至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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高校2年生終わりまで
プロローグ


8月、太陽が容赦なく照りつけ、気温のとても高い過酷な環境のなか、青道の1,2年生は厳しい練習をこなしていた。

 

7月中は監督と選手の間で、密なコミュニケーションが図られ、野球ノートの活用、各選手の持つ疑問点の解消、改善案の検討を綿密に行っていった。

 

そして、発足した新チームは、神田がキャプテン、柳、栃谷を副キャプテンとした、精神的に強い選手を軸にすることとなった。夏大会前には東を新キャプテンにする予定であったが、西が負傷した際の姿を見て、難しいと判断された。

 

 

 

その頃西は、2軍所属ではあるが、チームから離れて、1人でリハビリメニューを黙々とこなしていた。肩を負傷しているだけなので、ランニングを主とした体力向上、下半身の安定、強化を目指したメニューに、肩周りの筋肉の改善、ストレッチをしていく。

 

「無理をさせ過ぎた、すまなかった」

 

そう片岡監督から頭を下げられたが、西本人としてはできるだろうからやったらできなかった、ただそれだけであった。

 

(前世、つまり全盛期の肉体と比べると、まだ高校2年生なのだから、許容量のズレがあって当然だった。違和感程度であれば、ケアさえ気を付けていれば、夏の大会は持つだろうと思っていたが、予想以上の北川などの市大三高の成長具合に、消耗が激しかった。私自身の認識が甘かったのだろうな)

 

肩をあげる方向に持っていかなければ、痛みを感じることはないので、指導の元、しっかりと練習を重ねていく。中山さん達の世代が抜けてから、4番ショートとして、チームのことを常に考えてきたが、監督からは、今は自分のことだけを考えてほしい、そう言われている。

 

今できることは肩以外を使った練習をして、自分のレベルアップを図ることだということは認識している。

 

(今思うと、私は前世でも肩をやったことがあったみたいで、どうすればいいのかがわかる。しっかりと栄養をとって、指導通りにリハビリすればいいだろう。しかしこのリハビリも野球のために自分と向き合っていると考えると楽しいな)

 

周りが心配するなか、本人は呑気に次の試合はいつかなと考えていた。

 

軽くバットを振ると、ズキッと肩が痛み、これでは振れないなと思うが、やはり素振りはしたい。型をなぞるようにゆっくりと、しかし肩に痛みを感じないようにバットを振り切る形まで持っていく。

 

(なんだ?こういうことをやったことがある気がする)

 

慎重に、自分が理想と思うような、バッティングの型をゆっくりとなぞり続ける。すると、前世で経験したものが、フラッシュバックした。

 

(そうか、これがわしの原点か)

 

昔を懐かしむかのように、理想の型をなぞり続けた。

 

 

 

……

 

 

 

ある程度型なぞりをした後に、ランニングをしながら、新チームのことについて考える。同級生に対しては、何もする必要はないだろうし、城南シニア時代から経験豊富な神田、玉森、栃谷、そして柳が中心となってチームを引っ張るとは思うが、1年生が心配ではある。

 

クリスは抱え込むことがあるし、他のメンバーは個性が強いものが多く、かなりアンバランスに思えるのだ。1軍はクリス、結城、丹波以外は全員2年生が占めており、そのおかげで2軍には1年生が10人ほど所属している。

 

1軍は片岡監督がある程度見てくれるが、2軍、3軍に関しては人数が多過ぎて、手があまり回ってはいない。これは1学年に30人前後いて、3年生が抜けた今ですら60人前後を1人1人見ていくのは、片岡監督のみでは無理があるのは仕方がない。

 

(今年は2軍の選手、特に1年生への厳しいノックを敢行しているのを見かけるが‥‥これが1軍、2軍所属の2年生を中心とした不満にならなければいいのだが‥‥)

 

完全に前世を思い出し、チームから離れ、1軍という枠から外れて外から見ると、選手達の仲間意識や向上心を煽って、全員の面倒を見きれていないのをカバーしているが、不満を持ってやめる選手がいないことが奇跡のように感じる、危うい状態であることに気がついた。

 

今は~をしておけ、という指示はあるものの、経過を時折確認するのみで、しっかりと聞きに来る選手のみにアドバイスを与える。実に教師らしい監督だと感じさせられる。

 

(問題点はたくさんあるが、一気に解決することは無理であろうな。まぁ、わしにできるのは1年生の成長を助け、全体を片岡の坊主が見ることができるように矯正することか)

 

そのためにも自分が西 晴之、そして、西 宗太郎としての野球をせねばならないなと、未来に向けた、明確な指針を立てた。

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