至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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はじめての挫折

秋季大会に続いて、青道は、圧倒的な得点力で神宮大会を制覇した。神宮大会の3試合で、計37得点をあげた打線を、監督の経験が少ないからと、青道の誘いを蹴った、顔を青ざめさせたシニアの投手達や、青道に入ろうと決めていた、オーラを出して打者を見る少年や、「俺なら抑えてやるぜ!おらぁぁぁ!」と叫んで注意を受けた少年など、様々な観客が見守った。

 

しかし、喜んでばかりはいられない。地獄の冬合宿が始まり、全国一とされる打撃陣は更に成長し、コンバートする者や、自分の武器を磨くもの、新たな境地に至る者、そしてそれに乗り遅れるものが出始める。

 

個々人が己を見つめ直して鍛え上げる、そんな1週間を、全員が乗り越え、全体的に逞しくなった。

 

年が明けると、練習、紅白戦を行い、戦力の上澄みがレギュラーへと、監督のなかで決まっていく。そして、今年は1月末、対外試合が解禁される前に、背番号が決まった。

 

1 坂井 2年生

2 蜂須賀 2年生

3 伊藤 2年生

4 角田 2年生

5 東 1年生

6 西 1年生

7 栃谷 1年生

8 柳 1年生

9 玉森 1年生

 

ここまでがレギュラー

 

10 武藤 1年生 ピッチャー

11 川口 2年生 ピッチャー

12 井手 1年生 ピッチャー

13 藤堂 2年生 外野手

14 加山 2年生 サード

15 神田 1年生 外野手、セカンド

16 加賀屋 2年生 ファースト、サード

17 佐々木 2年生 外野手

18 岸谷 1年生 キャッチャー

 

 

 

 

 

 

藤堂は、実際に背番号として今の立場を突きつけられると、かなりくるものがあった。1年生の栃谷のバッティングは、あの世代の城南シニアの3番を打っていたことから、とてもいいことは分かっていた。実際に、単純に打撃としては栃谷の方が上で、外野守備はまだ自身の方が上だが、目に見えて上達している。

 

チームが順調だからと、キャプテンだから外されないと、自覚のない油断をしていただろうか。これではいけないと思うが、焦れば焦るほど差が開いていくように感じる。1年生の躍進が著しく、2年生は苦境に立たされている人が多い。しかし、そのなかでも坂井、伊藤、角田は自身を磨いて、1年生の模範となり、蜂須賀に至っては、投手陣、キャッチャー陣のリーダーとして、しっかりと仕事をし、その立場に慣れたのか、自身の能力の向上にも努めている。

 

ベンチの同級生と素振りし、お互いに励まし合って、レギュラー奪還を狙う。基礎的なことから、チェックし合ってアドバイスしていく。まだこれで決まった訳じゃない。確かに今回は背番号は譲ってしまったが、選抜までにセンターのポジションに戻るために、自身を厳しく戒めていく。

 

 

 

2月の対外試合を経て、片岡監督に、選抜はレギュラーから漏れたことを伝えられた。

 

両手拳を握りしめ、歯を食い縛って我慢しようとするが、涙が止まらない。やれることはやってきた。調子も上向きになり、前よりも成長したはずだった。だが、それでも柳、玉森、栃谷を上回ることはできなかった。

 

まだチャンスはあるが、悔しいものは悔しい。リトル、シニアから常にセンターのレギュラーを譲った経験のなかった、元青道の切り込み隊長はその日、一睡もすることはできなかった。




片岡監督メモ

加賀屋 利道 2年生 ファースト、サード
右投げ右打ち

2軍で力をつけてきたパワースラッガー。さらに技術を磨いていけば、代打の切り札として使えそうである。守備は雑なところがあるため、あまり期待できない。
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