至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

41 / 148
1 伊藤 ファースト (右)
2 玉森 ライト (右)
3 柳 レフト (左)
4 西 ショート (左)
5 東 サード (右)
6 藤堂 センター (右)
7 角田 セカンド (右)
8 蜂須賀 キャッチャー (左)
9 坂井 ピッチャー (右投げ右打ち、オーバースロー)


早すぎる分岐点

1回表を投げ終えた伊賀は、ベンチで頭をかく。

 

1番打者の伊藤を打ち取って安心してしまい、それがわずかに甘くなったストレートとして出てしまった。コントロール良く投げられた球と思われるかもだが、あれは失投だ。1年生の夏から特集されてた選手の雰囲気は、やっぱり違うなと思う。

 

あの2番打者、玉森が、思い切りのいいバッティングを、ランナーがいるときにしているのは、ビデオで確認はしていた。しかし、ランナーなしでは、出塁を1番重要視した、粘るバッティングを予想していただけに、ダメージはでかかった。割りきって、後続をしっかり抑えたのは我ながらよかったが。

 

実際に青道打線を相手にしてみると、GWに練習試合で対戦した夏の甲子園優勝校、西邦の打線よりも厄介に感じる。西邦の1年生キャッチャー、飯岡もしぶとい強打者だったが、伊藤にはそれに近しいものを感じる。玉森は掴み所がなく、これも厄介。柳はパワー以外の全てが超高校級、東はあの長打力に、更に技術がついてきたら、手がつけられなくなりそうだ。

 

ただ、この中でも、やはり西は別格で、わざと初球に外したストレートを、どのように打って、次の展開をどうしようか、試合の流れを選んでいるような、鼻から勝負にならない印象を受けた。だから、今日の試合はあいつには全部四球。警戒して損はないだろうと思う。確実に勝つために、選んでいくのは打者の西だけじゃない、投手の俺もだ。そう簡単に流れは渡さないと、1番打者が四球を選んだのにニヤッとした。

 

2番打者が打席に入ったので、3番打者の俺がネクストのサークルに入る。相手のピッチャーはビデオの通り、ランナーをとても気にしている。ランナーありの場面では、ほとんどがストレート、シュートでカーブ、チェンジアップは見せ球程度であった。だから、ストレートとシュートに絞ってバットを振り抜く。

 

ノーアウト1,2塁になり右打席に立って、ピッチャーの坂井を観察する。ピンチになると顔付きが変わった?今大会でピンチの場面はなかったが、これはどうしたものか。マウンドでこちらを睨み付け、オーラを出してくる坂井に動揺する。

 

初球、アウトコース低めのストレートで1ストライク。球のキレが上がっている気がした。もしかしたらこいつヤバいと思うが、インコースから向かってくるシュートが、外れて1-1の平行カウントに。

 

一度打席を外して、一息つく。前情報でピンチに弱かったんじゃねぇのかよと、内心毒づきながら、再びバットを構える。インコースの高いストレートを思わず振りにいってしまい、2ストライク1ボール。2球粘るが、インコースのボールとなるカーブを打たされ、セカンドにゴロとなり、4-6-3のダブルプレーをとられてしまった。

 

(相手のピッチャーをしっかり観察して、畳み込むためにあえて3番打者にしてもらったのに、自分でチャンス潰すとはな)

 

悔しい気持ちを隠しながら、4番打者に、「インコースにストライクが入っていない。内を捨てて、しっかりと外に踏み込めばいけるかもしれない」と伝える。

 

続く4番打者は、伊賀の指示通り、3球目の外のストレートを踏み込んで右中間を切り裂く、強烈な同点となるタイムリーツーベースヒットを放った。

 

5番打者も迷いなく外のストレートを弾き返すが、当たりがよすぎてシングルヒットとなり、2アウト1,3塁となった。

 

 

 

 

 

 

青道のキャッチャーである蜂須賀は、監督を見て、タイムをとり、内野陣で集まる。坂井はピンチでも強い気持ちで、投げることができるようになったが、ピンチで、インコースにミットを構えると、余計な力が入って、ボール球になる。これが今の課題となっていた。上手くリードできていると思ったが、4番打者が、アウトコースに迷いなく踏み込んできたことから、3番に今日だけ入っている相手のエース、伊賀に見抜かれたと感じていた。打線が安定して点を取ってくれるだろうと、あえてリードを変えなかったが、5番も同じように踏み込んできたため、確信した。

 

 

 

蜂須賀は打撃は杜撰であるが、守備に関しては、甲子園に行った先輩や、1学年上の中山さん、横田さんに育てられ、今では投手陣全体を任される、全国レベルのキャッチャーに育っている。

 

同学年に1人しかいないキャッチャーとして、投手陣や、後輩キャッチャーの育成を1人で引き受けており、打撃に回せる時間がほとんどないことから、激務なのがうかがえる。最近1年生の岸谷が成長著しく、高校野球に通用するか、くらいまではきたが、それでもまだ、自分自身を鍛えるべき時期だとして、すべてを1人でこなしていた。

 

 

 

坂井に対して、ストレートとシュート主体の組み立てを、これから変えること、正直にインコースがストライクに入らないのが、ばれていることを伝える。外中心で組み立てることもできるが、相手は甲子園常連と言われる帝東、何点かは覚悟しておいた方がいい。

 

「あえて、ここで‥だな‥インコースを投げることができるようになったら、坂井、お前が俺達のエースになるな」と左肩を軽く叩いて、ホームに戻る。

 

(チャンスを怖がって腕が縮こまっていた坂井、そんな自分が嫌で、負けたくなくて夏から頑張ってたんだろうが!)

 

この程度乗り越えてくれると信じて、目付きが変わった坂井に対して、右打席にたつ、6番打者のインコースにミットを構えた。

 

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