至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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裏で起こったこととして隠そうか迷ったのですが、この話を書きましょうか


閑話

西から見て、片岡監督は、8月に入ると活き活きとしていた。そう、国語教師としての仕事が、夏休み期間中はほとんどないからである。

 

学期中の監督の生活を、本人から聞いたことから思い出していく。

 

5時に起床、身支度、練習メニューの再確認、国語の授業の再確認をする。6時に野球部の朝練習で点呼、練習指示をしたあとに、1軍、2軍、3軍メンバーの練習を日替わりで指導する。(割合としては1軍が多くなる)

 

7時30分に朝練習を終え、食事をとって、8時に職員室へ、授業の最終確認をして授業を行う。昼食をとりながら、夕方の練習メニューを確認し、午後の授業へ。その授業の合間に、東と西の入学、及び、春の甲子園に出場して、話題が増えてしまったが故に、多くなりすぎてしまった取材のやり取りを行い、OB、後援会との付き合いをする。放課後、16時頃にグラウンドへ出て、夕方の練習を開始する。

 

全員を見ることは不可能なため、何人かのグループに分けて練習をし、見てわかる程度に困っている子に声をかけ、問題を解決したり、アドバイスをしたり、野球ノートの内容を思い出しながら、指導をしていく。これを1軍>2軍>3軍の割合でしていく。8月は、3年生が抜けたから60人ですむが、夏大会前は100人前後に及ぶ。もちろん練習中にも視察にくるOBや後援会の相手をする。

 

練習を終えると、食事、風呂の後に、野球ノートの整理、返事を書いていく。時折ミーティングを開き、野球ノートが一段落すると、チーム状況の整理、問題はないかどうかの確認をし、教え子が自主練習するのを見守りながら、国語の授業の学校への報告書をまとめ、明日の授業の準備をし、朝練習及び夕方練習を考案してまとめる。気づけばだいたい0時、ときには1時を過ぎており、そこから就寝する。

 

 

 

西は、聞いた話から頭の中で組み上げた、片岡監督の生活を紙に書き出したものを見ると、

 

(あぁ‥‥これは過労死してしまう‥‥)

 

と天を仰いだ。睡眠5時間未満で、こんな激務をしていれば、能力を十全に発揮できるとは思えない。監督業にあと2,3年慣れてきて、効率化できたら大丈夫だろうが、現時点では難しいであろう。

 

(わしと東の入学自体が監督の過労に繋がって、活躍して甲子園に出たが故に、更に激務になってしまったか)

 

と答えを導きだす。

 

(確かに榊前監督が少しは指導していたとは言え、中山さん達の世代はしっかり育成されており、3年生の藤堂さん、伊藤さん達の土台を形作るだけのメニューを考案できる、ある程度の指導力が片岡監督にはあるのだ。それに子供達の心を惹き付ける人望もある。問題は片岡監督本人というよりは、負担の大きすぎる現環境というわけか)

 

せめてOBと後援会の相手がなくなればいいのにと、思いながら後援会の相手をしている片岡監督を見ると、隣に突っ立っているだけの太田部長を見る。

 

(あれ?太田部長が専属でやればいいのでは?)

 

話を聞いて相槌を打つ、相手に気を遣って粗相のないように対応すればいい。これだけのことであれば太田部長でもできるはずである。何か伝える手段がないかと考えていると、高島副部長が1人の少年に野球部を案内しているのを見つける。

 

「ここでは2軍の選手が練習をしているわね」

「へー!礼ちゃん、1軍の方は見せてくれないの?」

「2軍に今、ある選手がいるからわざとこっちに来たのよ」

 

高島副部長の元へと歩いていく。

 

「あっ!西くんこっちに来てくれるかしら」

「えっ!?西さんこんにちわ、江戸川シニアの御幸 一也っていいます」

「君が御幸か、武藤から話は聞いているよ。よろしく頼む」

 

お互いに挨拶をして軽く話をしたあと、1軍の見学に1人で行かせて、高島副部長とOB、後援会の件について話をする。

 

「確かに、片岡監督が休んでいる姿を見たことがないわね」

 

その言葉に冷や汗が出る。思っているよりも監督が身を削っている可能性がある。

 

「負担が軽くなるように色々体制を相談してみるわ」

 

と言って高島副部長は御幸の相手をしに行った。

 

(これでもう少し監督に余裕ができるといいんだがな)

 

いまだ心配ではあるが、この内容を高島副部長に伝えただけでも、越権行為に近く学生のやることではない。ここはフォローをしながら、大人がどうするかを見守るしかないかと、自身のリハビリを進めていくのだった。

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