僕のヒーローアカデミアーブラッドオブボンゴレー 作:ゴールデンバナナ64
キーンコーンカーンコーン...
午後の授業を告げるチャイムが鳴り、ヒーロー基礎学が始まる。
「今日のヒーロー基礎学だが...俺とオールマイト、そしてもう一人の3人体制で見ることになった」
見ることになった。その言葉に隠れた意味を綱吉はなんとなく察した。
先日の雄英バリアー突破事件により侵入した死柄木と黒霧というヴィランたちが原因により、急遽予定を変更したのだろう。
「ハーイ!なにするんですか!?」
瀬呂が手を挙げ尋ねる。
相澤はどこからともなく掌サイズのプレートを取り出し掲げる。
プレートに刻まれていたのは『RESCUE』という文字。
「災害水難なんでもござれ。
人命救助、これこそがヒーローの本分である。
オールマイトが一躍有名になったのも、高笑いしながら人命救助を行っている動画からだ。
相澤は盛り上がる生徒達を一喝すると、リモコンを操作し始めた。
「今回コスチュームの着用は各自の判断で構わない。中には活動を限定するコスチュームもあるだろうからな 訓練場は少し離れた場所にあるからバスに乗っていく。以上、準備開始」
(一応、グローブ付けていこう)
指向性をサポートするためのグローブはもう必要は無いが、念のため着けていくことにした。
コスチュームは各々の判断と言っていたが、着ることはヒーローの醍醐味の一つであり、意識を切り替えるための手段の一つにもなる。
前回の訓練でボロボロになった緑谷以外、皆着替えていた。
「沢田さん」
バスへと向かう途中、八百万に引き留められた。
「今回の件、お察しかと思いますが、急な予定変更はあの時のことが原因だと思います。今回も万が一のことがあるかもしれません。学級委員として、気を引き締めて参りましょう」
八百万も同様のことを考えていたらしく、こっそりと注意を促してくるのであった。
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生徒達を乗せ、バスは訓練場へと走りだす───
「私思ったことを何でも言っちゃうの緑谷ちゃん」
緑谷の隣に座った蛙吹がしゃべり出す。
「あ!?ハイ!?蛙吹さん!!」
「梅雨ちゃんと呼んで あなたの”個性”オールマイトに似てる」
くわっと擬音が付きそうな顔で緑谷が驚く。
「そそそそそうかな!?いやでも僕はそのえー」
「待てよ梅雨ちゃん、オールマイトはもっと早くてパワーもあるぜ!似て非なるアレだぜアレ しかし増強型のシンプルな”個性”はいいな!派手で出来る事が多い!」
切島はそう言いながら自分の手をガチガチに固めてみせる。彼の”個性”は「硬化」。対人ではかなり有効な”個性”ではあるが、本人は地味なことを気にしているようだ。
「そういやさ、沢田の”個性”もなんかアレだよな!炎だけど炎じゃねえみたいだし、変わってるよな!」
「う~ん自分でもよくわかってないんだけど、炎はエネルギーのかたまりみたいなもので、使うと思考がクリアになって...う~ん...」
「沢田ちゃんって、”個性”を使ってない時はちょっと頼りないオーラ出てるわよね」
「わかるわかる!”個性”を使ってる時はあんなに頼もしいのにな!」
「そこらへんのギャップも人気出そうよね。ヒーローは人気商売みたいなところもあるし」
「人気が出るって言えば、やっぱ派手な”個性”持ちの爆豪とか轟なんかがいけそうじゃねーか?」
「爆豪ちゃんはキレてばっかだから人気出なそ」
「んだとコラ出すわ!!」
「ホラ」
「この付き合いの浅さで既にクソを下水で煮込んだような性格と認識されるってすげぇよ」
「てめえのボキャブラリーは何だコラ殺すぞ!!」
ギャーギャーと騒ぐ皆を相澤が一言で黙らせる。
話しているうちに目的地へ到着したようだ。
バスから降りた生徒達が見たのは、一見するとテーマパークのような巨大なドーム型の施設。
想定されるありとあらゆる事故や災害を模して造られた演習場。
その名も『
災害救助でめざましい活躍をしている紳士的なヒーロー「13号」が発案した演習場である。
相澤は13号の姿を確認すると、もう一人、いるはずのオールマイトを探すがどこにも見当たらない。
13号にそのことを尋ねると、通勤時に制限ギリギリまで活動してしまい、急遽来られなくなってしまったことを伝えられた。
「不合理の極みだなオイ...仕方ない。始めるか」
「えー...始める前にお小言を一つ二つ...三つ...四つ...」
((増える...))
「皆さんご存じだとは思いますが、僕の”個性”は「ブラックホール」どんなものでも吸い込んでチリにしてしまいます。これは簡単に人を殺せる力です。皆の中にもそういう”個性”がいるでしょう。超人社会は”個性”の使用を資格制にし厳しく規制することで一見成り立っているようには見えます。しかし一歩間違えれば容易に人を殺せる”いきすぎた個性”を個々が持っていることを忘れないで下さい。相澤さんの体力テストで自身の力が秘めている可能性を知り、オールマイトの対人戦闘でそれを人に向ける危うさを体験したかと思います...この授業では人命の為に”個性”をどう活用するか学んでいきましょう。君たちの力は救けるためにあるのだと心得て帰って下さいな」
13号への称賛の拍手が巻き起こり、生徒達が盛り上がる。
「ブラックホール」 全てを吸い込んで滅ぼせる”個性”で人を救うことの難しさは想像に難くない。
どんな力も使い方次第。綱吉は心に強く刻み込んだ。
その様子を静観していた相澤は、そろそろ授業に入ろうと切り替える。
「そんじゃあまずは...」
「先生...!あそこ、嫌な感じがします!」
相澤の話を遮って綱吉が叫んだ。
同時に指を差したのはUSJの真ん中にある大きな噴水。
綱吉は先日の嫌な感覚と同等のものを感じ取っていた。
そこから突如、黒い靄が現れる。そこから見えてきた顔に、綱吉は見覚えがあった。
顔を覆う不気味な掌、そしてその隙間から覗く悪意の込められた赤い瞳。死柄木と呼ばれた男だ。
誰よりも早く、綱吉は”個性”を発動させ、臨戦態勢を整える。
周りが困惑する中、事態を察した相澤が叫んだ。
「一かたまりになって動くな!!!13号!!生徒を守れッ!」
「何だアリャ!?また入試ん時みたいなもう始まっているパターン?」
「いや、あれは違う!本物の
綱吉が”個性”を発動していることでただ事ではないと察した生徒達は揃って身構える。
相澤はゴーグルを素早く装着し、ゾロゾロと靄から出てくる
(数が多く警報も鳴らない...ジャミングされている...計画的な犯行と見ていい。よくもまぁこんなに堂々と侵入してきやがった)
「13号に...イレイザーヘッドですか...先日頂いた教師側のカリキュラムではオールマイトがここにいるはずなのですが...」
「どこにいるんだよ平和の象徴...せっかく大衆引き連れてきたのに...子どもを殺せば来るのかな?」
先日の侵入でやはり情報を抜かれていたようだ。
校舎と離れた隔離空間、そこに少人数が入る時間割...
一見、愚かな行為だが、これは用意周到に画策された奇襲。
狙いは金の卵たちか、プロヒーローか...目的は分からないがこうした事態になった以上、対処しなければ命に関わる。
相澤は教師からプロヒーロー「イレイザーヘッド」へと切り替える。
「13号避難開始!学校に電話試せ!センサーの対策も頭にある連中だ!電波系の”
指示を送る相澤に、緑谷が詰め寄った。
「先生は!?一人で戦うんですか!?イレイザーヘッドの戦闘スタイルは敵の個性を消してからの捕縛だ!正面戦闘は...」
「一芸だけじゃヒーローは務まらん。13号!任せたぞ」
そう言って大勢の敵に単身突っ込んでいく相澤。
その姿を見たヴィランたちは数の利もあり完全に侮っている。
「マヌケが!一人で突っ込んできやがって!射撃隊いくぞぉ!!!」
射撃系の”個性”を持つヴィランたちが隊列を組み構える。
いくらプロヒーローと言っても多対一。普通ならヴィラン側が圧倒的有利。
だが、相手をするのはプロヒーロー「イレイザーヘッド」
「あれ?出ね...」
指が砲身状になっているヴィランの手からは空砲が響くだけで何も起こらない。
その隙を見逃さず、捕縛布で相手を縛り上げると頭同士を激突させるように布を操作した。
「まずは二人」
予想外の出来事に死柄木が叫ぶ。
「ばかやろう!!あいつは見ただけで”個性”を消すっつうイレイザーヘッドだ!!」
「消すぅ~!?じゃあ俺らみてえな異形型も消してくれんのかぁ!?」
「いや無理だ。発動系や変形系に限る。が、お前らみたいな奴の旨みは統計的に近接戦闘で発揮されることが多い」
喋りつつも、敵の攻撃をいなし、捕縛布を巧に操りヴィランたちを捌いていく。
肉弾戦に長け、”個性”による連携を妨害できる強力な”個性”により、相手より一歩早く動くことが出来るイレイザーヘッド相手では有象無象では歯が立たない。
悔しそうに首を搔きむしる死柄木
「嫌だなプロヒーロー...有象無象たちじゃ相手にならない...おいザンザス!!お前がやれ!」
ザンザスと呼ばれた男はチラリと死柄木を見ると、そのまま無視するように一人座り込んで大あくびをした。
「俺はオールマイトにしか用はねぇ...そのオールマイトはいねえ。てめえ等で好きにやってろ雑魚が」
「なっ...てめえいい加減にしろよ!」
(この中でも一番ヤバそうなそうな奴はあの座り込んでる男だ...何を考えているか分からないが、戦う気がないなら好都合...しかし、狙いはオールマイトか...!)
戦う相澤を尻目に避難を進める生徒達。
綱吉は一人足を止め、その姿を凝視していた。
(無理だ...いくらなんでも数が多すぎる...!相澤先生はドライアイだぞ...”個性”を使えば使うほど持続時間は短くなるはず...それにスタミナだって限界はある。息切れするのも時間の問題だ...俺達がいるからあえて突っ込んでいったのか!!)
「沢田君何してる!早く非難を!」
「させませんよ」
相澤が一瞬目を離した隙に黒霧が生徒達の前にワープし、威圧するようにその身体を大きくうねらせる。
「初めまして 我々は
皆に戦慄が走る。No.1ヒーローであるオールマイトを殺すと言い放ったのだ。
正気の沙汰とは思えない。平和の象徴とまで呼ばれた者を殺したい者は大勢いるだろう。だがそれを実行しようとするものなど、今まで存在しなかった。それこそ愚かな行為にただならない。
「まぁそれとは関係なく...私の役目はこれ」
言葉を続ける黒霧。何かをしようとしている。
それを察した爆豪と切島が正面に立ちはだかり、”個性”を使用し攻撃を加えた。
爆発音と激突音が鳴り響く。
「その前に俺たちにやられることは考えてなかったか!?」
だが先手を取られた黒霧は身体を散らすように攻撃を回避していた。
「危ない危ない...そう、生徒といえど優秀な金の卵」
「ダメだどきなさい二人共!!」
13号が叫ぶ。プロヒーローの勘が危険を告げていたが、遅かった。
身体の靄を拡大させ、生徒達を包み込むように襲い掛かる。
散らして、嬲り殺す
靄が晴れた場所には生徒達の姿は無い。が、一度その”個性”を見ている綱吉は間一髪、炎による高速移動で黒い靄から逃れることに成功した。
「なんと...あの時の子供ですか...逃していたとは」
綱吉の姿を見て呟く黒霧。
綱吉が逃げた場所は噴水と入口のちょうど中間当たり。イレイザーヘッドが交戦する場所のすぐ近くだ。
それは死柄木にもはっきりと視認出来る位置。先日の雄英生徒と同一人物だと気付いた死柄木は、目を見開いて首に爪を立てる。
「あのガキ...思い出したら痛み出してきたよ...あぁ、痛かったなぁぁぁぁ!!」
自身の顔を殴りつけた憎らしい相手が目の前にいる。
後ろで相澤を観察するだけだった死柄木は、綱吉へと標的を変える。
「丁度いいや...あの時のお返しをしてやろう...」
死柄木の傍らにいた黒い巨体「脳無」が動き出す。
「対オールマイト用の秘密兵器だったけど、まぁいいよなぁ!代わりにお前を殺してやるよ!!」
脳無はゆらりと一歩踏み出すと、そこから一瞬でいなくなった。
死柄木の叫び声に反応して振り向いた綱吉は目の前を覆うように肉薄した脳無と対峙する。
(いつの間に...!)
表情一つ変えず、太い腕を振りかぶる脳無。
オールマイト並みの肉体のそれは目標の命を奪うべく襲い掛かる。
「沢田!!」
別の
(間に合わない...!)
綱吉のフォローへ向かえない事を察した相澤は脳無を視る。
”個性”「抹消」が発動するが、動きは止まらない。
直撃は避けられないと反射的に腕で攻撃をガードするが、そのあまりの威力に身体ごと吹き飛ばされた。
「しまった...!」
相澤は確かに脳無を視た。
”個性”は消えていたはずだ。だがそれでも綱吉は殴り飛ばされた。
ならば奴の身体能力は増強型でもなんでもなく、素の力──
オールマイトに匹敵するであろうその力に驚愕するが、それよりも綱吉の無事を確認する方が先だ。
「沢田!大丈夫か!?」
「なによそ見してんだよヒーロー!!」
安否を確認しようにも
ギリッと歯を食いしばるが状況は変わらない。
「なんとか...大丈夫です...」
数メートル転がされるが、綱吉はなんとか起き上がる。
全身を走る激痛に意識が飛びそうになりながらもぎりぎり持ちこたえていた。
その姿を見た死柄木は怪訝そうに眉をひそめる。
「直撃したよな...?なんで生きてるんだこいつ...殺せないならせめて気絶とかさぁ...!まだ卵の癖にナマイキだろ!!」
綱吉は攻撃を受ける直前、後ろへ飛ぶように炎を放出することで衝撃を分散させた。
だがそれでも威力を殺し切るには至らず、予想以上のダメージを受けることになってしまった。
(分散させてもこの威力...そしてあのスピード...逃げるのは不可能)
衝撃によって全身が悲鳴を上げ、意識は朦朧。孤立している状態のため、助けは期待出来ない。
(先生がおそらく”視ていた"はず...それでもあの力なら今の俺じゃ...それでも!)
ここで死ぬわけにはいかない。父さんと母さんに顔向け出来ない。
まだ立派なヒーローになっていない。どころかスタート地点に立ったばかりだ...!
「脳無...お前を倒さなければ...死んでも死にきれねぇ...!」
死を覚悟した綱吉に、新たな薪が焚べられた。