7月に入り、夏の都大会が始まった。
1回戦はシードであった青道は、しっかりと調整メニューをこなし、疲労を取りきり、2回戦へと臨んだ。
オーダーとしては、片岡監督の初期の構想通り
1 藤堂 センター (右)
2 玉森 ライト (右)
3 柳 レフト (左)
4 東 サード (右)
5 西 ショート (左)
6 伊藤 ファースト (右)
7 角田 セカンド (右)
8 滝川 キャッチャー (右)
9 武藤 ピッチャー (右)
先攻をとった初回
1番の藤堂がいきなりセンター前へのシングルヒットを放つと、すかさず盗塁をしかけ、ノーアウト2塁のチャンスとなる。
「おー!いいぞー!青道の切り込み隊長!」
「今回藤堂が出てるけど、これに栃谷、佐々木が外野の控えにいるんだろ?どんだけ青道の野手陣は層が厚いんだよ」
続く玉森が3球目のカーブをセンター前に運ぶと
「おっ!藤堂突っ込んできた!はえー!」
無駄のない走塁で本塁を陥れ、先制点をチームにもたらした。
「「青道!青道!青道!」」
観客席からも青道コールが響いてくる。
「3番 レフト 柳くん」
「「おおぉぉぉ!」」
青道側スタンドから歓声があがる。2年生中心ながら、高校野球において、全国一と言われる青道野手陣の、クリーンナップの登場に、場のテンションが上がっていく。
この異様なテンションに、ピッチャーは制球が定まらず、柳は四球で出塁してノーアウト1,2塁へ。いくらか落ち着いた状態で4番の東を迎え、
「うぉー!打球はえー!」
「初球かっとばしやがった!」
スリーランホームランで、さらに突き放す。ピッチャーは、ランナーがいなくなり、オーラなど微塵も感じとれない次のバッターを見て、安心したのか、不用意にアウトコースの甘いストレートを投げてしまい、レフトスタンドへのホームランを許してしまう。
「うぉー!4番、5番の連続ホームラン!」
「面白いように点が入ってくな!」
5点とられ、1アウトも取れないまま、相手エースは交代させられる。
「去年もよかったけど、今年も期待できそうだな」
かわりっぱなの初球、6番の伊藤がセンターへ弾き返し、ノーアウト1塁となると、7番の角田が左中間フェンスへ直撃するツーベースヒットを放ち、ノーアウト2,3塁へ。
「8番 キャッチャー 滝川」
「おぉ!こいつがアニマルの息子か!あの蜂須賀、岸谷差し置いてスタメンはやるなぁ」
3球しっかりと見て、4球目のインコース甘めのストレートをレフトスタンドへと運び、チームに8点目をもたらした。
「「おぉぉぉぉ!」」
「どこでアウトがとれんだよ!」
青道側スタンドは盛り上がっていく。
青道は徐々に控え選手を出していき、26点差のついた4回表、
「代打 背番号20 結城くん」
「1年生はクリス以外、あまり期待できないって聞いてたけどどうなんだ?」
「せめて経験でも積ませようってやつかね」
結城は右打席に入ると
「お願いします!」
と言って力のほどよく抜けた、自然体を意識したフォームでバットを構える。
「体はまだ小さいけど風格あるなぁ!」
「なんか入学したときの柳が、右打席に立ってるみたいだな。まぁそうすごいのが続いて入るとかはないか」
初球、外に外れるストレートを、微動だにせず見逃し、ボールをじっくり見て、2-2の平行カウントになる。
「ゆうきぃー!振ってけー!」
「クリス以外の1年生はまだ早かったんじゃないのかなー」
結城は集中力を増して、ピッチャーを観察していく。そして、強気にきた、インコースのストレートを強振し、レフトスタンドへと運んでいった。
一瞬スタンドからの音が消え、1年生のいる場所を中心として、歓声が青道側スタンド全体へと拡がっていった。
その歓声を聞きながら、不慣れに右手を上げて、ベースを駆け足で踏んでいく結城のことを、ベンチ入りメンバーは優しい目で見守っていた。