片岡監督は今日の試合を振り返って、監督室で頭を抱える。
今日の市大三高の試合は、打の青道として、各打者が全員ヒットを打つという、名に恥じぬ働きをしてくれた。しかし、打の青道と言っても、決してそれは投手崩壊を許していいものではない。
かつて、自分がエースであった時代もあるし、試合を作ることのできた先輩、同級生、後輩、教え子もちゃんといる。
だが、市大三高との試合は、21-14で青道の7回コールド勝ち。バスケットボールの第一クォーター終了時点の点数とどっちかと聞かれれば、みんながバスケットボールと答える。そのような得失点であった。
先発の川口が3回7失点、2番手の小宮山が2回5失点、3番手の武藤が2回2失点。武藤は北川のツーランホームランのみであったから及第点としても、2年生の投手陣がこれだと、強敵と連戦する時にとても辛いこととなる。今回は得点力で勝ったが、次も大量得点できる保証はないのだ。
明日の先発は坂井、2番手には武藤を出すとして、その後が続かないことにタバコを、もう一本取り出して、口に咥えて火をつける。
落ち着くために、野手陣のことを考える。
打線は非常に噛み合い、クリーンナップの柳、西、東全員ホームランを放つ大活躍をしてくれて、とても頼もしいと感じた。
また、よく分析をしてみれば、伊藤を除いた2年生の成績が、あまり好ましくないものであることがわかる。
特にキャプテンである藤堂は、チームが軌道に乗ってきた油断か、どこか集中できていないように思える。
上の学年がいなくなり、1番奮起をしていたが、いざチームが順調であれば、気が抜けてしまうのはわかる。それを監督としてどう導いてやればいいか、色々考える必要がある。
1年生はクリーンナップの3人もそうだが、玉森がさりげなく4安打2打点と活躍していた。試合をしているときは活躍している感じは、あまりしないのだが、結果を見ると輝いている不思議なやつだ。
他のベンチ入りしている1年生も頑張っているようだし、余裕があれば使いたいのだが、投手陣があれではなとまた頭を抱える。
冷静になった。
よし、と気合いを入れて、次の相手のことを考える。
帝東
通称神のノックを打つ岡本監督が率いる、鉄壁の守備を誇る東東京の強豪校
今回は都立の王谷、稲城実業、修北、成孔を破ってきた、勢いのあるチームだ。
偵察班が伝えてくれた情報も、気になるところが多い。
打者には突出した選手はいないが、全員が粘り、相手を消耗させて攻略していくことを目指す、そういう野球をしていた。
ピッチャーもプロ注目するほどの選手はいない。しかしエースの伊賀は勝負どころを、しっかりと把握したピッチングをしてくる。
準決勝では、稲城実業に対して、打線は先発の南野から粘りに粘り、連投の疲れもあっただろうか、7回無失点でマウンドから引きずりおとし、そこから3点を奪った。守っては、伊賀が完投して、2失点で勝利している。
稲城実業の4番天海に対して、基本的にはアウトコースのみの組み立てで、徹底的にインコースを避けた。後半になると、インコースがこないとわかった天海が踏み込むようになるが、低めに外れる、攻めた四球で、正面からは勝負をしなかった。
稲城実業の新チームは打者としては天海、南野が突出しており、その二人に対してだけ、本気で投げているようなピッチングであった。それでも南野がツーランホームランを放ったのではあるが。
決勝戦は打撃の優れたうちのチームと、守備力の優れた帝東の戦い。どちらが勝つのか、誰にも予想ができないでいた。
強面の監督が頭を抱えた後に、よしっ!と小声で言って気分を変えるの見てみたい。