至高の一打   作:もぐもぐファンタ爺

86 / 148
青道オーダー

1 神田 セカンド (左)
2 西 晴之 ショート (左)
3 柳 センター (左)
4 東 サード (右)
5 栃谷 レフト (右)
6 結城 ファースト (右)
7 玉森 ライト (右)
8 滝川 キャッチャー (右)
9 井手 ピッチャー (左、左スリークォーター)


春の都大会 準決勝 part2

結城は7回裏の攻撃をベンチで見ていた。

 

(不甲斐なし!ここまで3打数ノーヒット、相性が悪いとして下げられてしまったが、全然打てないとはな)

 

帝東エース 松尾さんの鬼気迫る、粘りのある投球に圧されてしまい、7回表の守備につく際に、道川さんと交代させられてしまった。

 

現在2-4で2点リードしているが、いまだ松尾さんを完全に攻略できていない。先頭打者は8番のクリスで、ここまで2打数ノーヒット。絶対に塁に出て後ろに繋げる、そんな意思を感じる。

 

4球目のスライダーを引っかけて、三遊間にボールが転がっていく。ショートが逆シングルで捕って、素早く1塁へと送球し、クリスは1塁にヘッドスライディングを敢行する。

 

 

 

「セーフ!セーフ!」

 

 

 

「おっしゃぁぉぁ!よくやった!」

「ナイスガッツや!」

 

気合いで出塁したクリスは、珍しくガッツポーズをする。

 

(ん?)

 

一瞬ガッツポーズをした後のクリスの表情に、違和感を覚えたが、おそらく気のせいだろう。

 

井手さんのところに、代打として影次が出てくる。すると

 

 

 

カキィン!

 

 

 

アウトコースの少し甘めに入ってきたストレートを、ライトスタンドへと放り込んだ。

 

「おぉぉぉ!初ホームランきた!」

「影次ようやったー!」

 

全員で影次の初ホームランを祝う。

 

「ピッチャーの交代をお知らせします」

 

相手のエース 松尾さんはレフトへ。相手エースを攻略したという事実に、チームのテンションが上がっていく。

 

そこからは青道打撃陣が、帝東投手陣に牙を剥き、3点の追加点をとった。

 

 

 

 

 

 

井手さんからバトンを受けた丹波は、2-9となった試合を締めるために、8回表に登板したが、1アウトはなんとかとったものの、既に2失点していた。1アウトランナー2塁の場面で

 

(バッターに集中!フォームをいつも通りに!投げ急がない!)

 

 

キィン!

 

 

インコース、甘めに入ったストレートが痛打され、左中間へと運ばれ追加点を献上してしまう。5-9となり、帝東ベンチも活気づいている。クリスがマウンドにくる。

 

「丹波、色々克服しようとしてるのだろうが、気にしすぎてテンポが悪くなっている。一度全部忘れて、思いっきり腕を振ってみてはどうだ?」

「っ!わかった、やってみる」

 

クリスに返事をして、マウンドの土をならす。

 

(集中、集中!)

 

クリスのミットに向かって投げるが、ストライクゾーンに入らない。

 

「ボール!フォアボール!」

「いい感じで勝っているのになぁ、これじゃ台無しだよ!」

 

観客の声に頭が真っ白になる。

 

「ピッチャーの交代をお知らせします。丹波くんに変わりまして、背番号1 武藤くん」

 

片岡監督の視線が怖かった。武藤さんがマウンドへやってくる。

 

「丹波、頭冷やしてろ。一人相撲だったな」

 

ハッとして武藤さんの方を向くと、言葉とは裏腹に心配そうな目でこちらを見ているのがわかる。

 

「‥‥すいません‥‥」

「チームは勝ってるからな。次出番がきたら結果を出せるように努力を重ねる、それしかないぞ。ほれ!監督のところへいけ!」

「はいっ!」

 

頭をがしゃがしゃと撫でられ、流れ出てくる涙を拭いながら、ベンチへ駆け足で向かう。自分で課題を掲げての登板だっただけに、悔しさが溢れてくる。

 

「丹波、武藤のここからの投球をしっかり見ておけ」

 

片岡監督に言われ、アイシングすらせずに戦況を見守る。

 

武藤さんはマウンドで深呼吸をすると

 

「丹波が1アウトとってくれたから、アウトはあと2つだけだ。1つ1つしっかりととっていくぞ!」

「1アウトー!1,2塁のケース!内野近いところでオーケー!1,2点取られても取り返せるから確実にいこー!」

 

武藤さんの言葉から西さんが繋げて、全体の意識をまとめていく。

 

 

 

ドォン!

 

 

 

「ストライク!」

 

バッターが、インコースのストレートに思わずのけ反る。

 

「バッター!ボール見えてないよー!ゲッツーいけるいける!」

 

西さんがそう言うと、サードの東さんが一歩前へ出て、バッターを睨み付ける。

 

続くアウトコースのツーシームを、力んでいたバッターは引っかけて、4-6-3のダブルプレーとなり、簡単に無失点でピンチを切り抜けてしまった。

 

その先輩達の姿を見ていた丹波に対して、片岡監督は

 

「丹波、お前はいつから1人で野球をやるようになった?周りのことを気にしすぎるな、そうは言ったがクリスの言葉を上の空で聞くほど、自分のことに集中、いや、自分をも見失うほど追い込めとは言っていないぞ。後ろには頼りになる3年生がいる。全部いっぺんに修正する必要はない。1つずつ自分のできることを、課題をクリアしていけばいい」

「はいっ!」

「焦るなよ。お前のボールの質は甲子園でも通用したんだ。結果を残せる投手だと自分で証明しているんだ。勝てば、次の試合では伊佐敷からの継投で投げてもらう。チャンスはあるから次に活かせ。‥‥じゃあ岸谷に怒られに行くんだな‥‥」

 

片岡監督の言葉を聞いて岸谷さんの方を向くと、腕を組んで難しそうな顔でこちらを見ている。嫌だなと思うのと同時に、まだ期待してもらっている、そう感じて、腹をくくって岸谷さんのもとへと駆け足で向かった。

 

「こっちくる前にアイシングしろ!」

「っ!すいません!」

 

 

帝東vs青道 5-11

 

先発 井手 7回2失点

2番手 丹波 1/3回 3失点

3番手 武藤 1 2/3回 無失点

 

本塁打 西 影次(1)、柳(1)、道川(1)

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