2 玉森 ライト (右)
3 柳 レフト (左)
4 西 ショート (左)
5 東 サード (右)
6 藤堂 センター (右)
7 角田 セカンド (右)
8 蜂須賀 キャッチャー (左)
9 坂井 ピッチャー (右投げ右打ち、オーバースロー)
青道偵察班メモ
伊賀 泰時 2年生 帝東
右投げ右打ち スリークォーター?
オーバースローと言うには、少し斜め方向から、腕が出てくるため、スリークォーターと思われる。最速130キロ後半のストレート、変化球はスライダー、フォーク、シュートを確認している。
コントロールはとても良さそうだ。
いくら偵察班からもらったビデオを見直しても、抑えられる気がしない。伊賀は頭をかきながら、市大三高から7回で21得点14失点した青道打線、投手陣を分析していく。
1番から5番まで、正直相手にしたくない打者が並び、6番は強豪らしい打者だが、集中しきれてないから、まだつけこむ隙はありそうだ。7、8、9番は安牌か、油断しなければ、確実にアウトをとれるだろうと感じる。
また、相手先発として考えられるのは、右投げの坂井。130キロ後半の直球、シュート中心の組み立てで、時折カーブを混ぜてくる。要所でチェンジアップを投げて、緩急で相手の体勢を崩す。
国士舘は手放しで強い、と言い切れるチームではないが、恐らく、青道の打線の破壊力に浮き足だったのであろう、冷静であった打者はキャプテンくらいで、ヒットもそのキャプテンのみ。
じっくり見ていくと、チェンジアップが時折浮いて、甘いコースにいっている。カーブもゾーンには入るが、ストレート、シュートより精度は低そうだ。
チームミーティングで、各自考えたことを共有し、岡本監督がそれをまとめて、チームでの青道攻略方針を固めていく。
そして試合当日となった。
試合前のじゃんけんで負け、帝東は後攻となり、伊賀は天を仰いだ。
1回表
青道の先頭打者、伊藤が右打席に入ってくる。去年の秋の怪我から這い上がってきただけに、変な揺さぶりは通用しそうにない。球数を稼いでくる打者だとわかっているため、力を抜いたストレート2つを、アウトコース低め、インコース高めに投げ、あっさりと2ストライクをとる。
(涼しい顔して見逃してきやがる)
真ん中低めから、右打者のインコースへ滑り落ちるような、ツーシームで引っかけさせようとするが、見極められ2ストライク1ボールに。全国でもそうはいないであろう、いきなりの好打者に苦笑いする。
アウトコースの中段から、低めに落ちるようなフォークを投げるが、軽々カットされる。
(稲城実業の打者はこれでアウトを量産できたんだがな)
力を抜いて投げるのをやめ、全力で抑えることにする。インコースの低めにツーシームを投げると、伊藤はその球を弾き返すが、ファーストライナーとなった。
(キレも球速も違うのにあんなに合わせることができるのかよ)と冷や汗が流れてきた。
▽
玉森は右打席に入ると、直前に伊藤さんから「2段階のギアを使い分けてる。最初は緩めにくるかもしれないから、そこを思い切り打ってもいいかもね」と言われたのを思い出す。
ケースは1アウトランナーなし、好球必打。いつもならそれで終わるのだが、伊藤さんにアドバイスされた通り、甘いと思ったら思い切り振るというのを加える。鼻を擦って自分を落ち着かせ、バットを構える。
初球、インコース低めにきたコントロール重視のストレートを、自身のフルスイングで引っ張った。1塁へ一生懸命走り、その途中で、状況を確認しようとして、顔を上げると、1塁ベースに足をかけたところで、球場から歓声が上がる。
何事かと周りを見てみると、審判の人が右手を上に挙げて回していた。
ベンチに戻ると
「公式戦初ホームランおめでとう。中学で西の後を任されていたのも納得できるよ。だいぶ打席で落ち着けていたな」と伊藤さんから誉めてもらった。
ルーティーンをして、落ち着いてはいたが、フルスイングできたのは伊藤さんのおかげだと伝えると、掌を向けられる。何だ?と思っていると
「前の試合、西とハイタッチしていただろ?自分の時もしないとな」と言われ、笑顔でハイタッチをした。
そこから、相手ピッチャーの伊賀さんは、全力で投げるようになった。
柳は、7球目のインコースに入ってくるスライダーを、引っかけてショートゴロに、西はまともに勝負されずに四球、東は情報になかったチェンジアップを投げられ、緩急に惑わされ、サードへゴロを打ってしまい、3アウトとなった。