至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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高校2年の夏
プロローグ


青心寮

 

ここにあの人達がいる。

 

どこかフワフワとしたような心を落ち着かせながら、しっかりとした足取りで歩みを進める。、こまめに情報を取り寄せて、時には現地で、時にはテレビで見ていた。

 

川口さんと東さんの名前が書かれている名札の下に、自分の名前があるのを確認する。ドアをしっかりとノックして開け、はっきりと大きな声で挨拶をする。

 

「初めまして!今日からお世話になる伊佐敷 純といいます!よろしくお願いします!」

 

練習した挨拶が決まった!と思っていると、こちらを見下ろすほど大きい東さんが

 

「おぅ!これから一緒に生活していく2年生の東 清国や!よろしくな!」

 

と返してくださったのに感動していると、先ほどすれ違ったでかいやつだと思われる悲鳴が寮内に響き渡った。

 

「あの部屋は今年もやっとんかいな」と東さんが出ていくのについていくと、テレビで見た西さんがドラキュラの仮装を無表情でしているのを見て、腰を抜かしているでかいやつがいた。

 

「いつものやってるのか!」

「無表情やから怖いの~」

 

と後から名前を教えてもらった川口さんと東さんが言いながら、でかいやつ、増子を部屋の中に運んでいった。佐々木さんは笑い転げて見ていた。

 

神宮大会や、春の甲子園で見たカッコいい姿とは違い、等身大の先輩たちの姿を見れた気がして、入学をした実感がしてきた。

 

 

 

 

 

 

おそらく、次期エースとなるであろう武藤さんと同室になり、部屋の物品の整理を終えたクリスは、武藤さんに付いていって、自主練習を共にする。

 

キャッチボールを軽くしながら、柔軟などの自分のケアについて話していく。3年生の世代では怪我で主力が欠けたことがあるようで、2,3年生は軽めの怪我、違和感をすぐに報告し、徹底した管理をしているらしい。

 

ある程度の無理は仕方がないときもあるが、ひどいことになりそうな怪我、違和感は隠すなよと、武藤さんに強めに言われた。

 

確かにキャッチャーというポジションは激務で、怪我をしやすいポジションだ。チームに迷惑をかけることがないようにしようと、心のなかで誓った。

 

 

 

翌朝、6:00な朝練習が始まるとのことだったので、5:15に起きると、既に武藤さんはベッドにはおらず、床で柔軟をしていた。早いですねと声をかけると

 

「2年生でベンチ入りしているやつは、たぶん全員やっている」と答えられ、既に心構えなどから違うのかと感心した。

 

武藤さんの柔軟に混ざって色々話していく。3年生の先輩がお前ら早いなーと声をかけきて挨拶をして、全員でヨーグルトや、バナナなどを食べてグラウンドへ向かう。

 

快晴、絶好の野球日和であった。

 

 

 

グラウンドにテレビで見ていた、グラサンをかけた監督がやってくる。それだけで全体の空気が引き締まる。

 

順々に挨拶を新入生がしていく。

 

……

 

「風間中学出身 坂井一郎!外野手希望!一生懸命頑張ります!」

 

「よし次!」

 

「はい!綾上シニア出身!伊佐敷 純!希望ポジションはもちろん投手!憧れる投手は~‥‥」

 

「待て待て待て、お前全ポジション言うつもりなのか?」

 

……

 

増子、丹波、小湊などの自己紹介もあり、続いて

 

「赤堂中学出身 結城 哲也!希望ポジションは特になし!!どこでも守れます!!」

 

その言葉に2,3年生が、特に2年生がざわつく。

 

「西みたいなんやつが来たんか?目付きもええし、やるやつなんかいな」

 

「好きな時代劇は子連れ狼です」

 

「聞いてねーよ」すかさず3年生がツッコむ。

 

……

 

自分の番が来た。

 

「丸亀シニア出身、滝川・クリス・優。希望するポジションはキャッチャーです」

 

おぉー!と結城の時とは違ったざわめきが起こる。

 

何故か列から離れてメンチをきってくる伊佐敷に、戸惑いながらも無言でいると

 

「コラァ! そこぉ!何やってんだ!!」

 

「さーせん!」

 

と、大人しく列に戻っていった。

 

そして、練習が始まると、午前は軽めの運動をし、午後からは能力テストが行われた。

 

キャッチャーテストのため、ベンチ外のピッチャーの投球を受けることになるのだが、投手力不足、層が薄いと言われている青道だが、シニアで受けてきた投手とは明らかにレベルが違う。確かにコントロールの甘いところがあるのだが、まともに捕れるのは自分くらいであった。

 

 

 

ピッチャーテストでは凡庸な投手が多く、目を惹くのは二人くらいか。うおー!と叫びながら、的外れな方向へボールを投げる地肩の強い伊佐敷、気弱ではあるが、ある程度まとまったところにボールのいく、120キロ後半のストレート、そしてカーブを投げることのできる丹波。この二人がうまく育たないとなかなか厳しいかもしれない。

 

 

 

翌日から、自分だけ1軍に混ざり、練習させてもらっている。個性的で、体力も技術もない1年生を見て、東さんは

 

「おいクリス!お前もこれから大変やの~、お前らの代ヘボの集まりやないかい!」と笑って言い放った。

 

「あかんわコイツら‥‥未来ないで‥‥」

 

(そうかなぁ‥‥2年生が凄すぎるだけだと思うけど)

 

言われるとやはり不安になるが、今できることは1軍でしっかりやっていくことだと気を引き締め直し、声を出していく。

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