至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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喜び、期待、悔しさ

side 成宮

 

「さすがに緊張するか?」といつもの無表情で、西さんが声をかけてくる。緊張しないし絶対抑えると伝えると、髪をわしゃわしゃとなで回された。父親‥いやじいちゃんに撫でられてるようで、不思議と悪い感じはしない。顔を見ると安心するし、声をかけられれば、何故か力が湧いてくる気がする。この1ヶ月だけでなんだかんだ頼りにしている先輩であった。

 

西さんがホームの向こう側へ座ると、右打者がバッターボックスに入ってくる。

1人目は自由に好きなところに投げてこい、そう言われている。

1ヶ月前に教わったスライダーをインコースに投げて1ストライク。西さんの目が少し大きく開き、笑顔を見せた気がした。

 

インコース、ボールになるところにスライダーを投げて空振りを奪い、最後はアウトコース低めのストレートで見逃し三振をとった。

 

 

 

sideout

 

成宮が8回を無安打無失点で抑えるも、9回表で得点できずそのまま7対4で、上級生チームの勝ちとなった。

紅白戦のため9回裏を行い、成宮が先頭の4番打者にヒットを打たれるも、後続をしっかりと抑えた。

成宮 2回 被安打1 無四球 無失点

神谷 6打席 4打数 2安打 1打点 2四球

 

 

side 神谷

 

ジュニアでの成績、そして紅白戦で結果を出したからか、レギュラー陣と一緒に練習するようになった。

チームの中でも走力、守備範囲では負けるつもりはない。

合間でコーチや西さんからアドバイスをもらい、徐々に周りからセンターは神谷として認められるようになってきた。

 

そして夏の大会2週間前に背番号が発表された。

1番から順番に背番号と名前が呼ばれていく。

 

「背番号6 西 晴之!」

「はい!」

 

いつもの無表情ではあるが、雰囲気がウキウキしている西さんが、ユニフォームを受け取りにいく。

 

「背番号8 神谷 カルロス!」

「‥!‥は!はい!」

ウキウキしているように見えた西さんを見ていたら、返事にどもってしまい恥ずかしかった。しかしユニフォームを受けとると、嬉しさが込み上げてくる。

 

これでレギュラーに‥憧れと並ぶことができた。

力が自然と入り、綺麗なユニフォームの形が少し崩れる。

やっとスタート地点にたてた、足手まといにはならないと、気持ちを新たにした。

 

 

side成宮

 

「背番号11 成宮 鳴!」

「はい!!」

前もって言われていた番号で呼ばれ、元気に返事をする。

質はかなり良い、だがスタミナ、経験に不安があると1番はもらえなかった。2年生と比べても打力はあるが、3年生と比べると力はないのは、日々の練習から実感している。

使ってもらえるとしたらリリーフ、合間の先発か‥

 

西さんにこの3ヶ月で、ピッチャーとは、エースとは、色々と問いかけられた。最初は何を言ってるかよく分からなかったが、3年生の背番号1を見ていると、なんとなくだけど感じるものはあった。

 

対外の練習試合で投げる雰囲気が違う。

投げるボール自体は、自分のほうが良いと思うことがある。

でもここぞというところでは打たれない。

他のチームでは崩れるところで崩れない。

西さんが長く受けてきたピッチャーだから、それ相応にすごい才能の持ち主じゃないの?と思ってたらそうでもない。

目付き、振る舞い、周りへの声のかけ方が他のピッチャーとは違う。味方からの声のかけられ方、そして何より起用方法が違う。

 

でもそれがなんだ。

自分ならそもそも崩される状況になんてならない。

俺は俺だ。

あれに劣っていると、そう周りに、そして西さんに思われていることが何より悔しかった。

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