至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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意地と実力

GWの練習試合を経て、5月中旬、関東大会が始まった。全17チームで行われるこの大会では、東京からは2校、青道高校と仙泉学園が出場することとなった。

 

関東大会での初戦(2回戦)、青道オーダーは

 

1 玉森 ライト (右)

2 伊藤 ファースト (右)

3 柳 センター (左)

4 東 サード (右)

5 西 ショート (左)

6 角田 セカンド (右)

7 栃谷 レフト (右)

8 岸谷 キャッチャー (右)

9 坂井 ピッチャー (右投げ右打ち、オーバースロー)

 

と発表された。相手となるのは、埼玉の強豪、浦島学院。勝ち進めば、5日間で4試合をこなすこととなるため、投手陣の選手層が鍵となってくるこのトーナメントは、青道にとっては厳しいものとなるだろう、そう言った意見が多数を占めていた。

 

片岡監督としては、投手の消耗を避けるために、コールドでの勝ちを狙っていた。それに立ちはだかってくるのは、浦島学院の3年生エース、沖田 惣太郎。140キロ前半の非常に伸びのあるストレートに、スライダー、カーブ、スローカーブ、シンカーを投げてくる、サイドスローの右腕である。夏の大会も埼玉代表として出てくるのは、沖田率いる浦島学院が、大本命とされているため、投手陣豊富なチームとどう戦っていくか、その前哨戦として見ていた。

 

青道の後攻が決まり、選手たちは守備の準備を始める。選抜で経験を積んだ選手たちはきびきびと行動する。その様子を見て、非常に頼もしく感じる。このメンバーであれば夏の甲子園大会も行けるだろうと思い、静かにベンチで頷いていた。

 

 

 

しかし、実際に試合が始まると、初回、青道打線は沖田の前に三者凡退に倒れる。坂井も浦島学院の打線を、失点をしながらも、大怪我しないように立ち回る。

 

6回終了時点で、青道は東のホームランの1点のみで、4-1で負けていた。

 

 

 

 

 

 

(全国屈指の投手に久々に当たったからやろか?なかなか糸口が見えんなぁ。春の甲子園では、西邦の斉藤さん打ち崩してんけど、調子が悪くてキレ、ノビがいまいちな感じやったしなぁ)

 

ここまで無安打に抑えられている柳は、ネクストのサークルで、沖田さんのピッチングにタイミングをとりながら考える。

 

チーム全体で東のホームラン、西のシングルヒットの2安打のみ。西がランナーに出た時も恐らく意図的に、ダブルプレーをとられてチャンスを潰されている。

 

(6回裏まであんだけ飛ばしとるんや。次の回、8回からは継投してくるんやろな。このまま抑えられた、このイメージを与えるのもあれやから、ここからやるしかないねんな)

 

伊藤さんが四球で1塁に向かうのを見て、1度深く息を吐いて左打席へ向かう。ここで、伊藤さんに代走が出され、神田が1塁ランナーとなる。

 

(ここで代走を出すってことは、勝ちに行っとるんやんな。ここはしっかりやっていくか)

 

初球、インコース高めのストレートを見逃し、外れて1ボール。続いてスライダーが外れて2ボール。1塁ランナーの神田が、沖田さんを威圧していく。

 

「走った!」

 

内野手の声に反応して、沖田さんがウエストし、キャッチャーが2塁へ投げようとするが、ランナーが1塁へ戻っていることに気がつく。

 

(やっぱえぐいで、陽ちゃんの走塁)

 

アウトコース低めのストレート、恐らく1番自信のある球で、2塁へ送球しやすいようにコース指定された球を、逆らわずに打ち返す。ボールはぐんぐんと伸びていき、レフトスタンドへと飛び込んでいった。

 

(読みもスイングもドンピシャやたな。しっかし、冬の合宿はきつかったけど、パワーがついて、逆方向にもえらい飛ばせるようになったんは良かったな。)

 

ネクストから歩いてきた東とハイタッチして

 

「初球やね」

「そうやな」

 

と短く言葉を交わす。ベンチに入ろうとしたところで、後ろから甲高い金属音が聞こえて振り向くと、東が見せつけるように右手を突き上げて、ベースランニングをする姿があった。

 

(ほんま、頼もしゅうなりよって。やっぱ西が認めた4番はさすがやな)

 

普段のマスコット的な姿に目をつむり、オーラ全開に相手エースの心を折った東に、敬意を抱いた。

 

浦島学院ベンチはタイムを告げ、ピッチャーの交代が宣告された。

 

ピッチャーが代わっての初球を、右中間へ西がスリーベースを打ち、角田さんがしっかり犠牲フライを打って、あっさりと勝ち越すのを見て

 

(やっぱ東、西と同じ高校に来てよかったなぁ)

 

と、自分以外にも頼れる打者が多い打線に感謝した。

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