至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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新たな挑戦

ドォン!

 

春季都大会で優勝した、青道のブルペンからは、普段鳴ることのない、重い音が響き渡る。井手がフォーム矯正のために、2軍で調整をするという理由から、試合を作れる投手が坂井、川口、武藤の3枚となった。そのため、部員の中で投げることのできる者を、片岡監督は全員試しで投げさせていた。

 

ブルペンで投げているのは西である。地肩がとても強いことは分かっていたが、ストレートは、ある程度のコントロールの目処がたちそうだ。スピードガンでは今のところ最速145キロを記録し、大きく荒れることはなさそうだ。

 

だが、慣れていないことだからか、打者が立つと、20球を越えたあたりからコントロールが悪くなっていき、40球を越えるとストライクゾーンにすら入らなくなってくる。本人は疲れた様子はないことから、精神的なものだろうか?

 

「西、何かイップスみたいなのはあるか?」

「‥‥はい‥‥恐らく1イニングは投げれるとは思うのですが、それ以上になると、上手くコントロールがきかなくなります。」

 

打線の中核でもある西に、あまり無理をさせるわけにもいかないので、試みを変えて、試しにスライダー、カーブ、フォーク、シュートの握りを試してもらうと、スライダー、カーブ、シュートは大丈夫そうだが、フォークは使い物にならなさそうであった。

 

急造投手ではあるが、妙に様になっており、夏までに精度、質を上げて、1,2回を抑えてくれると、チーム事情的には助かる。

 

片岡監督は、ピッチャーの西が早ければ夏、せめて秋までには、より長い回を投げることができるようになればと思っていた。秋以降の新チームでは、今のところ計算できそうなのが、武藤のみとなることを危惧している。

 

西がピッチャーをしていることに、触発されたのか、坂井、川口、小宮山の3年生投手陣は、更に真剣に練習をするようになったことも収穫だろうか。

 

このことは、完全にチームの外には隠す。相手の攻撃を完全に潰す時に起用するのが、1番効果的だろうと考える。

 

ピッチャー陣とキャッチャー陣の関係は良好であり、お互いに意見を言い合い、高めあっている。クリスが積極的に西に話しかけているが、何か共有するものがあったであろうか。

 

片岡監督の頭の中には、先発に坂井、川口を使い、中継ぎに武藤、抑えに西という形が浮かんできていた。

 

 

 

 

 

 

 

関東大会に向けて練習を積んでいるのは、青道だけではない。群馬県にある白龍高校でも、グラウンドで守備練習が行われていた。

 

「あー!すまん!飛ばしすぎた!」

 

と打球を放ったノッカーが謝るが、その飛球に一直線に向かっていき、ダイビングキャッチをし、すぐに体勢を立て直して、中継役にストライク返球をする男がいた。

 

白龍高校に所属する2年生、蒲生 久英。圧倒的な加速でトップスピードに乗ると、前後左右関係なく駆け抜け、広範囲をカバーする守備力を魅せつける。

 

昨年の夏の甲子園大会では1番を打ち、先頭打者本塁打や、大会最多盗塁を記録した、全国屈指のリードオフマンの印象が強い。

 

だが現在、蒲生は白龍高校では4番打者となっていた。佐々木監督が就任してから、筋肉の分析などをして、足が早い選手を優先してとった結果、長打を打てる選手が少なくなっていた。昨年度の3年生はそうでもなかったが、現2,3年生にパワー型の選手がおらず、総合的に蒲生が4番を打たざるをえないという、選手育成に失敗したというよりは、俊足巧打型の選手が集まった様子であった。

 

だがそんな状況でも蒲生は打ち続け、盗塁し、守備でも魅せ続けた。それがあっての関東大会出場。中学3年生のU-15では1番を打っており、夏の甲子園の活躍から、リードオフマンの印象はつよいが、シニアでは元々4番を打っていた経験が生かされる。

 

昨年の甲子園のインタビューで、注目する同級生として挙げた5人のうちの、2人、東と西が所属する青道と、関東大会で当たることを楽しみにしながら、日々の練習を行っていた。




原作を見返していて、選抜の登録枠が18人だということに気がついたので、修正していきます。
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