side 倉田 3年生 ライト
新入生が入ってくると、同学年の山岡と併用で、使ってもらっていた場所を、1年生の柳にあっという間に、取られてしまった。
一緒に練習をするが、守備でも、スタミナでも、特に打撃で圧倒的な差を感じる。これが怪物ってやつかと周りを見ると、サードでは手塚と間中が東に、セカンドでは伊達が西に、それぞれ格の差を見せつけられていた。
2年間の差など関係ないと、実力を見せつけてくる怪物共に、去年、伊藤が入ってきたセカンドのように、3年生が場所を取られるのかと俯いていると、監督に呼ばれて、このままでいいのか?と問われた。
何を言ったか覚えてはいないが、気がついたら素振りをしていた。喉が痛いし、手はいつもよりジンジンする。
バットを握りしめ、力強く振り切る。
何があっても、俺にはこれしかできねぇんだ。
それに俺も一般スカウトで来た身だ。先輩にしてもらったように、同室でも、ライバルでもある柳の、怪物の面倒を見てやろうじゃねぇかと、柳を自主練習に誘いに歩きだした。
side 伊藤 2年生 ファースト
痛む右足首を擦る。
秋の都大会、4回戦でのことだった。2塁へ盗塁する際に、無理をしてしまった。激痛が走り、動けない。足をただ抑えることしかできなくて、ようやく考えることができるようになったのが、痛み止めがようやく効いてきたころ。激痛を感じながら、本当にこれは痛み止めを飲まされているのか疑問に思うが、点滴で打たれたというなら納得するしかない。
チームは負けていた。
無理をしていたんだと思う。元から右足首に違和感を感じてはいた。夏の大会、唯一の1年生でのレギュラー。打の青道で他の先輩を押し退けての1番バッター。
夏の大会が終わった、終わらせてしまったその日、甲子園から寄宿舎へと帰る途中に、踏み外し、右足首を痛めた。その痛みは翌日には違和感へと落ち着き、そのまま練習へ向かう。
3年生が抜けた穴を、1年生から共に夏の20人に選ばれていた藤堂や川口と共に埋めるため、必死に練習をし、同級生を鼓舞して、俺たち1年生がやってやるんだと持っていって‥
キャプテンは藤堂、俺が副キャプテン、川口がエースになる将来像を語り合っていた。実現のために動いていた。
その矢先の怪我であった。
入院から戻ってくると、藤堂が荒れていたのを止め、次期エース候補の川口とも話し合う。
必ず戻ると約束し、療養し、冬合宿でリハビリメニューをこなし、このぶんなら春からやれると、俺たちが中心のチームが来年作れると思っていた目の前で、川口と角田の接触プレーが起こった。
今でも治ったはずの右足首が、痛みがあってしょうがない。
side 藤堂
7月に入り、夏の都大会の抽選会が行われた。
順当に行けば、3回戦までは快勝するだろう。しかし、4回戦には仙泉学園が、5回戦では稲城実業が、決勝では市大三高と当たる可能性がある。
バットを振り、感触を確かめる。
いつもと変わらない鋭いスイングをする。
だだ少しだけ、バットが重い気がした。
side 片岡
都大会の3回戦を終え、チームの状況を整理していく。
爆発的な得点力、2年生ピッチャーの乱調。
この数字を見るたびに頭を抱える。
1回戦 シードにより回避
2回戦 24得点3失点 5回コールド
3回戦 25得点4失点 5回コールド
打の青道と言われるのはいいが、これはつらい。
糸原と武藤は計算できるが、川口と坂井が難しそうだ。
2回戦は糸原先発で、4回に坂井に任せると緊張したのか、四球を2つ与えてピンチになり連打を献上。武藤が最後まで抑えた。
3回戦は川口先発で、2回までパーフェクトピッチングをするが、3回に急に乱れて、ストライクが入らなくなり、糸原から武藤への継投となった。
2,3回戦の、あまり振れていない打線に対して、乱調するのであるから、4回戦に当たることとなった、去年1人のエースが入ってから、都大会で、昨年夏ベスト16、昨年秋ベスト4と好調の、仙泉学園での登板は、厳しいであろうと判断する。
仙泉学園戦は、糸原と武藤を軸に考えることを決めた。
side 中山
チーム全体で対仙泉学園のミーティングを行う。
エースとして主戦を務めるはずであった、遠藤が議長として仕切っていた。相手のピッチャーを見て苦笑いをし、各打者の情報を整理しながら戦略を共有する。ふと、ベンチ入りした3年生と藤堂、伊藤、川口を集めて遠藤から話を聞いた日のことを思い出していた。
side 川口
6月の半ば、急に引っ張られて集められた場所には、1軍の3年生と藤堂、そして椅子に座っている伊藤がいた。
そしてエースの遠藤さんが夏の大会、それも甲子園に行ったとしても出られないことを、本人から告げられた。
3年生は呆然とし、藤堂は上を向く、俺と伊藤は俯くしかなかった。
あの時託された想いをと意気込んだ3回戦では、ランナーが出ると気合いが入りすぎて、コントロールが荒れてしまった。
遠藤さんと話し合い、調整し、次の出番を虎視眈々と狙っていく。
分析されてしまった仙泉学園のエース
今井 定晴 2年生 ピッチャー 城南シニア出身
右投げ右打ち
シニアでキャッチャー西に魔改造されてしまって素質充分
2年生ながら4番でエースとして君臨し、チームを勝利へと導く。
140キロ前半のストレート
カットボール、高速スライダー、パーム、縦スライダー、シンカーと豊富な球種を持っており、全てにおいて完成度が高い。
都大会において、3年生の世代であれば田辺が、2年生の世代であれば今井が現在No.1とされている。
将来的に真木が入る頃に近年ベスト8,4常連だと、言われているのはだいたいこいつのせい。憧れて入った選手もいるため、決して青道に入れなかったやつらばかりではない。
二階堂 照 1年生 キャッチャー 城南シニア出身
右投げ右打ち
シニアで西がショートへ戻ると、頭角を表した万能キャッチャー
走攻守すべてに穴がなく、チームの底上げをしてくれる頼もしい存在。
西の存在で霞んではいたが、全体への影響力や、キャプテンシーもあり、監督としては助かるであろう。
仲の良い今井さんについてきた。