5月末から6月初めにかけて、青道では、関東大会後の1軍最終選抜が行われていた。直近では、1軍確定メンバーを除いた、候補メンバーを中心としたチームで、対外練習試合を行っていた。
また、投手陣はメンバーが確定していたため、武藤、井手、伊佐敷、真木は、基本的に1軍レギュラー陣の形成する打線との対戦形式で経験を密に積み、更なるレベルアップを図った。
そして、6月の2週目、夏合宿直前に1軍メンバーが確定した。
投手
武藤、井手、伊佐敷、真木
捕手
岸谷、藤谷、御幸
内野手
結城、道川、会田、東、神田、西晴之、西影次、小湊
外野手
栃谷、柳、玉森、城之内、石橋
関東大会と同じメンバーで、夏の大会に臨むこととなる。
片岡監督と落合コーチは、選手起用について話し合っていた。
「基本的なスタメンは、完全な実力主義でいいですかな?」
「あぁ、本人達、特に外される選手自身がわかっているだろうな」
「ではこれが合宿前、現状での評価におけるスタメンです」
1 神田 セカンド
2 西 晴之 ショート
3 柳 センター
4 東 サード
5 栃谷 レフト
6 玉森 ライト
7 道川 ファースト
8 岸谷 キャッチャー
9 ピッチャー
ベンチ野手控え
藤谷、御幸、結城、会田
小湊、西影次、城之内、石橋
スタメン全員が3年生という事実に、2人して難しい顔をする。
「道川が急激に力を伸ばしたとはいえ、それを凌駕する3年生スタメン野手陣の成長には驚かされました。」
「元から強い学年ではあったが、ここまでくると恐ろしく感じる。そして、その野手陣と真っ向勝負を続け、1軍投手陣は精神的にかなり成長を遂げた」
「延々と勝負し続けてましたな。かなり度胸がついたように思えます。並みの、というよりは東京都で、市大三高の北川以外には気後れしないでしょうな」
お互いに、かなりの成長を遂げた教え子達を思い、お茶で乾杯する。
「油断せずにこの夏を取る。次の世代のことはとりあえず、夏の大会以降考えることになる。今できることは1軍にいる1,2年生に経験を積ませること。こう割りきるしかないな」
「そうでしょうな。合宿で3年生に気合いを見せてもらって、この青道を受け継ぐ。それを実感させることが、まず最初にできることでしょうか。こういうことは焦らず1つずつ、課題をもってこなすのが吉ですな」
「うむ。合宿のメニューなのだが……」
2人は綿密に、合宿メニューを組み立てていくのであった。
▽
唐突だが、練習で恐怖心を抱いたことはあるだろうか?
ドゴォン!
夏合宿2日目、小湊は、エースの武藤さんと3打席勝負をしていた。
(以前と言っても2月だから4か月前か。あの時よりもノビ、キレに磨きがかかって、全然捉えられない!特にSFFのキレがおかしい!それに威圧感というよりは殺気みたいなのがっ!くっ!)
結局、小湊は3打数ノーヒット2三振と、完璧に抑えられた。圧倒的な力でねじ伏せられ、悔しさが溢れてくる。
「小湊!次は守備だ!早くいけ!」
1軍漏れした先輩に急かされ、ノックを受けにいく。セカンドには西さんと神田さんが、お互いに気になることを言い合いながらノックを受けていた。
「腰が高い!1cm高い!もうバテたか?晴之!」
「交互に打ってるからって先に走り出すな!神田!地味にせこいぞ!」
(いや、じゃれあってるだけか)
「バッティング終わったんで交代お願いします!」
「おぅ!晴之いってこい!」
「あぁ、行ってくる。小湊がんばれよ!」
ノックを受けていると、神田さんに話しかけられる。
「足の運びが鈍くなってきているぞ!もっと腰を落とせ!」
「はいっ!」
エラーをするたびに神田さんに指導してもらう。
「しっかり正面に入れ!適当になって半身で最初から取りに行くな!」
「はい!」
西さんが戻ってきて、神田さんがバッティング練習に向かう。
「まだ下半身と上半身の連動がぎこちないところがある。せっかくの練習だ、もう少し意識してみろ」
「はいっ!」
守備の後はポール間ダッシュや、ベースランニングなど、20人に限定されているからこそ、出番が多くなるきつい練習を乗り越え、今日の練習を終えた。
合宿で、まだまだ余裕のありそうな先輩達だが、意外にも、3年生で自主練習をしている者はいなかった。
(先輩達はさすがに完全休養なのかな?)
そうなれば暇なので、練習で気になったことはなかったか、聞きに行くために神田さんの部屋に向かう。その途中で結城とバッタリ出会った。
「あれ?哲は今年も泊まるの?」
「あぁ、さすがに合宿中はきついから、通学は危ないとのことでな。来年も泊まることになるだろうな」
「そうかそうか」
2人して神田さんの部屋に向かう。
「キャプテンの神田さんの部屋に泊まることになったんだ。昨日から3年生が入り浸ってるよ」
「え、そうなの?なんかずっと野球のこと話してそうだけど」
「いや、普通に音楽の話しとか、ゲームの話しとかしてるよ。俺達と何の変わりもないさ」
コンッ!コンッ!コンッ!ガチャ!
「お!哲!やっときたか!相変わらず西さん将棋強いんだって!変わってくれ!」
「ぬ!?」
「よろしくお願いします」
オーラを出しながら結城は、冷や汗をかく西さんに挑んでいく。
「いやぁ、さすが哲だぜ、8手目にして既によくわからんことしてんな。二歩するにしても早すぎだろ、なぁ、亮介」
「いつもの雰囲気だと強そうなんだけどね」
伊佐敷と話しながら、小湊が周りを見渡すと、影次と御幸、真木が道川さんから、身体のケアについてレクチャーを受けており、栃谷さんは壁に寄りかかって爆睡している。玉森さんは一人で黙々とマジックを披露し、それを柳さんと東さんが
「ええやん!全くわからんけどすごい気がするやんな!」
「ぐぅ!なんでこっちにあったボールが、お前の帽子から出るんや!孝太!ずるしてないやろな!」
と騒ぎ立てるが、玉森さんは黙々とマジックを続ける。
そのなかで、岸谷さんはノートに今日の配球など、かなり細かいことを書いていた。
「岸谷さん、打撃に関してなんですけど、俺を抑えるとき何を意図してましたか?」
チラッと岸谷さんはこちらを見てから
「よく西に指摘されている当てにいっている、そう言った感じがすごく感じられた。2年生のなかではミートは上手いけど、武藤に対しては分が悪く、ストレートをまともに打ち返す力はない。低めのストレートを軸に変化球で終わり。それくらいだな」
「‥‥なるほど‥‥」
「厳しいことを言うようになるが、そのスタイルは格上には通用しない。粘ることも大事だが、それでスイングが鈍っていては打てるものも打てない。中途半端なスイングだから、ストレートで押していけた。逆を言えば、しっかり振り切れば、配球を変えていた。」
岸谷さんはペンを机の上に置く。
「パワーがないと、自分から決めつけるのはよくないんじゃないか?あの神田だって2年生の春頃まではパワー不足で、苦しんでいたんだ。簡単に自分で未来を狭めるなよ」
「はい!」
少し心がすっきりした小湊は、玉森さんのマジックを近くで見ることにするのだった。
ふと、今後どこまで書くかなと思ったのでアンケートを1つ。よろしくお願いします。
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東世代の卒業まで
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結城世代の卒業まで
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御幸世代の卒業まで