至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

80 / 148
春の甲子園大会 準決勝 part1

青道は打線の得点力を武器に2回戦、準々決勝を勝ち進み、ベスト4を確定させていた。次の相手は大阪桐生。

 

大阪桐生は、エースである兵藤と、2番手でありながら注目を集める館の二枚看板で、ここまで勝ち上がってきていた。また野手の人材も豊富であり、青道打線の名声がここまで上がっていなければ、スター集団と呼ばれていてもおかしくない陣容であった。

 

ベスト4に残っているのが青道、大阪桐生、巨摩大藤巻、西邦の4チーム。片岡監督ら首脳陣は各高校の戦力を分析していく。

 

残る2校のうち、巨摩大藤巻は、打線は全国区ではあるが飛び抜けて強打者がいるわけではない。投手陣にも飛び抜けた選手はおらず、継投で繋いでいくチーム。

 

西邦は新2年生の佐野を4番に置き、3番にキャプテンでキャッチャーの飯岡が座る攻撃型のチーム。去年の斎藤のようなエース格がおらず、飯岡のリードを活かせる有力な投手不在なのが弱点となっている。

 

片岡監督は腕を組みながら

 

「決勝であたる巨摩大藤巻と西邦の投手陣ならば、うちの打線であれば打ち崩せるだろう。大阪桐生の兵藤の対策を練る必要があるな」

 

「そうですな。兵藤に対してエースを、武藤をぶつけるのが無難でしょうな。2番手の館もいますから、下手すれば武藤に完投してもらわねばなりません」

 

と言いながら、落合コーチは座っている椅子をいじる。

 

「うちの打線の起爆剤は東と西の2人。であればこの2人にチャンスを作ってもらうか、ものにしてもらうか。そのどちらかができれば兵藤に揺さぶりをかけ、攻略することが可能でしょうな」

 

「西のチャンスメイク能力と、東の勝負強さを全面に出せるような打順構成。相手を驚かせるものがあればなおいいかもな」

 

「ふむ、いっそのこと西を1番に置きますかな?それでチャンスに強い打者を後ろにごっそりもってくる。神田→西への流れも捨てがたいとなるとこうですか」

 

 

 

1 西 ショート (左)

2 柳 センター (左)

3 栃谷 レフト (右)

4 東 サード (右)

5 結城 ファースト (右)

6 滝川 キャッチャー (右)

7 玉森 ライト (右)

8 武藤 ピッチャー (右、右オーバースロー)

9 神田 セカンド (左)

 

 

 

「4番を動かすのはよくないと思い、こうしましたが、片岡さんはどう考えますかな?」

 

そう落合コーチが聞くと、片岡監督は落合コーチの方を向いて

 

「いえ、神田が9番はもったいない気もしますが、打順が回ってくれば、4番栃谷のような打線でバランスはいいと思います。東もつづく打者が結城、クリスであれば敬遠もないだろうな」

 

こうして準決勝のオーダーは決定した。

 

 

 

 

 

 

大阪桐生の兵藤は、青道のオーダーを見て戦慄する。

 

(1番厄介な西が先頭打者か‥‥マウンドに上がってから落ち着く時間もくれないか‥‥)

 

腕を軽く回してからぐっと伸びをする。

 

(つづく打者が柳、栃谷、東‥‥どこのオールジャパンだよ‥‥)

 

明らかに、1チームに所属していいメンバーではない青道打線に、嫌だなーと思うのと同時にワクワクしている自分に気がつく。

 

(事実上の決勝戦、派手に散ってやるか!)

 

気合いを入れ直してベンチから1番打者を応援する。

 

(幸いにしてこちらの先攻!勢いをつけたいぞ!)

 

しかし

 

「ストライク!バッターアウト!」

 

青道エースの武藤が、大阪桐生打線に立ちはだかる。

 

「監督、決勝考えずに全力で投げるんで、お願いします」

「‥‥せやな、1チームに1人いれば全国にいける。そんな打者が相手に何人もおるんや。館もおる、いってこいや」

「はいっ!」

 

三者凡退に仕留められ、兵藤はマウンドへあがる。

 

「さぁー!守備でリズム作っていくぞ!確実に1つずつな!」

 

日本のエースとして負けられねぇよな。強い心をもって自分の知る最高のバッターと対峙する。

 

(この圧倒されるような雰囲気、やっぱやばいな)

 

手の汗を拭い、キャッチャーのサインを見る。それに頷き、初球、インコースにドロップカーブを投げるが、西は反応を見せない。

 

「ストライク!」

 

西が素振りをすると、今のドロップカーブをホームランにされる映像が、頭に強烈に浮かんでくる。

 

(もうこの球は西に使えない)

 

打たれる気のする球は投げれない。持ち球をフルに使って抑えるしかないが、それは後続に球種を伝え、見せることにも繋がる。

 

2球目はアウトコース低めのストレート。西の想像していたものより伸びていたのか、ファールとなる。そして3球目を同じコースへ

 

 

 

ガキィ!

 

 

 

球足の速いゴロが二遊間を抜けていくヒットとなる。

 

(情報のない初見のカットボールを、手首を捻って無理やり二遊間に転がしやがった!普通ならアウトだろうが!)

 

ロージンを触りながら、想像していたよりも、相手が成長していることに対する動揺をおさめていく。

 

「2番 センター 柳」

 

再びスタンドから歓声が、津波のように襲いかかってくる。

 

(初対戦だが、こいつも同類だな)

 

直感で柳も別格の存在であることを感じとる。

 

「ザッザ‥‥ザッ‥‥ザザッ」

 

(くそ!ランナーに西がいるせいで、柳だけに集中できねぇ!)

 

気持ちを切らさないように、ルーティーンとして、軽く肩を回してセットポジションをとる。牽制を2球続けるが、西のリードは小さくならない。

 

2つのファール含めて6球で2-2の平行カウントになるが、柳は簡単にアウトになってくれない。

 

(まだ初回、冷静にいくぞ)

 

 

 

キィン!

 

 

 

決めにいったインコースのカットボールを、上手く当てられてファールにされる。続く外のストレートも合わせられてファールに。

 

「走った!」

 

咄嗟にアウトコースへストレートの軌道を変える。

 

 

 

カーン!

 

 

 

「くそっ!」

 

ゴロを打たれ、振り向くと、2塁ベースカバーに動こうとしたショートが、無理矢理3塁方向へ飛び込むが、そのグローブの先をギリギリボールが抜けていくのが見えた。

 

「セーフ!」

 

ラン&ヒットが成功し、ノーアウトランナー1,3塁となる。

 

「3番 レフト 栃谷」

 

中学時代よりも遥かに成長した、勝負師が打席に姿を現した。




青道偵察班メモ(準決勝戦前)

兵藤 浩平 新3年生 大阪桐生
右投げ右打ち ピッチャー

150キロ前半のストレートに、ドロップカーブ、SFF、フォーク、縦スライダーという縦方向に特化した変化球を操る。すべてが高精度であり、今大会No.1ピッチャーと称されている。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。