side 鵜飼 仙泉学園監督
エースがここまで打たれたら完敗やなと、5回3-17でコールド勝ちされ、泣き崩れる教え子達を見る。
今井が5失点して、2番手にスイッチし、2点で抑える。しかし、2番手、3番手では力不足であったか、3,4回に5点ずつ取られ、5回表に出てきた2年生のピッチャーから3点をとるも雀の涙。流れを完全には掴むことができず敗退した。
仙泉学園は中堅校と言えば聞こえはいいが、実際には名の知れた強豪校から声がかからなかった、でも野球がしたい子供達がくる。強豪校に一歩引いたような子供達をまとめ、データを基にしっかりと育てる、そんな自身の手腕によって40年程かけて、中堅校として存在している。
それが去年、全国にでも通用する才能の持ち主。強豪校でも圧倒的にエースになれるであろう逸材が転がり込んできた。1年生の夏でベスト16、秋でベスト4。
データを大事にし、チームを勝たせることを重視する。そんな自分に、このエースならばと、相方となるキャッチャーが入り、万全のメンバーとなった時、自分に隙が生まれた。
青道打線の分析はできていた。
若い監督のことだ、去年の伊藤の例があることから、1年生を比較的責任の重い一番打者や、クリーンナップにすることを、夏の本番となる大会では、無意識に避けるであろうとは読んでいた。
1,2,3番を抑え、集中力の欠いた4番を打ち取る、ここまではいつものデータ野球、というよりは今井だからできたこと。
5番の倉田があそこまで成長していたのは、予想外であったが、普段であれば、西を敬遠気味に歩かせ、力みがあるであろう1年生の東でアウトを狙う。
今井が強豪校を圧倒するのを見てみたい。手元の逸材が、去年から大事に育ててきた子が、打の青道を抑え、強豪校に通用するとこを真っ向勝負で見せつけたい。欲張ってしまった。
「わしもまだまだっちゅうことやな。」と帽子をとり、頭をかく。
最初の頃は持っていたが諦めていた、育てた自慢のエースが活躍するのをみたいからと、勝負させた自分の采配ミス‥
反省するのは、子供達のことが終わってからやなと、40年、毎年見続けてきている光景を見ながら歩きだした。
side カルロス
仙泉学園のエースは、いいピッチャーだったと思う。だが、西さんのたった1スイングで打ち砕かれてしまった。
自分にできるかと問えば、まだ無理だと思える、理想的なバッティングだった。
西さんはどの打順でも、場面でも、しっかりとチームに必要なバッティングができる。教科書や野球の本に書いてある、その通りの野球をする。1年生の夏は1番打者として立ち、1年生の秋からは3番打者として立つ可能性のあった俺は、西さんが1番打者として立つ時のバッティングと、3番打者として立つ時のバッティングを直接指導してもらっていた。
1番打者では球数をわざと稼ぎ四球やヒットで出塁し、盗塁、チャンスを作って、ホームを踏む。3番打者では得点圏ではしっかりと打点を稼ぎ、チャンスメークもして、4番打者のための下地作りをする。
打順に合わせた、誰もが何番打者であればこうするのが普通と思う、そういったバッティングをしていくのだ。
基本的には6番打者は、チームによって色々なバッティングを求められる。成宮がうわぁ‥といった顔をしていたのはここに西さんがいたからだろうなと想像できる。何をしてくるか、相手のチームのことをよく知っていないと、わからないからだ。
しかし、さっきの雰囲気と打ち方は、4番打者として出ている時や、テンションが上がった時についやってしまうものであったはずだが、エースとして高校でもしっかりとやっている、今井さんとの対戦で気分がのったのかな?と思った。
実力としてはかけ離れているだろうと感じたが、少しでも近づくために、帰ってからより一層、素振りに力をいれることを決めた。
鵜飼さんを知るために、原作を読んでいたら面白すぎて、続きを読んで沼にはまってしまい、小説を書くのを忘れていました。