至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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先攻 紅チーム

1 山崎 2年生 ショート (右) ○
2 佐々木 3年生 ライト (左)
3 神田 2年生 センター (左)
4 加賀谷 3年生 ファースト (右)
5 滝川 1年生 キャッチャー (右)
6 安達 3年生 レフト (右)
7 牟田口 3年生 セカンド (右)
8 道川 2年生 サード (右)
9 川口 3年生 ピッチャー (左投げ左打ち、サイドスロー)


後攻 白チーム

1 田坂 3年生 レフト (右) ○
2 栗原 3年生 ショート (左)
3 藤堂 3年生 センター (右)
4 加山 3年生 サード (右)
5 田中 3年生 セカンド (右)
6 岸谷 2年生 キャッチャー (右)
7 梅田 3年生 ライト (左)
8 結城 1年生 ファースト (右)
9 坂井 3年生 ピッチャー (右投げ右打ち、オーバースロー)

紅vs白 1-1


紅白戦(2打席目)

3回表

 

やはり1軍の選手が打席に入ると、雰囲気が変わる。結城は、1回表では恐らく、自分を見失っていたのだろうなと思った。改めて1番打者の山崎さんが右打席に入るのを見ると、オーラのようなものを感じる。

 

 

 

同級生、同ポジションに西さんという、圧倒的なレギュラーがいるため、目立ってはいないが、昨秋の時点でベンチ入りをしている実力者で、2年生居残り組の1人。物静かではあるが、時々ためになるアドバイスをしてくれ、努力を続ける人。

 

聞けば、シニアではそこそこであったが、高校に入ってから、根性で這い上がり、あの三人組のアドバイスを参考にしながら力をつけ、現3年生ショートを押し退けるほど成長した、努力の人らしい。

 

俺たちの世代は、不作の年と呼ばれるほど、最初から期待値は低い。しかし、山崎さんの話を聞いて、諦めかけていた心を奮い立たせて、山崎さんのようになるんだ、勝ち取るんだと、現在まで素振りを500回、全体練習の後に継続して行っている。

 

 

 

自分が理想とする将来像、それが打席にたって、こちらをどう倒そうか、本気になって襲いかかってくる。武者震いが止まらなかった。

 

「さぁー!2巡目に入るぞー!振れてるバッターだ!声を出せー!足動かせー!ほれ!結城も何か言え!」

「!?が、がんばるぞー!」

「小学生かよ!」

 

内野陣の先輩達が笑うが、田中さんは

 

「気の利いたことは言わないでいい。口下手でも声を出して、投手や他の野手に、ここに俺がいるとアピールしろ。」

「はい!」

 

ファーストは俺が守る!そんな強い気持ちを持って、集中力を高めていく。3球目、山崎さんがアウトコースのストレートを引っかけて、1塁方向へゴロが飛んでくる。

 

(きた!)

 

しっかりとした足運びで正面に入って、グローブを突き出すと、勢いが強すぎて弾き、ボールはファール方向へ転がっていった。

 

「ゆうきぃーーー!」

「途中まで完璧だったのにやりやがった!」

 

ススッとボールを取りに行き、田中さんにボールを投げ渡す。

 

「ノーアウト1塁!はりきっていこー!」

「何事もなかったかのようにするんじゃねー!」

 

内野陣から総ツッコミをくらった。

 

「こいつ大物になるかもなー」

「エラーしてもへこたれないのは、才能なのか、なんなのか」

 

あまりよく聞こえなかったが、言われたとおり声を出していく

 

「さぁ!こっちこーい!」

「呼ぶな呼ぶな!」

 

リラックスしたような坂井さんが、2球目の力のあるシュートで佐々木さんを打ちとって5-4-3のダブルプレーとなった。

 

3番の神田さんが左打席に立つと、自分以外の内野陣が前進していることに気がつく。自分も前にいこうとすると

 

「普段と違うことはしない方がいい」

 

と田中さんに止められて定位置にぽつん。

 

内野陣が前に出ているのを、確認したはずの神田さんには、全く動揺が見られない。6球目の甘く入ったストレートを強打し、二遊間を抜けるシングルヒットを放つ。

 

「さっきの打席は、最後だけよかったな。冷静でほどよく力が抜けていた」

 

ハッと振り向くが、既に目は坂井さんに向けられて集中している。帽子のつばを軽くつまんで

 

「ありがとうございます」

 

と言うと、神田さんは軽く笑った。坂井さんが投球動作に入った瞬間、神田さんが走り出す。

 

「走った!2塁!」

 

あらかじめ外していたボールを、岸谷さんが素早く2塁へ送るが

 

「セーフ!」

 

神田さんは余裕で盗塁を決めていた。そして、坂井さんが次に投げた、インコース低めのストレートを、4番の加賀谷さんが完璧に捉え、レフトへのツーランホームランとなった。

 

(これが‥‥1軍選手のホームラン‥‥)

 

唾をごくりと飲み込み、身体の芯から熱くなる。

 

(やっぱりすごい。自分も打てるようになりたい)

 

決意を胸に、自主練習をこれからも続けることを決める。

 

 

 

4回裏

 

結城の打席がやってくる。ノーアウトランナーなしの場面。好きに打ってこいと言われている。

 

(来た球をしっかり捉える。リードも球種を絞るのも、後から覚えていけばいい。今やれることは、自身のスイングを落ち着いてすることのみ)

 

全身から力を抜いて、いつものように自然体に構える。

 

 

 

アウトコースの厳しいストレートを

 

(これは違う)

 

見逃して1ボール。2球目のクロスファイヤーを

 

(これも違う)

 

見逃して2ボール。川口さんは、地面をならして間をとったあとに、インコースにフロントドアとなるシンカーを

 

(これ!)

 

投げるが、鋭いスイングに巻き取られ、一直線にレフトフェンスに直撃するシングルヒットとなった。

 

1塁でガッツポーズをする結城の姿は、1年生の頑張りを象徴するように輝いて見えた。

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