至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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シニア編
王様の始動


side 成宮

 

 

ストレート、スライダー、カーブ

これが今投げれる球種で、小学生までは変化球はカーブしか投げられなかった。

 

昨秋の全国大会で優勝した城南シニアに入って1週間くらいしたときに、2年上の先輩でキャプテンの西さんから、俺にはスライダーが合ってると言われた。何故かわからないけど覚えてみる気になって投げると、たった2,3球で指にしっくりとくるようになった。

それが逆にイラッとしてると、「座ってやるから投げてみるか?」と聞かれ、俺の球が取れるもんかと思いっきり投げてやったのに、涼しい顔して全部いい音をさせて捕球されてしまった。

 

次の日に捕逸させてやろうと西さんに声をかけると、「俺はショートのレギュラーだからキャッチャーに受けてもらえ」と言われて呆然としていると、後ろから他の先輩に声をかけられ、その人とブルペンに入ることとなった。

 

こいつが取れなければあの人に受けてもらえるんじゃない?と思って全力で投げたが、気持ちが入ってないと怒られるし、完璧ではないがしっかりと捕球されるわでムキになってしまった。

なんか3年の控えキャッチャーだったらしい。

 

ふと落ち着いて周りを見てみるとコントロールが悪いけど質のいい球を投げる先輩、変化球がすごい曲がるけどどっか変なとこいく同級生がいた。さっきまでの自分を思い返すと、総合的なレベルでは同じくらいじゃないかと思って、少し落ち込んでしまった。

 

練習終わりにキャッチャーの先輩に聞くと、最初はみんな西さんがキャッチングをしてどういう風に育てるか決めるみたいで、去年の新入生のピッチャーにも、俺みたいに荒れたやつがいたらしい。

 

同じようなことをしてしまったみたいで恥ずかしくなったが、ここで終わったら他と変わらないから、西さんにピッチングについて聞くようになっていった。そこから俺の未来でのピッチングが出来上がっていった気がする。

 

 

 

 

side 西

 

小さい頃からいろんな事に既視感があった。

例えば初めて見る写真、風景がこんなもんだったなと感じたり、鉛筆で絵を描くと何故か周りより上手く、何回も描いていたかのように描くことができたりしていたのだ。

 

何故かやったことがある感覚が気持ち悪くて、小さい頃は無表情ではあるが急に泣き出したり、どこかへ駆け出して行ったりと大変だったらしい。色々試してみたが全然治らなかったものの、時間が解決するだろうと、呑気に両親は考えていたらしい。

 

それが気にならなくなったのは、5歳の誕生日に父親が買ってきたグローブとボールを見た時であった。これだ、これしかない、これを求めていた‥そんな声が頭の中で響いた気がして、今まで感じていた嫌悪感のようなものが無くなった。

 

父親にキックをして奪い取ったグローブとボールを、必死になって開封して触ったとき、とても安心し、やり方もわからないのに無性に使いたくなった。父親にこのときのことを聞いたら、初めて年相応な笑いかたをしていたと言っていた。他のものに対する嫌な感じとかは、早く野球に出会えというものであったのだろうか。

あと父親の鳩尾に足が入ったのは‥うん‥ごめん。

 

そこから野球を続け、城南ジュニアを経て、シニアに入ると、とりあえずポジションが手薄なところに入るように言われ、キャッチャーをすることとなった。

自分を含めて同学年に3人キャッチャーいることになるのに、何故かと疑問に思ったら、2年生にキャッチャーをやりたい人がいないらしい‥

ジュニアのころのキャッチャーの先輩が、親の転勤でいなくなったらしく、私達が秋から何とかしなくてはならないらしい。

 

そこからは地獄だった。

秋からレギュラーレベルになる、いやさせてみせると言わんばかりに、コーチや3年生の集中指導を受けて、厳しい特訓をさせられ、キャッチャーとしてのコーチングや配球、全体の流れの把握など色んなことを詰め込まれ、夏の大会では、打力の関係で2番手キャッチャーとして、夏の大会に出場することとなった。東京大会で負けてしまったが、キャッチャーとして色々勉強ができた。

 

1年生の秋の大会から4番キャッチャーとして、チームを牽引したが、丸亀シニアや松方シニアなどの強豪に敗れ、全国へ行けないまま1学年上の先輩が卒業してしまった。

 

2年生の秋、最上級生としてキャプテンを任されると、負担軽減と同級生のキャッチャーが育ってきたことから、元々やっていたショートとして、グラウンド全体の管理を行うこととなった。

ショートとして試合に出場すると、巧みにポジションを変え、相手打者へプレッシャーをかけ、チーム一丸となり、秋のシニア大会で丸亀シニア、松方シニアを破り全国大会へ出場し、そのままの勢いで優勝を成し遂げた。

 

3年生になると、有望株としてピッチャーに成宮、外野手に神谷がシニアに入ってきた。

成宮にスライダーを勧めると、なんかすぐに投げれるようになったので、才能に驚いたが、ボールをとりあえず受けてみることにした。

 

そこから「俺にピッチングを教えてくれ」とか絡みにくるようになったが、教えるとしっかり自分の考えに落とし込んでできるようになっていくし、こいつすごいなと思った。

 

私が生まれるのが2年遅かったら、キャッチャーに志願して専念してたかもしれないなと、すこし惜しく思った。

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