至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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幼い黒豹の誓い

side カルロス

 

僕は友達との遊びも、運動も勉強も、常に1番だった。

ある日、友達が出るからと誘われて見に行った野球の試合、そこで僕は圧倒的なものを見た。

4番ショートで試合を支配する怪物。

 

内野陣に逐一声をかけ、外野の守備位置の指示、他にもその時の自分ではわからないこともやっていたのかもしれない。

自分でチャンスを作り出し相手を崩して先制、圧倒的な守備、連携で封殺し、とどめに自分のホームラン。

何もかもが圧倒的だった。

 

大人ではない同年代に、本能的に勝てないと思わされた初めての瞬間だった。

 

城南ジュニアに所属していると聞き、初めて、自分を鍛えるために、あれに勝てるように、せめて並び立てるように野球を知り、できるように努力をした。

小学5年生になって入るとあれはシニアに移っていた。

打席に立つ前に盛大に空振りをしてしまった。

 

そしてそのジュニアを卒業して今、目の前にあの人がいる。

実際に、一緒に野球ができるのは半年もないかもしれない。

 

「西さ‥!」

「俺にピッチングを教えてくれ!!!!」

 

白いやつに邪魔をされた‥

 

投手と野手は最初の自己紹介以降、あまり話をお互いにしてない。そもそも練習内容が異なる。

白いのは成宮というらしく、西さんにピッチングを教えてもらってるみたいだ。

成宮は1週間前からだが、僕は‥俺は3年前から憧れて、認めてもらいたいと思っている‥あいつにも負けられない。

 

 

 

 

sideout

 

城南シニア恒例、5月の紅白戦

 

3年生には今の立場の自覚、努力の成果を

2年生には1年後の自分のなるべき姿を、引っ張るべき存在を

1年生には今の力を

チームとしては戦力の発掘を

 

2,3年生を戦力として均等に分け、そこにポジションを考慮して1年生を振り分ける。これが例年の紅白戦であった。

今年は少し毛色が違う、というのも西のせいである。

その場にいるだけで存在感があり、常に冷静に全体を引き締めていく存在。というのもあり2,3年生vs1年生+西となっている。

 

城南シニアの監督としても西という存在は、今までで最高の逸材であり、その雰囲気、姿を近くで1年生に感じ取ってほしかったのである。

 

 

先攻を1年生チームとして紅白戦が始まった。

1番の神谷が気迫から四球をもぎとると、すかさず2盗を決めた。

2番打者が緊張した面持ちで打席でバットを握り直していると、ベンチから鋭いが優しい声がかけられる。

何故かリラックスした表情となり、しっかりとバントを決めて神谷は3塁へ。

西から直接声をかけられた3番打者は、センター方向へゴロを放つと、神谷はゴロゴーでホームへと悠々帰還した。

ホームで西から誉められた神谷は、スキップしながらベンチへ戻っていった。

 

そして西が打席に入った瞬間、全体の雰囲気が一気に緊張したものとなった。

 

 

 

side 成宮

 

5番バッターとして、ネクストバッターサークルに入ると、ゾワッとくるものを感じた。

反射的に前を見ると、相手を俯瞰しているかのように眺めている西さんが、バッターボックスに立っていた。

突如2年生のピッチャーは制球を崩し、ストレートの四球となった。自分が投げていたらと思うと寒気がした。

 

 

バッターボックスに立つと、どうもピッチャーが集中できていないような気がする。

グリーンライトのサインが出た。西さんがどう動くのか気になるので、初球は捨てて、ピッチャーを見ながら西さんを見ていると、自然体でそこにいるのが見えた。だが、目だけはピッチャーから目を離さずにいて、そのじっとりとした視線はピッチャーにプレッシャーを与えていく。思わずピッチャーは牽制をするが、球が浮き、暴投し2塁へ進塁されてしまう。

 

2塁でリードを大きくとり、ピッチャーに重圧がかかる。

そして不用意に投げられた甘い初球のストレートに、バットを思いっきり振りぬいた。

 

 

 

sideout

 

 

上級生チームのピッチャーは、なんとか2点で1回の表をしのぐと、ベンチでぐったりとした様子であった。

1点目は1番センターの神谷の足、チームプレイでとったものだが、2点目は西に明らかにもぎ取られたものであった。

 

そこからは上級生チームは反撃し、点数を重ねていくのに対して、1年生チームは神谷、西、成宮を中心に食らいついていく。

次々とピッチャーを試していき、4対7と突き放されるが、ついに、8回裏に5番レフトとして出ていた成宮が、マウンドに上がる。

それとともに、ショートにいた西がキャッチャーマスクをかぶった。

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