至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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春季都大会 準々決勝 part1

朝、いつも通りに起きて素振りをし、自身の状態を確認する。うん、思いどおりに動く。

 

4月に入ってはいるが、いまだ太陽は出ず、ほとんど暗闇である。少しだけ辺りを照らす外灯がポツンと寂しくあるのみで、そこを中心として朝型のメンバーで自主練習をする。

 

同室の金丸はやや遅れてではあるが合流し、積極的に自主練習に参加してくる。実力的にはまだまだだが、根性があるため今後に期待したい後輩だ。

 

しっかりと体をならして、動けるように調整すると、朝食を比較的軽めに取って腹ごなしをし、バスへと乗り込む。今日の朝9時から行われる第一試合。青道ー稲城実業の試合を見に来ようと、既に球場にきている人もちらほらと見受けられる。

 

アップを終え試合前ノックをこなし、両チームのオーダーを確認する。

 

 

 

 

後攻 青道 スターティングオーダー

 

打順名前ポジション打席
1番倉持 洋一ショート
2番小湊 亮介セカンド
3番結城 哲也ファースト
4番西 影次センター
5番滝川・クリス・優レフト
6番増子 透サード
7番伊佐敷 純ピッチャー
8番御幸 一也キャッチャー
9番門田 将明ライト

 

 

 

先攻 稲城実業 スターティングオーダー

 

打順名前ポジション打席
1番神谷 カルロスセンター
2番白河 勝之ショート
3番吉沢 秀明サード
4番原田 雅功キャッチャー
5番成宮 鳴ピッチャー
6番山岡 陸ファースト
7番平井 翼セカンド
8番梵 勝美レフト
9番富士川 慎也ライト

 

 

 

センターの守備について周りを見回すと、これまでよりも多くの観客がスタンドに入っているのがわかる。チームとして場数を踏んできたからか、うちには気負った選手はおらず、声を積極的にかけあう。

 

試合が始まると、純さんはいつも通りボールを低めに集めて、神谷、白河を簡単にゴロで仕留める。3番の吉沢さんに対してはチェンジアップを見せ球に、最後はフォークで三振を奪って初回を切り抜けた。

 

 

 

1回裏、先頭の倉持は後ろにボールを見せようと、打てるボールを見逃してしまい、結果として3球目のカーブを引っかけて、セカンドゴロに終わる。

 

亮さんに何か呟かれた倉持はギョッとした顔をしてこちらを見ていたが、何を言われたのだろうか?いつものチクチク言葉だろうしスルーでいいか。

 

2番の亮さんはファールで粘り、成宮をイライラさせていく。

 

 

キィン!

 

 

亮さんは、10球目のスライダーをレフト線にポトリと落として、シングルヒットで後ろへと繋げる。通常なら2塁まで行けそうだが、レフトがしっかり前に守っていたようだ。1塁上で亮さんがニコニコと煽るように成宮を見て、それに対して成宮は更にイライラとしていく。

 

「3番 ファースト 結城くん」

 

流石に哲さんがバッターボックスに入るとスイッチが入ったのか、イライラした雰囲気はあるものの、集中力が増したように見える。成宮は持ち球であるスライダー、カーブ、フォークを駆使して打ち取ろうとするが、哲さんはことごとくファールで粘る。

 

「ボール!フォアボール!」

 

「なにやってんだー!成宮ー!」

 

「しっかりしろやー!」

 

成宮に対して一般客から野次が飛ぶが、際どいところを攻めての四球だから仕方ないだろう。右打席に立つと成宮がニヤリと笑う。初球のストレートが原田さんの構えたミットにおさまる。

 

「ボール!」

 

アウトコースの低めへと外れる。スピードは出ているが、キレとコントロールではOBの井手さんには及ばない、そういった評価をくだす。なるほど、これなら亮さんと哲さんが成宮のボールを、それほど苦にしていなかったのに納得がいく。いいピッチャーだけど、それを上回る井手さんを知っている俺達なら打てる。

 

それでもしっかりと球筋を見ておきたい。2球目のカーブがインコースに決まるのを見送り、3球目のストレートが高めに外れるのを観察する。動きがないのを不気味に思ったのか、成宮の表情が若干曇る。

 

4球目、インコースのストレートを思いっきり引っ張る。

 

 

 

カキィン!

 

 

 

ライナー性の打球はグングン伸びていくが、レフトポールの左側スタンドに着弾する。

 

「ファ、ファール!」

 

おお、というどよめきと共に、成宮を心配するような声が稲城実業側スタンドから聞こえ始める。思った以上にキレがなくて打ち損じた。春の甲子園での疲れが抜けていないのか?それともスロースターターだからだろうか?本調子ではなさそうだ。再びバットを構えると、成宮がサインに首をふり続ける。

 

打ち合わせミスでもあったのか、キャッチャーの原田さんはタイムを取って、成宮のいるマウンドへ走っていく。軽く素振りをしながら2人のやり取りを見ると、強情?な成宮を原田さんが説得しているようだ。

 

とりあえずは結論が出たのか、原田さんがホームへと戻ってくるが、成宮の表情は何かを我慢するような感じだ。何かやろうとして止められたのか?だとしたら今までの球種でくるはずだ。バットを構え、成宮の様子を窺う。

 

不満そうな表情のまま頷き、投球モーションにはいる。スイングを始動するが思ったよりボールがこない。

 

「っ!」

 

足元を崩されるが粘って腕だけを残す。

 

 

パァン!

 

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

なんとか踏ん張って残していたバットの下を、ボールがくぐり抜けて、空振り三振となる。今のは‥‥チェンジアップか‥‥?成宮を見るとこちらをニンマリとした笑顔で見ている。感情的なイメージが強かったが、さっきの不満顔は演技らしい。

 

「やられた。次は打つからな」

 

「へんっ!何度だって同じ結果だよ」

 

すれ違うクリスさんに、チェンジアップのキレは井手さん並みで、若干右打者から離れていくスクリュー気味の変化をすることを伝える。

 

「クリーンナップと亮さん、チャンスの時の御幸とかだったら打てそうですよ」

 

「なかなかいい変化球みたいだな」

 

「ええ」

 

ついでにネクストの増子さんにも情報を伝え、ベンチにも共有する。片岡監督に

 

「影次、あれを打てるか?」

 

と聞かれたので

 

「初見じゃなければ打てます」

 

と答える。その言葉を聞くとベンチの雰囲気は安心感のあるものとなり、成宮が緩急を使うということで落ちかけたテンションが回復したように感じた。4番打者としてぶれない、安心感を与える姿を見せ続ける。

 

兄貴は4番というわけではなかったが、常に心がけていたであろう態度。自分ではまだあの域に達しているとは思えないが、せめて行動だけでもそれを真似しようと、オフ明けから心がけている。

 

 

キィン!

 

 

クリスさんは浮いたストレートを強打する。打球はレフト方向への強いゴロとなるが、ショートの白河が追い付き、1塁へと送球する。

 

「アウト!」

 

「あっぶねー!」

 

成宮のボールは調子に乗ったためか浮わついていたが、ボールの質は俺を打ち取ったことで上がっているように見えた。さっとスコアブックを見ると、成宮の球数は1回で30球を越えている。先発を担う成宮との対戦は初めてであるが、他校戦ではスロースターターなのが目立っていたから、球数を稼ぐだけでなく、できれば先制したかったが仕方がない。気を取り直して守備につくのであった。

 

 

 

純さんは4番 原田さんから始まる稲城実業打線を三者凡退に仕留め、すぐに2回裏、青道の攻撃へと移る。ベンチに戻った俺達に片岡監督は指示を出す。

 

「チェンジアップは球筋を見るだけで捨てていい。他の甘い球を狙っていけ。相手の隠していた球種を見れるだけでも今日の試合は価値がある」

 

「はいっ!」

 

先頭の増子さんは粘るがサードゴロ、純さんは四球で出塁する。

 

「8番 キャッチャー 御幸」

 

御幸がバッターボックスに入ると、成宮のテンションが若干上がったように見える。初球、何かを諦めたような原田さんからサインが出ると、成宮は思いきって振りかぶる。ブレーキのよく効いたボールが、御幸を斬り捨てるように急激に落ち、ベース上でワンバウンドする。

 

「ボール!」

 

なんだろうな。俺と御幸に対しての対抗意識が強いのか。見せつけるように新球種を投げてくる。1塁ランナーの純さんへのケアは十分で、盗塁は難しそうだ。それでも普段から口うるさく言っているからか、御幸は前よりは集中できているようだ。

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

それでも中途半端で、都内No.1左腕と言われている成宮の球は打てなかった。ここから更に成宮のエンジンがかかり、9番の門田さんはバットに当てることすらできず、三球三振に仕留められた。

 

春季都大会 準々決勝 青道ー稲城実業の試合は、点取り合戦になると多くの人々が期待するなか、投手戦の様相を見せ始めていた。

 

 






青道、稲実の両チームとも好きなので、勝ち負けを自分が決めるというのがなかなかしんどいですね。原作キャラが揃ってくると、自分が先を書いていいのか手が震えてしまう‥‥悩んだ結果かなり遅れてしまい申し訳ないです。

これから市大三高、薬師もと考えると胃が痛いです。
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