僕のヒーローアカデミアーブラッドオブボンゴレー 作:ゴールデンバナナ64
字数が7000字を超えていましたので、やや駆け足気味です...
「核兵器」の配置された部屋に到着した綱吉は緊張の面持ちでスタートの合図を待っていた。
「それにしても
核兵器があるのは三階。訓練で使う建物は階数が多く、部屋数も多い。
単純に考えれば一階から一つ一つ部屋を調べていくことになるだろう。
綱吉の認識では索敵系の”個性”を持っている者はいない。
だがあっちには”個性”「エンジン」による高速移動を持つ飯田君と、浮くことの出来る”個性”「無重力」を持つ麗日さんがいる。
そして増強系の”個性”の緑谷君。ソフトボール投げでの筋力に加えて、立ち幅跳びの記録を見る限り瞬発力にも長けている。
1階から飯田君や緑谷君が素早く部屋を調べていったら、あっという間に核兵器のある部屋へたどり着く事が出来るだろう。
そして上から麗日さんが部屋を調べて回ればそれよりも早くたどり着ける。
相手に核兵器の情報が無いとは言え、アドバンテージは無いに等しい。
「爆豪君...ちょっといい?作戦があるんだけど...」
「おいクリ頭、デクは”個性”が...あるんだな...?」
(って無視かよ!)
でも確か爆豪君って緑谷君と同じ中学校だったはず...
「俺が初めて会ったのはヘドロ事件の時だけど...あの時は”無個性”だって言ってた。受験前に発現したって聞いてるんだけど...」
「ヘドロ事件...そういやてめえも余計な事してくれたっけなぁ...クソナードといい...うざってえ」
(これ話し合いにならないやつだ!)
背中に冷たい汗を感じながら、綱吉はどうしたものかと考える。
前述した通り、あちらと条件は五分かそれより下。時間制限まで守ることはおそらく不可能に近い。
麗日の”個性”に触れられたら終わりだ。
(父さんのように、炎で空を飛べれば...)
父家光は両手から炎を放出することで、その推進力を利用して空を飛んでいた。
だがそのためには高いレベルの慣性制御、姿勢制御が必要になる。
受験までの一年間、炎を使っての瞬間的なブーストは学んだが、長く飛んだ状態での制御は未だに不可能。無重力状態であれば尚更だ。
「スタート!!」
オールマイトが開始の合図を告げる。
合図を告げた瞬間、爆豪君が「爆速ターボ」で部屋の外へ出て行ってしまった。
(えぇ~!?なんだよもー!!)
こちらの話を全く聞かず、独断専行。
緑谷君と爆豪君の間にはなにやら因縁がある。私怨による行動ならおそらく...
綱吉はそこまで考え、額に炎を灯した。
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「ヒーロー」側
渡された見取り図を確認しつつスタートまでの間、緑谷たちは作戦を練っていた。
「建物の見取り図...覚えないとね...ていうか大分緊張してるみたいだけど大丈夫?こっちは三人いるんだし、きっと大丈夫だよ!」
そう笑顔で元気づけようとする麗日。
「いや...その...相手がかっちゃんだから...それに沢田君もいるし...ちょっと身構えちゃって」
「爆豪くん、バカにしてくる人なんだっけ...」
「凄いんだよ。嫌な奴なんだけど...目標も、体力も、”個性”も...僕なんかより何倍も。それに沢田君。彼に勇気を貰ったおかげで、今僕はこうしてここにいるようなものなんだよ...」
今までのこと、ヘドロ事件で綱吉に出会い、そしてオールマイトから力を託されたことを思い出す。
一度挫折した自分に、立派なヒーローになれると背中を推してくれた、沢田君とオールマイト。
そして常に壁となって立ちはだかる、ずっと憧れてきたかっちゃん。
今はまだ追うことしか出来ないけど、いつかは追いつけるように...
「でも...だから
「男のインネンってヤツだね...!!?」
「何やら深い理由があるようだが、相手は特別合格者と実技2位の2トップだ!決して油断せずいこう!!」
「そうだね飯田君!麗日さん!行こう!」
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開始の合図と共に消えた爆豪君はおそらく緑谷君を狙う。
他の二人がどう動いてくるかで、こちらの動きも変わってくる。
建物の中は狭い。こちら側は奇襲が出来る分、各個撃破なら状況を有利に進められる。
爆豪君が”個性”の使い方が上手いのは個性把握テストで把握済みだ。おそらくこの環境の有利不利も認識しているはず...
俺なら奇襲で一人目を狙う。爆豪君も、緑谷君を奇襲しに行くだろう。だけどそれは緑谷君も分かっているはずだ。だったら奇襲になるとは言えない。予想外だからこそ、奇襲だ。
(俺が警戒すべきは麗日さん。彼女が屋上を取るという選択肢を潰すことが大前提)
まずは屋上を取って索敵を行う。
この建物はそれなりに高い。浮き上がるまでにそれなりに時間もかかるはず。
綱吉は実技試験の時も見せた炎による推進力での高速移動を使う。
狭い分ダイナミックな動きは制限されるが、廊下を直線的に移動するだけならば問題は無い。
そして屋上へ続くドアを蹴破ると、
「うわ!びっくりした!」
綱吉の考えは的中。
丁度麗日が屋上へ到着していた。
「作戦バレてる!!デクくん!飯田くん!沢田君と遭遇した!」
「麗日さん、捕らえさせてもらう」
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「やっぱり、沢田君には読まれてた...!」
麗日からの報告を受け、緑谷と飯田の二人は部屋を回りつつ、廊下を走っていた。
「やはり”個性”を知られている分、有利な使い方も読まれやすいか...どうする緑谷君!?」
「とりあえず沢田君は麗日さんが押さえてくれると信じよう。なんとか触ることが出来れば確保テープを巻くことは出来る!あとはかっちゃんだ...かっちゃんならおそらく...」
緑谷の思考通り、爆豪が物影から突如現れた。
そして右手を振りかぶり、緑谷へと爆破をぶつける。
「やっぱり来た...!」
「やっぱり...?読んだつもりかよクソナード...!!避けてんじゃねえぞ!!」
”個性”による俊敏な動きでなんとか直撃を避けた緑谷のコスチュームが、頭のアンテナを失くしていた。
「かっちゃんが敵ならまず僕を殴りに来ると思った...!」
「爆豪君!二人ならなんとか出来るか!?」
「メガネ!テメーに用はねえんだよ!!」
両手に大きな籠手を装備し、目元は黒のアイマスク。
天上天下唯我独尊を貫く爆豪らしいデザインだ。威圧感がとにかく凄まじい。
「飯田君、先に行ってくれ!」
「緑谷君!?相手は爆豪君だぞ!」
「これは相手を倒せば勝ちってわけじゃない…核兵器を確保出来れば僕たちの勝ちだ!飯田君、少しでも時間を稼げば君の"個性"ならここから離脱出来るはず!…僕も必ず行くから!」
重要なのは勝利条件。何も堂々と正面から戦う必要は無い。爆豪一人に人員を二人割いていては、余計に時間がかかる。
タイムリミットは15分間しかない。こうしている間にも時計は動き続けているのだ。
ならば人数有利を活かして1対1を展開、一番機動力の高い飯田が核兵器を探すべきだ。
飯田は迷っていた。緑谷に任せるか否か。二人で爆豪にかかって確保出来れば残るのは綱吉一人。
もし麗日が綱吉の確保に成功することが出来ればその時点で勝利確定となる。
緑谷の能力が高いのは把握しているが、爆豪を相手に取ることが出来るかはまた別の話だ。
チームとしての連携も取れていない急造チームアップ。
二人の立ち回りを噛み合わせることができなければお互いの足を引っ張り合うことになる。
「...わかった!頼むぞ!!」
飯田が取った判断は単独でのターゲットの捜索。
足を引っ張ることになる確率があるのなら、緑谷を信じることを選んだ。
脹脛のエンジンを唸らせて駆け抜けていく飯田を尻目に、緑谷は目の前の
「かっちゃん...!」
「デクゥ...!!俺は一人で十分だってかオイ...!!」
たった今飯田に対して用は無いと吐き捨てたのは爆豪自身だが、1対1でもなんとかなると思われたことに対して憤ったらしい。
傍若無人である。敵である綱吉に対して同情を禁じ得ない緑谷だった。
「舐めやがって!中断されねえ程度にブッ殺してやらぁ!!」
敵役とはいえ、纏う雰囲気はそのもの。
今までの緑谷だったら足をすくませ動けなくなっていただろう。
だが彼はヒーローの卵となった。オールマイトに選ばれ、綱吉に背中を推され。
右手を大きく振りかぶる爆豪に対し、緑谷は一歩大きく踏み込む。
(思い出せあのノートを!!かっちゃんは大抵、最初の一撃は右の大振り...!)
爆豪は驚愕の表情を浮かべる。
あの緑谷が自身の動きを読んだことが信じられなかった。
加えて”個性”による身体能力の上昇により得た俊敏性。
自分の知る人物とはなにもかもが違う。
一瞬で背負い投げを決められた爆豪は受け身を取ることもできず、背中を強く打ち付けた。
「ガハッ...!」
震える身体を鼓舞し、緑谷は幼馴染に対峙する。
「どれだけ見てきたと思ってる...!
どんなに嫌な奴でも、その憧れを辞めなかった。
どんなに遠くても、その背中を追うことを辞めなかった。
「いつまでも”雑魚で出来損ないのデク”じゃないぞ...かっちゃん僕は...「頑張れ!!」って感じのデクだ!!」
「...ッ!!びびりながらよぉ...そういうとこが!!!ムカツクなぁ!!!!!」
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同時刻───
屋上にて麗日を補足した綱吉は、屋内へ続くドアを背に静かに彼女を見据えていた
爆豪との連絡は取れない。おそらく戦闘に入っているだろう。
人の話をおとなしく聞いてくれるような性格じゃないのは、入学初日から分かっている。
彼の思考を逆算し、行動に上手く噛み合うように自身が考えて動かなければならない。
(緑谷君を狙いにいったのはほぼ確実...あとは飯田君...彼が加勢するか、単独で動くかで状況は一変する...)
既に綱吉の考えは悪い方向に的中している。それを綱吉知る由もないが、常に最悪を想定して動いてこそプロ。
ディーノからその教えを受けている綱吉は、飯田が単独で動いていることを仮定し、思考を巡らせた。
一方で、綱吉と対峙する麗日はじっと見据える綱吉に対して一歩も動けないでいる。
(これ...どうすればいいんだろ...)
初の対人訓練ということもあり、柔軟な対処など出来るはずもない。
緑谷と飯田と練った作戦では、屋上から侵入して上と下で分かれて捜索。出会った敵チームは触ってオシマイ。
端的に言えばそんな感じだった。
だが実際に対峙した
相手は実技試験で圧倒的な成績を残した特別合格者。自分とは実力が違うことは成績が物語っている。
爆豪が虎なら、綱吉は深海に潜むサメ。少しでも波紋を立てれば喰いつかれるような威圧感を感じていた。
(簡単に触らせてくれるなら苦労しないんだけど...そうもいかないよね)
障害物などがあれば、浮かせて陽動にも使える。
だがここは屋上。余計なものなど何一つ無い。
バカ正直に戦闘を行えば勝ち目は薄い。ならば、
「いくよツナ君!!」
動き出したのは麗日。
正面突破を選んだ麗日は綱吉に詰め寄り、行動不能にすべく接触を試みる。
(正面突破!?そうきたか)
迫る麗日へ対処すべく、綱吉は戦闘態勢に入る。
正面突破...麗日さんの個性は触れればこそ強力なものだが触れるまでの過程はそれなりに難しい。
じっとおとなしくしたままの人間などいるはずもなく、触れないように立ち回るのが常識だ。
だからこそ、綱吉は意表を突かれた。
だが麗日が取った選択肢は、正面突破でも無い。
「超必っいっくよ~!」
自身に触れ”個性”を発動させた麗日の身体が浮き上がった。
綱吉の上を取ることに成功した麗日は屋内へ向かうべく背後のドアへ向かう。
成功した
そう思ったのも束の間。
綱吉の手が、飛び上がった麗日の足を掴んだ。
「へっ!?なんで!?」
無重力状態の足を掴まれた麗日はそのまま地面へ打ち付けられる。
正面突破をしないなら
「自身を浮かせることが出来るのは屋上へ侵入した時に把握してる。だから予測をしてた」
叩きつけられてひるんでいる内に確保テープを巻き付ける。
「麗日さん、確保」
綱吉がそう言った瞬間、オールマイトからアナウンスが入る。
「麗日少女確保!!ヒーローチーム残り二名!!」
ヒーロー側からの脱落者に、モニターを見ていた他の生徒たちが湧いた。
「うおお!沢田すげえ!!」
「一瞬で捕まえちゃったよ!沢田の予想通りって感じだったね!」
「それにしても爆豪ズッケェ!奇襲なんて漢らしくねぇ!」
「奇襲も戦略!彼らは今実戦の最中なんだぜ!」
「緑くんよく避けられたな!」
生徒たちが湧き立つ中、オールマイトは緑谷の姿を見て内心驚愕していた。
先日...実技試験の時は一度使っただけで全身バキバキになったと聞いていたが、個性把握テストといい今回といい。微弱だがコントロール出来ているように見える。
だが一度爆豪を投げ飛ばして以降は逃げに徹しているように見える。作戦か、攻めに意識を回せる余裕がまだ無いのかは知る由もないが、身体を壊すといリスクを僅かな期間で克服した事に関しては安堵するのだった。
思い思いに話す中、八百万はモニター越しの動きを静観していた。
(さすがは特別合格者...実技試験で圧倒的な成績を残しただけはありますわ。行動に移すまでの判断力や相手の考えを先読みする力...爆豪さんの独断専行があったにもかかわらず瞬時に作戦を立て直したのですわね...そして触れたらほぼ終わりの麗日さんに対しては自分から攻めに行かず、あえて動かないことで麗日さんから仕掛けさせた。そして爆豪さんの方は...)
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「オイ待てデクこら!!逃げてんじゃねぇ!!」
跳ねるように移動しながら爆豪から逃げ続ける緑谷。
飯田がフロアの探索を終えるまでの間、緑谷は時間を稼ぐことを徹底していた。
(逃げ続けていれば攻撃は当たらない!その間に飯田君がなんとかしてくれる!)
自身の”個性”「ワンフォーオール」は超パワーを発揮する個性。
だが自身でも制御することが出来ず、使えばその身を壊してしまう。
それを緑谷は各部位ではなく全身へ使うことで、僅かな5%ほどの力だが全身を強化することが可能となった。
そしてその力は今、爆豪を相手取るまでになっている。
だがたった5%の力でも緑谷の器にはギリギリだ。
現在進行中で身体が軋む。もろはの剣には変わりない。
(さっきは偶然
「てめぇ...さっきから戦う気あんのか?ちょこまかちょこまか舐めてんじゃねえクソデクがよぉ!!俺より上行ったつもりかぁ!?俺の方が上だ!!上なんだよ!!!」
逃げ続ける緑谷に苛立ちを更に苛立ちが募る爆豪。対して緑谷は麗日の離脱報告を聞き、思考を立て直そうとする。
(麗日さんが確保された時点で上と下から探す事は不可能になった。これで人数有利は無くなってしまった。沢田君と飯田君の対面は避けられない...なら、僕がここでかっちゃんを倒すか、このまま足止めし続けるしか無い...)
「なら...!」
爆豪へ向けた背中を翻し、正面に向き直る緑谷。
爆豪はニヤリと笑い、サポートアイテムの籠手に手をかける。
「ようやくやる気になったかよ...全力のてめえをねじ伏せてやる...」
「......?」
「俺の”個性”はもう知ってるよなぁ...掌の汗腺からニトロみてえなもん出して爆発させてるってことを...「要望」通りの設計なら。こいつはそれを内部に溜めて発射させる...どういう事か分かるかデク!!」
籠手の形は「手榴弾型」。撃鉄を下げた後、爆豪は近くのピンに手をかける。
「爆豪少年ストップだ!!殺す気か!!」
オールマイトの音声が響くも、爆豪はそれを振り払った。
やばいと思っている。爆豪自身も脂汗を滲み出しながらピンを引きぬく。
この装備は味方に向けるためのものではないし、威力だって人に向けるものではない。爆豪にそれをさせたのは膨れ上がった自尊心。
齢4歳にして、自分が天才なんだと気づいてしまったガキ大将は、そのまま高校生まで来てしまった。
そして目の前にいるのは自分が最も「弱い」と思っている人物。
「当たんなきゃ死なねえよ!!」
籠手から大量のニトロが放出され、それらが爆発する。
掌から爆発させるものとは規模が違う極めて強力な一撃。
緑谷は咄嗟に射線から逃れるべく、
「前に跳んだ!?当たりに行っただと!?」
モニターに映る映像にオールマイトは困惑する。
あの爆発をモロに受ければ十分に死ぬ威力だ。もともと咄嗟の判断力は優れている少年だと思っていた。だからこそ、この愚行の意味を見出すことが出来なかった。
否、一瞬理解することが出来なかった。
「そういうことかよ。緑谷少年!」
緑谷はただ上に回避行動を取るのではなく、斜め前へ跳ぶことで爆豪との距離を詰めることを優先した。
「ぐっ...うぅぅ...!!」
それでも完全に回避することは叶わず、緑谷は両脚にその爆発の余波を受けていた。直撃だったならば両脚がもげていただろう。
その余波でも充分な威力だ。だが緑谷は一度、これと同じくらいの痛みを受けている。
折れた両脚をそのままに、爆豪に肉薄した。
「な...んで...」
対する爆豪は動けなかった。
当たらなければ死なない。そう言って放った一撃を、あろうことか当たりにいった緑谷に対して、理解が追い付いていなかった。
加えて自分が殺してしまうかもしれないという場面。本当に殺す気などなかった。それを言い張れるだけの冷静さは自分の中に持っていた。
だが今の爆豪に、その判断力は無い。
目の前の爆発に気を取られて、上を見ることが出来なかった。呆然と立ち尽くし、自分の過ちを必死に悔いるだけ。
「かっちゃん...!確保だ!!」
「あっ...」
爆豪は何も出来ず、捨て身で肉薄した緑谷に確保テープを巻かれた。
「爆豪少年確保!!仕方無いがこうなってしまった以上、この訓練は中止だ!!ちょっとやりすぎだね!!」