至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

112 / 148
後攻 青道

1 神田 セカンド (左)
2 西 ショート (左)
3 栃谷 ファースト (右)
4 東 サード (右)
5 柳 センター (左)
6 玉森 ライト (右)
7 城之内 レフト (左)
8 藤谷 キャッチャー (右)
9 結城 代打 (右) ○



先攻 稲城実業

1 神谷 レフト (右) ○
2 白河 ショート (左)
3 成宮 ピッチャー (左、左オーバースロー)
4 烏丸 センター (右)
5 加藤 ライト (左)
6 原田 キャッチャー (右)
7 吉沢 サード (右)
8 山岡 ファースト (右)
9 平井 セカンド (左)




夏の西東京都大会 決勝 part4

「この回も成宮、お前に任せる」

「当然!」

 

そう言ってマウンドへ駆け出す生意気な1年生を送り出す。国友監督は南野、成宮は青道打線に通じるが、2年生の井口には荷が重いと判断していた。

 

(ここはなんとしても成宮に2回とも抑えてもらわなければ、うちに勝ちはない。不安定な1年生に全てを背負わせるのは申し訳ないが、打つ手がない‥‥頼んだぞ‥‥)

 

「原田」

「はい!」

「成宮がこれ以上無理だとお前が思ったならこちらに合図を。こちらからもしっかり見るようにするが、強気な1年生、いつ崩れるかわからん」

 

そう伝えると原田は頷き、グラウンドへ出ていく。

 

(南野は西、東以外を全力で抑え、力尽きた。あのまま続投させていても柳に打たれていただろう。結果としては同じこととなったが、それで成宮が奮起したのは好材料だった)

 

「9番 井手くんに代わりまして、結城くん 背番号15」

 

(結城 哲也‥‥関東大会までレギュラーとして活躍し、甲子園でも本塁打を放った次世代の青道の主砲‥‥ここで勝負を仕掛けてくるか)

 

青道ベンチの片岡監督と目が合う。

 

 

バァン!

 

「ボール!」

 

打席上の結城は微動だにせず見送る。2球目のスライダーを見逃し、3球目のストレートを軽くカットする。

 

(成宮のボールを初見で軽く当てるか。新チームでも要注意な打者になりそうだ)

 

そして4球目のアウトコースのストレートを

 

 

キィン!

 

 

結城は綺麗に打ち返し、右中間にボールが飛んでいく。回り込んだセンター 烏丸が確実に捕球し、内野へ送球する。その間に結城は2塁を陥れる。

 

「おぉぉぉぉ!てつー!いいぞー!ナイバッチ!」

「結城ぃぃぃ!」

 

青道側ベンチ、スタンドが更に騒がしくなる。

 

「1番 セカンド 神田くん」

「かんだぁぁぁ!」

 

(ここから要注意な打者が6人続く‥‥成宮‥‥頼む)

 

神田は南野の時とは違い、軽くカットして球数を稼いでいく。すると成宮はイライラしてきだした。原田が成宮のところへ向かい、落ち着かせる。

 

「成宮!ボール1つ!」

 

神田がバントしたボールを捕った成宮は、1塁へ送球しアウトをとる。

 

「1アウトー!さぁここでとめて次の回勝ち越すぞ!」

 

 

 

ドゴォン!

 

 

 

音のした方を向くと、青道ブルペンでエースの武藤がピッチング練習をしながら、マウンドの成宮の方を見下すように見ていた。

 

「武藤じゃん!怪我してたんじゃねぇの?」

「ここからエースくるのか!」

 

(武藤?怪我をして離脱したのではなかったのか!?完全な状態で臨むのであれば、1点勝負になる、まずい)

 

次の打者 西を敬遠するように原田に伝える。サイン通り成宮は敬遠するが、その3球目

 

「あっ!」

 

誰の声かはわからないが、その声がした後、3塁にいた結城がホームに到達し、マウンドで呆然とする成宮がいた。

 

「井口、肩を急いで作ってくれ」

「はい!」

「成宮‥‥すまない‥‥」

 

成宮をすぐに交代させ、井口をマウンドに行かせる。

 

(1年生には明らかに荷が重い場面だった。完全に私の配慮ミスだった)

 

ベンチに連れてこられた成宮は俯いたままであった。

 

「よくここまで投げてくれた。後は井口に任せろ」

「‥‥」

 

何の反応も見せないままの成宮を周りの3年生が座らせる。

 

 

 

カキィン!

 

 

 

西の敬遠後、打席にたった栃谷がツーランホームランを放ち、ベースをまわっていくのを、国友監督はベンチで見ていることしかできなかった。

 

 

 

 

 

 

カルロスはレフトから、栃谷さんがダイヤモンドを一周する姿を見届ける。

 

(南野さんが力尽き、鳴が戦闘不能状態か。そして、相手はエースが準備運動中‥‥無理ゲーだな‥‥)

 

空を仰ぐ。

 

(でもまぁ自分で選んで西さんとは別の高校に来たんだ。半端なプレーをあの人の目の前でするなんて自分が許せねぇよな!)

 

 

ギィン!

 

懸命に背走をしてジャンプをし、グローブを突き出す。産み出した速力を抑えきれずにヘッドスライデイングする形となる。

 

「アウト!」

「うぉぉぉ!すげぇぇぇ!」

 

グローブの中に綺麗におさまったボールを白河に送球する。

 

「まだ俺らは終わってねぇんだよ!」

 

そう叫ぶと

 

「カルロスの言う通りだ!まだ9回表がある!逆転するぞ!」

「おぉぉぉ!」

 

烏丸さんが全員を叱咤激励する。離れる際に

 

「カルロス、ありがとよ」

 

そう聞こえたが、照れ臭くて帽子のつばを掴むことで返事とした。

 

「1アウトー!次もいくぞー!」

 

キャッチャーの原田さんの声がこちらまで聞こえてくる。

 

(まだ俺たちは終わってねぇ。最後まであがいてやるよ!)

 

そう覚悟を決め、5番打者の柳さんの殺気にも似た威圧に対抗する。

 

 

 

カキィン!

 

 

 

「わぁぁぁ!」

「柳ー!よくやったぁぁ!」

 

(さすがにホームランは取れんわ)

 

悠々とダイヤモンドを回る柳さんを見送る。その後、井口さんはなんとか6失点で抑える。

 

(1-8か‥‥決勝じゃなかったらコールドだったな‥‥)

 

そう思いながら打席に入る。ピッチャーは青道のエース 武藤さん。

 

 

 

ドゴォン!

 

 

 

「ストライク!」

(くっそ!井手さんもいいピッチャーだったけど、ボールの質が全然違ぇ!こんなん1打席で対応しろとか無理)

 

「バッターアウト!」

 

結局三振に仕留められる。

 

「格が違ぇ、がんばれよ」

 

そう白河に言うと驚いた顔をする。白河も三球三振に仕留められ、3番に代打で出た矢部も三球三振に終わった。

 

(最初から投げられてたら勝負は簡単に決まってたかもな‥‥甲子園は遠いな‥‥)

 

そう思いながら審判の指示に従って整列した。

 

 

 

 

 

 

 

「ゲーム!」

 

青道は結果としては8-1で圧勝した。西は、稲城実業ベンチで泣きじゃくる成宮に一言声をかけたかったが

 

(プライドの高い鳴のことだ。直後に言っても逆効果か。落ち着いてから言うようにするかな)

 

そう思って、あえて声はかけずにおいた。

 

「1回しか投げてないから体力が有り余ってるわ」

 

結局温存されまくった武藤は愚痴を言うが、実際に成宮が敬遠で失投をしたのはランナー3塁、バッターが自分で次はクリーンナップ、更にエースの登場。この要素がすべて揃って、成宮は自身で気づかないくらい緊張してしまっていたからだと西は結論づけていた。

 

「晃太、ナイス圧力だった」

「おうよ」

 

お互いをねぎらいながらベンチを片付け、閉会式の準備を手伝う。

 

 

 

……

 

 

 

閉会式が終わり、バスから降りて青道に戻ると

 

「おめでとうー!」

「よくやったぞー!怪物世代ー!」

 

といった歓声があがったり、各々の名前を呼ばれたりして、あぁ、優勝したんだな。甲子園にまた行けるんだという実感が今更ながら湧いてきた。

 

「なぁ!晴之なに泣いてんねん!」

「ほんまや!めっちゃ泣いてるやんね!」

 

東と柳に指摘される。涙をぬぐい

 

「春の甲子園は連れていってもらって、申し訳ない気持ちがあった。今やっと、チームの一員として、甲子園へ挑戦する権利を勝ち取ったんだと思うと、涙が止まらなくなってきた」

 

そう言うと笑顔でみんなに背中を叩かれる。

 

「ほんま、最後の夏、夏の大会は初めてや。青道に入る前に2人で目指そうって言ってた、夏の大会に行けることになってよかったのう」

「あぁ、そうだな」

 

東としみじみと思い出す。

 

「クリスー!お前もチームの仲間だぞー!」

「おらぁぁぁ!大人しく胴上げされろや!」

「や!やめろ!」

 

賑やかで楽しそうな2年生たちを見て、心が暖かくなる。

 

「こいつらの代も甲子園へ行けるんやろか」

「努力次第だろうな」

 

自分達が後輩たちにしてやれることは、甲子園までの練習と、甲子園での先輩らしい姿を見せること。未来の青道の模範となるべく、3年生たちは各々決意を固めていくのであった。

 

 

 

 









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