至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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ボーイの練習

圧倒的な得点力で、準決勝まで勝ち上がってきた青道に対して、対抗心を持った男が、打撃練習に勤しんでいた。

 

市大三高 4番 1年生 北川小虎

 

夏の甲子園大会の時よりも逞しくなった腕を、鞭のようにしならせ、身体全体の力でボールをスタンドへと運んでいく。バッティングピッチャーに志願したベンチ外の選手を、ボロボロにしていた。

 

俺達が打ち勝つと、既に試合が始まっていると言わんばかりのオーラを持って、ガンガン振って柵越えを量産する姿に、周りの選手は頼もしく思うと同時に、畏怖すら感じていた。

 

常にフルスイングで、ボールに食らいつき、チームがどんな状況でも、ヒットやホームランを放つプロ注目の打者へと成長していた。

 

しかし、北川の心の内はかっこいいものではない。

 

北川は元々サッカー少年である。運動神経抜群で、他の追随を許さないストライカーであった。しかし、それに待ったをかけたのが父親であった。野球ボールとグローブ、バットを買い与えられて、無理矢理松方リトルに入れられた。

 

小学生6年生になると、やる気はなくとも、才能だけで4番ショートを任され、俺様天狗状態となっていた。その状態で、城南リトルとの試合になった。

 

圧倒的な指揮力でチームを束ね、力で全体を鼓舞し、相手をねじ伏せる存在。城南リトルの全く同じポジション、打順の同学年に手も足も出ずに打ちのめされた。

 

そこから、負けてなるものかと、初めて本気で練習し、野球の勉強をし始めた。手も足も出なかった初めての存在である西に憧れ、小学6年生の時に見たスタイルを真似た。

 

ショートに君臨する、グラウンドの王様としての佇まいと、相手ピッチャーの心を折る圧倒的なバッティングを。

 

中学3年生のU-15で、初めて一緒になった時は、ついはしゃいでしまう。周りからは実力からセカンドにコンバートされたと言われていたが、実際は、隣で西のプレーを見たくて、自分からセカンドをやると、怒鳴り込みながら代表監督に申し出て、ドン引きされながらも、セカンドでコンビを組むことができて満足していた。力で押さえつける感じではなく、全体を優しく包み込むようなスタイルに西は変わっていたが、プレーを見ると、そこまで本質的なものは変わっておらず、相手のピッチャーの心を折る姿を、ランナーとして見て内心喜びまくっていた。

 

その自分の中でのヒーローが、チーム事情かは知らないが、ショートとは違うポジションを守る。それが許せなかった。城南シニアの監督を今でも許していないし、青道の監督も許せない。

 

ショートに戻っているから、まだ蹴飛ばさないでやるが、たかが2年上でそこそこ使えるか程度のやつが、西からショートを奪っていたのにイライラしていた。その結果があの夏の甲子園大会。

 

フラストレーションをすべて野球にぶつけ、甲子園で相手のピッチャーの心を折りまくった。

 

そして、今回は待望の西との再戦に、天にも登るような気持ちでウキウキしている。顔はピッチャーを睨み、オーラはヤクザ、心の中はウキウキしているという、もはやよく分からない存在となっていた。

 

そんな北川の内心を、まったく知らないまま、市大三高の田原監督は

 

「夏にエースだった田辺ボーイとはまた違ったジーニアス!北川ボーイを中心に得点をメニー!メニー!取る!アタックはこれで、来年にはエース候補真中がくるから、ディフェンスも強くなる!チームメイキングがこれから楽しみだ!」

 

と1人叫んでいた。




さすが、市大三高の監督だ‥短いセリフを考えるだけで頭がおかしくなりそうだ。
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