1 伊藤 ファースト (右)
2 玉森 ライト (右)
3 柳 レフト (左)
4 西 ショート (左)
5 東 サード (右)
6 藤堂 センター (右)
7 角田 セカンド (右)
8 蜂須賀 キャッチャー (左)
9 坂井 ピッチャー (右投げ右打ち、オーバースロー)
青道vs帝東 1-1
1回裏2アウト1,3塁 6番打者
タイムが終わり、西はショートの定位置に戻る。リードを変える話をしていたので、口を挟まなかったが、坂井さんはインコースに投げきれるのか、守っていて不安があった。
前回の14失点を見ていると、蜂須賀さんの苦労が悲しくなってくる。武藤は大丈夫であったが、北川にホームランを打たれた後の川口さん、小宮山さんはひどいものであった。
川口さんは腕が振りきれず、球威が落ち、コントロールも落ち着かずに四球からズルズル点を取られる。小宮山さんは、ストレートか変化球かが、腕の振りの違いから分かってしまうので、弱点である、素直なストレートを狙い打ちされるのを避けるために、変化球のみでの勝負となる。
リード面で、しっかりとした持論があり、中山さんや私も認めるものであったが、頼れるキャッチャーが蜂須賀さんのみであるためか、すごく大変そうで、こちらも心配になる。伊藤さん、角田さん以外の2年生レギュラー、ピッチャー陣が不安定なため、チームは勝っているが、どこかスッキリとしない。蜂須賀さんは単純に、役割が多過ぎての過労である。
これ以上2年生に負担はかけれないと、声を出し、東に目を向けると、呼応して、大きい声を出してくれる。東のグラウンド全体に響くような大きな声は、心に響いてくるものがある。私自身の中では、自分達の代では、キャプテンは東だと思っている。それを私ともう一人、努力で1軍に後から上がってきた人で支えてやればいいだろうと思っている。
だが、それは将来のこと。今を勝たねば未来はない。坂井さんがインコースの低めにストレートを決めて1ストライク。小さくガッツポーズを蜂須賀さんがしているのを見逃さない。
更にストレートをインコース高めに投げきり2ストライク。ノッてきた坂井さんに対して、蜂須賀さんはアウトコースにミットを構える。
すると、坂井さんは微かに笑って、アウトコースに自己最速となる141キロのストレートを投げ、空振り三振をとった。
▽
(うわー、開き直った?なんか主人公みたいなのおるわ)
坂井がアウトコースのストレートで、三振をとるのを見て、伊賀は厄介なことになったなーと思う。せめて3点くらいは取りたかったが、他にも弱点はあるから、じっくり攻めていくことにする。
2回表のマウンドに登ると、6番にヒットを打たせて、7番にわざと四球を出す。次打者の8番、蜂須賀がこちらをじっくりと観察するように見ている。打てないのは知ってるんだよと、強気に攻めて三球三振を奪う。続く坂井からも三振を奪って2アウト1,2塁、1番の伊藤と対峙する。
伊藤には厳しめに外れるところを投げて、さっさと四球で次の打者に移る。ボール球には手を出してこないから、打ち取ろうとしなければ楽だ。悔しそうなふりをするのを忘れない。キャッチャーに合図を出して、こちらに声をかけてもらう。そして、先程ホームランを打って、その感触が残っているのか、若干大振りになってしまっている2番の玉森を、ギアを上げて三球三振に仕留めた。
このペース配分だと恐らく自分は7回まで。抜けるとこは抜いて、強力打線の攻撃をいなしていくのは大変だ。
2回裏はこちらは三者凡退。リードを変えられたからか、対応するまで時間がかかりそうだ。だが次は1番からの好打順、点は取ってくれるだろうと思う。
3回表のマウンドに上がると、打者は3番柳。こいつには打たせるわけにはいかないので、チェンジアップも使って、全力で抑えにいく。8球目のツーシームを引っかけさせて、セカンドゴロに仕留める。しっかりと深呼吸をして、西が左打席に入るのを見る。無表情ながら全体を見通すような眼。やはり真っ向勝負は避けると、インコースよりも更に内を通るストレートで、攻めている印象をつける。2球目のアウトコース低めに、少し外れるフォークを、西が無理矢理掬い上げ、左中間へと運ぶ。
(はぁ?嘘だろおい)
ツーベースでなんとか外野陣が抑えてくれるが、冷や汗が止まらない。
(これはもう攻めた感じを出すとか言ってられないな。おとなしく敬遠しよう)
チャンスになるとより怖い東を、簡単に四球で次の打者へ移り、藤堂を引っかけさせて6-4-3のダブルプレーで、なんとか凌ぎきる。
(点は取らせなければ、ランナーなんていくらでも出ていい。最後さえしっかりしてれば、青道打線も抑えることができる)
そう伊賀は確信した。