至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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青道オーダー

1 藤堂 センター (右)
2 柳 レフト (左)
3 江藤 ショート (右)
4 植松 ファースト (左)
5 倉田 ライト (右)
6 西 セカンド (左)
7 東 サード (右)
8 中山 キャッチャー (右)
9 糸原 ピッチャー(右投げ、オーバースロー)

青道-稲城実業 1-1
8回表 2アウト1塁


流れを掴むのは

国友監督がサインを出すと、4番打者が頷く。1塁にいるランナーは俊足の2番打者。先程の青道のセカンド、西のファインプレーにより、流れはどちらに傾くかわからない状況。

 

よく打つなとは思っていたが、エラーが続き、更にミスしてチーム自体がそこで崩れて終わっても、おかしくない状況での、あのプレー。年相応であった東に比べ、精神力でも大したものだと、更に西に対して警戒をしていく。

 

相手のピッチャーの糸原くらいのレベルであれば、うちの打者、特に上位打線であれば、ある程度狙った方向にバッティングができる。実際に7回表ではツーアウトから、タイミングをしっかりと確認できた7、8番打者は粘り、ヒットと四球を選んでいるため、上位打線であれば勝負ができるであろう。

 

ああいう手合いがいる場合は、守っている方向、つまりセカンドの手が届く範囲に ボールを打たない、触らせないようにする。そして打者としては、エース以外には勝負をさせないに限る。

 

高校生になったばかりの1年生に対して、かなり警戒したような臆病さと取られるかもしれないが、こちらとしても負けるわけにはいかない。「えー、どんなもんか勝負してみたかったのになー」と言う南野を、先程のダブルプレーをくらった3年生捕手がなだめる。

 

 

 

 

 

 

サードを任された間中は、普段の練習から、東と同じポジションを守るものとして、食堂で一緒に飯をたくさん食べたり、野球のことについて、熱く語ったりと、意外と仲良くやっていた。

 

実力的にはかなり上を行く東だ。いきなり現れた、自分のレギュラーを脅かし、奪っていった存在。だが、あの練習量を見て、実際に一緒にこなしてみて、納得させられた格の違い。そして、憎めない性格に絆されていった。

 

ああいうやつがプロになるんだろうなと、本人には言わないが尊敬に値する、自慢の後輩。

 

内野陣に声をかけ、ピッチャーの糸原にも声をかける。

 

東と色々野球に関して話したことが、頭のなかを駆け巡る。代わったところをいきなり突いて、相手が落ち着かないうちに、試合を決める。「特にピッチャーによく言いますけど、代わりっぱなの初球を叩けって言いますよねー」と東が言っていたのを思い出す。

 

こっちの方向に打球がくる!根拠は東がかつて言った言葉のみ。だがそれを信じて極限まで集中していた間中は、東が言っていたことはそうでもないし、国友監督の意図していたものとも違うが、結果として3塁線に抜けそうな強烈なゴロを好捕し、ファーストでアウトをとろうとして、1塁へと送球した。

 

 

 

 

 

 

間中はしっかり集中していた。それ故になんとかこの形になったのだと、少し残念に思いながら、2アウト1,2塁になったグラウンドの状況を見る。間中の送球がバッターランナーの足に負けて、わずかの差で内野安打となったが、しっかりと前を向く間中の様子に片岡はほっとした。

 

サードを守れるのは東を除けば、共に3年生の手塚と間中の二人。エラーによる動揺からの交代であったため、守備面から間中を送り出したが、とりあえずはうまくいったようである。

 

東にはこの経験を糧にするようにと、これからも力になってもらうから、今は休んでいるようにと伝えている。3人の怪物として、別格だと思っていたが、やはり1年生は1年生、無理をさせることはできないなと、右手拳を握りしめる。

 

そして、糸原は粘る5番打者に四球を与え、満塁のピンチを迎えていた。

 

 

 

▽▽

 

 

 

8回表、2アウト満塁の場面と稲城実業のチャンスに、ネクストバッターサークルからゆらりと、6番打者の天海 賢治がバッターボックスへと歩いていく。その顔はいつものボーッとしたものと違い、鋭い視線をキャッチャーの中山に向けていた。

 

そして、右打席へ立つと、軽く見せつけるように1スイングし、「お願いします」と冷静に声を発した。

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