至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

76 / 148
先攻 青道オーダー

1 神田 セカンド (左)
2 玉森 ライト (右)
3 柳 センター (左)
4 東 サード (右)
5 栃谷 レフト (右)
6 結城 ファースト (右)
7 滝川 キャッチャー (右)
8 山崎 ショート (右)
9 井手 ピッチャー (左、左スリークォーター)



秋の都大会 準決勝 国士舘 part2

結城はネクストのサークルでじっと、マウンド上の財前を観察する。現在7回表、ノーアウト1,2塁のチャンスの場面で、バッターは5番の栃谷さん。

 

6回裏まで、お互いのピッチャーが奮起して、点を取られはするものの、大崩れしない展開であった。3-4で負けてはいるが、財前の消耗を見る限り、7回表が限度であろう、それくらい先輩達のプレッシャーが強い。

 

今も栃谷さんは、簡単にアウトにならないように、粘り強いバッティングをして、フルカウントまで持ち込んでいる。その間にも、ランナーの柳さん、東さんがアピールをして、ランナーの存在を財前に意識させてプレッシャーをかけていく。

 

スタメンでの出場に慣れてきて、周りを見てみると、先輩達は今自分にできることをしっかりとこなし、チーム一丸となって相手投手を攻略しようとしている。自分のバッティングのみに集中していたことに恥じるとともに、このチームの一員に真の意味でなれるように、先輩がどう行動しているのか、どうプレッシャーを相手にかけているのかを見て学んでいく。

 

「ボール!フォアボール!」

「しゃあ!結城!リラックスな!」

 

後ろの打者を信頼して、後に繋げる。その姿を目に焼き付ける。返事として軽く頷いて打席へと向かう。

 

相手の財前は中学時代、手も足も出ないほどの実力差を見せつけられた相手。しかし、今の自分は2年生、特に柳さんにアドバイスを受け、確実に野球がうまくなっている。

 

(先輩の信頼は裏切れないし、努力は嘘をつかない)

 

そう思って、自然体でバットを構えて、財前を見る。11月になり、気温は低くはなってきているが、汗の量がすごい。

 

(ノーアウト満塁でのプレッシャーはすごいのだろう。簡単な攻め方はしない。後ろにクリスもいるからな)

 

アウトコースから逃げていくスライダー、アウトコースの少し外れるストレートを見逃して2ボール。

 

(押し出しを嫌がって入れてくるか?)

 

インコース、甘めに来た球を弾き返す。

 

(くっ!ツーシームか!つい手が出てしまった)

 

ショート後方へボールが飛んでいく。

 

「おちろぉぉぉぉ!」

 

ショートが後方へ向かって飛び込むと

 

「アウト!」

 

すかさず3塁ランナーの柳さんが、タッチアップをして本塁を陥れた。

 

 

「おぉぉぉぉ!」

 

応援席やベンチから歓声が聞こえてくるが、あまり納得はできない。

 

「てっちゃん!めっちゃ叫んどったな!気持ちが伝わってきて、えかったよ。バットを振りきれとったし、ちゃんとこういう時に点取れるのが大事やんな」

 

そう言いながら、俺の頭を撫でまくってくる。

 

「これで同点や。次はクリスを応援したらな」

 

柳さんの言葉に頷くと、大人しくベンチへと戻り、ハイタッチをしていく。クリスの打席を見守っていると

 

(お互い笑っている?)

 

同点で1アウトランナー1,2塁の場面、7番打者という字面だけ見れば希望はあるが、バッターはクリスである。1年生ながらエースとして堂々とした振る舞いをする財前と、完全な正捕手として投手陣をまとめるクリスが眩しく見える。

 

「うてぇー!クリスー!」

 

大声で応援すると、クリスはチラッとこっちを見て頷く。

 

「丹波ぁ!お前も応援してやれよ!」

「はっはい!がんばれぇ

「シャキッとしろ!」

「がっがんばれー!」

 

その様子にクリスは力が抜けたのか、財前との勝負に集中する。その5球目、アウトコースへ逃げるスライダーを打つと、ライト方向への球足の速いゴロとなる。

 

「ぬけろぉぉぉ!」

 

セカンドが飛び付くが、グローブの先を抜けていく。

 

「とまれ!とまれ!」

 

1点を阻止するために前進守備をしていた外野を見て、ランナーコーチャーが東さんを止める。1アウト満塁となり、更に球場の緊張感が増していく。財前は力を振り絞ってボールを投げる。

 

山崎さんが、3球目のカーブを打つが、サードへの正面のゴロとなり、5-2-3のダブルプレーで同点になんとか抑えた財前は、マウンドで雄叫びをあげるが、ふらついたところを内野陣に支えられてベンチへと戻っていった。

 

その財前の気迫に息を呑む丹波の左肩を、武藤さんが軽く叩いていたのが印象的であった。

 

 

 

 

 

 

記者の峰は本日行われた、青道vs国士舘の試合をまとめていた。

 

「今日の試合、結局青道は井手くんが4失点ながら完投したか。対稲城実業戦のように財前くんが完投して逃げきると思いきや、4失点でなんとか試合を作るも7回でスタミナ切れ。後の投手が8回に3失点、9回に5失点と抑えきれなかった。今日の財前くんの球数は140球越え、あの打線を相手になんとか粘ったというところだろうか。稲城実業に対しては9回で107球、打線の差で青道は勝ったのか」

 

なるほどなと頷きながら記事をまとめていく。

 

「結果的には12-4と地力の差が出てしまった。国士舘は財前くん以外の投手の育成、打線の成長がないと今後厳しいだろうな。青道は西くんがいない状態でこの破壊力、昨年の主力がほとんど残っていて、今年も全国一の野手陣と称してもいいだろうな」

 

記事の見出しや、この内容をどう記事に書いていくかを峰は夜遅くまで考えていくのだった。

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