入寮と新たな仲間★
梅が咲き誇り、早いところでは桜が花開いている。
東京にある高校のひとつである青道にて、新入生となる子供達が緊張した面持ちで、キョロキョロと周りを見ながら青心寮へと入っていく。ある部屋では大きな挨拶の声が、ある部屋では荷物が届いてないとの嘆きが、ある部屋では野太い悲鳴が轟き、青心寮は1年間で一番賑やかな様相を見せていた。
side 東
無表情なあいつは大丈夫かいな‥
そう思いながら段ボールから、生活用品を出していくのは、特待生として入学する東 清国であった。
初対面の大きい挨拶で先輩から主導権を奪った彼は、意外にもテキパキと引っ越し作業を進めていく。
野球部としてのルール、生活リズム、入浴や食事の時間など、必要な事柄を細かくメモしていく姿に、先輩2人は好印象を抱く。
話は変わるが、青心寮にも出世部屋というようなものがある。
特待生や一般スカウトは同じ特待生、または一般スカウトされた先輩の部屋へ、一般入試組は一般入試組の部屋へと振り分けられ、境遇が同じような子供を振り分けると、自然と部屋のメンバーに差が出てくるのは仕方ないと言えよう。
先輩2人が東の持つ少女マンガの量にドン引きし、しかし、興味があるのをグッと我慢していると、東の持ち物の整理が落ち着いた。
同室の先輩は
3年生ショートでキャプテンの江藤さん、2年生ピッチャーの川口さんであった。
side 西
何故か嫌な予感がしたので、城南シニアからのチームメイトで、外野手の神田 陽一郎にドアを開けてもらう。
頼まれると断れない性格の陽一郎は、ドアをあけた先にいた仮装をした先輩を見ると、情けなくはあるが球児として立派な、雄叫びのような悲鳴をあげて失神した。
先輩方はとても喜んでいたが、同室なのは私である。
私の無表情かつ冷めた視線を受け、必死にこれは伝統でとか、やらなければならないんだと勝手に説明し始めた。
初日から先輩達は監督室へ、神田は常駐の保険医の元へ運ばれていったが、いつも通り冷静に日用品を捌いていく。
小さい頃は既視感だけであったが、脳の容量が増えたため段階的に解放されてきたのか、自分が転生したということを今は私は理解していた。
外付けHDに記録があるような、やったことがないのに知っているし、しっくりとくる。シニアの1年秋に4番キャッチャーとしてやっていたときにはそこまでではなかった。
ただ、上級生が抜け、キャプテンとしてやらねばならない、そう考え、最初の練習試合でいきなり負けたときに枷が外れた、そんな気がした。
負けるのは悔しい。なら使えるものはなんでも使う。
ただしフェアプレイで、礼儀正しく。
これは絶対に守らねばならぬ、誰かと約束していた気がした。
なんでも使う‥ピッチャーをやってみようと思ったことがある。
しかし、なぜだろうか、会ったこともない50歳くらいの男に、試合で投げるのはやめておくれと言われた気がする。そしてそれを思い出すとピッチャーをやる気が失せるのだ。
色々今までのことを思い返していると、先輩達が部屋の外からドアを壁にしてこちらを覗いているのに気がついた。
入室を促すとルールや名前などを教えてくれた。
3年生キャッチャーの中山さん、2年生外野手の佐々木さん。
中山さんに久しぶりだということを伝えると、ぽかんとしていた。キャッチャーの動きを私に叩き込んだのはあなたでしょうが‥
中山さんからは2,3年前から大人びていて、わからなかったと謝られた。佐々木さんから後輩を忘れるなんてなー、といじられながらも、丁寧に色々なことを教えてくださり、明日からさっそく朝練からスタートということで、早めに寝ることとなった。
side 中山
やはり初めての環境で疲れていたのだろう、西はさっそく寝てしまった。見違えた‥というよりは中学1年の頃とは、全く違うと言っていいだろうか。
1年上の先輩キャッチャーがいないだけで、ここまで成長できるものだろうかと疑問を持つ。無表情なのは相変わらずだが、雰囲気で感情が分かるのが大きな違い、いい仲間に恵まれたのだろうな。1年の秋から4番キャッチャーとして要になり、2年の春からは後輩ピッチャーの総括も。そして、2年秋からキャプテンとしてチームを背負い、全国優勝を果たし、去年の秋に活躍した成宮の基礎を築いたと、城南シニアの監督から聞いている。
実績としては遥か上を行かれてしまったが、お前のキャッチャーの基礎を叩き込んだのは俺で、副キャプテンとしてお前にだけ背負わせることはしない。
少し素振りをしてから寝ることにし、バットを持ってドアノブに手を掛けた。
青道選手紹介
片岡メモから抜き取り
現在1軍に関わるネームド選手(現在青道に所属)
3年生 中山 勇太 副キャプテン キャッチャー
右投げ右打ち
的確なコーチング、正確な送球、高度なブロッキング技術からピッチャー陣の信頼を得ている、安定感が魅力
現在5番を任されているパワーヒッター
長打を安定して期待できる。
3年生 江藤 雅光 キャプテン ショート
右投げ右打ち
広範囲をカバーする守備範囲を誇る
どんな体勢からでも、力強いボールを投げることのできる身体能力、制御力の持ち主
現在セカンドが心許ないため非常に助けられている。
現在3番を打つ、広角に打ち分けることのできる、理想的なアベレージヒッター
得点力、長打力も兼ね備えた、欠かすことのできない存在
3年生 植松 利貞 ファースト
左投げ左打ち
守備に少し難があり、練習試合では、時々気の抜けたプレーをしてしまうこともある。しかし、ここぞというときの集中力には、目を見張るものがある。
現在4番を打つが安定感に欠け、ランナーのいない時には集中しきれないところがある。しかし、ランナーが1,2,3塁のどこかにいれば気持ちが入り青道随一のバッターとして点をもぎ取ってくる。3番に江藤がいて本当に助かった‥
3年生 遠藤 充 ピッチャー
右投げ左打ち オーバースロー
現在青道で唯一安定感のあるピッチャー
最速140キロ前半のある程度コントロールの目処がつくストレート、調子によって変わるが、スライダー、カーブ、SFFと計算のできる変化球をもっている。
監督、部長を含め遠藤引退後の、ピッチャー陣がどうなるのか不安でいっぱいである。
2年生 坂井 祐吾 ピッチャー
右投げ右打ち オーバースロー
最速130キロ後半のストレートにカーブ、チェンジアップ、シュートを武器とする。
ストレートとシュートに安定感はあるものの、カーブがゾーンに入らない、チェンジアップが高めに浮く、といった課題が多く存在する。ピンチになるとテンパり、ストレートすら入らなくなるときがある。
2年生 川口 望 ピッチャー
左投げ左打ち サイドスロー
最速130キロ前半のストレートにスライダー、シンカーを武器とする。元々次期エースとして期待されていたが、1年生の冬合宿中の接触プレーで左肘を強打し、キレのあるストレートが劣化している。本人はしっかりと投げているつもりだが、腕を振り切れていない印象がある。
コントロールも現在はイマイチである。
2年生 藤堂 航 センター
右投げ右打ち
広範囲な守備範囲と強肩が売りの外野手
大きい声で全体を鼓舞し、2年生ながら外野のリーダーを任される突出したキャプテンシーの片鱗を見せている。
一般入試組の星であり、多感な時期の選手達ではあるが、藤堂がいれば丸く収まるなど、プレー内外に関わらず存在感が際立っている。
一番打者として、能力が高水準であるが、秋以降はクリーンナップに回すかどうか、監督の悩みどころではある。
2年生 佐々木 潤 ライト
左投げ左打ち
何故ピッチャーをやってないのか、不思議なほどの強肩を武器とする鉄腕アーム。守備範囲はそこまで広くないものの、堅実な守備は玄人受けがよく、放たれるレーザービームで観客の視線を持っていく。
打撃は地味ではあるが、コンスタントにヒットを打てる、小技もできると2番打者として出ることが多い。
青道スカウトメモ(入学してくれた現在の注目株)
東、西は省略
1年生 柳 圭司 外野手
左投げ左打ち
シニアでは全国までは行けなかったものの、地方大会でベスト4までチームを押し上げている。
長打力はあまり期待できないが、チームプレイを大事にした、シェアなバッティングが魅力的
一般スカウトとして入学した。
1年生 武藤 晃太 ピッチャー
右投げ右打ち オーバースロー
最速130キロ前半のストレート、スライダー、カーブと基本をしっかりと抑えているピッチャー。
中学3年時に、所属している江戸川シニアが、丸亀シニアと当たるまでは2試合14回1失点と安定した投球を披露していた。
丸亀シニアには3失点を喫したが、ピッチャー陣の将来の柱として期待。
一般スカウトとして入学した。