至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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紅白デビュー

浦島学院のエース、沖田を一度は退け、レフト送りにしたが、8回の裏にマウンドへ戻ってくると、吹っ切れたように全力投球をしてくる。1点差で勝っていたが、9回表に坂井が1点をとられ同点になり、延長に持ち越されてしまう。10回の表に、代わったばかりの川口が2失点すると、なんとか下位打線でチャンスを作り、玉森のタイムリーで1点は返すが、伊藤が三振となり、反撃はここまで。6-7で青道は初戦敗退を喫した。

 

エラーはなく、浦島学院のエース、沖田から5点を奪った野手陣は、期待どおりの結果を出した。それに対して、ここぞという時に無失点で抑えてくれるであろう存在、安心して任せることのできる、絶対的なエースの不在、これが雑誌に取りあげられた。

 

確かに坂井、川口、武藤のように、試合をある程度作ることのできる投手はいるが、0点で抑え続けることを、期待できる投手はいない。GWに行われた中堅校との練習試合、5試合の平均失点は4点であり、相手が浦島学院であったのを考慮すると、9回5失点の坂井はよく抑えた方である。

 

 

 

6月になると、片岡監督は、戦力の確認、および、2軍以下の選手から戦力を探すために、紅白戦を行うことにした。

レギュラー陣を除いたメンバーで構成していく。

 

紅チーム

 

1 山崎 2年生 ショート (右)

2 佐々木 3年生 ライト (左)

3 神田 2年生 センター (左)

4 加賀谷 3年生 ファースト (右)

5 滝川 1年生 キャッチャー (右)

6 安達 3年生 レフト (右)

7 牟田口 3年生 セカンド (右)

8 道川 2年生 サード (右)

9 川口 3年生 ピッチャー (左投げ左打ち、サイドスロー)

 

 

白チーム

 

1 田坂 3年生 レフト (右)

2 栗原 3年生 ショート (左)

3 藤堂 3年生 センター (右)

4 加山 3年生 サード (右)

5 田中 3年生 セカンド (右)

6 岸谷 2年生 キャッチャー (右)

7 梅田 3年生 ライト (左)

8 結城 1年生 ファースト (右)

9 坂井 3年生 ピッチャー (右投げ右打ち、オーバースロー)

 

 

 

片岡監督は、このチームを組むときに、結城という1年生に注目していた。練習のあと、他の1年生が疲れ果て、寝込んでしまうなか、一人黙々と、自主練習でバットを振り続ける男。最近は2年生の居残り練習組に混ざって素振りをしており、特に柳に可愛がられている。最近は、左右反転した柳のようなフォームで、鋭いスイングをするようになってきている。

 

体はまだ出来上がっておらず、守備に関して拙いところはあるが、使ってみようか、そう思わせる何かを感じさせられていた。

 

 

 

 

 

 

結城は、紅白戦が始まると言われ、同級生と共にグラウンドに集合すると、いきなり名前を呼ばれて、白チームのファーストを守ることとなった。2,3軍の上級生を差し置いての抜擢に、手汗が止まらない。

 

昨日の自主練習が終わるときに、柳さんがニヤニヤしながら

 

「明日は頑張りなや~♪」

 

と声をかけてきた理由はこれかと、天を仰ぐ。だが、いきなりきたこのチャンスをものにしなければ、このまま3軍で終わってしまうかもしれないと、気合いをいれた。

 

野手陣は、紅チームの1番~5番、白チームの3番~6番は1軍の選手で、それ以外は2軍の選手で構成されている。先輩に聞くと、これでも他の強豪校の打線並みとのことだ。

 

 

 

紅チームの先攻で始まる。初回、山崎さんが粘り、四球をもぎ取ると、佐々木さんがヒット&ランで、ライト方向の打球を放つが、セカンドの田中さんが上手く捌き、4-6-3のダブルプレーとなる。

 

先輩たちに鍛えられたおかげか、しっかり送球を捕球できたことに満足していると、3番の神田さんが、綺麗にセンター前ヒットを放つ。

 

素晴らしい打撃だったなと、神田さんに話しかけようとすると、真剣な目でピッチャーの坂井さんを見ていたので、話しかけることができなかった。

 

牽制球に備えて、右足を1塁ベースにつけ、ファーストミットを坂井さんの方に向ける。右隣にいる神田さんのスパイクが、地面を蹴る音が鳴り続ける。

 

「ザッ‥‥ザザッ‥‥ザッ」

 

どうしても意識してしまう。するとチラッとこちらを確認した、4番の加賀谷さんが、鋭い打球を1塁方向へ放ってきて、集中しきれていなかった自分の股の間を、ボールが潜り抜けていった。

 

「おい!何トンネルしてんだよ!」

 

カバーに入ったライトの梅田さんが捕球した頃には、神田さんは3塁の手前まで来ており、そのまま更に加速して、ホームベースへと矢のように滑り込み、紅チームに1点が入った。

 

「落ち着いて深呼吸しろ。そうだ、あれが1軍レベルの打撃と走塁だ。疲れるかもしれない、気になるものがあるかもしれないが集中力をきらすなよ」

 

と田中さんに注意され、慰められる。

 

「こういう時こそ声を出せ。まだ俺は終わってないとアピールして、自分を奮い立たせろ!」

「はいっ!さぁ!こぃぃ!」

「よし!2アウト!ランナー2塁のケースだ!練習でしてきたものを見せてやれ!」

 

他の内野陣も応えて声を出していく。

 

一瞬ニヤッと笑ったような5番のクリスが、1塁方向への強い打球を放ってくるが、ダイビングキャッチをして、ボールがミットにあるのを確認した後、1塁カバーへきた坂井さんにボールをトスした。

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