先攻 青道 スターティングオーダー
1 神田 セカンド (左)
2 柳 センター (左)
3 西晴之 ショート (左)
4 東 サード (右)
5 西影次 ライト (右)
6 栃谷 ファースト (右)
7 玉森 レフト (右)
8 岸谷 キャッチャー (右)
9 井手 ピッチャー (左、左スリークォーター)
後攻 宝明 スターティングオーダー
1 森 センター (右)
2 古賀 セカンド (右)
3 井上 サード (左)
4 木下 ファースト (右)
5 吉田 ピッチャー (左、右オーバースロー)
6 豊崎 ライト (右)
7 近藤 キャッチャー (右)
8 山口 レフト (右)
9 江原 ショート (右)
青道偵察班簡単メモ
夏の甲子園大会ベスト8
夏の大会で評価を上げたエース吉田、2番手 佐川の二枚看板がウリ。打者としては木下、吉田の2人がポイントゲッターとして存在感あり。
吉田は右のオーバースロー、最速147キロの直球、持ち球はスライダー、フォーク。
2番手佐川も右のオーバースロー、最速143キロの直球、持ち球はスライダー、カットボール、ツーシーム。
国体は夏の甲子園大会とは違って、どこか落ち着いた雰囲気があった。ギラギラとした思いをぶつけ合うのが甲子園大会だとすれば、円熟したチーム同士が実力を確かめ合うのが国体であろうか。
大学へ進学する者、高校で野球をやめる者、そして、プロへ行く者。それぞれが高校で野球をする、本当に最後となる大会である。甲子園では当たることのなかった、有力チーム同士が当たるということもあり、スタンドには多くの観客が詰めかけていた。
特に今年は怪物世代最後の年。青道のスターティングメンバー発表にざわめきはあるものの、3年生のいなくなった新チームで、別格さを見せつけられた人々は納得せざるをえない。
怪物世代を押し退け、3学年全体でのクリーンナップに俺、西 影次は嬉しさが隠せない。
まだまだ暑いはずのグラウンドは、自分にとっては明るく、そして爽やかに感じられ、気分が高揚し、全身に力が漲ってくるようだ。
試合が始まった初回、神田さんが粘って出塁すると、夏よりも更に成長した柳さんが打席に立つ。相手エース 吉田さんはかなり投げづらそうにしている。
ストライクゾーン近くのボールは全てカットされ、明らかに逃げるようにして四球となる。連続四球にスタンドから戸惑いが感じられるが無理もない。
続く兄貴が初球をホームランにし、東さんも続いてホームランを放つ。
自分が打席に入り、相手エースを見ると、試合が始まる前と同一人物とは思えないほど憔悴している。
カキィン!
しっかりとトドメをさす。ストライクとボールがはっきりしていたので、比較的楽に打つことができた。走りながらバックスクリーンに直撃した打球を見送り、ホームベースを踏みベンチへ帰る。
「高校通算10本目おめでとさん!」
「ありがとうございます」
東さんを筆頭に先輩たちに祝われとても嬉しく感じる。
キィン!
「栃谷さんナイバッチー!」
上位、下位関係なくヒットが打て、切れ目のない強力打線。新チームになってマークがきつくなり、自由に打てなかった後で味わうこの環境に、とても恵まれていたのだと感じる。そして、現時点で同学年に頼りになる打者がおらず、かろうじて御幸、真木が試合で使えるかどうかという事実に眉をひそめる。
現2年生はクリスさん以外は中学での実績がなかっただけで、実際はクリスさんに加えて哲さんという強打者がいたのに対して、自分の代は俺1人のみ。
現時点でもギリギリなのに、2年生が抜けたら更に物足りなくなるであろう打線に危惧するが、今はそれを考えても仕方ない。まずはこの試合だと、宝明との戦いに集中することにした。
……
結局途中でメンバーをほとんど入れ替え、青道は19-2で勝利をあげた。翌日の準決勝は先発を遊佐さんが務め、5回を投げて2失点で試合を作り、残りの4回を純さんが1失点で締め、17-3で勝利をおさめた。
連日の大量得点に高校野球ファンはやはり、青道の強力打線は頭ひとつ抜けていたことを再認識した。
そんな中、名将 片岡監督と名参謀 落合コーチは決勝での対大阪桐生戦でメンバー、打順を大幅に入れ替えたのであった。
……
国体 決勝戦
後攻 青道 スターティングオーダー
1 玉森 センター (右)
2 神田 セカンド (左)
3 結城 ファースト (右)
4 西 影次 サード (右)
5 滝川 レフト (右)
6 城之内 ライト (右)
7 山崎 ショート (右)
8 藤谷 キャッチャー (右)
9 武藤 ピッチャー (右、右オーバースロー)
先攻 大阪桐生スターティングオーダー
1 飯田 セカンド (左)
2 名倉 ライト (左)
3 有働 サード (右)
4 兵藤 ピッチャー (右、右オーバースロー)
5 土門 キャッチャー (右)
6 梅田 ショート (右)
7 堂上 レフト (右)
8 斉木 センター (左)
9 勅使河原 ファースト (右)
オーダーを聞いて驚きが隠せなかったが、監督、コーチ、そして東さんたちは楽しそうにしている。兄貴も表情は変わらないが、イタズラが成功したような浮わついた雰囲気を出している。
「新チームのクリーンナップに、周りを頼りになる3年生で固めた形となる。晴之、東、柳、栃谷を抜けばお前たち3人の打力は3年生含めても高いレベルにある。先に3年生には話を通してある」
片岡監督はそう言うと軽く笑う。落合コーチが引き継ぎ、
「3年生の世代、武藤と同じくBIG3に数えられる兵藤との対戦。お前たち3人の大きな糧になるだろう。思いっきり戦ってくるように」
「そういうことだ。思いっきりぶつかってこい」
「はいっ!」
そう返事すると、東さんが
「無理そうならいつでも言うんやで、俺らが甲子園みたいに打ったる」
「先制タイムリー打ったのは俺の弟だけどな」
兄貴はジト目で東さんを見ていた。
スターティングメンバー発表時に再びどよめきが起こるが、こちらとしては予想していたので問題はない。しっかりと集中する。
1,2年生が入っている青道とは違い、大阪桐生側は全員が3年生。大阪桐生の4番 ピッチャーは前回同様、兵藤さんであったが、夏の甲子園大会で5番を打っていた館さんは今大会、登録すらされていない。秋季大会に専念しているようだ。
試合が始まると、先攻となった大阪桐生の1番打者 飯田さんが、鋭いスイングで武藤さんと真っ向勝負をする。自分の力がプロへいくであろうピッチャーに通用するかどうか試したい、挑戦したいという強い意志が感じ取れた。
結果としては三振に倒れるが、夏の甲子園大会準優勝校のリードオフマン。素晴らしい選手だなと思わされる戦いであった。それがわかるほど、自分も一生懸命についていくだけだった前回とは違い、相手のこと、そして自分達のことがよく見えるほど成長していた。
武藤さんは初回を三者凡退で抑え、青道の攻撃となる。先頭打者の玉森さんは、兵藤さんのアウトコース低めに決まったSFFに手が出ず三振に抑えられる。
両者三振から始まった試合、明らかに兵藤さんの調子が甲子園の時よりもいい。2回戦、準決勝を打者として出場し、完全にこの決勝にピークを合わせてきているようだった。
試合前には、兄貴達がスタメンでないことに気がつくと、残念そうに電光掲示板を見ていたが、勝負は勝負。試合が始まると自身のメンタルを整え、玉森さんを三振に抑えた勢いで、続く神田さんをセカンドゴロ、哲さんをピッチャーゴロに抑えた。
ネクストサークルで兵藤さんのボールを見たが、夏の時にゾーンに入ってきていなかったフォークが、哲さんとの対戦ではストライクゾーンの低めにしっかりとコントロールされており、カウントをとるために使っていた。
2回表は武藤さんがしっかりと大阪桐生打線を抑え、再び三者凡退に終わる。
ついに本日の第1打席がまわってきた。2回裏 ノーアウト、内外野共に深めの守備で大阪桐生のメンバーは、こちらの一挙手一投足を見逃すまいと集中している。
ふぅーっと息を長く吐き、全身の余分な力を抜いてバットを担ぎ、打席から見ることのできる景色を頭に刻み込む。高校野球最高峰の戦い、その場に4番として立たせてもらえるなど、なんと幸運なことか。
これが兄貴の盟友、東 清国が見ていた景色。4番 サードとして大地を堂々と踏みしめ、相手エースと対峙する。堅苦しく経験してこいなどと言われたが、こんなに興奮し、本能が喜びを感じる場面など他にはないだろう。楽しまなければ損だ。
自身の努力、才能、実力を信じて、相手としてこの上ないプロ注目ピッチャーへと挑む。
初球、アウトコース低めに直球が投げられるが、少し違和感を感じたためじっくりと観察すると、ホームベース直前で鋭く沈み、ミットを揺らす。
「ボール!」
夏よりもキレがいい。これが4番に対する投球かと気を引き締める。
ドゴォン!
唸りをあげるような直球がインコース、膝元に突き刺さってくる。
「ボール!」
観客の緊張した雰囲気を感じ取りながら、大きく伸びをして硬さをとり、気持ちをリセットする。ボールは見えている。あとはそれに合わせるだけ。若干甘めにボールがくるが、思ったよりボールがこない。
パァン!
「ストライク!」
甘いと思って振りにいきかけたバットを止めるが、アウトコース低めにドロップカーブが決まって1ストライク2ボール。
実戦で使えるレベルの球種が豊富で、なおかつコントロールのいいピッチャーは厄介だと改めて感じる。
1度打席を外して間を取る。自分のペースで、相手に引き込まれない。打の青道 4番打者として堂々たる態度で相手に食らいつく。
ギィン!
「ファール!」
インコース低めに鋭く落ちるフォークになんとか当てる。今のをフィニッシュに使われたら、新チームだと打てるメンバーはいないなと苦笑いする。ぐいっと身体をひねってバットを構え直す。
きた!低めのストレート!
パァン!
くそっ!SFFか!
「バッターアウト!」
以前見た時よりも手前で変化し、急激に視界から消えていこうとするボール。見えてはいたのにバット操作が間に合わなかった。なるほど、これなら玉森さんも三振してしまうのも仕方ないなと思う反面、次は打ってやると兵藤さんを睨み付け、ベンチへと戻っていった。