至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

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高校3年の夏
プロローグ


青道野球部が甲子園から帰ってきた翌日、春の甲子園を制覇したばかりではあるが

 

「連覇するには練習やな」

 

その東の一言から自主練習を既に始めている3年生に触発され、2年生の一部選手達もバットを振っていた。しかしその雰囲気のなか

 

「先輩達は更に打てるようになるつもりかよ」

「あれだけ打てたら十分だろうがよ」

 

自分達はここまで、練習をよくがんばっている。甲子園を優勝したから俺達青道は強い。そう思って気を抜く者達がいたのも確かであった。

 

1つ大きな目標である甲子園優勝、それを成し遂げたことによる自信と傲慢。肌で甲子園の怖さ、強さを感じ取った1軍は問題ないが2軍以下の、今まで高校に入って、持ち上げられてこなかったメンバーにこの傾向が顕著であった。

 

青道の野球部に所属しているだけで、すごいと言われる、そんな環境になってしまったが故の現象であった。

 

片岡監督、落合コーチはそれに気づくが、練習中に気合いが入っていないとかであれば注意できるが、そういうわけではなかった。浮かれてはいるが、練習はちゃんとやる。2年生に多いのが、甲子園に優勝したメンバーなのだから、レギュラーになれなくても仕方ない。課せられた練習をやって、上の学年が抜けたらそれで甲子園にレギュラーとしていける。

 

もちろんそれを是としない子達もいるが、大多数が現状に満足している、そのような印象であった。

 

 

 

そこへ、新入生が入寮、入部してきた。

 

朝練習の前に、真木、御幸、倉持など、シニアで結果を残した選手達が自己紹介をしていった。そして最後の1人が

 

「松方シニアの西 影次です!スカウトの返事を保留してて、結局一般入試で入りました!ポジションは内外野一通りできます!兄を越えるために来ました!レギュラーを1年生のうちから取りにいきますので、よろしくお願いします!」

 

「え、あの西さんの弟?」

「松方シニアの全国ベスト4の原動力になった主砲だろ?ちょっと枠やばいんじゃね?」

 

場がざわつくなか

 

「監督の片岡だ!!みんなも知っての通り、我が青道は春の甲子園の覇者として帰って来た。特に3年生にはスター選手が多い。高校野球の練習に徐々に慣れてもらうのはもちろんだが、君達には近くにいる全国に通用する先輩達の練習への姿勢、態度、心構えを目で見て、肌で感じてほしいと思っている。そのなかで、学年関係なく1軍、2軍に引き上げるつもりだ」

 

2年生の方向をサッと見て

 

「覚悟をしておいてくれ」

 

「っ!はいっ!」

 

(なるほどなぁ)

 

浮わついていた雰囲気が、2年生から少し消えたのを見て、落合コーチは安堵する。

 

(3年生がいたからこその甲子園優勝、現2年生では結城、滝川以外は全国レベルではない。よくて都大会ベスト4止まりであろう。今成長を求められるのは2年生よな)

 

1年生の初練習、体力測定では西の弟が別格、次点で御幸であった。他にも白州、倉持、真木など優秀な結果を残す者がいた。

 

その日の夜である。片岡監督と落合コーチは監督室で、今年の構想を話し合う。

 

「まずは投手からいきましょうか、新入生では真木、川上が特に見込みがありそうですな」

「私もそう思います。真木は丹波とタイプは被りますが、性格が違いますから、いい競争相手になりそうだ。川上はコントロールがいい、今後身体が大きくなって、試合を作ってくれる選手になればいいが」

 

2,3年生に関しても話し合うが、見解は甲子園を経ても変わらなさそうだ。

 

「野手は西の弟、御幸の2人は試合にすぐ出しても大丈夫そうですな。新チームで2年生の突き上げを、もしくは現チームを押し上げてくれるかもしれませんな」

「あの2人には期待していきたい。せっかく3年生がいてくれるので、その中に放り込んで、レベルアップを図るのが面白いと考えている」

「なるほど、あの雰囲気に慣れさせるのはいいですね。ちょうど春大会は枠が2つ増えますから」

 

そう落合コーチが答えると、片岡監督は頷く。

 

「世代交代を上手く進めるためにも、1,2年生に経験を多く積ませる。それができれば上々、しかし勝つことが第一。あまり変に弄って負けては目も当てられません。欲張らずに堅実にいきましょう。1年生2人を1軍へ、この一手だけで2年生の危機感を煽ることでよしとしませんか?」

「‥‥うーむ‥‥わかった、その後の反応を見て決めよう。話は変わるが、この練習は……」

 

青道の将来を見据えて、2人の話し合いは夜遅くまで続くのであった。




青道スカウトメモ

西 影次 右投げ右打ち
主に外野、サード、ショート

昨年U-15の4番センター。兄と同じく走攻守すべて揃った選手であり、松方シニアをベスト4へと導いた。当初から稲城実業へ入学するのではと言われており、ダメ元でスカウトをした結果保留をされてしまう。

3年生の夏の大会では、城南シニアの成宮から2打席連続本塁打を放っており、中学の個人成績に限れば兄以上であろう。

幼少の頃から、兄に野球の手解きを受けているとのこと。
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