどういうものかあまり分からなかった。

声をかけるのは仲間だから当然だし、思いも言葉が伝わってるなら通じてるはずだろうと考えるとばかりだった。

 

今は分からなくてもいいが、忘れないでくれと、あんな真剣な目で先輩に、エースに頼まれたら承諾せざるを得なかった。




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