至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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閑話 休日

夏の甲子園大会で優勝し、青道高校に凱旋した青道ナインは、2日間の休みを満喫していた。国体を目指すことになる兄貴は、部屋移動をすることとなるので、その荷造りを手伝い、今終えたところである。

 

荷造りが早く終わり、今日は休養2日目のため、練習はない。朝食を食べたあと、久々に兄弟2人で外に出かけることにした。青心寮を出て、徒歩で散策していく。とりあえず都心部へ行ってみようかということで、電車を利用しようと、駅までは徒歩で向かうこととなった。

 

「兄ちゃんと出かけるのは久々だなぁ」

 

と言うと、確かになと兄貴は頷く。自分で選んだ道ではあるのだが、小学生では同じ城南リトルを選び、ずっと兄貴にベッタリはまずいと思った。そこであえて中学生では松方シニアに移籍して、1年生からずっと4番を打つことになった。

 

中学1年生のときはまだ兄貴は自宅にいたのだが、中学2年生になると、兄貴は高校生。青道に入学し、青心寮に入寮したため、ほぼ完全に交流がなくなり、お盆休みや正月に家族団欒するくらいであった。

 

久々に兄貴と2人きりでのお出かけに、少しテンションが上がる。まだ2日しか経っていないのに、甲子園球場のグラウンドで感じたような、刺すような日光ではなく、暑くはあるのだが、どこか優しさを感じるものであった。

 

木陰をできるだけ通るようにしながら、舗装されている道を歩いていく。時々寮の外に出て冷やかしに入る本屋や、文房具屋を通りすぎて、ゆっくりとした足取りで明るい道を進む。

 

駅に着くと、他の人がピッ!ピッ!と鳴らすICカードを見て兄貴が

 

「あれは何だ?」

 

と聞くのがおかしくて笑ってしまう。野球のことに関しては知らないことはない、そんな兄貴とのギャップが激しく感じられる。

 

「ICカードだよ。野球部で移動するのは基本バスだし、中学も近くで縁がなかったけど、結構便利らしいよ」

 

と言うと、そんなものかと兄貴は納得する。あまり興味はないようだ。そういえば甲子園に行く際にも、駅で同じ事を聞かれた気がする。

 

兄貴が切符を買おうとして、振り返って戻ってくる。

 

「どうしたの?」

 

「都心部に行くと言ったな?」

 

「そうだけど」

 

「都心部って今いるところじゃないか?」

 

「‥‥あっ‥‥」

 

 

 

……

 

 

 

とりあえず、少し遠い場所に行くことにし、切符を買って電車に乗る。揺れに身を任せながら、向かい側の窓を通して、移り行く景色をボーッと見る。

 

上野駅に着き、しばらく歩くと動物園があったが、人が多すぎて、なかなか入れそうになかった。

 

「パンダはおあずけか」

 

そう寂しそうに兄貴が言うが、この炎天下でじっと待つのはしんどい。また今度ということで諦めた。そのままとんぼ返りするのもあれなので、近くにある公園で過ごす。

 

時期は過ぎ、気温が高くなっていたので、花は咲いていなかったが、広大な池を多い尽くす蓮に圧倒され言葉が出なかった。蕾からチラチラと見えるピンク色がアクセントとなり、非常に綺麗なものであった。花が咲いていたらどれほど素晴らしいものであっただろうか、そう思い、次に来るときは早朝にすることを決めた。

 

最後に弁天堂に行ってみたが、弁財天は音楽や芸能の守り神だ。果たして野球に効果はあるのか分からないが拝んでおく。それでも兄貴は満足したようで

 

「野球関連以外で一緒に出かけるのは久々だったからな。観光だけでも楽しかったよ」

 

そう言って、嬉しそうにしていた。

 

 

 

道中、兄貴が木刀に興味を示したくらいで、正午前に青心寮に戻ると、哲さんが1人で素振りをしていた。これを見ると、帰ってきた実感が湧いてくる。

 

「てか、哲さん、何で今日学校に来てるんですか?」

 

そう聞くと

 

「今日から練習だと思って来たら誰もいなくてな‥‥とりあえず走っていたんだ。8時頃に起きてきた先輩達に休みだと知らされたが、アップも終わっていて引っ込みが付かなくてな‥‥」

 

哲さんは恥ずかしそうに頬をかく。

 

「昼食食べたらせっかくなんで練習しますか?確か、明日から練習だから午後は身体を動かすって言ってた人もいましたし」

 

そう話していると早めに昼食を食べ終わった、2年生の先輩達がやってくる。

 

「おぅ!哲!寂しそうにしてたから来てやったぜ!」

 

そう純さんが言うと、思い思いに各人が哲さんに声をかけていく。

 

これからはこの人たちを中心とした青道が始動する。そう思うと自分の中でのワクワク感が抑えられない。

 

束の間の一般的な高校生の休日を過ごしたが、やっぱり自分には野球というものに1番興味を引かれるし、気がたかぶってくる。

 

「兄ちゃん、あとで俺のスイング見てよ」

 

自分達で勝ち取った時間を大切に、最大限に活用しながら、新チームの躍動する姿を頭のなかに思い浮かべるのであった。

 

 

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