1 神宮寺 セカンド (右)
2 町田 レフト (右)
3 遠山 センター (左)
4 北川 ショート (右)
5 根岸 キャッチャー (右) ○
6 大前 サード (右)
7 岡本 ファースト (右)
8 石川 ライト (左)
9 田崎 ピッチャー (右)
後攻 青道オーダー
1 藤堂 センター (右)
2 玉森 ライト (右)
3 柳 レフト (左) ○
4 東 サード (右)
5 川口 ピッチャー (左、左サイドスロー)
6 伊藤 ファースト (右)
7 角田 セカンド (右)
8 岸谷 キャッチャー (左)
9 山崎 ショート (右)
8回表 7-4
1アウトランナーなし
打者:根岸
時は少し遡り、7回表、市大三高の先頭打者を、西が空振り三振に仕留めた後に、2年生の中で最初に我に返ったのは、柳であった。
「晴之がなんで肩抑えて、うずくまっとんや?」
そう呟き
「内野陣駆け寄らんかい!東!山崎!岸谷!何しとんや!」
外野からはマウンドに行くことは難しいため、声をかけるが3人とも動けない。伊藤さん、角田さんが西の元へ走っていき、声をかけている。センターの藤堂さんは唇を噛みしめ、ライトの玉森は拳を握りしめている。
ベンチでは3年生と2年生の神田、栃谷が動いており、片岡監督や太田部長は固まったままで、指示を出せないでいる。
(くそやんな、経験浅い言うてもここまでかいな。)
西がマウンドから降り、既に自主的にピッチング練習をしていた川口さんが、我に返った片岡監督に呼ばれてマウンドへあがる。
(いやいや、東、山崎、岸谷は戦える精神状態じゃないやろ。サード加山さん、ショート神田、キャッチャー蜂須賀さんに変えなまずいやろ)
運良くセカンドゴロ、レフトフライでその三人があまりボールを触ることはなかったが、監督からは交代の指示などは出ない。ベンチに戻ると、伊藤さんや神田に聞くことには、西は即、高島副部長と病院に直行したみたいだ。
マウンドで「すいません、先に肩が逝きました。無理矢理投球回増やそうと投げすぎましたね」と言って苦笑いしていたらしい。
ベンチでは「途中抜けになるけど、あとは頼んだぞ」これだけ言うと、大人しく病院に行ったみたいだ。
(こればっかりは恨むで‥‥監督‥‥、良く考えれば当然やったんや。西は責任感が強くてチームを優先する男や。イップスを無理矢理解消するために、肩の違和感を無視してでも投球回増やして、チームの力になろうとするやんな。ベンチに入れるピッチャーの枚数を減らせば尚更な。)
ふぅーっと息を吐く。
(東やピッチャー陣を常に気に掛け続け、岸谷、クリス2人の若いキャッチャーのフォローをし続ける。3年生はいるが、次期内野リーダーとして、内野陣の統括を任されていた。その中で、さらにピッチャーとしてやれとか、改めて考えればやり過ぎやな。少しずつ役割が増えて、無意識ながら頼りすぎてたんやな)
三者凡退で終わったため、すぐに守備につくが、岸谷のリードが単調なものとなり、3失点し、ようやく内野の2年生がおかしいことに気づいた片岡監督は動いた。
▽
「試合終了!市大三高が準決勝進出を決めました!終わってみれば8-7とかなりの接戦となり」
高島副部長は病院に付き添いながら、青道が負ける瞬間をラジオで聞くことになった。青道では、3学年連続で精神的支柱たる選手の怪我が続いており、去年の卒業生の遠藤くん、現3年生の伊藤くんと川口くん、そして現2年生の西くんと、大きく悪い流れができている。
片岡監督は、しっかりと全体を見ているつもりではあるが、どうしても負担が大きくなってくる選手が出てくるのは事実、蜂須賀くんが西くんに言った言葉が
「お前も肩に違和感があるのを隠していたのか」
その言葉が、高島副部長にとってはかなり衝撃的であった。
(違和感などは自己申告を信じるしかない‥‥か‥‥)
選手の責任感が強いこと、これもあるだろうが、結局は自分が抜けたとしても、チームは大丈夫だというチーム状況ではなく、私や片岡監督、太田部長が選手達に、完全に信頼されていない証拠であるように感じられた。
(選手達への関わりかた、これを根本的に見直す必要がある。野球ノートの頻度を増やす、動画を撮影して、日々の送球姿勢やフォームの確認など、色々案を考えていかないと)
夏の大会が終わったばかりであるが、首脳陣の課題は山積みであった。
「西 晴之さん、診察室へおこしください」
付き添って診察室へと入る。
「結果から言うと、しばらくは投球禁止ですな。腕を動かすとき、特に肩を上にあげるときに痛みがあるとのことですが、MRIのここですね、骨から腱の一部が剥がれてますね。幸いなことに完全に剥がれている訳ではないので、手術はせず、痛みの原因である炎症を抑えるためのお薬を飲んでもらって、ストレッチ、筋力の改善を図るための運動をしてもらいますからね」
「はい、わかりました。どれくらいの期間になりそうでしょうか?」
「腱が再びくっつく時期にもよりますが、リハビリ含めて3~6ヶ月程度でしょうか、場合によっては手術も考慮しなければなりません」
「‥‥わかりました‥‥ありがとうございます」
診察を終えて、タクシーで青道に帰るまで、無言で1点を見つめる西くんに、かける言葉が見つからなかった。