side 片岡
朝、集合し、練習が始まるが、不味い雰囲気を感じ取っていた。
内外野別のノックをしているが、外野では藤堂がなんとかしようと、声を出して周りを鼓舞するが、周りがついてこない。
内野ではミスの少ない西がエラーを連発し、中山は指示間違いをする。江藤の声は小さく、逆に植松は声を張り上げる。東はどうすればいいか分からず、体の大きさの割にオロオロとしながらもいつも通りプレーしていた。
side 中山
「あの配球を何度見直しても、遠藤さんにピッチャライナーがいった。その結果は変わりませんよ。」
その言葉がぐるぐると、ずっと頭のなかを回っている。
カッとなって我を失い、ハッと冷静になって体を止めようとしたが、間に合わずに大切な後輩をなぐってしまった。
西は、泣きながら座る俺の前に立ち上がると
「それに、遠藤さんはサインに納得してボールを投げていました。遠藤さんとあなたの考えが一致したピッチング。今の青道にあれ以上のものはありません。」
そう無表情で、しかし、自分への信頼を確かに感じさせるような言葉を告げると、自主練習場から去っていった。
一晩中考えて結論を出す。
起きたらまずは西に謝ることを決意し、副キャプテンとして、プレーで、言葉でチームを引っ張ることを決める。よし!寝るぞと横になると、ベッドについているカーテンの外から日の光が差し込んでいた。5時45分‥だと!?
ガシャン!と向かいのベッドから音がしたと同時に、自分はカーテンを開けると目の下にクマがある西と目があった。
お互い無言で見つめ合っていると、5時50分のスヌーズが鳴る。
昨日のことを西に謝り、着替えてグラウンドへと駆け出した。
side 東
周りの暗い雰囲気をどうにかしようにも、時間が解決するかと早めに寝て、翌朝の練習、キャッチャーの中山さんとセカンドの西が立派にクマのある目をして、ミスを連発しまくっている。
いや、江藤さんと植松さんは、遠藤さんの件で動揺してるのはわかる。でも寝不足ってなんや!二人で何しとったんや!と少女マンガに混ざってあった、姉のBL本をこっそり呼んだことのある東は、現実でそんなことが!?とオロオロしていた。
side 藤堂
柳は普段通り、武藤は何か覚悟が決まったのか?だが他の連中がピリッとしねぇ。
外野守備に帯同し、肩を強くする目的で一緒に練習するピッチャー陣も重症か‥。ボーッとしてるやつらに、いつも以上に声をかけるが、事態は好転しない。
そこへ松葉杖をついた遠藤さんがやってきた。
「お前ら、藤堂と柳、武藤以外は、俺の仇をとってくれないのか?」
あまり大きくはないが、響くような声が聞こえた。
「声をだせ!しっかりボールを捕って投げろ!」
ボーッとしていた奴らが、最初は数人であったが、徐々に生き返ったかのように、全員が声を出し始める。
「リハビリ含めて3ヶ月かかるかもな!それまでに負けてたら承知せんぞ!」
ハァーっとため息をつく。
あれを秋から俺ができるようになるのか、少し不安になってくる。エースからあんなに言われて、動き出さないやつは男じゃねぇ。
松葉杖をつきながら、内野の方へと向かう大きい背中を見て、次期キャプテンは未来を見据える。